『ハッカーを追え』の翻訳。特に誤訳、誤字などの指摘があったら、メールでもいただければ。

太字は英文のポップアップつき。


Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER CRACKDOWN  Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce Sterling

Sting Boards

自由な文書(ただし商用利用を除く)

おとり掲示板

ここで警察と掲示板のやっかいな話題をとりあつかおう。警察は、じっさいに自分たちの掲示板をもっている。1989年には警察が運営している掲示板が、カリフォルニア、コロラド、フロリダ、ジョージア、アイダホ、ミシガン、ミズーリ、テキサス、バージニアで、Crime Bytes、Crimestoppers、All Points、Bullet-N-Board といった名前で実在した。警官たちは、ふつうのコンピュータマニアとして、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、フロリダ、ミズーリ、メリーランド、ニューメキシコ、ノースカロライナ、オハイオ、テネシー、テキサスで自分たちの掲示板を運営していた。警察の掲示板は、しばしばコミュニティの結びつきを強くする助けにもなってきた。ときどき、警察の掲示板に犯罪が報告されることもある。

ときには警察の掲示板で犯罪がおこなわれることもある。たまたま、何も知らないハッカーが警察の掲示板でへまをやらかして、考えなしに電話の課金コードを教えはじめるなどということもあった。ただ、それよりもっとよくあるのは、ほとんど伝統ともいえるような「おとり掲示板」の利用だ。最初の警察のおとり掲示板は、1985年につくられた。テキサス州オースティンの Plutoと名乗っていたRobert Ansley巡査部長がシスオペをやっていたUnderground Tunnel、アリゾナ州フェニックスのマリコパ郡の保安官Ken MacLeodのThe Phone Company、カリフォルニア州フリーモントのDan Pasquale巡査部長の掲示板があった。シスオペはハッカーをよそおい、すぐに熱心なユーザーの常連をあつめ、そいつらが課金コードを投稿したり、奔放に海賊ソフトウェアを持ち込み、そしてみじめな最後と相成るわけだ。

おとり掲示板は他の掲示板とおなじように、運営にはお金がかからない、警察のおとり捜査とくらべれば破格の安さといってもいい。地域のアンダーグラウンドで一度受け入れられれば、シスオペは他の海賊掲示板にも出入り可能になるだろう。そこでもっと証拠書類を集められるといったわけだ。そしておとりであることが公になり、一番悪質な犯罪者が逮捕されれば、たいていの場合は報道が歓迎される。その結果アンダーグラウンドでまきおこるパラノイアが、たぶん「抑止効果」とでもいえばより的確なのかもしれないが、しばらくのあいだ地域の法律違反を沈静化するのに役立つというわけだ。

明らかに警察はハッカーをくまなく捜しまわる必要はない。その反対に流し釣りすることもできる。逮捕者をきびしく尋問して、中には利用価値のある内部情報提供者もいるだろう。かれらは国中にある海賊掲示板へと案内してくれる。

国中の掲示板には、はっきりとPhrack の指紋が、そして全てのアンダーグラウンドのグループの中でもっとも声が大きく悪名高い Legion of Doom の指紋がのこされていた。

Legion of Doom という言葉は、漫画から由来している。Legion of Doomは、はげあたまの犯罪の黒幕であるLex Luthor によって率いられた征服に身をつつんだ悪漢の陰謀団であり、スーパーマンに何十年もの間、4色刷りのトラブルを提供してきた。もちろんスーパーマンは、真実と正義のアメリカ流の代表であり、結局は勝つことになっている。ただそういったことは、ハッカーの Doomsters にとってはどうでもいいことだ。Legion of Doom は、途方もない悪魔といったようなものを指しているわけではなく、そもそもそれほど真剣にとりあうようなことではない。Legion of Doom はばかばかしい漫画から取られてもので、ばかばかしいものだと思っておけばいい。

ただ Legion of Doom には、長ったらしくもよい響き、実にクールな印象がある。他のLoDと親密なグループ Farmers of Doom は、この大げさな本質をよくつかんでいて、それをからかっている。真剣に犯罪と戦っているスーパーヒーローたちのスーパーマン集団にちなんで、Justice League of America と名乗っているハッカーグループも存在したくらいだ。

しかしそういったグループは長続きはしなかったが、Legion は長続きした。

もともとの Legion of Doom は、 Quasi Moto の Plovernet の掲示板でうろついていた電話フリークで、あまりコンピュータには詳しくなかった。Lex Luthor自身は(Legion を作ったときは18才以下だったが)、COSMOSのエキスパートだった。COSMOSとは、Central System for Mainframe Operations の略で、電話会社の内部コンピュータネットワークである。Lex はついにはIBMのメインフレームに侵入する真のエキスパートになるが、このときはだれもがLexのことが好きで、その態度には感心していたにもかかわらず、本当になにかをやりとげたコンピュータ侵入者としては認められていなかった。また Legion of Doom の黒幕としてみとめられていたわけでもない。LoDには正式なリーダーというものはなく、Plovernet の常連、Legion of Doom BBS のシスオペとして、Lex は Legion のチアリーダーで勧誘係といったところだった。

