『ハッカーを追え』の翻訳。特に誤訳、誤字などの指摘があったら、メールでもいただければ。

太字は英文のポップアップつき。


Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER CRACKDOWN  Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce Sterling  Boards: Core of the Underground

自由な文書(ただし商用利用を除く)

掲示板:アンダーグラウンドの核心

ハッカーたちは通常、生活の糧のためにあくせくする必要のないティーンエイジャーや大学生だ。かなり裕福な中流階級の出身で、激しい反実利主義者でもある(ただ、コンピュータ機器については例外だが)。単に金儲けのために行動するやつは(力、知識、地位に貪欲なものと対照的に)、すぐに度量の狭い石頭で、その関心は堕落した下劣なことにしかないと決めつけられる。1970〜1980年代に成長した若いデジタルアンダーグラウンドのボヘミアンたちは、一般社会には金権政治家の堕落があふれ、大統領をはじめてとしたすべての地位が売りに出ていて、金をもってるやつがルールを決めてると考えていた。

おもしろいことに、対抗する側にもこのような態度を遊園地のゆがんで見える鏡にうつしたようなイメージがある。警察もまたアメリカ社会においてはきわめて反実利主義のグループで、単に金のためではなく、公共サービス、正義、警官魂、そしてもちろん自分たちの専門的な知識と権力をほこりに思うことで動いている。とくに、警官とハッカーのあいだのプロパガンダでは、いつも相手側がけちな金儲けをたくらんでるといった怒りに満ちた主張がくりひろげられてきた。ハッカーは、電話フリークを訴追する検察官は、いつも電話会社の弁護士といったような楽な仕事をつりあげようとしてるし、コンピュータ犯罪の警官は、民間会社の給料のいいコンピュータセキュリティのコンサルタントで稼ごうとしているとあざ笑っている。

警官にしてみれば、すべてのハッキング犯罪はかなてこで電話機から金を盗むのと同じだ。コンピュータ侵入による「金銭的損失」の主張は、かなり誇張されていることで悪名だかい。コンピュータから無断で文書をコピーする行為は、会社から、たとえば50万ドル相当の盗みをおこなっていることと道徳的にみれば等しい。ただ、ティーンエイジャーでコンピュータに侵入し、この「秘密の」書類をもつものが、明らかにそんな値段で売りさばいたことはなかったし、どうやって売っていいかもわからなかっただろう。ありそうなことは、そもそも自分が何を持っているかさえわかっていなかったということだ。その盗みから一セントだって利益をあげちゃいないのに、道徳的には教会の献金をくすねて、ブラジルへ高飛びしたのと同じだとみなされているのだ。

警官は、すべてのハッカーが盗人だと信じたい。アメリカの司法にとっては、知るのを禁止されていることを知りたいからという理由で投獄するなんてことは、間違っていて耐えがたい行為である。このアメリカにおいては、制限された情報を守るために投獄するなんてことよりは、他のどんな口実でもましになる。しかしながら「情報を規制する」ことは、ハッカーたちとの戦いにおける本質的な部分でもある。

このジレンマは、「エマニュエル・ゴールドスタイン」の注目をあつめる行動の例をみればよくわかる。彼は、「2600:ハッカー季刊誌」の編集兼発行者だ。ゴールドスタインは70年代にニューヨーク・ロングアイランド州立大学の英語専攻の学生だったが、大学のローカルラジオ放送に関わっていた。エレクトロニクスへの興味をかきたてられ、イッピーの「TAP」サークルにたどりつき、デジタルアンダーグラウンドに入っていった。そこで彼は自称テクノネズミ(techno- rat)になったわけだ。彼の雑誌では、コンピュータ侵入や電話「探索」のテクニックを扱うとともに、電話会社の悪行や政府の失敗をあざわらうかのように暴露している。

ゴールドスタインは、ニューヨークの Setauket 荒れ果てたビクトリア風大邸宅で静かにこっそりと暮らしている。その家は海辺にあり、電話会社のステッカー、流木のかたまり、そしてヒッピーの宿泊所にあるようなガラクタ類でかざりたてられている。結婚せず、まあだらしないといったような格好で、TVディナー(訳注:コンビニ弁当みたいなもの)や詰め物の入った七面鳥を袋から直接とりだして食べ、なんとかやっている。ゴールドスタインはきわめて魅力的なよくしゃべる人物で、愛嬌のある笑顔をみせるが、アメリカの警官が本当に注意しなければならない、情け容赦ない、頑固で、常習的な徹底的にやる面をもっている。

