参考文献
世界むかし話 イギリス
訳者 三宅 忠明
出版 株式会社 ホルプ出版
出典 F.A Steal: English Faierry Tales 1962
   K.Briggs.@L.T.Ruth:Folk.Tales of England 1966
 などの 民族学者の取材したむかし話より







むかし、むかし、あるところにジャックいう男の子が住んでいました。お父さんは病気で寝たっきりで、優しいお母さんが毎日早くから毎晩遅くまで、せっせと働き、病気の夫と小さな息子を養っていました。家にはミルクをたっぴりと出す牛をかっていましたので、ミルクを売ったり、バターを作ったりしていました。それで、夏の間は困ることはありませんでした。しかし、冬がくると、牧場の草は冷たい霜をのがれて、暖かい土の中にもぐってしまいました。お母さんは、ジャックに、牛に食べさせる草を探しにいかせて、ジャックはたいてい空っぽの袋を持ち帰るだけでした。 ジャックは、どんなものを見ても驚いて目を見張るような子でしたから、よく仕事を忘れてしまいます。そういうわけで、とうとう牛はキルクを1滴も出さなくなってしまいました。人の良い働き者のお母さんは、エプロンで覆って泣き出しました。 ジャックは、お母さんが大好きでした。それに、もうこんなに大きくなっているのに、なんのお手伝いもできないことで、ひどく心を痛めていました。「元気をだしてよ、母さん。ぼくもどこかに働きに出るよ。」 ジャックは 一所懸命働くつもりでいることは わかりましたが、お母さんは首を振りました。「前にもやりかけたことがあるじゃないか、ジャック。でも、もう誰もお前を使ってくれないよ。おまえはほんとにいい子だけど、時々何をしでかすかわからない時があるからね。しかたがないから、牛を売って、しばらくそのお金で暮らしてみようよ。出なくなってたミルクを待っていてもしょうがないからね。」ジャックもすぐに賛成しました。「それがいいよ、お母さん。善は急げというから、今日は市のたつ日だったね。僕が売りにいっていくるから、楽しみにまっていてよ。」「でもねー」お母さんは何か言いたそうです。ジャックは笑いながらいいました。「きっと高く売ってみせるよ。」「ちょうどその日は洗濯する日だったし、お父さんの具合もあまりよくなかったので、お母さんはしかたなくジャックをいかせることにしました。「10ポンド以下じゃだめだよ。」と、お母さんは、でかけて行くジャックに大きな声でいいました。10ポンドだって。いや、20ポンドには売ってみせるぞ。そうだ、20ポンドの金貨を持って帰ろうー。 余分に入ったお金でお母さんに何か買ってあげようかと考えていた時です。道端にいた、見慣れぬ小さな老人がジャックに声をかけました。「おはよう、ジャック。」「おはようございます。。」と、ジャックは丁寧におじぎをしましたが、どうして自分の名前を知っているのだろう、不思議に思いました。「ところで、どちらにおでかけだね。」と、妙な老人が尋ねました。ジャックは又もビックリしました。−ビックリするにはいつもの事ですがねーどうしてこの老人が「ぼくの行く先を知りたがるのだろう。でも、いつも礼儀正しいジャックはて丁寧に答えました。」「市場にこの牛を売りに行くところですよ。できるだけ高く売りたいのです。」「そりゃいい、そりゃいい。」と老人はくすくすと笑いながら言いました。「おまえにうってつけの仕事のようだね。ところで豆を五つ数えるにはどうすればいいのか。」「両手に二つずつもって、口に一つふくんだら五つにいなるでしょう。」と、ジャックは即座に答えました。頭の回転はとても早いのです。「そのとおり、そのとおり。」妙な老人が言いました.そしてその妙な顔に妙な笑いを浮かべました。「この豆は、一晩まいておくだけで、あくる朝には、天まで届くくんだよ。こんどはあまりの驚きに、ジャックは口をきけません。目をまん丸くして老人を見つめました。