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Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER
CRACKDOWN Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce
Sterling Phreaking and Hacking
自由な文書(ただし商用利用を除く)
フリーキングとハッキング
電話がお金を生み出すようになって以来、電話会社をだまして、ただでサービスを利用しようとする人々はつきなかった。電話のこそ泥の数は、知的なチャレンジとしてシステムを探検する「電話フリーク」を凌駕していたし、ニューヨーク都市圏では(ながいことアメリカの犯罪の最前線だったが)毎年15万をこえる電話機への物理的な破壊がある。注意してみてみれば、現在の公衆電話は小さい要塞のようなものであることがわかるだろう。にせコイン、電気ショック,
コインの形のアイスのかたまり、かなてこ、磁石, 錠開け道具、空き缶爆弾に耐えられるように何回も何回も注意深く設計しなおされてきた。公衆電話は非友好的で強欲な人々の世界をサバイバルしなければならず、その結果いまの電話機はサボテンほども進化したものになっている。
電話ネットワークはコンピュータネットワークより以前に存在していたので、「電話フリーク」と呼ばれる違法者たちは、「コンピュータハッカー」と呼ばれる違法者たちに先んじていたわけだ。実際、今日ではちょうど電話とコンピュータの違いが曖昧になっているように、「フリーキング」と「ハッキング」の間の境界もかなりぼやけたものとなっている。電話システムはデジタル化されてきており、コンピュータは電話線を使って「通話」するようになっている。その上よくないことに、これはシークレットサービスのジェンキンズ氏の話の肝心な点で、ハッカーのなかに盗みを覚えるものが、盗人のなかにハックを覚えるものがでてきたのだ。
境界は曖昧になったが、まだ「フリーク」と「ハッカー」の幾つかの有用な行動上の違いを見出すことはできる。ハッカーたちはシステムそれ自体に熱心に興味をもち、機械と関わることを楽しむ。「フリークたち」はより社交的で、他の人間と手っ取りばやく、金をかけずにこっそり連絡をとるために、雑にすばやくシステムを操る。
電話フリークたちは「ブリッジ」をこの上なく愛している。ブリッジとは10人から12人の仲間たちが話し合う違法な会議で、西海岸から東海岸まで何時間にもわたって、もちろんだれか他人のつけ、できれば大企業の支払いで電話をかけつづけることである。
電話フリークの会議が続いているあいだ、人々は途中で抜け出したり(つまり単に、仕事や学校やこもりのために出て行って、受話器を置くだけだが)、もし可能なら他のどこかの大陸からも、新たな人々に電話がかかり、参加するように誘われる。技術的なこぼれ話、自慢話、ほら話、妄想、うそ、奇妙な噂、そしてひどいゴシップが全て自由に交わされる。
電話フリーキングの一番低レベルなものは、電話の課金アクセスコードを盗むことだ。電話代を誰か他人の盗んだ番号につけることはもちろん、電話サービスをただで使うもっとも簡単な方法で、実際なんら専門的な技術を必要としない。この詐欺は、特に実家から離れて暮らし、お金をもってない孤独な人たちのあいだでは広範囲に行われている。コード泥棒は大学の寮や、軍隊の基地、そして悪名高いところではロックバンドの裏方たちのあいだで盛んだった。最近では、コード泥棒はアメリカの第三世界の人々のあいだに急速に広まっている。彼らはカリブ海や、南アメリカやパキスタンへの大量の長距離電話の不払いの請求書を山積させている。
電話のコードを盗むもっとも簡単な方法は、被害者が公衆電話でコード番号を打ち込むのを肩越しに見ることだ。このテクニックは「肩越しに盗み見る」と呼ばれていて、特に空港、バスターミナルや駅でよく行われている。そのコードは、数ドルで盗人が売りさばく。コードを悪用する買い手は、コンピュータの専門知識なしに、ニューヨークやキングストン、カラカスの自分の母親に電話をして、莫大な支払を免れる。この原始的なフリーキング行為による損失は、コンピュータに侵入するハッカーたちによる金銭的な損害をはるかに上回るものである。
