ラストシーン・プレスシート解説より

かつて、日本映画にも黄金期があった。そして、その時代への熱き思いは、産業的には苦戦を強いられる現在の日本映画にも脈々と息づいている。
酒に溺れ、スクリーンから姿を消したかつての大スター(西島秀俊&ジョニー吉長)と、映画に希望と夢を持つ、若く純粋な女性映画スタッフ(麻生久美子)。
「ラストシーン」は、世代に隔たりのある二人の束の間の交流を通して受け継がれる、映画への想いを軸とした、切なくハートフルな人間ドラマである。
実際に日本映画の変遷を背景にしながらも、「ラストシーン」の基軸となるのは、人と人との絆に他ならない。看板スターと大部屋俳優、撮影所世代とテレビ世代、死に行く者と生き残る者。決して交わらないであろう対称的な人々が、この映画の中では、奇跡ともいえる接点を見出すのである。なぜ、往年のスターが撮影所に戻ってきたのか?その謎はラストシーンに明かされる。

「ラストシーン」インタビュー(プレスシートより)

映画についての映画、芸道ものが好き

僕は、映画監督についてのどきゅめんたりーを2本も撮ったほど、映画についての映画というものがすごく好きで、今回、脚本家の二人にまず見てもらったのが、ジョージ・キューカーの「スタア誕生」とトリュフォーの「アメリカの夜」。あと彼らが、1960年代の全盛期の日活撮影所のことをちゃんと知りたいということで、以前日活の俳優課にいた人に、細かくリサーチしてもらったりしたんです。
僕はショービジネスに生きる人々を描く、いわゆる芸道ものも好きなんですね。「バンドワゴン」、「フレンチカンカン」も大好きで。そういう思いからも、「ラストシーン」は描いていけました。

ミオ(麻生久美子)の役について

僕は、いつもヒロインの役に入り込んで演出するタイプです。麻生さんは夏の暑さと、注文が多い僕の演出に耐えて、映画やめようかなあというのをギリギリで 踏みとどまるという感情を、うまく演じてくれました。
僕も助監督の時、何十回と映画の仕事をやめようと思ったことがあるんです。一
度、仕事がきつくて、それも精神的に落ち込んだ時期に重なったりして、やめるギリギリまで行ったことがあるんですよ。
ある監督の組で、あまりに監督のプレッシャーがキツくて、スタッフルームにいられないほどだった。チーフ助監督にやめさせてくださいと3回ぐらい言いまし たよ。そうしたら、「ダメだ。お前はやるんだ」とその度に言われて。でもこの 時最後までやることができて、そのおかげで映画界に生き残ることができたんだと思います。だから、最後の麻生久美子さんの台詞は泣けるんですね。自分でもあそこだけは何回見ても泣いてしまう(笑)。自分が励まされる感じがするんです。

監督コメント

「キャメラの背後」に魅惑され続けて

撮影中、映画監督はフレームの中のできごとに集中する。私などは通常、フォーカス係りの撮影助手と張り合うようにキャメラの真横に張り付き、かつ手で矩形のフレームを切ってそこから俳優の演技を見つめるので、フレームの外で起きていることはまったく気づかないと言ってよい。ところが、そこでは無数の「あまりに人間的な」できごとが起きている。トリュフォーの「アメリカの夜」の中に、ロケ現場に向かう途中で、「普段は男に見向きもしないスクリプト・ガール」のナタリー・バイと小道具係りの男が辛抱溜まらず河原でイタす場面を思い起こしていただきたい。多情さは何もフランス人に限ったことではない。日本映画の現場でもあれくらいのことは平気で起きる。(私自身は知らないけど)

「ラストシーン」は、普段私が見られない、映画撮影の舞台裏を描く映画である。私の映画監督としてのキャリアはまだまだ10本だけなのだが、劇映画で2本、ドキュメンタリーで2本、「映画作りについての映画」を作ってしまった。
そこまでして「多情な」舞台裏を見続けたいのはなぜだろうか?「俺にもせめて見せてくれよ!」というルサンチマンがあるのは間違いない。また、助監督として働きはじめてすぐに、「映画の現場こそが映画的に美しい」と感じたのもよく覚えている。しかし、それ以外の何かが潜んでいる気がするのだが、自分でもそのこだわりの理由を模索中だ。

本作には、35年前と現在の映画撮影現場が出てくる。ずいぶん雰囲気を変えてある。しかし今の状況を茶化したり卑下したりするのが目的ではない。確かに現在の邦画界は、映画製作の「頻度」や「密度」は昔に比べれば低いのは認めざるをえない。しかし日本の「映画人」の「ものづくり」のスピリットの本質部分は受け継がれてゆかねばならないし、そうなると信じている。その想いを存分に込めて、麻生久美子の最後の台詞を演出したつもりだ。

2000年夏、東映東京撮影所にて。
このころはよく太ってました。(今も大差はありませんが・・・)今映画界でもてはやされるHDCAM24P(映画フィルムと同じく1秒24コマで回転するシステムの高品位デジタルカメラ)もリヤカーの上に乗ると識別できませんね。試行錯誤の結果、ワゴン車の中にカメラを上からゴムで吊して撮影しました。映画を見て、アッこの場面だと分かった方はご一報下さい。

ラストシーン公式ページ
htttp://www.omuro.co.jp/lastscene/