Legion of Doom は初期の電話フリークのグループの残骸から生まれた。のちに LoD となる The Knights of Shadow は、ハッカーグループの Tribunal of Knowledge のメンバーをふくんでいた。LoD には常にいろいろな人が来ては去っていった。グループは分裂し、分派が生まれた。

初期には、LoD のフリークは少数のコンピュータ侵入を熱心にやるものに力を貸すだけで、コンピュータ侵入をやるものは Legion of Hackers を作ることになった。それから2つのグループは混じりあって、Legion of Doom/Hackers つまり LoD/H となった。もともとのハッカーのグループにあたる方、つまり Compu- Phreak 、Phucked Agent 04 が他のことを熱心にやるようになると、よぶんな /H はだんだん名前から消えていった。しかしそのころには、フリークの方 Lex Luthor、Blue Archer、Gary Seven、Kerrang Khan、Master of Impact、Silver Spy、The Marauder、The Videosmith もたっぷりと専門知識を仕入れていて、無視できない勢力になっていた。

LoD のメンバーは本能的にアンダーグラウンドでの真の力あるものへの道は、ひそかに知識を広めることにあると分かっているかのようだった。LoD は悪名高かった。初期のグループの一つだからというだけではなく、メンバーが自分たちの違法な知識を広めようと努力したからだ。LoD のメンバーの何人か、とくに The Mentorなどは、ほとんどエバンゲリストといってもいい。Legion of Doom Technical Journalは、アンダーグラウンドのどこの掲示板でもみることができるようになっていった。

LoD Technical Journal は、由緒もあり尊敬に値する AT&T Technical Journal のひどいパロディとして命名されている。その2つの雑誌の内容はきわめて似通ったものだ。大半は、電話コミュニティのふつうの記事や議論からとられたものになっている。ただしLoDの他人をこけにして自分が楽しむ態度のせいで、当り障りのないデータも根深い悪意があり、不法で、明らかにさしせまった危険に思える。

どうしてそんなことになるのか、ためしに考えてみるために、以下の(創作した)文章をみてみよう。

(A) W. Fred Brown、AT&Tの最先端技術開発部門の副総括者は、5月8日の電気通信情報局(NTIA)のワシントンの公聴会で、ベルコアのGARDENプロジェクトについて証言した。GARDEN(Generalized Automatic Remote Distributed Electronic Network)とは、新しい電話サービスの開発を可能にする電話交換機のプログラミングツールのことである。新しい電話サービスには、どんな小型キーパッドの端末からでも数秒でキャッチホンや自由に電話の転送ができることもふくまれている。GARDENのプロトタイプは、centrex 回線を結び、UNIXをOSとして利用するミニコンピュータで利用できるようにするものだ。

(B) Centrexギャングの深紅のいなずま512が報告しよう。厨房ども、信じられるか! くそGARDENとやらをベルコアが思いつきやがった! 今じゃ交換機のプログラムをいじるのにコモドールさえいりやしない。GARDENに技術者としてログオンすれば、どこの電話ボックスからでも交換機をいじることができるんだからな! 自分でキャッチホンやら自由に電話の転送ができるんだぜ。なんといっても、こいつは(セキュリティのかけらもないことで有名な)centrex 回線で動いてるし、いいか、標準のUNIXをつかってやがるんだ! はっはっは!

(A)のメッセージは、典型的な技術官僚用語でかかれたもので、退屈だしほとんど意味がわからないといってもいい。ただ(A)には全くといっていいほど人を脅したり、威嚇したりするところはない。(B)のメッセージはその反対に恐ろしいもので、一見したところひどい陰謀の証拠にみえるし、間違いなくティーンエイジャーの自分の子供に読ませたいような代物ではない。

しかしながらその2つのメッセージの伝える内容は、まったく同じものなのだ。公になっている情報であり、公聴会で連邦政府に明らかにされている。秘密でもなければ、誰かの所有物でも、ましてや部外秘でもない。そうではなく、最先端ソフトウェアシステムの開発はベルコアにとって公に誇るべき出来事なのである。

しかしながら、ベルコアの広報部がこの種のプロジェクトを発表すると、かならずといっていいほど一般の人々からはあるきまった反応がある。それは「まったくすごいね、せいぜいのところがんばってください」というような反応だ。たしかにひどい物まねではないが、上から見下ろすような、ありえそうなセキュリティホールに対していいかげんな推測をくりひろげるのだ。

さてあなたが、(B)の方をみて怒り狂った親や電話会社職員と対応する警官の立場に立ったとしてみよう。この善良なる市民は、ぞっとすることに地域の掲示板に(B)のようなひどい代物があるのを見つけたのだ。自分の息子は、不健全な興味をしめして熱心にそれを調べている。もし(B)が本や雑誌に印刷されていたら、あなたはアメリカの警官として、それについて何かをするとやっかいな事になるだろうということを知っている。しかし別に技術の天才でなくとも、もし自分の受け持ち区域に(B)のようなものを隠しているコンピュータがあればトラブルが起きそうなことも分かる。

