切り札のフィットする確率 


(C) boco_san ( ぼこぼこ 2004/09/01)
  1. はじめに
  2. 切り札のフィットする確率(1スーター) ---- 確率の表(1)
  3. 切り札のフィットする確率(2スーター) ---- 確率の表(2)
  4. 切り札のフィットする確率(ハンド・パターンごと)Rule of 20 の意味 ---- 確率の表(3)
  5. 切り札の枚数と発生確率 ----- 確率の表(4)
  6. 切り札の偏りかたの相関 ----- 確率の表(5)
  7. 確率の計算方法 [表(1)]
  8. 確率の計算方法 [表(2)]
  9. 確率の計算方法 [表(3)]
  10. 確率の計算方法 [表(4),(5)]

はじめに

  ブリッジでは,確率の数値を大まかに把握していることが必要です。
  ブリッジの本によく載っているのは,たとえば,
   『7枚のスートが,ディフェンス側の二人に どのように分かれるか』
という確率です。これは,ディクレアラーがプレイする上で知っておくべき確率です。

 ところが,そのほかに,ビッドの過程でも確率について大まかに理解している必要があります。 これについては,確率の表を見かけることがほとんど無いので,自分で計算してみました。
  計算式などは,すべて後ろの方にまとめてあります。


切り札のフィットする確率(1スーター)

  最初に取り上げるのは,たとえば,

『自分が 6 枚のスートを持っているときに,パートナーが 2 枚以上持っている確率は ? 』
とか
『自分が 5 枚のスートを持っているときに,パートナーが 3 枚以上持っている確率は ? 』
というような問題です。

その結果を 表(1) に示します。
計算式に関心のある方は,後の方をお読み下さい。
《 確率の表(1) 》
同一スートでの 自分の枚数とパートナーの枚数の相関 [ 数値は 発生確率(%) ]
自分の枚数 8枚以上のフィット確率 パートナーの枚数
012345678910111213
0   1.2  0.1  1.5  7.418.727.524.813.9  4.9  1.0  0.1  0.0  0.0  0.0  0.0
1   3.4  0.2  2.610.622.928.621.610.1  2.9  0.5  0.0  0.0  0.0  0.0
2   8.5  0.5  4.114.526.728.117.7  6.7  1.5  0.2  0.0  0.0  0.0
3 18.1  0.8  6.419.229.625.913.3  4.0  0.7  0.1  0.0  0.0
4 33.7  1.5  9.624.231.122.2  9.1  2.1  0.3  0.0  0.0
5 54.4  2.513.929.230.617.4  5.4  0.9  0.1  0.0
6 76.3  4.319.533.427.812.1  2.7  0.3  0.0
7 92.9  7.126.235.722.8  7.1  1.0  0.1
8 10011.433.835.216.1  3.2  0.2
9 10018.241.130.8  9.0  0.9
10 10028.446.222.2  3.1
11 10043.945.610.5
12 10066.733.3
13 100100
  この表の見方を説明しましょう。
  あなたがたとえば,スペードを 6 枚持っているとします。このとき,パートナーがスペードを持っている確率は
      2 枚の場合が 33.4 %  3 枚の場合が 27.8 %  4 枚の場合が 12.1 %,・・・
  それで,合計 8 枚ならフィットがあると考えてこれらの数値を合計すると,スペードでフィットがある確率が 76.3 % と なります。

  この確率 76.3 % がかなり高いので,6 枚の良いスートがあったら,パートナーに 2 枚以上を 期待してプリエンプトしてよい・・・と言えます。
  分かりやすく言うと,自分で 6 枚持っていれば,4回のうち3回は合計 8 枚以上のフィットがあります。

 また,自分が 5 枚持っているとき,パートナーが 3 枚以上でサポートしてくれる確率は 54.4 % であることが分かります。 1 や 1 でオープンしたときの経験と合っているでしょうか・・・。


切り札のフィットする確率(2スーター)

  次は,2スーターの場合です。たとえば,

『自分がスペードを 5 枚とハートを 4 枚持っているときに, パートナーが 3 枚以上のスペード または 4 枚以上のハートを持っている確率は ? 』
というような問題です。
  この結果を 表(2) に示します。
《 確率の表(2) 2スーターの枚数とフィット確率(%) 》
自分が持っている 2スーターの枚数
枚数3-34-45-45-56-56-6
 8枚以上のフィット確率35.260.374.283.592.296.4

  いくつか説明を加えておきましょう。


切り札のフィットする確率(ハンド・パターンごと)

