金井雄二のホーム・ページ「独合点」(ひとりがてん)です。
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![]() 「猫がまるくなって眠っている」 (消しゴム版画です) 更新! 7/5 |
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夜から朝へ
くぐもった声の裏側で、ぼくは眼を覚ました。
まず腕を見た。それから腹を見た。そして足を。どれも自分ではなかった。すべてが硬い殻におおわれていた。それもずいぶんと黒い。立派なものだ。指というものがない。両脇に三本ずつ足がのびている。節から節へとのびた先端には、二股に分かれている鉤爪がある。記憶の中の自分の足とは、異なる足があるということに悲しみを覚えた。カフカという作家が書いた小説、「変身」が浮かんだ。きっとあれは現実のことなのではないかと思った。そしてぼくは頭のなかで考えている。ぼくは・・・という言葉使いより、俺は・・・という言葉を使いたくなったと。俺は強くなった。俺はみせかけの強さに魅かれた。「こいつぁいいや!」笑いたかった。笑ってしまいたかった。笑うしかなかった。だが声はでなかったのだ。声を出そうと思うと、首や胸からギシギシと妙な音だけがした。暗闇のなか、臭いや気配には敏感になれた。頭のほうから自然に感じ取ることができる。不思議な感覚だ。怖くはないし、もう、眠りたいとも思わない。眠ってしまったら、またなにもかも昨日と同じになってしまうような気がして。未練など感じなかった。書物も言葉もいらなかった。そう思えると急に心が平らになった。心地よくもなった。匂いを感じる。甘酸っぱい匂いだ。これは雌の匂いだ。しがみついている場合ではない。背中に力をいれた。硬い殻が二枚開き、薄い羽をおもいっきり開いた。
沈み込むような雲がある。そのすきまから光がもれる。
どんよりと頭も重いが
俺は朝がきた。
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