ゴールドスタインはペンネーム(nom-de-plume)、つまりハンドル名をオーウェルの「1984」からとっている。正しくいえば、彼の社会政治的な世界観の真面目さのしるしととってもいいかもしれない。彼は自分ではコンピュータ侵入を行ったりはしないが、積極的にそのような行為をそそのかしたことはある。特に大企業や政府の省に反抗して追いかけられているときには。彼は盗人ではないし、電話サービス泥棒は声高に軽蔑し、システムを探索し、操作することは支持した。たぶん彼のことを表し、理解するのに一番いい言葉は「反体制」というものだろう。

奇妙にも、ゴールドスタインは現代のアメリカに住んでいるが、以前の東ヨーロッパの知識階級の反体制主義者ときわめて似た状況下に置かれている。いいかえれば、彼が恥ずかしげもなく信奉する価値観は、権力者や警官がもっている価値観とは根底からまったく相反するものなのだ。2600においてその「価値」という言葉が意味することは、皮肉、いやみ、パラドックス、そうまったく混乱している。ただ、過激な反体制の方向性だけは疑いようがない。2600では技術力と専門知識は、どんなものでも手に入るものなら、どんな手段をとろうが勇気や大胆さをふりしぼって手に入れた個人のものだと考えられている。アクセスを禁止された装置、法律、システムや知識の自由な拡散は、ルールにしばられない自尊心をもったハッカーなら誰でも容赦なく挑みかかるものだ。政府、企業、その他の顔の見えない官僚組織の「プライバシー」なんて、個人のテクノネズミの自由と自由な意思を犠牲にしてまで守るべきものでないと。しかしながら、現在の日常的な世の中では、政府と企業はともに警察の情報に非常に敏感になっている。それは秘密で、所有権があり、部外秘で、機密の、著作権があり、特許でまもられている、危険で、違法で、非倫理的で、やっかいなもので、もしくはそのいずれでもなければ微妙といっていいものだ。そう考えると、ゴールドスタインは好ましからざる人物で、彼の哲学はどろぼうということになる。

ゴールドスタインの日常生活の状況に、たとえばバクレイ・ハベル(ちなみにハベル大統領は、かつてチェコスロバキアの警察にワードプロセッサーを押収されている)はまったく驚かないだろう。ゴールドスタインは、半ば公然とアンダーグラウンドのデータセンターとして、地下出版で生計をたてている。その一方で、当局は自分たちの明示されたルール、言論の自由とアメリカ合衆国憲法修正第一条を守るべきだと挑んでいる。

ゴールドスタインは、外見も行動もテクノネズミみたいにふるまう。巻き毛を肩まで伸ばし、海賊風の黒の漁師帽をななめにかぶる。彼は、コンピュータの専門家の会議にバンクォーの幽霊のように姿をあらわし、静かに耳をかたむけ、半ば笑みをうかべながらメモをとっている。

コンピュータの専門家はよく公に会議を開く。その会議からゴールドスタインやその仲間を、法律に反したり、憲法違反の行為をおこなわずに追い出すことはとても難しい。シンパたちの多くはきわめて責任ある仕事をしているちゃんとした人々で、ゴールドスタインの行動を賛美していて、こっそり情報を渡している。はっきりとはわからないが、おそらくゴールドスタインの2000人強の読者の大部分は、電話会社のセキュリティ担当者と警察だ。彼らは、2600を定期購読してハッキングの最先端に遅れないようにしなければならないのだ。自分たちが「やつの家賃をはらってやってる」のは、苦痛で歯ぎしりせんばかりだろう。その状況は、アビー・ホフマン(数少ないゴールドスタインのアイドルの一人だ)を喜ばせるものだろう。

ゴールドスタインはたぶん、今日のハッカーアンダーグラウンドを公に代表するもっともよく知られた人物と思われる。警察はかれを、若者を堕落させるオリバーツイストの登場人物のフェイジンのような人物だとみなし、彼については容赦なく悪口を言っている。彼は現状を変えようとうるさく発言し、上手く成功をおさめたのだ。

