- うれしくて身震いするよ
まさかヒバリさん、オレを助けに・・・?
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夏と花火と焼酎と
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「ヒーバーリーさんっ!」
自分の名を呼ぶ声に顔を上げると、見知った少年が一人。
にこにこと笑いながら傍らに立っていた。
こんなに近くに来られたのに気がつかなかったことに、雲雀は内心で舌打ちする。
それだけこの花火に見入っていたということだろうか。
「・・・何か用?」
「えへへー。隣り、いいですか?」
ダメと言う暇も無く、彼は相変わらずにこにこと笑いながら腰を下ろす。
何か変だなと一瞬思ったが、こんなやつには関わるまいと雲雀は咲き散る花火に視線を戻した。
「ヒバリさーん」
「・・・何」
「さっきはーありがとうございましたっ!」
「・・・何のことさ」
前を向いたまま聞き返すと、隣りでふふふと彼が笑ったのが聞こえた。
「またまたあ・・・ごまかしても無駄ですよ。オレ分かってんですから。ヒバリさん、オレのこと助けに来てくれたでしょ?なんかごちゃごちゃ言ってたけど、あれって照れ隠しですよね?」
「何を言っているのか分からないんだけど」
「だーかーらーっ!ヒバリさんが助けに来てくれたからありがとうって言ってるんですっ!」
「僕は君を助けに行ったわけじゃない」
「照れなくてもいいですってば」
「照れてなんか無い。君、しつこいよ」
何だか分からないが無性にイライラして、雲雀はつっけんどんに言い放った。
花火の爆音がやけに耳につき、さらに雲雀を苛立たせる。
その合間を縫うように、ツナがそっと息をはいたのが聞こえた。
「じゃあ・・・本当に違うんですか・・・?」
「くどいね」
「本当に、本当?」
「だからっ・・・」
「本当に、本当にオレを助けに来たんじゃないっていうんですかっ!?」
いきなり語尾を荒げた彼に、ヒバリは反射的に振り返った。
- 泣き叫んだり怒鳴ったりしている彼は見たことがあったが、こんなに悲痛を孕んだ声は初めて聞いた気がする。
- そして彼は、初めて雲雀に見せる顔をしていた。
「・・・何、泣いてるの・・・」
「泣いてなんか・・・ひっく・・・ないです・・・」
「これのどこが泣いてないんだよ。・・・顔ぐしゃぐしゃ・・・」
「う、うるさいですよ!」
ツナは目を隠しながらヒバリの手を払った。
「・・・ヒバリさんが・・・ひどいこというから・・・」
僕がひどいことを?そんなに泣かせるようなひどいことを言っただろうか。
自分が言った言葉を思い出してみたが、どれも思い当たらない。
一体彼は何がそんなに悲しいのだろうか。
強者だろうが弱者だろうが迷わず踏み倒せる雲雀だが、泣かれることには免疫が無い。(恐怖で泣き出す人間は別だ)
どう対処すればいいのか分からず、雲雀は眉根を寄せた。
「何で泣くんだ。僕が何て言ったっていうんだよ」
ツナはしゃくり上げながら、涙を一杯溜めて潤んだ瞳で雲雀を見上げた。
「オレ・・・オレのことを助けるつもりじゃなかった、とか言うから・・・オレ、すごく嬉しかったんですよ?ヒバリさんがオレを助けにわざわざあんなところまで来たんだ、って・・・なのに・・・」
それなのに違うっていうから――――!!!
花火の爆音に負けずに叫ぶと、今度は声を上げて泣き始めた。
ヒバリは呆気に取られてしばし呆然とツナを眺めた。
幼い子供が駄々をこねているように泣くツナ。
初めて見るそんな彼の幼い行動に、ヒバリの困惑の色が強くなる。
どうすればいいのかわからないが、とりあえず宥めようと雲雀はツナに手を伸ばした。
「とりあえず落ち着いて・・・・・・って、くさっ!酒くさっ!!」
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- 思わず顔を背ける。
ツナから漂ってきた匂いは、紛れもなくアルコール臭だった。
「は!?君、酒呑んでるの!?・・・酒、って、そうか、それでこんなに泣いて・・・・・・って違う!」
そうじゃなくて!!
雲雀はあたりを見回して、どこか近くにいるはずの人たちを探した。
しばらくして数メートル先の芝生に腰を下ろしている見知った顔ぶれを見つけ、叫んだ。
「君たちっ!未成年に酒を飲ませるなん・・・て・・・・・・」
いいかけた言葉を飲み込む。
雲雀の怒鳴り声にこちらを見た人たちの顔は、薄暗いところでもはっきりとわかるくらい真っ赤だった。
山本も獄寺も、二人の女子も。
全員真っ赤な顔でにやにや笑っていた。
ダメだ・・・
皆酔ってる。
雲雀は眩暈を覚えて頭を抱えた。
一体どうして酒を・・・
「俺が呑ましたんだぞ」
「あ、赤ん坊!?」
一瞬雲雀の目が輝いたが、すぐに彼の言った言葉に気がついて眉を顰める。
「君が、呑ませた?」
「そうだぞ、今日は祭だからな。無礼講ってことで皆に酒を振舞ったんだ」
なかなか美味かったぞ
- リボーンはそれだけ言うと何処かへ去っていった。。
赤ん坊なのに、酒が呑めるのか・・・
もう何が何だかわからなくて唖然としている雲雀の腰に、突然重たいものが纏わりついた。
驚いて目をやると、
「ちょっと・・・君、なにやってんの?」
いつの間にかツナが腰に抱きついていた。
ぐりぐりと顔を擦りつけてくる。
- あたりを漂うアルコール臭がいっそう強くなった。
「ヒバリさーん!」
「は、離せって!」
「うーっ!」
- 「うーじゃない!鬱陶しい、離れろ!」
- 「ぃや・・・ヒバリさーん・・・・・・・・・・・・・・・好き」
「!」
ツナを剥がそうとしていた雲雀の動きがぴたりと止まる。
- 彼は今、なんと言った?
自分を押しのける力が無くなって安心したのか、ツナは抱きついたまますうすうと寝息を立て始めた。
むにゃむにゃと聞こえる寝言は、何となく自分の名のようにも聞こえる。
なぜか腕に力が入らず、押しのける気もいつの間にか消えていた。
雲雀はしばらく手を宙に浮かせたまま固まっていたが、やがて諦めたように深く長く息をはいた。
「仕方ないな・・・」
そろそろと自分の腰に巻きつく腕を剥がしていく。
うーんとツナが呻いたが、起きる気配は全く無い。
雲雀はため息をついてツナの頭をそっと自分の膝にのせた。
ツナは気持ちよさそうに眠り続けている。
「言っておくけど、酔いが醒めるまでだからね」
聞く人間はもういないというのに、雲雀は言い訳がましく呟いた。
一際大きく華が夜空に咲いてあたりを明るく照らした時、
雲雀の口元に穏やかな笑みが浮かんでいたことに気がついたものは、
残念ながら一人もいなかった。
END
ブラウザバックプリーズ
未成年は酒を飲んじゃいけませんよ