  確率の計算をらくにできるようになったので,今度は,ハンド・パターンごとにフィット確率を計算してみました。

  ここでは,とくに,4-3-3-3 のバランスハンドに注目します。経験からよく知られていることですが, 4-3-3-3 の形は 何をするにも不利です。
  スートのコントラクトでは,切り札のフィットが見つかりくいし,仮に見つかっても, 自分の手では切ることができません。そうかと言って,ノートランプでは,長い(マイナー)スートで 走ることもできません。結局, 4-3-3-3 の場合には,高い HCP を持っていないと勝負になりません。 そのため,4-3-3-3 の形では 12 HCP でもオープンしないのが普通です。
  こういう 4-3-3-3 型ハンドの不利な状況を,フィット確率という数値により定量することが目的です。
  確率の計算結果は,次のようになりました。
《 確率の表(3) 》
ハンド・パターンフィットする確率(%)Rule of 20 によるカウント
8枚以上9枚以上
4-3-3-376.425.67
4-4-3-279.129.08
4-4-4-183.134.08
5-3-3-282.534.58
5-4-2-284.537.59
5-4-3-185.839.29
5-4-4-089.344.49
5-5-2-189.546.710
5-5-3-091.048.910
 4-3-3-3 と 4-4-3-2 の二つの場合には,フィット確率が低いですが,とくに 4-3-3-3 では 際立って確率が低くなっています。このように,4-3-3-3 が損な形であることは,フィット確率の低さからも 裏付けられました。

 最後の欄に示したのは,2スートの合計枚数です。ルールオブ 20 によるカウントとフィット確率が 良い比例関係(1次式の関係)にあることが分かります。
graph  数字だけでは分かりにくいので,これを,右のようにグラフにしてみました。
 縦軸はフィット確率で,上の方は 8 枚フィット,下の方は 9 枚フィットの確率です。 第1スートの枚数(4, 5, 6) により,どちらも三色に色分けしています。横軸には,上位2スートの合計枚数を取りました。 このグラフから,フィット確率と Rule of 20 のカウントが非常に強い相関を持つことが分かります。
 オープニング・ビッドの段階では自分のカードしか見えていないので,自分の手がパートナーの手と どのくらいよくフィットするかは全く分からないのですが,Rule of 20 に従えば,フィット確率の 高いハンドをオープンしやすいと言えます。

  Rule of 20 について私がこれまで漠然と理解していたのは(正確に言うと,理解していると思っていたのは) 『もしもパートナーとフィットがあれば,短いスートで切れるとか,長いスートで走れるから有利』 と いうことでした。でも,「もしも」と言うのは,間違いだったのです。Rule of 20 を使えば

『HCP がいくらか不足でも,パートナーとフィットする確率がそもそも高いので,短いスートで切れるとか,長いスートで走れるから有利』
というのが Rule of 20 の正しい理解なのです。


切り札の枚数と発生確率

  こんどは,たとえば,
     『NS ペアが合計して 10 枚の切り札を持つ確率はいくらか ? 』
というような問題です。計算の結果は 次の通りです。
《 確率の表(4) 》
枚数 7 8 9 10 11 12 13
確率(%)  15.7   45.7   28.1    8.7    1.6    0.16    0.01 
  この表から,合計 8 枚の場合が最も多い(45.7%) ことが 分かります。次に多いのが 9 枚で, この二つで 73.9 % を占めます。10 枚の切り札は,約11回に1回の割合で発生します。


切り札の偏りかたの相関

  最後に計算するのは,NS ペアの切り札の枚数と,EW ペアの切り札の枚数の相関です。たとえば,

『味方が合計 10 枚の切り札を持っているとき, 相手方も合計 10 枚の切り札を持っている確率はいくらか? 』
というような問題です。
《 確率の表(5) 》
味方の枚数 相手方の切り札の枚数
7 8 8d 9 9d 10 11 12 13 確 率
7 66.67 33.37 * * * * * * * 15.74 %
8 14.81 66.67 * 18.52 * * * * * 35.41 %
8d * * 32.11 47.57 * 19.03  1.30 * * 10.34 %
9 * 23.33 17.50 25.93 15.71 14.58  2.71  0.23  0.01 28.10 %
10 * * 22.68 16.80 30.45 23.43  5.85  0.75  0.04  8.67 %
11 * *  8.48 * 48.16 32.10  9.67  1.49  0.09  1.58 %
12 * * * * 41.00 41.17 14.94  2.69  0.19  0.16 %
13 * * * * 24.30 48.60 22.08  4.64  0.38  0.01 %

この表についても,説明を加えておきましょう。


確率の計算方法 [表(1)]

  確率の計算は,結果の数値を知れば十分という方が大部分でしょうが,でも,どうやってそれを計算したかを 書いておかないと,その数値が正しいという保証がありません。そこで,2項係数 nCr を 使った計算方法をここに書き留めておくことにします。