「天までですって。」しばらくしてやっとジャックが言いました。だって、ジャックが一番不思議に思っていたのは、この「天」だったのですからね。「そう天までだよ。」と、老人はうなずきながら言いました。「これはおまえさんの方が得だよ。ジャック。わしは嘘はつかないよ。もし天に届かなかったら、あすの朝、ここで待っててくれ。牛は、おまえさんに返すことにしよう。それでどうかね。」「いいとも。」と、ジャックは大きな声で、言いました.もう他の事など考えてはいられません。、ところが、そう言ったとたんに、目の前から牛もあのみょうな老人の姿も消えてしまいました。誰もいない道が続いているのです。「両手に二つずつと口に一つ。」と、ジャックは、繰り返しました。「確か僕は、そう言ったっけ。だからそうして帰ろうっと。うまくいったなあ。それに、もしもあのじいさんのいうことが 嘘だったら、明日の朝、ちゃんとここで牛は、返してもらえるんだからな。」そこで、口笛をふきふき、口に入れた豆をしゃぶりながら、意気ようようと家に帰ってきました「随分遅かったじゃないか。」お母さんが と、お母さんが言いました。玄関の所で、今か今かと、ジャックの帰りを待っていたのです。「もう日が暮れているんだよ。でも、牛は売れたようだね。早く教えておくれ。いくらで売れたんだね。」「聞いたら、母さんびっくりするよ。」「気をもたせるんじゃあないよ。」人に騙されやあしないかと、1日じゅう、ひやひやしてたんだからさ。ね、いくらだい。10ポンド、それとも15・・・。、20ってのは無理だろうけどね。」そこでジャックは、と得意そうに豆をさしだしました。「ほら、これをもらったんだよ。こんな得な話ってないだろう。」今度はお母さんがあっけにとられてしまいました。「な、なんだって。この豆だけかい。」お母さんはこれだけいうのがやっとでした。「そうだよ。」とは言ったものの、ジャックは自分の考えが間違っていたのかもしれないと思い始めました。「で、でも、これは魔法の豆なんだよ。たったひと晩まいておくだけでね、て、天まで届くんだよ。あ、イタイッーそ、そんなにぶたないでよう。」 お母さんは、もうすっかり腹を立ててしまいました。そしてジャックを叱るだけ叱り、ぶつぶつと、豆を窓の外に投げ捨ててしまいました。かわいそうに、その晩ジャックは、夕食も貰えませんでした。これがあの豆の魔力のせいだとしたら、もう魔法などこりごりだな、とジャックは思いました。それでも、体は、元気だし、いたって呑気なジャックは、そのうちにぐっすりと眠ってしまいました。 あくる朝、目を覚ますしたジャックは、月夜かなと思いました。だって、部屋にある物が何もかも、ひどく青っぽいのです。つぎに小さな窓の方を見ました。窓の外には、緑の葉がびっしりカーテンのようにはりついています。ジャックは、ベットからはね起きるが早いか、上着もつけないで、今まで見たこともないほどの大きな豆の木をの登って行きました。あの妙な老人の言ったことは本当でした。お母さんが庭に投げ捨てて豆の一つがうまく根をはり、夜のうちにこんなに大きく伸びていたのです。いったいどこまで・・・・・・。天まで伸びているのだろうか。ジャックは、なにがなんでも天を見たいと思いました。だから、どんどん、どんどん、昇り続けました。登るのは とても簡単んでした。と、いうのは、太い幹の両側にはいっぱい葉のついた枝が、出ていますから、息切れしだしました。そこで、途中で二度ほど、休んで、また登り、そろそろまた休もうと思ったときでした。ふと見ると、目の前に、広くきらきらと輝く白い道がどこまでものびているではありかせんか。 ジャックは、豆の木から離れて、その道を歩きはじめました。どんどん、どんどん、歩いていくと、大きな白い玄関のある、高い、きらきら光る白い家にたどり着きました。その戸口には ものすごく大きな人が、麦がゆの鍋を手に持って立っていました。ジャックは、夕べ夕食を食べていなかったので、もうお腹はペコペコです。その麦がゆの鍋を見ると、ジャックは丁寧に言いました。