じっさいに1990年のマーティン・ルーサー・キング記念日の事故のあとに、ゴールドスタインは2600の紙上でなれた手口で傷口に塩をすりこんでいる。「よう、電話フリーカーにとってネットワークの崩壊を見るのは楽しいもんだ」そして楽しげにこう認めている。「ただこれは不吉なまえぶれでもある...AT&Tのやつらは、善意なんだが無知なメディアの助けをかりて、多くの会社が同じソフトウェアを使っていて、いつか同じ問題に直面するかもしれないなんて噂を広めようとしている。間違ってる。これは完全にAT&Tのソフトウェアの欠陥だ。もちろん、他の会社も全く『別の』ソフトウェアの問題に直面するかもしれない。ただそれなら、同じことはAT&Tにもいえるわけだ」

システムの欠点についての技術的な議論をしたあとに、ロングアイランドのテクノネズミは、多国籍企業の何百人という専門職のエンジニアたちに用意周到な批判をあびせかける。「われわれにわかってないのは、AT&Tのような通信分野の大手がどれほどいい加減かってことだ。バックアップはどうしたんだ? 確かにコンピュータシステムはいつでも落ちるもんだ、ただ電話をかけるような人たちは、コンピュータにログインするような人とはわけが違う。違いをはっきりさせようじゃないか。電話システムやその他の基本的なサービスを提供するシステムが『ダウン』するのは許されない。もしテクノロジーを理解せずに信頼しつづけるようだと、同じテーマのいろんなバリエーションにお目にかかれるというわけだ」

「AT&Tは顧客に対して、もしなにか変わった予期しないことがおきたら、すぐさま他のネットワークへと切り替える準備をしておく必要がある。今回のニュースはコンピュータプログラムの欠陥ではなく、むしろAT&T全体の構造の欠陥なんだ」

この、まさにこの人物が、「AT&Tの全体の構造」について「アドバイス」をするなんてその考えこそが、ある種の人にとっては我慢ならないものだ。この限りない犯罪者が、なにがAT&Tの行動として「許され」、なにが「許されないか」を指図するなんて大胆にすぎないだろうか? 特にまさにその問題と同じ号で、一般には利用できない交換機ネットワークのさまざまな信号を作り出すための詳細な設計図を掲載しているのに。

「『シルバーボックス』を一台か二台、市内通話網か長距離通話サービスにもちこんで、どうなるか見てみよう」2600への投稿者「めちゃくちゃにしてやるぜ氏」は、信号ボックスの作り方という記事でこうアドバイスしている。「系統的に試してみて、きちんと記録をとれば、なにか興味深い結果がえられるだろう」

もちろんこれは科学的な方法で、ふつうでは誉められることで、近代文明の成果の一つといってもいい。こういった系統的な知的活動から、実に多くのことを学ぶことができる。ただ電話会社の社員は、こうした「探索」のやり方はまるでダイナマイトの束を池に投げ込んで、池底に生き物がいるかどうかを確かめるようなものだとみなしている。

2600は1984年から定期的に発行されている。BBSも作っていて、2600とTシャツに印刷したり、FAXも受けつけている。1991年の春号では45ページに興味深い発表がされている。「われわれは、このFAX回線に余分な回線が取り付けられていて、電柱につながっているのを発見した(ずっと盗聴されていたんだろう)。こちらに送られてきたFAXも、こちらから送ったFAXも監視されていたんだ」

2600の世界観では、テクノネズミ兄弟(姉妹であることはめったにない)の一団は、真の自由と正直を誇る包囲された先導者である。周りの世界は、企業犯罪と政府の腐敗がひどく進んでいて、善意のある無知で和らげられている混乱のありさまだ。つづけて何号か手にとると、ソルジェニーツィンのような悪夢へと迷い込んだ気分になる。2600にはとことんふざけたところがあるので、いくぶん和らげられてはいるが。

ゴールドスタインは、ハッカーの一斉取締りの標的とはならなかった。ただ取締りについて声高、雄弁、そして公に抵抗し、名声はいよいよ高まった。彼が危険でないとみなしたわけではない。なぜなら彼は危険だとみなされていたからだ。ゴールドスタインは、過去に法律とごたごたしたことがあった。1985年には、2600のBBSのコンピュータがFBIに押収されている。その中のいくつかのソフトが正式に「コンピュータプログラムの形をした侵入用の道具」と認定されている。しかしゴールドスタインは1990年の直接弾圧はまぬがれた。その理由は、彼の雑誌は紙に印刷されていて、憲法の出版の自由の保護に関わる問題だとみなされたからだ。ただこれは「ランパーツ」にもいえることだから、絶対に保証されているというわけではない。ただ実際問題として、2600を裁判所の命令で廃刊に追い込むのは、少なくとも現在では実行できそうにないほど法的な騒動を巻き起こすことだろう。1990年を通して、ゴールドスタインとその雑誌はけんか腰で意気軒昂だった。