  表(1) では,たとえば,

『4人のプレイヤー N, E, S, W のうちで,プレイヤー N がスペードを 6 枚持っているときに, そのパートナー S がスペードを 2 枚持つ確率はいくらか ? 』
というような計算を必要とします。
  そこで,これを一般化して
『プレイヤー N がスペードを a 枚持っているときに, そのパートナー S がスペードを x 枚持つ確率 P(a, x) を求めよ 』
という問題として考えます。
その答は,以下に説明するように
                 13Cx   26C13−ax
P(a, x)  =  −−−−−−−−−−−−−
                     39C13−a
となります。

  スペードの枚数に注目して考えると,

  1. N が持つ 13 枚のうち,スペードが a 枚,その他のスートが 13−a 枚なので,この組み合わせは 13Ca 通りあります。
  2. S が持つ 13 枚のうち,スペードが x 枚,その他のスートが 13−x 枚なので,この組み合わせは 13Cx 通りあります。
  3. E と W が持つ 26 枚のうち,スペードが 13−ax 枚,その他のスートが 13+a+x 枚なので,この組み合わせは 26C13−ax 通りあります。
以上を掛けると,場合の数が
     N(a, x) = 13Ca × 13Cx × 26C13−ax
となります。これを,x について加えた総数
     Σx N(a, x)   = 13Ca × Σx 13Cx × 26C13−ax  =  13Ca × 39C13−a
で割ることにより,上の確率が得られます。

  なお,総和の計算では,2項係数の公式
     Σx nCx × mCpx  =  n+mCp
を使いました。


確率の計算方法 [表(2)]

  表(2) では,たとえば,

『4人のプレイヤー N, E, S, W のうちで,プレイヤー N がスペードを 5 枚とハートを 4 枚持っているときに, そのパートナー S がスペードを 3 枚以上 または ハートを 4 枚以上持つ確率はいくらか ? 』
というような計算を必要とします。
  そこで,これを一般化して
『プレイヤー N がスペードを a 枚,ハートをb 枚持っているときに, そのパートナー S がスペードを x,ハートを y 枚持つ確率 P(x, y) を求めよ 』
という問題として考えます。
その答は,以下に説明するように
                  13−aCx   13−bCy   13+a+bC13−xy
P(x, y)  =   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                                 39C13
となります。そして,この確率 P(x, y) を
     a + x ≧ 8  or  b + y ≧ 8  (どちらか片方のスートの合計枚数が 8 以上)
を満たす場合について加えると,表(2) の結果が得られます。
  1. スペードの枚数に注目して考えると,
    合計 13 枚のうち,N が a 枚,S が x 枚,残りの 13−ax 枚を E と W が持つので,この組み合わせは 13Ca × 13−aCx 通りあります。
  2. ハートの枚数に注目して考えると,
    合計 13 枚のうち,N が b 枚,S が y 枚,残りの 13−by 枚を E と W が持つので,この組み合わせは 13Cb × 13−bCy 通りあります。
  3. ダイヤモンドとクラブの 26 枚は,ひとまとめにして考えます。
    26 枚のうち,13−ab 枚を N が持ち,残りの 13+a+b 枚を S, E, W の三人で分けます。そのうち,S は 13−xy 枚 を 持つので,場合の数は,26C13−ab × 13+a+bC13−xy 通り あります。
以上を掛けると,場合の数が
     N(x, y) = 13Ca × 13−aCx  ×  13Cb × 13−bCy  ×  26C13−ab × 13+a+bC13−xy
となります。ただし,ここでは ab が定数なので,xy を含む因子だけを抜き出すと
     N(x, y) = 13−aCx ×13−bCy ×13+a+bC13−xy
これを,xy について加えた総数
     Σx Σy N(x, y)   = Σx Σy  13−aCx ×13−bCy ×13+a+bC13−xy  =  39C13
で割ることにより,上の確率 P(x, y) が得られます。


確率の計算方法 [表(3)]