「おばさん、おはようございます。朝ごはんを少しいただけませんか。「朝めしだって。」この女の人は、実は鬼のおかみさんだったのです。「おまえさんに朝めしをやっている間に、おまえさんの方が、朝めしにされちまえうよ。だって、あたしの亭主がもうすぐ帰ってくるんだからね。
亭主は、おまえさんのようにまるまる太った男の子を焼いてたべるのが、一番楽しみなんだから。」 ところが、ジャックはそんな言葉には驚きません。食べものがほしい一心から、続けてこう言いました。「朝ごはんを食べれば、それだけ太りますよ。」これを 聞いた鬼のおかみさんは思わずふきだし、ジャックを家の中に入れてくれました。このおかみさんは、見かけの半分も悪い人ではなかったのです。ところが、ジャックがおわん1ぱいの麦がゆとミルクを飲み終わった時、家中が激しくゆれ出しました。鬼が帰ってきたのです。ドシン、ドシン、ドシン「フライ鍋の中に隠れるんだよ。さあ、早く。」と、鬼のお母さんが言いました。フライ鍋の鉄のふた蓋が閉じれると同時に、鬼が入っててきました。ジャックは、蓋についている小さい空気穴から外をのぞきました。 なるほど、それは大きな鬼でした。腰ひもに、3頭のヒツジをぶら下げています。鬼は、それをテーブルの上に投げ出すと、「それ、、こいつを朝めしに焼いてくれ。今朝のに獲物はこれだけだ。全くついていない。フライ鍋はあったまっているだろうな。」といって、フライなべに近づいてきます。もう、中にいるジャックは冷や汗がたらたら流れ、生きたここちもしません。「焼くんだって。」と、おかみさんがいいました。「そんなことをしたら、こんなちっちゃなヒツジなぞ、こげて炭になっちまうよ。煮る方がいいさ。」 そしておかみさんは、ヒツジをにる支度をしました。ところが、鬼のほうは、部屋の中をくんくんかぎはじめ、「こりゃあ、ヒツジの匂いじゃあないぞ。」と、うなるようにいいました。それから、ものすごく顔をしかめ、あの恐ろしい鬼の歌を歌い始めました。「フィー、 ファイ、フォー、フォン イギリス人の血の匂い 生き死になどはどうでもいい 骨を粉にしてパンを焼く」「ばかをいうんじゃないよ。」とおかみさんが言いました。「おまえさんが夕べ食べた男の子の骨で今スープのだしをとっているところだよ。さあ、さあ、料理ができた。お食べよ。」そこで、鬼は3頭のヒツジをたいらげ、それがすむと大きなカンの戸だなから金貨がいっぱい入った袋を3つ取り出しました。これをテーブルの上に置くと、そのなかみを数え始めました。 おかみさんは朝食の後片付けにとりかかりました。そのうち、鬼は眠たくなったらしく、こっくりこっくりし始めました。やがてもの凄いいびきが聞こえてきました。あまりのもの凄さに、家中がぐらぐらとゆれるほどです。 そこでジャックは、フライ鍋からぬけだし、金貨の入った袋をつかみました。それからは足音をしのばせて家の外に出ると、あとはまっすぐのきらきら光る白い道を、いちもくさんにかけだしました。やがて豆の木のところにくると金貨の袋が重すぎて思うように下りられません。そこで、袋を下に投げておいて、その後から下りることにしました。下におりてみると、ちょうどお母さんが庭じゅうにちらばった金貨をせっせと拾い集めているところでした。「おったまげたね。いったい、おまえはどこにいってたんだい。ほれ、金貨の雨が降ってきたんだよ。」「そうじゃあないよ。僕がね、天にいって・・・」と、いいながら、ジャックが豆の木のことを話そうとして振り返ってみると、これは どうしたことでしょう。豆の木はもうかげも形もありません。そこでジャックは、今までのことが何もかも魔法のせいだったことを知りました。「それから、しばらくは、金貨のおかげで楽しく暮らしました。寝たっきりのお父さんにも、おいしいものを食べさせてあげられるようになりました。 