じっさい1990年の一斉取締りは、禁止されたデータのコンピュータバージョンのものといっていい。取り締まりそれ自体は、なによりもまず「掲示板システム」に対するもので、掲示板システムは読みにくい、複数形をとらない「BBS」という頭文字で知られていて、デジタルアンダーグラウンドの活力源である。ハッカー一斉取締りにおいて、掲示板こそが警察の戦術と戦略の中心になっていた。

正式には掲示板システムとは、モデムから電話回線をつかってダイヤルアップしたユーザーたちの情報やメッセージを交わすセンターとして動くコンピュータと定義される。モデムもしくは変復調装置とは、コンピュータのデジタル信号を人の耳に聞こえるアナログ信号に、あるいはその逆に変換する装置である。モデムがコンピュータを電話と結びつけ、そしてコンピュータ同士も結びつくこととなる。

大規模なメインフレームのコンピュータは1960年代から接続されていたが、個人が家庭でもっているパーソナルコンピュータが最初にネットワークにつながったのは、1970年代の終わりだった。ワード・クリステンセンとランディ・スエスによって掲示板がつくられたのが1978年の2月にイリノイ州シカゴで、これがパーソナルコンピュータで初めて作られた掲示板システムの名前にふさわしいものと一般には認められている。

掲示板はさまざまなマシン上で動き、さまざまなソフトが使われている。初期の掲示板は、雑なバグだらけのもので、「システムオペレータ」や「シスオペ」として知られている管理者がよく働く専門家として、自分でソフトを書いていた。しかしエレクトロニクスの世界のその他大部分のものと同じように、掲示板も早く、安価に、そしてデザインもよくなり、1980年代を通じてずっと洗練されたものになっていった。そしてパイオニアたちの手から急速に離れ、一般大衆の手へと受け渡されていった。1985年には、アメリカの中のそこらに4000ほどの掲示板があるだけだったが、1990年には、ざっと見積もっても、アメリカ中に30000の掲示板が、海外には数え切れない数千の掲示板が存在した。

コンピュータの掲示板は、規制がおよばない事業だ。掲示板を動かすのは、ざっと手当たり次第の思いつきでできる。基本的にはコンピュータとモデムとソフトと電話線があれば、だれでも掲示板をはじめられる。中古のマシンとパブリックドメインのフリーソフトがあれば、掲示板にはほとんど金がかからず、雑誌やそこそこのパンフレットを発行するより金がかからない。企業も積極的に掲示板のソフトウェアを売り込み、そして技術力のないアマチュアのシスオペでも使えるように教え込む。

掲示板は出版物ではない。雑誌でもなければ、図書館でも、電話でも、CB無線でもコインランドリーにあるような昔からのコルクの掲示板とも違うものだ。ただ、それらのメディアから受け継いだ類似点はいくつかあるのだが。掲示板は新しいメディアであり、ものすごい数の新しいメディアとさえ言えるかもしれない。

次のような掲示板に独特の特徴を考えてみよう。掲示板は安い、にもかかわらず国中、世界中にさえ影響力をもつ。掲示板には世界中の電話ネットワークを介して、どこからでもアクセスすることができる。しかも掲示板を運営している人には、コストがかからない。電話をかける人が電話代を支払うだけだ。もし市内通話だったら、その通話は無料になる。掲示板には大衆を相手にするような編集のプロはいらない。掲示板の「シスオペ」は特権的な出版者でも書き手でもない、電子サロンを取りしきっているだけだ。電子サロンでは個々人が大衆を相手に語り、大衆の役割を演じ、そしてほかの個人と手紙をやりとりする。掲示板の「会話」は、流動的ですばやく即座に反応があるが、話しているわけでも書いているわけでもない。また比較的匿名ともいえるし、ときには完全に匿名であるといってもいい。

掲示板はとても安く、いろいろなところに存在するので、規制や許可を求めることを押し付けるのは実質的には無理だろう。個人の手紙の中身を規制したり、調べたり、許可したりすることの方が易しいくらいだし、よりありそうなことだ。なぜなら郵便は連邦政府が管理しているからだ。掲示板は個人が、自分の意志で勝手に動かしているものなのだ。