  表(3) では,たとえば,

『4人のプレイヤー N, E, S, W のうちで,プレイヤー N がスペードを 4 枚,ハートを 3 枚,ダイヤモンドを 3 枚,クラブを 3 枚 持っているときに, そのパートナー S がスペードを 4 枚以上 または ハートを 5 枚以上,または ダイヤモンドを 5 枚以上,または クラブを 5 枚以上 持つ確率はいくらか ? 』
というような計算を必要とします。
  そこで,これを一般化して
『プレイヤー N がスペードを a 枚,ハートを b 枚,ダイヤモンドを c 枚,クラブを 13−abc 持っているときに, そのパートナー S がスペードを x 枚,ハートを y 枚,ダイヤモンドを z 枚,クラブを 13−xyz 持つ確率 P(x, y, z) を求めよ 』
という問題として考えます。
 その結果は,
                      13−aCx   13−bCy   13−cCz   a+b+cC13−xyz
P(x, y, z)  =   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                                             39C13
となります。そして,この確率 P(x, y, z) を
     (どれかのスートの合計枚数が 8 以上/ 9 以上)
の場合について加えると,表(3) の結果が得られます。
  1. スペードの枚数に注目して考えると,
    合計 13 枚のうち,N が a 枚,S が x 枚,残りの 13−ax 枚を E と W が持つので,この組み合わせは 13Ca × 13−aCx 通りあります。
  2. ハートの枚数に注目して考えると,
    合計 13 枚のうち,N が b 枚,S が y 枚,残りの 13−by 枚を E と W が持つので,この組み合わせは 13Cb × 13−bCy 通りあります。
  3. ダイヤモンドの枚数に注目して考えると,
    合計 13 枚のうち,N が c 枚,S が z 枚,残りの 13−cz 枚を E と W が持つので,この組み合わせは 13Cc × 13−cCz 通りあります。
  4. 最後に,クラブに注目すると,
    13 枚のうち,13−abc 枚を N が持ち,残りの a+b+c 枚を S, E, W の三人で分けます。そのうち,S は 13−xyz 枚 を 持つので,場合の数は,13C13−abc × a+b+cC13−xyz 通り あります。
以上を掛けると,場合の数が
   N(x, y, z)   =   13Ca × 13−aCx  ×  13Cb × 13−bCy  ×  13Cc × 13−cCz  ×  13Ca+b+c × a+b+cC13−xyz
となります。ただし,ここでは abc が定数なので,xyz を含む因子だけを抜き出すと
     N(x, y, z)   =   13−aCx ×13−bCy ×13−cCz ×a+b+cC13−xyz
これを,xyz について加えた総数
        Σx Σy Σz  N(x, y, z)  =  39C13
で割ることにより,上の確率 P(x, y, z) が得られます。


確率の計算方法 [表(4),(5)]

 表(5) のような確率は,次のように考えて計算します。

 52 枚のカードをどう配るかという問題ですが,いまは,個々のプレイヤーへの配り方は問題になっていません。 各ペアへのカードの分配だけが問題になっています。したがって,
     「52 枚のカードを 2組のペアに 26 枚ずつ配る」
と考えます。このときの配り方は,組み合わせの記号を使って,全部で 52C26 通りあります。この 52C26 通りの 分配法(根元事象)がどれも同様に確からしいと仮定して,確率を計算します。

  NS ペアに配られた 26 枚のカードのうち,スペードが s 枚,ハートが h 枚,ダイヤモンドが d, クラブが cとしましょう。 このとき,もちろん
      s + h + d + c = 26
が成り立っています。このような配り方は
      13Cs × 13Ch × 13Cd × 13Cc
だけあります。なぜなら,各スート毎に 13 枚のカードをこのように配るからです。もしも NS ペアの最も長いスートが 7 枚で
  (a) 7 - 7 - 6 - 6
という分布の場合には,この数値は,たとえば
      13C7 × 13C7 × 13C6 × 13C6
となりますが,実際には (s, h, d, c) = (7, 7, 6, 6) だけでなく (7, 6, 7, 6) などのように 4C2 = 6 通りがあるので, これを掛けて,
      4C2 × ( 13C7 × 13C7 × 13C6 × 13C6 ) = 5202 59937 50016
となります。

同じように考えると
  (b) 7 - 7 - 7 - 5
という分布の場合には,この数値は
      13C7 × 13C7 × 13C7 × 13C5
となりますが,実際には (s, h, d, c) = (7, 7, 7, 5) だけでなく (7, 7, 5, 7) などのように 4C1 = 4 通りがあるので, これを掛けて,
      4C1 × ( 13C7 × 13C7 × 13C7 × 13C5 ) = 2601 29968 75008
となります。  この二つの場合 (a) と (b) の比をとると,13C6 = 13C7 であることに注意して, その結果は
      6 × 13C6 : 4 × 13C5 = 2 : 1
です。上の2つの数字の比が2倍になっていることからも,これは分かります。

 さらに,上の2つの数字を加えて,全体の場合の数
      52C26 = 49591 85320 48104
で割ると,7 枚フィットの発生確率 15.736254% が得られます。

  以上のようにして,すべての場合の確率を(VB でプログラムを作成して)計算しました。したがって,上の表(1)〜(5) の確率は,シミュレーションに よるものではなく,すべて厳密な数値です。

  なお,ブリッジで確率を計算するときの考え方は,Durango Bill さんの ウェブサイト に詳しく説明されています。