ところがそのうちに、そのお金もなくなる日がきました。お母さんは悲しそうな顔をして、最後の金貨をジャックの手に渡しながら言いました。「大事に使うんだよ。もうこれっきりだからね。これがなくなったら、私たちは飢え死にするしかないんだよ。」その晩、ジャックは 夕食を食べないで眠ることにしました。今度は、自分でそうしようと思いました。お金が入るあてがナないのに、使うことは、できません。 ジャックは、大きな男の子になりながら、お金もうけもしないでごはんを食べるなんて、なんだか恥ずかしいように思ったのです。でも、その晩はぐっすりと眠りました。ところが、目が覚めた時のことです。まあ、なんということでしょう。部屋じゅうがすっかり青くなっていると思ったら、また、あの豆の葉がカーテンのように窓をおおっているのではありませんか。夕べのうちに別の豆が根をはって、大きくのびていたのです。それに 気がついたときには、もうジャックは豆の木につかまっていました。 今度は、のぼるのに前ほど時間がかかりませんでした。あのまっすぐにのびた白く光る道を行くと、まもなくあの高い白い家にやってきました。このときも玄関口に鬼のおかみさんが、片手に麦がゆの鍋をさげて立っていました。前よりジャックの度胸はすわっていました。「おはよう、おかみさん。何か食べるものをいただけませんか。夕べごはんを食べていないので、おなかがペコペコなんです。」「だめだね。帰っておくれ。」と、鬼のおかみさんが言いました。「前におまえさんのような男の子に朝ごはんをやったとき、うちの人の大切な金貨の袋がなくなっただよ。そういえば、あのときの子はおまえだね。」「それがぼくであったかどうかは、」と、ジャックは笑いながら言いました。「朝食をいただいてから話ますよ。それまでは何も言えませんがね。」 これを きくと鬼のおかみさんは、本当のことが知りたくてたまらなくなり、 ジャックに麦がゆのおわんを渡してくれました。ところが、まだ半分しか食べないうちに、あの鬼の足音が聞こえてきました。ドシン、ドシン、ドッシーン「フライ鍋に隠れるんだよ。早く。」とおかみさんがいいました。「あの人が眠ってから聞くからね、」 ジャックが蓋についた空気穴からのぞくと、こんどは鬼が大きな三頭の牛を腰にぶらさげているのが見えました。「今日ははまずまずだったよ。おまえ。」と鬼が大声で話すので、家がぐらぐらと揺れました。「さあ、早くこいつを焼いて朝めしをつくってくれ。フライ鍋はあったまっているのだろうな。」鬼は自分で確かめようと、こちらに近づいてきました。おかみさんがあわてて叫びました。「焼くって、そんなことをしたら、おまえさん、待ちきれないよ。煮たほうがいいだろう。ごらんよ、火がこんなにもえているんだからね。「ふーん、そうかなあ。」と、鬼は少し不満そうです。それからまた部屋をくんくんかぎまわって、あの鬼の歌を歌い始めました。「フィー、 ファイ、フォー、フォン イギリス人の血のにおい 生き死になどはどうでもいい 骨を粉にしてパンを焼く」「ばかを言うんじゃないよ。」とおかみさんが言いました。「こないだおまえさんがたべた男の子の骨じゃないか。私がごみ箱に捨てたんだよ。」「ふーん。」鬼はまだ不服そうですが、とにかくおかみさんの煮た牛を食べ、それから言いました。「魔法の卵を生むめんどりを持ってきてくれ。金を見たいんじゃ。」すると、おかみさんは、とさかだけ赤く光った大きなめんどりを持ってきました。おかみさんはめんどりをテーブルの上に置くと、朝食の後片付けを始めました鬼はめんどりにむかって言いました。「産め!」すると、めんどりは、とっても美しいピカピカ光る金の卵を産んだのです。「あんまり きれいじゃねえな。ペンペンどりめ。」鬼は笑いながら言いました。「だが、おまえがいる限り、金に困ることはねえからな。」それから しばらくしてまた言いました。「産め!」すると、どうでしょう。またまた美しい卵がポロリところげ落ちました。