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特定非営利活動(NPO)法人

眼炎症スタディーグループ

会員コラム
Vol.27

忘れられない人

栗原とよえ

お姉様からお電話頂いたのは、綾ちゃんが亡くなってから半月あまりが過ぎた頃だった。今年八十歳を迎えるお姉様は連絡が遅れたことを、さかんに詫びながら「貴方のお手紙は綾子の胸に抱かせて送りました。いいお友達が出来たって私にいつも自慢してましたから・・・。」


昨年、私は突発性難聴で入院して初めて綾ちゃんに出逢った。その時、綾ちゃんは上顎癌の為に右目を冒され、やむなく右目を摘出していた。女性としてどんなに辛かっただろう。「お化けですよ〜」と、ニコニコ笑いながら近づいてきた綾ちゃんは、明るくキラキラ輝いていた。そして古くからの友人のようにスルッと、私の心の中に入り込んだ。

食後、私達は同室のおばあ様の元に集まり、お話をした。綾ちゃんは聞き終わると必ず「いいお話だったわねぇ」とニコニコしていた。労いの言葉を忘れず、優しく心の深い人だった。綾ちゃんの動作の一つ一つが今、走馬灯のようによみがえる。私のデジカメに残された病院の食事には必ず花が添えられている。綾ちゃんが毎日、飾ってくれた花だ。彼女の心を忘れないように、私は毎日記録を撮り続けた。

八回の放射線治療も綾ちゃんの癌を阻めず、しぶとい癌は目の下を食い破り、拳二つ分の大きさになって外に出てきた。「ただいま〜でんでん虫、連れてきたよ」外泊の時の綾ちゃん一流のジョーク、嗚呼、いのちの瀬戸際にあってもなお、このユーモア。それから程なく綾ちゃんの左目は失明し耳は失聴し、沢山の書きかけの手紙の束だけが遺された。


column_flower綾ちゃんに逢えたから私は自分の病気が怖くなくなり、この病気を背負うことも重く感じなくなった。そして自分がいかに弱く傲慢だったか思い知らされた。綾ちゃんが、いのちを懸けて教えてくれたこと、それは生き抜くこと。

ありがとう綾ちゃん、決して貴方の笑顔を忘れないよ。
(2008年2月22日記)





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