シスオペにとっては、掲示板を動かす費用は大きな制約事項にはならない。コンピュータとモデムに1回投資したなら、定常的にかかるコストは電話線一本(あるいは何本か)の費用だけだ。シスオペの大きな制約事項は、時間とエネルギーになる。掲示板には維持が必要である。ふつうは新しいユーザーを「許可」しなければならない、つまりパスワードを発行し、家に電話をかけて身元を確認しなければならない。たくさんいる不快なユーザーたちには注意をするか、追放しなければならない。たまったメッセージは、システムの容量があふれないように古くなったら削除しなければならない。ソフトウェアは(もし掲示板にそうしたものがあったら)、ウイルスチェックをしなければならない。もし掲示板を使うのに料金を請求するなら(だんだんそうする所がふえており、特により大きなシステムや趣味の仲間のシステムでは一般的だ)、請求書をつけてユーザーに請求しなければならない。もし掲示板が壊れたら、よくあることだが直さなくてはならない。

掲示板は、管理に費やされてきた努力で分類できる。ひとつはまったくほったらかしの掲示板で、利用者がいつもだんだんケンカごしの混乱状態になり、しまいにはおさまって静かになるあいだ、シスオペはビールをあおりテレビの再放送をみている。ふたつめは管理された掲示板で、シスオペがちゃんと割ってはいってケンカを仲裁し、みんなに知らせて、コミュニティからバカものやトラブルメーカーを追放する。三つめは厳しく管理された掲示板で、大人の責任ある行動が促され、攻撃的とか、無礼だったり、違法や見当違いだと考えられるようなメッセージはすぐさま編集される。最後には、全面的に編集された「電子出版物」があげられる。電子出版物は、直接はどんな方法でも反応することが許されていない声なき大衆に提供される。

掲示板はまた、匿名性の度合いでも分類できる。完全に匿名の掲示板がある。全員がペンネーム、つまりハンドルを使い、シスオペさえ利用者たちが本当は誰なのかわかっていない。このタイプの掲示板では、シスオペ自身がペンネームを使っている可能性が高い。ふたつめはよくあるタイプだが、シスオペは全ての利用者の本当の名前や住所を知っているが(あるいは知っていると思っているが)、利用者はお互いの名前やシスオペの名前を知らないというものだ。三つめは全員が本名をつかい、役割を演じたり、ペンネームを使った投稿は禁止されているものだ。

掲示板は、即時性でも分類できる。チャット掲示板は、複数の電話線で複数のユーザーを同時につないでいる。そしてメッセージを打つと同時に交換できるようにする(多くの大規模な掲示板は他の機能とならんでチャット機能を売り物にしている)。より即時性が落ちる掲示板では、たぶん電話線は一本だろうけど、メッセージを一度に一つずつ順次に蓄積する。昼間や週末に動いている掲示板もある。その反応はとても遅い。たとえば「FidoNet」のような掲示板のネットワークは、掲示板から掲示板に電子的なメッセージを遠距離を隔ててとどけてくれる。ただその速度はかたつむりのようにのろくて、メッセージが相手にとどいて返事が返ってくるまで何日もかかる。

掲示板は、コミュニティによっても分類できる。掲示板のなかには、個人的な一対一のメッセージを交換するものがある。他には投稿することが重視され、読むだけの利用者、投稿を読むが公に参加することは拒否するものは追放されることさえある。親密であたたかい掲示板もあれば、冷たくて高度に技術的な掲示板もある。ソフトウェアを蓄積するだけの掲示板もある。そのような掲示板では、利用者はプログラムをダウンロードしたりアップロードしたりするだけで、彼ら自身ではほとんどメッセージを交換しない。

掲示板はアクセスの容易さでも分類できる。公開されている掲示板もあれば、プライベートなもの、シスオペの友人しかアクセスできないものもある。利用者の地位によって区別する掲示板もある。初心者や部外者、子供は一般的な話題に限定されるか、投稿を禁止される。ただし気に入られた利用者は好きなだけ投稿することができ、他の人がつなごうとしているときにも好きなだけオンラインでつないでいられる。高い地位の利用者は、掲示板の秘密のエリアにまでアクセスできる。きわどい話題やプライベートな議論、あるいは価値あるソフトウェアにアクセスできる。気に入られた利用者は、リモートシスオペにさえなり、家のコンピュータからリモートで掲示板を管理できる力をもつ。最終的には、たとえ物理的には別の家にいようとも、リモートシスオペはしばしばすべての仕事をこなして、掲示板のすべての公式の管理をするようになる。何人かの「協力するシスオペ」が管理を分担することもある。