1980年代の中盤から後半にかけて、電話会社のセキュリティがより厳しい手段を講じるまで、コンピュータで課金コードを盗むのは簡単で、事実上フリークやハッカーのデジタルアンダ−グラウンドでは、どこでも行われていた。コンピュータをプログラムして、使えるコードに当たるまでランダムにコードを試せばよかった。この簡単なプログラムは、アンダーグラウンドではどこでも手に入る。コンピュータを一晩動かしておけば、一ダースやそこらの使えるコードに当たるだろう。これを何週間もくりかえせば、盗んだコードがたくさん手に入る。
現在では、コンピュータで何百もダイヤルすれば数時間のうちに発見され、すぐに逆探知される。もし盗まれたコードが何度も悪用されれば、これもまた数時間のうちに見つかる。しかし1980年代には何年ものあいだ、盗んだコードを教えるのが、一人前のハッカーたちの基本的なエチケットのようなものだった。侵入者としての名声を確立する一番簡単な方法は、何度もランダムにダイヤルしてコードを盗み、それを「コミュニティ」で使えるように提供することだった。コードは盗むのも使うのも、安全なベッドルームから見つかったり罰せられたりすることをまったく恐れず、安々と簡単にできた。
コンピュータや電話回線によるモデムがアメリカの家庭に大量に導入される前は、電話フリークたちは、自分たちの特別な電話通信のハードウェア小物、有名な「ブルーボックス」を持っていた。この騙すための機械は(現在では、電話システムのデジタル化の進化で、どんどん使えなくなっているが)長距離回線に自由にアクセスできるようにシステムをだますことができた。システム自身の、2600ヘルツの信号を真似することで、だましたのだ。
スティーブン・ジョブスとスティーブ・ウォズニックは、アップルコンピュータ株式会社の創始者だが、かつてカリフォルニアの大学の寮でブルーボックスの販売に手を染めていた。大多数のものにとって、フリーキングの初めのころには、ブルーボックスは「盗み」ではなく、単に電話の余剰能力を実害なしに利用する(こっそりだが)ふざけた方法だとみなされていた。結局、長距離回線は「そこにあるわけだし...」、じっさい誰に害があるっていうんだ? というわけだ。もしシステムにダメージを与えているわけではなく、重要なリソースを使い切ってるんでもなければ、そしてもし誰もあなたが何をやっているのかわかりゃしないのなら、あなたはどんな実害を及ぼしているんだろう? 正確にいえば、いったい何を「盗んだ」というのだろう? もし森で木が一本倒れたとしても誰もそれを聞いてなかったら、その音になんの価値があるのだろう? 今でもそれは、かなりあやふやな問題ではある。
ブルーボックスは、電話会社にとっては冗談とはいえなかった。とくに「ランパート」というカリフォルニアの過激な雑誌が、1972年の6月にミュートボックスの製造に必要な回路図を掲載したときは、その雑誌は警察とパシフィックベルの電話会社の社員によって押収された。ミュートボックスとは、ブルーボックスの一種で、それをつかえば長距離電話を受けたときに、かけた側に課金されなくなる。皮肉たっぷりな「君の自宅の電話会社を取り締まる」というタイトルのランパートの記事で、この機械は詳細に説明されていた。この記事の出版は、カリフォルニア州刑法502.7項に違反しているとされた。その法律は、電話をだます機械の所有と「電話料金の課金を避ける目的の、いかなる機械、器具、装置の設計図や説明書」の販売を禁じるものである。
ランパートは発禁になり、売店でも差し押さえられ、その結果として収入不足で、雑誌は廃刊へと追い込まれた。これは自由な出版物の発行にとっては不吉な前兆だったが、電話会社が過激な雑誌を廃刊においこんだからといって、当時は真剣に受けとめられることはなかった。1970年代の自由な発言ができるカリフォルニアでさえ、電話会社が知っていることについては、どこかしら神聖なものがあると広く考えられていた。つまり電話会社は、そのような違法な情報が流出することを防ぐことで、自己防衛する法律的、道義的な権利があると。ほとんどの電話会社の情報は、あまりに「専門化」されているので、ふつうの一般大衆にはほとんど理解できない。そしてもしその雑誌が出版されていなくても、何ら困ることはなかっただろう。そのような題材を出版することは、自由な出版の妥当な役割とは考えられていなかったからだ。
1990年には、同じように電話会社の主導で、フリーク・ハッキング電子雑誌の「フラック」への攻撃があった。「フラック」の裁判はハッカー取締りの主要な問題となり、大論争をまきおこした。「フラック」も少なくとも一時的に廃刊へと追い込まれたが、今回は電話会社も法を施行する協力者も、その行動により大きな対価を支払うこととなった。フラックの事件は、のちほど詳細に見てみることとしよう。
