はじめてのアフリカ旅行記


【12】 エンタベニ動物保護区

3月19日(3)
スタークフォンテイン洞窟を後にし、この日の目的地であり、かつ今回の旅の最大の楽しみの一つ、エンタベニ動物保護区に 向かって出発する。途中サービスエリアに寄り道しながら、時速160キロでぶっ飛ばす。僕は車に乗ってもせいぜい120キロ どまりだから、常時160キロで走る車に乗ったのは初めてであった。周りはあっという間に建物がなくなり、サバンナに変貌 してしまった。160キロの速度も、比較する物が周りにないと実感がわかなくなる。車はサバンナの中をまっすぐに伸びる 舗装道路をひた走る。
道
こんな道をひた走り、やっとたどり着いたエンタベニ動物保護区。この動物保護区は私営だそうです。 私営・・・誰がやってるんでしょうね。
3時間近く走っただろうか、日は沈み、街灯がないので辺りは真っ暗になってきた。車はスピードを落とし、何度もカーブを 曲がる。車はさらにスピードを落とす。どうも道に迷ったようで、なかなか目的地に到着しない。するとそのとき、突然 車が道の端に寄って停止した。どうしたのかと思って周りをキョロキョロしていると、前から人が歩いてくるのが見えた。 かなり近づくまで気づかなかったのだが、冗談ではなく、まるで暗闇に目と口だけが浮かんでいるようであった。
しかし、この人はいったいどこに行くところなのだろうか?少なくとも車で20分くらいの範囲には明かりは何も見えなかった。 街灯はもちろんないし、民家も見当たらなかった。この暗闇で、しかも徒歩だ。物は見えるのだろうか?僕にはほとんど 何も見えない。不思議に思っている僕をよそに、ドライバーさんが窓を開けて身を乗り出し、その人にエンタベニの場所を 質問し始めた。暗闇に突然現れた車のドライバーにいきなり質問されたにもかかわらず、その青年はにこやかに答えてくれて いた。その間、僕はるみさんに「彼はこの暗闇の中、どこへ行くんでしょうか?」と質問してみた。るみさんによると、この 国ではこれが当たり前なのだそうだ。暗闇の中、10キロや20キロは平気で歩いて移動する。もちろん暗闇というのは僕らが 感じるだけで、彼らはちゃんと物が見えているらしい。都会に住む僕の目が弱いのだ。
ここで、ふとドライバーさんの使っている言葉は英語とはかなり違う事に気づいた。聞くとそれはアフリカーンスという 南アフリカ独特の言語であり、この言葉を使って話しかけると、現地の人は非常に友好的になるのだそうだ。この言葉は もともと南アフリカにあった現地の言語と、アフリカに移り住んできたヨーロッパ人であるオランダ人の言葉、オランダ語が 交じり合ってできた言葉で、随所にオランダ語のような発音が出てくる。こう書くと、いかにも僕がオランダ語も分かる ような書き方だが、これは聞いた話。ただ実際、ありがとうは「ダンキ」と言っているのははっきり聞き取れた。オランダ語 では「ダンケ・シェーン」である。あ、いや間違えた。ダンケ・シェーンはドイツ語か。オランダ語では「ダンク」だ。 なるほど、確かに良く似ている。青年がにこやかに答えてくれていたのは、ドライバーさんがアフリカーンスで話しかけたから らしい。ガイド暦の長いるみさんも、このアフリカーンスは苦手でまだよく分からないのだそうだ。ドライバーさんは ドイツ出身の人で、るみさんの旦那さん。でもアフリカーンスはペラペラだ。オランダ語とアフリカ語のちゃんぽんなのに。
青年に道を教えてもらっておよそ1時間ほど走り、無事エンタベニ動物保護区に到着した。保護区に入ってもロッジまでまだ かなりの道のりがある。突如暗闇に赤い光が多数浮かび上がった。ヌーの群れだ。現地ではワイルドビーストと呼ぶ。 地面に寝そべったり、立ち上がったりと色々な姿勢をしているが、全てがこちらを見ている。保護区入り口にしてこれだ。 明日からのサファリドライブがとても楽しみだ。
ロッジに着き、るみさんたちと二日後に迎えに来てもらう約束をして別れた。ロッジでは体のとても大きなレンジャーが 僕らを待っており、僕らの荷物を抱えて部屋まで案内してくれた。そして、「晩飯は始まってるから、すぐに食堂に来い」と 言い残して去っていった。僕らもすっかりおなかが減っていたので、とりあえず荷物を部屋に押し込んで食堂に向かった。 そこにはすでに先客がおり、食事を始めていた。どうやら、大きなテーブルをみんなで囲み、食事をしながら会話を楽しむ という趣向らしい。なかなか気の利いたサービスだと思ったのだが、当然会話は全て英語であり、みんなが何をしゃべって いるのか理解できない。僕らとはほとんど会話が成立せず、あっという間に微妙に気まずい雰囲気になってしまった。
ダチョウシャンデリア
僕たちの泊まったロッジ(一棟貸切!)の天井には、写真のようなシャンデリアが。よく見ると電気のフードは 全てダチョウの卵の殻でできています。かっこいいですねぇ。帰りに思わずダチョウの卵の殻をお土産に 買ってしまいました・・・

何とかカタコトでぎこちない会話を繰り返していると、一緒に食事を取っていたレンジャーが、「明日朝のゲームドライブは 6時出発だ。遅れるなよ。」と告げた。早い。5時には起きないと間に合わない。これはそろそろ引き上げて眠らないと、 朝がつらそうだ。ところが、同席していたイギリス人のおじさんがいつまでたっても酒を飲むのをやめない。飲むのをやめない ばかりか、飲みながらみんなに話しかけるのもやめない。「君たちも飲みなさい。僕は夕食後に何時間もかけて酒を飲むのが 楽しくて大好きなんだよ」と。勧めてくれるのはありがたいが、他の同席者たちも明日の朝の事を気にしてそわそわし始めて いる。おじさんはイギリスの自宅にいる時と同じ調子で過ごしているようだ。このままではいつまでたっても食事会がお開きに なりそうにない。どうせ僕らはこの場で若干浮き気味であったから、おじさんの話をさえぎって「すみません、今日は長旅で 疲れていますので、先に失礼させていただきます」と言って席を立った。それがきっかけとなり、別の女性グループも「私たち も先に寝ます」といって席を立ち始めた。最後はおじさんとその奥さんだけがポツンと取り残される結果に。ちょっと申し訳 ないことをしたかな、とも思ったが、明日寝坊しては元も子もない。まあ、同席の女性グループにも少し感謝されたよう なので、よしとするか。
ロッジに戻り、今日の汗を流す。星がとてもきれいだ。ギシギシと音が聞こえてきそうだ。






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