掲示板はサイズでも分類できる。大規模な、CompuServe, Delphi, GEnie, Prodigy のような全国的な商業ネットワークは、メインフレームコンピュータで動き、通常は「掲示板」とはみなされていない。しかしながら電子メールや議論、ソフトウェアライブラリ、市民の自由に関する永続的な増大する問題のような多くの共通点をもっている。個人の掲示板でも30回線と優れたハードウェアをもつものもあれば、小規模なものもある。

掲示板の人気もさまざまである。巨大で混み合っている掲示板があり、そこでは利用者はいつも電話中にもかかわらず、なんとかつなごうとしている。巨大だが、がらがらの掲示板もある。昔は人気があった掲示板に投稿がひとつもなく、姿をけした利用者の会話がデジタルゴミの山として残っているほど寂しいことはない。小さいがくつろげる掲示板もある。そういった掲示板の電話番号はわざと秘密になっていて、少数の人のみがログオンできるようになっている。

もちろんアンダーグラウンドの掲示板もある。

掲示板がミステリアスな存在となり、その利用者の行動が陰謀と区別がつかないこともある。じっさいに利用者はときどき陰謀を企む。掲示板は、あらゆる種類の悲主流派の隠れ場所になっていたり、逃げ場所になっていると非難されてきた。そしてあらゆる種類の眉をしかめるような、安っぽく過激な犯罪行為をけしかけたり、けしかけていると非難されたりしている。悪魔崇拝の掲示板、ナチの掲示板、ポルノ掲示板、小児性愛症者の掲示板、ドラッグの掲示板、アナーキストの掲示板、共産主義者の掲示板、ゲイやレズビアンの掲示板(数多く存在し、その多くは活発で定評のある歴史を築いている)、宗教カルトの掲示板、伝道者の掲示板、魔法の掲示板、ヒッピーの掲示板、パンクの掲示板、スケートボーダーの掲示板、UFO信者の掲示板もある。連続殺人鬼、飛行機テロリスト、プロの暗殺者の掲示板もたぶんあるだろう。わからないだけだ。多くの数の掲示板が、文明社会のあちこちで雨後の筍のようにあらわれ、はこびり、姿を消していく。明らかにたいくつな公共的な掲示板にも、少数しかしらない秘密の場所が存在しうるし、実際にも存在する。巨大な商業的公共サービスにおいても、手紙はとても個人的なものであり、それが犯罪に利用されることも大いにありうる。

掲示板は思いつくかぎりの話題をカバーし、そこには考えもしないような話題さえ存在する。掲示板はあらゆる種類の社会活動を網羅している。ただし、すべての掲示板の利用者には共通点がある。コンピュータと電話をもっていることだ。したがって自然と全ての掲示板で、コンピュータと電話が主要な話題になる。

ハッカーと電話フリークは、コンピュータと電話にすっかり身をささげ、掲示板で生きている。掲示板に群れ、掲示板で育ってきたのだ。1980年代の後半には、電話フリークやハッカーの集団は掲示板にあつまり、とてつもない勢いで増えていった。

その証拠として、1988年8月8日にPhrackの編集者によってまとめられたハッカー集団の一覧がある。

The Administration. Advanced Telecommunications, Inc. ALIAS. American Tone Travelers. Anarchy Inc. Apple Mafia. The Association. Atlantic Pirates Guild.

Bad Ass Mother Fuckers. Bellcore. Bell Shock Force. Black Bag.

Camorra. C&M Productions. Catholics Anonymous. Chaos Computer Club. Chief Executive Officers. Circle Of Death. Circle Of Deneb. Club X. Coalition of Hi-Tech Pirates. Coast-To-Coast. Corrupt Computing. Cult Of The Dead Cow. Custom Retaliations.

Damage Inc. D&B Communications. The Dange Gang. Dec Hunters. Digital Gang. DPAK.

Eastern Alliance. The Elite Hackers Guild. Elite Phreakers and Hackers Club. The Elite Society Of America. EPG. Executives Of Crime. Extasyy Elite.

