介護保険法改正/現場の懸念を払拭せよ

2005/05/23

 介護保険改正法案が衆院を通過し、参院で審議されている。改正の柱は、予防重視で、二〇〇〇年の制度発足後、  初の大きな見直しとなる。

 今国会で成立する見通しだが、介護の現場に広がる戸惑いや懸念を解消する手立てが十分に示されているとはいえない。

 介護保険制度は、要介護認定者数、保険給付の総費用とも発足時から二倍近くに膨らみ、財政状況は厳しい。  改正は当初、予防重視と保険料徴収年齢の引き下げを掲げたが、結局、予防対策が残った形だ。

 予防対策として、軽度の人に筋力トレーニング、栄養改善などに取り組んでもらう予防給付を導入する。  「要支援」「要介護1」の認定者百数十万人が対象となる。予防重視の考え方に異論はない。  しかし、その“筋トレ効果”をめぐって、衆院の審議でも疑問などが指摘されている。

 厚生労働省が実施したモデル事業の結果では、筋トレで44%の人に改善がみられ、効果ありとされる。  だが、一方で要介護度の悪化も16%あったという現実をどうとらえるか。現場では、  高価な機器の購入や送迎の費用負担を心配する声もある。

 一番の問題は、保険によるヘルパーの家事援助が打ち切られることである。  国は「家事を手伝ってもらうと、体を動かさなくなる」という。この説明は、  あたかも「予防するのだからヘルパーはいらない」といっているようなものではないか。

 現場からの不満と不安はこのあたりに集中する。ヘルパーには、家事援助を超えて高齢者の生活を見守る役割もあるだろう。  また、本当に援助を必要としている人の支援を切ってしまう恐れがないでもない。

 衆院の答弁で厚労省は筋トレの強制と家事援助の一律カットを否定した。運用面での弾力性はぜひ、確保すべきだろう。  例えば、予防効果の表れに応じて家事支援の軽減を連動させるような運用が考えられてもいいのではないか。

 今回の法改正には、給付を抑え込もうという意図がありありとみえる。  軽度の要介護者を予防給付に組み替えることによる抑制効果だけでなく、介護保険施設の食費・居住費も原則、自己負担としている。

 確かに高齢化社会の進展で将来、介護保険の破たんも懸念される。  給付と負担のバランスをどう取るのか、制度の最初の曲がり角に違いない。  とはいえ原点が福祉サービスであることも忘れてはならない。

 法案は不安を払拭(ふつしよく)する施策とともに成立させるべきだ。  なにより介護従事者と要介護者の笑顔が伴うものにしたい。    

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