ジャックは自分の目が信じられません。でも、心の中ではあのめんどりをもらっていこうと決めいました。そのうち鬼がうとうとしだすと、すぐにフライ鍋から飛び出して、めんどりをわしづかみにしました。それから後はもういちもくさんです。でも、ジャックは一つうっかりしていました。めんどりが卵を産んで巣から離れる時は、いつも コケコッコー、コケコッコウと鳴きますね。そして、このめんどりも、卵を産んだ後でしたから、大きな声で鳴き出したのです。コケッコッコー、コケッコッコーってね。もちろん、鬼は目を覚ましてしまいました。「わしのめんどりはどこじゃ。」と、鬼がどなると、おかみさんが飛び込んできました。二人があわてて玄関口に出てみると、ジャックはもう広い道のはるかむこうに行っていました。手には、羽をばたつかせ、鳴き叫んでいる大きなめんどりの足をしっかりつかんで・・・・・ジャックは、どのように豆の木を伝っておりたのか、よく覚えていません。鳴き叫ぶめんどりの羽で顔を激しく打たれながら、もう無我夢中でした。とにかく地上に下りてきました。するとそこではお母さんが、まるで空が落ちてくるのではないかというような顔をして上を見上げていました。ジャックは地面におりるとすぐに「産め!」と大声を出しました。するとその黒いめんどりは鳴くのをやめて、大きなぴかぴか光る金の卵を産んだのです。 こういうわけで、ジャックの家はすっかり豊かになり、お金で買えるものはなんだって手に入りました。何かがなくなると、ただ「産め!」というだけで、その黒いめんどりがいつでもお金にかえられる金の卵を産んでくれたからです。しかし。しばらく するとジャックには天にはこの他に何かいいものがあるんじゃあないかと思うようになりました。そこで、ある夏の月の夜、晩ごはんはいらないと言って、こっそりと庭に出てみました。そして、大きなじょうろで窓の下にたっぷりと水をまきました。だって、豆はあと二つあるはずだし、水をやればきっと芽を出すと思ったからです。そらから、いつものようにぐっすりと眠りました。 さあ、次の朝になりました。思ったとおり、部屋じゅうがまた青っぽい感じになっていました。これを見ると、すぐにジャックは豆の木につかまりました。そして、いっしょうけんめい上へ上へと、登って行きました。 でも、今度は朝ごはんをくれといえません。鬼のおかみさんも、きっと気づいているでしょうからね。だから、あの大きな白い家の近くのやぶに隠れることにしました。おかみさんは台所の洗い場にいました。そこでジャックはやぶから出て、湯沸し釜の中に隠れました。だれかがいるとわかったら、おかみさんはきっとフライ鍋の方を探すと思ったからです。そのうち、あの足音が聞こえてきました。ドシン、ドシン、ドッシーン湯沸し釜の蓋の隙間からのぞいて見ると、鬼が腰に三頭のお牛をぶらさげて帰ってきました。ところが、この時は家の中に入るとすぐに、大声で歌い始めました。「フィー、 ファイ、フォー、ファン イギリス人の血のにおい 生き死になどはどうでもいい 骨を粉にしてパンを焼く」湯沸し釜の蓋は、フライ鍋の蓋のようにピッタリとしまりません。だから、鬼は犬のように鼻をくんくんならしました。「そういえばそうだね」とおかみさんまで言いました。「きっと、おまえさんのお金の袋とめんどりを盗んだ、あのけしからん男の子だよ。きっとフライ鍋の中だ。」ところが、おかみさんがフライ鍋の蓋を取ってみると、ジャックの姿はありません。ただ焼肉の切り身がジュージューしているだけでした。おかみさんは笑い出しました。。「なんだ、ばかばかしい。おまえさんが夕べ捕まえてきた男の子じゃないか。私がおまえさんの朝食にと思って、今料理してたんだよ。焼いた肉と生きた肉の区別ができないなんて、おまえさんも私も落ちぶれたもんだね。マア、朝食をお食べよ、おまえさん。」鬼は、その男の子をうまそうに食べました。それでも満足しません。