Fargo 4A. Farmers Of Doom. The Federation. Feds R Us. First Class. Five O. Five Star. Force Hackers. The 414s.

Hack-A-Trip. Hackers Of America. High Mountain Hackers. High Society. The Hitchhikers.

IBM Syndicate. The Ice Pirates. Imperial Warlords. Inner Circle. Inner Circle II. Insanity Inc. International Computer Underground Bandits.

Justice League of America.

Kaos Inc. Knights Of Shadow. Knights Of The Round Table.

League Of Adepts. Legion Of Doom. Legion Of Hackers. Lords Of Chaos. Lunatic Labs, Unlimited.

Master Hackers. MAD! The Marauders. MD/PhD. Metal Communications, Inc. MetalliBashers, Inc. MBI. Metro Communications. Midwest Pirates Guild.

NASA Elite. The NATO Association. Neon Knights. Nihilist Order.

Order Of The Rose. OSS.

Pacific Pirates Guild. Phantom Access Associates. PHido PHreaks. The Phirm. Phlash. PhoneLine Phantoms. Phone Phreakers Of America. Phortune 500. Phreak Hack Delinquents. Phreak Hack Destroyers. Phreakers, Hackers, And Laundromat Employees Gang (PHALSE Gang). Phreaks Against Geeks. Phreaks Against Phreaks Against Geeks. Phreaks and Hackers of America. Phreaks Anonymous World Wide. Project Genesis. The Punk Mafia.

The Racketeers. Red Dawn Text Files. Roscoe Gang.

SABRE. Secret Circle of Pirates. Secret Service. 707 Club. Shadow Brotherhood. Sharp Inc. 65C02 Elite. Spectral Force. Star League. Stowaways. Strata-Crackers.

Team Hackers '86. Team Hackers '87. TeleComputist Newsletter Staff. Tribunal Of Knowledge. Triple Entente. Turn Over And Die Syndrome (TOADS). 300 Club. 1200 Club. 2300 Club. 2600 Club. 2601 Club. 2AF.

The United Soft WareZ Force. United Technical Underground.

Ware Brigade. The Warelords. WASP.

このリストをながめてみるのは印象深く、ほとんどくじけそうになるくらいだ。文化の産物としては、詩に近いともいえるだろう。

サブカルチャーのアンダーグラウンド集団は、その常に元となる社会を参照する性格で独立したカルチャーとは区別される。アンダーグラウンドは本質的に、いつも少し異なっていなければならないものなのだ。おかしな見分けがつく服装と髪型で特別な専門用語をつかい、街の特別な場所にあつまり、起きるのも働くのも寝るのも人とは違った時間帯だ。情報に特化しているデジタルアンダーグラウンドは、それ自身を目立たせるものとして言葉に重きを置いている。この一覧をみても分かるように、パロディと模倣だらけで、かれらが誰をからかおうとしているのかは明らかだ

まず第一に大企業。Phortune 500, The Chief Executive Officers, Bellcore, IBM Syndicate, SABRE(航空会社の電子予約サービス)がある。「Inc」をよく使うのもわかる。もちろん本当に企業である集団はないし、ものまねをして喜んでいるだけだ。

第二に政府と警察があげられる。NASA Elite, NATO Association. "Feds R Us"  "Secret Service"は、かなりあつかましく嘲笑しているものだ。OSSはCIAの前身の戦略対策部である。

第三は、犯罪者だ。ひねくれた名誉のバッチとして非難の烙印をおされた言葉をつかうのは、サブカルチャーの昔からのやりかただ。パンク、ギャング、非行、マフィア、海賊、山賊、不法者。

特別なつづり方、特にf のかわりにphを使ったり、複数形のsのかわりにzを使うのは、すぐに分かるしるしで、文字のOのかわりに数字の0を使うのも同じだ。コンピュータのソフトウェアでははっきり区別するために、ゼロには斜線をいれるのが大概ただしいやり方である。

用語のなかには、コンピュータ侵入を詩のように描き出すものもある。密航、ヒッチハイク、電話の重信、西海岸から東海岸までなどだ。他にはたんに褒め称えたり、自慢気に賞賛する用語もある(エリートやマスターといった用語がしつこく使われていることに注目)。冒涜的だったり、わいせつ、単にわけがわからない用語もあり、まともな人たちを困惑、不快、混乱に陥れ、てこずらせている。