社会的な行為としての電話フリーキングは、現在でも盛んに行われ続けている。今日、電話のフリーキングは、よく知られていて恐れられている「コンピュータハッキング」の行為よりも、ますます盛んになっている。新しい形のフリーキングが急速に広まっていて、こみいった電話サービスの新たな弱点を追い求めている。
携帯電話はとくに攻撃をうけやすい。そのチップは偽のIDを発行し、支払いを回避するようにプログラムしなおされる。そうすることで警察の盗聴も避けられるので、携帯電話のごまかしはドラッグのディーラーのあいだで盛んである。偽の携帯電話を使った「通話の切り売り」は、車の後部座席でやることができ、実際に行われていて、地域の通話網のある通話領域から別の通話領域へと移動して、盗んだ長距離電話サービスを売りさばいている。それはまるで近所のトラックのアイスクリーム屋の狂った電子版といったような趣だ。
大企業の電話のPBX(Private branch-exchange)システムも侵入することができる。フリークたちは地元企業に電話をかけ、その電話システムに侵入してハッキングすると、その会社のPBXを使って公衆網へとかけなおすのだ。するとその長距離通話の代金は、大企業の分にもぐりこむことになる。このテクニックは、「電話をまわす」という名前で知られている。「電話をまわす」ことは高くつく。特にフリークたちは集団で行動し、話をやめないのだからことさらだ。たぶんPBXの詐欺の最悪の副産物は、被害にあった企業と電話会社がお互いに盗まれた通話の損害賠償をめぐって訴えあって、貧乏なフリークたちだけではなく、豊かな弁護士をも富ませるということだろう。
「ボイスメールシステム」も悪用される。フリークたちはこれらの複雑な機能をもつ留守番電話に自分たちの専用の場所を確保し、電話コードの取引や違法な技術の知識の交換に使っている。ボイスメールの悪用は企業に直接損害を及ぼすわけではない。しかし、留守番電話の空いてるはずの場所がフリークたちの熱心なおしゃべりやわけのわからないオタク用語でのあいさつで埋め尽くされているのを見つけたら、ほとんど根拠のない強い不快感と恐怖に襲われることだろう。
さらに悪いことに、フリークたちはボイスメールシステムの「クリーンアップ」を行なおうとすると、激しく反撃することも知られてきている。おとなしく自分たちのプレイグラウンドから追い出されるよりむしろ、会社の担当者に仕事中(あるいは家にいるときに)電話をし、声高にただでボイスメールを使わせろと要求するのはありそうなことだ。そんな脅しも、脅された被害者にしてみれば深刻なものである。
一般の人々へのフリークたちの反撃はまれなできごとだが、ボイスメールシステムはとても魅力的で、攻撃に弱いので、ボイスメールシステムに怒り狂ったフリークたちが出没するのは冗談ではすまされない。かれらは、正当なメッセージを消すこともできるのだ。もしくはプライベートなメッセージを盗み聞きしたり、あざけりやひわいなことばを録音していやがらせをしたりもできる。ボイスメールのセキュリティを自由にあやつり、正当なユーザーをしめだしたり、システムを完全にダウンさせることさえできることが知られてきている。
携帯電話の通話、コードレス電話、船舶の電話はどれもまた、さまざまな受信機で傍受することができる。このような「受動的な傍受」は今日爆発的に広がっている。技術を利用して他人のコードレス電話や携帯電話の通話を盗み聞くことは、今日フリーキングのなかでも、もっとも急速に拡大している。盗み聞きは力への欲望に強く訴えかけ、被害者より技術的に優越しているという感覚をもたらしてくれる。盗聴は、そのほかの人を誘惑する悪行とともにはこびっている。単にエッチなものをかぎまわるのがもっともよくあることだろう。ただ軽率にもクレジットカード番号を電話でいうと、それが録音され、盗んで使われることもある。そして他人の通話を盗聴することは(積極的な盗聴だろうと、受動的な傍受だろうと)、脅迫、産業スパイや政治的な陰謀へとつながりやすくなる。
電話の詐欺、つまり電話サービス泥棒はコンピュータにこっそりしのびこんだりするより、ずっと金銭的に大きな損害をもたらすことは何度も強調してもしたりない。ハッカーたちはたいがい若い郊外にすむアメリカ人の白人男性で、何百といった単位だが、フリークたちは男女、国籍、年齢、民族をとわず、何千といった単位で栄えている。