ときおり、あの「フィー、 ファイ、フォー、ファン」の歌を歌いだしては、戸棚をさがしたりします。ジャックは もう怖くて怖くてたまりません。湯沸かし釜の中を見られたらと思うと、冷や汗でぐっしょでした。 でも とうとう湯沸しの中まで思いつかなかったらしく、鬼が食事がすむとまたおかみさんをよびました。「おい、あの 魔法のハープをもてきておくれ。音楽をききたくなった。」おかみさんは、小さなハープを持ってきてテーブルの上に置きました。鬼は いすにもたれたまま、大儀そうに言いました。「歌えっ!」するとどうでしょう。ハープが一人でに歌い始めました。それは、ジャックがあまりの美しさに、しばらく怖さを忘れたほどでした。鬼もあの「フィー、 ファイ、フォー、ファン・・・」を忘れて、そのうち眠ってしまいました。ところが、どうしたのか、その時に限っていびきをかきません。ジャックは、ハツカネズミのように、そっと湯沸かし釜からはいだすとよつんばいになってテーブルに近づき,そっと体をおこしました。それから魔法のハーブをつかみました。さっきから、これもいただこうと心に決めていたのです。ところが、それに手をふれたときです。ハープがいきなり大声をあげました。「ご主人さま、ご主人さま。」もちろん鬼は目を覚ましました。すると、ジャックがハープをかかえて逃げ出そうとしています。こいつめっとばかり、鬼はジャックを追いかけました。さあ、たいへん、ものすごい競争になりました。ジャックは曲がったり、ジグザグに走ったり、野ウサギのように身をかわしながら、やっと豆の木の枝にたどり着きました。しかし、鬼の方もたった十メートル後ろまで来ています。でも、そんなことを考えている暇はありません。ジャックは豆の木に飛びつきました。そしてあたふたと下におり始めました。ハープはあいかわらず、「ご主人さま、ご主人さま。」とかん高い声で叫び続けます。まだ、4分の1もおりていないとき、「豆の木がものすごくゆれ、ジャックは今にもふり落とされそうになりました。鬼が豆の木を伝わっており始めたのです。その重さのために、まるで、嵐の中の小枝のように揺れました。それでも、ジャックは必死になって下におりながら、「母さん、母さん、おのだよ。おのを持ってきてよう。」と叫びました。運のいいところに、ちょうどその時、お母さんは裏庭でまきを割っていました。そして、今度こそ空が落ちたに違いないと思って、おもてにまわってきたのです。ジャックの足が地面についたのは、ちょうどその時でした。ジャックはハープを下に置くと、斧を持って力いっぱい豆の木を切りつけました。豆の木は風にそよぐ麦の茎のように、大きく揺れました。「こら、なにをする。」と、鬼が豆の木にしがみつきながら叫びました。「何をするって、そんなこと知っちゃいないよ。」ジャックがもう一度、力いっぱい切りつけると、豆の木がドーシンと倒れ、鬼はまっさかさまに落ちてきました。そして地面で頭を割って、そのまま死んでしまいました。 それからのちは、みんな幸せそのものでした。お金はありあまるほどあり、病気のお父さんが退屈すると、ジャックがあのハープを取り出して、「歌え!」と言うと、ジャックは、前ほど驚いて目をみはることもなくなり、りっぱに役立つ大人になりました。それにしても、豆がもう一つ庭に残っているはずですね。きっとそのうちに芽が出ることでしょう。そして今度はどんな子供がその木を登って行くのでしょうね.


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イギリスの アイルランドの民話
「ジャックと豆の木」
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監修 幼児教室くるみ会
    (幼児教室 くるみKai)

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