多くのハッカーグループはさらに頭文字をつかうことで、自分たちの名前をより暗号化している。United Technical UndergroundはUTUに、Farmers of DoomはFoD、the United SoftWareZ Forceは自分たちが力説するには"TuSwF,"、間違った文字を大文字にする無知なやからには災いあれといったところだ。

そういったグループのメンバー自身がペンネームを使っていることにも認識しなければならない。じっさいに「重信電話回線(PhoneLine Phantoms)」のグループをとりあげてみれば、そのメンバーには「犯罪キャリアー(Carrier Culprit)」、「死刑執行人」、「黒魔術(Black Majik)」、「エジプトの恋人」、「固体(Solid State)」、「アイコン氏」といった名前がみられる。犯罪キャリアー(Carrier Culprit)は友達からは「CC」と呼ばれ、「おれはPLPのCCからこういった電話番号を手に入れた」というふうに使われるだろう。

このリスト全体でも、1000人ほどの人にしか言及していないというのはきわめてありそうなことだ。それはアンダーグラウンドグループの完全なリストではないし、そんなリストが存在したことはこれまでも、これからもないだろう。グループが作られ、大きくなったり小さくなったりして、メンバーも重複していて、多くのファンや気まぐれなとりまきのめんどうをみる。人は出たり入ったりし、追放されたり、うんざりしたり、警察に逮捕され、あるいは電話会社のセキュリティに追い詰められて、多大な料金を請求される。多くの「アンダーグラウンドのグループ」は、ソフトウェア海賊で、「warez d00dz」などとよばれ、コピー保護を破り、プログラムを略奪するかもしれないが、わざわざコンピュータシステムに侵入をこころみたりしない。

デジタルアンダーグラウンドの正確な住人の数を推定することは困難だ。つねに入れ替わりがあるし、ほとんどのハッカーは若くしてはじめるが、入ったり出たりで、22才くらいには手を引く、大学卒業の年だ。ハッカーの多くは海賊掲示板にもアクセスするし、ハンドルを使い、ソフトウェアをかっぱらい、一つや二つの電話コードの不正使用はするかもしれないが、決してじっさいにエリートになることはない。

民間企業のセキュリティにアンダーグラウンドの詳細情報を伝えることを商売にしている情報通は、ハッカーの人口をせいぜい5万人と見積もっている。これはすべてのティーンエイジャーのソフトウェア海賊やちんけな電話ボックス泥棒までを数え上げたのでなければ、誇張された数字だろう。わたしの正確な見積もりはだいたい5千人といったところだ。そのなかでも、せいぜい100人ほどが本当のエリートだろう。活発にコンピュータ侵入をやり、複雑なシステムに入りこみ、本当に企業のセキュリティや法執行部門を心配させるほどのスキルをもっている。

別の興味深い推測は、このグループが大きくなっているかどうかということである。若いティーンエイジャーならハッカーは大勢いて、いまにもサイバースペースを占領するだろうと確信している。年をとり賢くなった、たぶん24、5のかれたベテランは、栄光の日々ははるか過ぎ去り、警官はアンダーグラウンドのすみずみまでを知りつくし、近頃のガキどもときたら救いようのないバカで、任天堂で遊ぶことしか考えてないと確信している。

わたしの予想では、利益をもとめない知的な探検と支配の行為であるコンピュータ侵入は、少なくともアメリカではだんだん少なくなっている。しかし電子詐欺は、とくに電話犯罪は飛躍的に増加している。

デジタルアンダーグラウンドとドラッグアンダーグラウンドには、興味ぶかい共通点がみられる。歴史修正主義のためにかなり知りにくくなっているが、ボヘミアンが自由にコンサートでマリファナを分け合い、かっこいい少量のマリファナ売人は、ドアーズやアレン・ギンズバーグの長々としてぼうっとした会話を楽しむためだけにマリファナを飲ませていた時期があったのだ。現在ドラッグはいよいよ禁止されたものとなり、大金がかかることはのぞいても、中毒性の高いドラッグを扱う犯罪性が高い世界になっている。何年にもわたって、幻想がうちくだかれ警察からはにらまれていて、イデオロギーの香りのする自由気ままなドラッグアンダーグラウンドは、ドラッグをあつかうビジネスをより激しい犯罪ハードコアにその席をゆずった。これは面白くない予想だが、かなり説得力のある類推といえるだろう。

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