| モーゼルM712 mauser M712 |

「軍用拳銃の王様」モーゼルミリタリーの最終型で、セミ/フルの切り替え機構が付いたモデル。
モーゼル社内では「シュネルフォイヤー(速射)」、ドイツ軍正式名は「R713(Rはライエンフォイヤー・連射の意)」だが、アメリカの輸入代理店ストーガー社で「M712(Mは多分モデルの意だろうといわれている)」と名づけたのが有名になってしまい現在ではこの名で広く通っているので、ここでも便宜上M712と呼ぶ事にする。
※猶この名称に付いては、連射機構の設計者の違いによってジョゼフ・ニックルタイプ(セレクターレバーが細い)をR713、改良型のカール・ウエスティンガー式(セレクターレバーにストッパーが付く:内部構造も異なる)をM712と呼んでいる資料もある。
モーゼルミリタリー独特のトリガー前弾倉にクリップ装填という形式は、時々「自動拳銃の過渡期に誕生したのでライフルの構造をそのまま模倣した」という解説がなされているが、実際の所は「グリップ内マガジン」や「トリガー前に弾倉を置き下から着脱式マガジン使用」というのは全てパテントで保護されていた為、設計陣は止むなくグリップ前の弾倉配置にカートリッジクリップを使用して上から装填する形式にした為だという。
しかしながら制約された状況下でもとことん拘った造りは、例えばグリップの木部を止める一本以外に全くネジを使わない寄せ木細工の様な機関部などに余すところなく表現されている。
1000mまでの目盛が刻まれた可動式サイト、木製ホルスターはグリップ後部のレールに装着すればストックとなりカービン銃として使用できるという機能性など、当時の技術を考えるとかなりの意欲作と言えるだろう。
しかし現在の工作機器を使っても猶製造が容易ではない複雑な部品形状による機関部構造は後世に受け継がれる事なく終わった。外観はそっくりなスペインのアストラやアズールといった銃も、内部機構はモーゼルとは異なっている。
モーゼルというと「ドイツの銃」という印象が強いが、実際には第一次大戦中ルガーP08の不足を補う為に9mm口径の物が使用された(区別の為グリップ部に赤字で9と入っている)、第二次大戦時は武装SSがSMG不足を補う為にM712を後方部隊や対ゲリラ部隊で使用した程度で、一度もドイツ軍正式拳銃の座に着く事はなかった。しかしながら他国ではこれを正式とした国が多く、ギリシャやイタリア、ノルウェー、インドネシア植民地軍、トルコ、イラン、ソ連等がある。例えばソ連ではナガンリボルバーの後継として銃身4インチのモデルを特注、これは俗にボロモーゼル(ボロとはボルシェビキの略)と呼ばれており、この時使用した7.63mmボトルネック弾はその後トカレフ拳銃が制定された時もそのまま受け継がれた。
他にも、下フレームの削り込みのない通称「フラットサイド(ラージリングハンマー)」はイタリア海軍からの発注で製造されたものだし、イラン発注モデルにはパーレビ王家の紋章であるライオンが、またトルコ発注のコーンハンマーモデルには当時のスルタン、アブドゥル・ハミト2世の紋章が彫刻されている。
ちなみにモーゼルミリタリーを初めて軍用正式として採用したのはこのオスマン・トルコ軍だった。
特にモーゼルを好んだのが中国軍で、モーゼルミリタリー後半の生産分はその大半が中国大陸に渡ったという。
当時の軍閥割拠による内戦状態の中国における需要は膨大で、モーゼル純正だけでなくスペイン製のコピー品も多数出回ったがそれでも不足し大沽造船所や漢陽兵工廠など、国内生産のコピー品もまた多数製造された。
このときにはタイプにこだわらず手当たり次第に手本にしたようで、スモールリングハンマーのフラットサイドやコーンハンマーのユニバーサルセーフティなど、オリジナルには存在しないタイプがいろいろと存在している。
中でも特に有名なのが山西軍人工芸実習廠で製造されたといわれる、45口径モーゼルであり、その数8000丁といわれている。
フルオート機構搭載のモーゼルタイプとしては本家モーゼル社よりもスペイン製コピーの方が早く、固定10連・20連マガジンの時代から既にセミ・フル切り替えモデルを製造しておりこれが中国で大人気だった事からモーゼル社でも本稿で紹介するフルオート搭載モデル・M712を開発したと言われている。
M712はモーゼルミリタリーの最終形M1930をベースにセミ・フル切替機構を搭載したモデルで、この頃にはパテントの問題も解決してモーゼルも着脱式マガジンを採用している。標準の10発装填マガジンの他に、フルオート時に有利な様20発マガジンも用意された(勿論従来通りカートリッジクリップを使用した装填も可能)。
当時最高の初速を誇った7.63モーゼル弾をフルオートでばら撒くという迫力は凄いが、実銃だと跳ね上がりがキツくてストックなしのフルオートは当てにならなかったらしい。しかし中国軍では銃を横にして反動利用の「水平薙ぎ撃ち」(俗に「馬賊撃ち」等と呼ばれる)を行い日本軍を苦しめたという。
画像のフジミ製モーゼルはエアーガンとしてゲームに使える唯一のモーゼルとして、マルシンMAXIが出る前まで10年以上の長きに渡ってモーゼルマニアの手中で活躍を続け、電動ガンと同等の初速といざとなればフルオートで制圧射も出来る火力のおかげで戦場で数多の勝利をその使用者にもたらしていた。
特にホルスターにもなっている着脱式の木製ストックと、実銃通りのタンジェントサイトの組み合わせは拳銃でありながら別種の銃であるかの様な使用感を与えてくれる。ゲームでも「距離30!目盛りは・・・800mだな」等と言いながらサイトを調整してドンピシャで叩き込む爽快感は使った者にしかわからない醍醐味といえよう。
実際、初速60m/sをやっと越えるかどうか程度でホップも入ってないにも関わらず「モーゼルは良く飛ぶ」と言われているのはこの辺の調整がものをいっているからなのだ。
2001年4月にマルシンからMAXIでM712が発売されたが、時に出すぎる程の強パワーやセレクターは見かけだけでフルオート射撃不能(だったらなんでM712なの?)といった問題点があり、また2006年12月には同じくマルシンからブローバックM712が出たものの8mmという使えない口径や動作の不安定さが忌避されることから、今後もフジミモーゼルに対する需要はなくならないであろう。
エアーガンデータ
全長:296mm
全高:160mm
全幅:35mm
重量710g(ショートマガジン40g)
装弾数:ショートマガジン17発・ロングマガジン36発
銃身長:165mm(内径6.1mm真鍮製)
価格:スタンダード¥9800、デラックス¥12800、メタルフィニッシュ¥14800
アクセサリー:木製ホルスターストック¥16800
その他モーゼル系
ガンスミス系