実際に、もし尋ねまわれば、コンピュータのことを知っている警官が(B)のようなものがある掲示板がトラブルのもとであることを明言してくれるだろう。掲示板のもっともわるいトラブルの種は、(B)のようなものを作っては広めている首謀者たちなのだ。そういった厄介者さえいなければ、トラブルは起こりようがない。

Legion of Doom は掲示板ではとびぬけた存在だ。Plovernet、The Legion of Doom Board、The Farmers of Doom Board、Metal Shop、OSUNY、Blottoland、Private Sector、Atlantis、Digital Logic、Hell Phrozen Overで活躍している。

LoD のメンバーは自分たちでも掲示板をやっている。Silver Spy は力のある掲示板の一つとみられていた Catch-22 を自分でやっていたし、Mentor も Phoenix Project をやっていた。自分で掲示板を運営していないときでも、他人の掲示板に顔をだしては、自慢したり、いばりちらかして、ひけらかしていた。自分たちがいかないところにも、ファイルが届き、悪の知識とさらに悪い考え方をひろめた。

1986年には、警察はアンダーグラウンドにいるだれもが Legion of Doom だという漠然とした印象をもっていた。じっさいにはLoD は、それほど大きかったことはない、例えば Metal Communications や The Administration とくらべれば遥かに小さいといってもいい。しかし LoD はよく記事にとりあげられた。とくに Phrack では、なんといっても Phrack はときおり LoD のファン雑誌といってもいいくらいだった。そして Phrack はどこにでもあり、電話会社のセキュリティのオフィスにさえそろっていた。警官に LoD かと尋ねられることがなければ、電話フリーク、ハッカー、あるいは lousy codes kid やワレズ野郎だろうが捕まることはないといってもいいくらいだ。

この告発を否定するのは難しい。というのも LoD はメンバーのバッチやラミネート入りのIDカードを配っていたわけではないから。もしそうしたとしても、すぐに廃れてしまっただろう。なんといってもメンバーの入れ替わりはかなり激しかった。LoD とはハイテクストリートギャングといったものではなく、引き継がれていく精神のようなものだ。LoD は死に絶えることのないギャングなのだ。1990年まで LoD は10年間も君臨していて、警察はいつもたった16才の子供を逮捕するのを不思議なことだと思ってきた。これらの取るにたらないティーンエイジャーたちは、くどくどとうんざりするようなハッカーの「好奇心だけで、犯罪を犯すつもりはなかった」という話を主張するのだ。この陰謀の中心のどこかに、もっとまともな大人の黒幕がいるにちがいない。こうしたつきることのないSATで高得点をとる、おかしな髪型の郊外にすむ近視の白人の子供たちではなく...

逮捕されたほとんどのアメリカのハッカーが、LoD を知っていることは疑う余地がない。LoD Tech Journal に寄稿しているハンドルも知っているし、LoD の掲示板やLoD の行動を通して技術を学んでいるのだろう。しかし LoD の誰かと会ったことがあるわけではない。じっさい公式に LoD にいた入れ代わり立ち代わりの中心メンバーの何人かさえ、掲示板のメールとハンドルネームだけでお互いを知ってるにすぎない。これは、犯罪の陰謀としてはきわめて前例のない形だ。コンピュータネットワークとデジタルアンダーグラウンドの急速な発展がこの状況を行き渡らせ、混乱させている。

その上、デジタルアンダーグラウンドで評判になるのは犯罪を犯そうとする意思ではない。そうではなくて賢さと技術上での専門知識が評価されるのだ。その結果、ハッカーとして大物になればなるほど、簡単に訴えられるような種類の犯罪に手を染めなくなるのはしばしば見うけられることだ。じっさいに盗みをやるハッカーもいれば、ハッキングをやるハッカーもいる。しかしその2つのグループは、まったく重なっていないようだ。たとえば、アンダーグラウンドの多くの人は、2600のエマニュエル・ゴールドスタインをハッカーの神としてあがめている。しかしゴールドスタインの出版行為はまったくの合法だ。ゴールドスタインは危険なことを印刷し、政治について語るだけだ。ハッキングさえやらない。その点にふれると、ゴールドスタインはコンピュータセキュリティが十分ではなく、掲示板で根本的に改善しなければならないと文句をつけることに自分の時間を費やすことだろう。

本当にできるハッカーたちは、高い技術スキルをもちアンダーグラウンドの尊敬をかちとっており、金をぬすんだり、クレジットカードの悪用をしたりはしない。電話の課金コードを悪用することはあるかもしれないが、たいがいなんの痕跡も残さずに、好きなだけただで電話を使うことができるだろう。

ベストなハッカーたちは、力をもち技術的にも熟練しており、プロの詐欺師ではない。つねにコンピュータに不法に侵入しているが、何かを変えたり、ダメージを与えることはない。コンピュータ備品を盗むことさえしない、ほとんどのハッカーは昼間にハードウェアをあつかう仕事をしていて、ほしいだけ中古の安い備品を手に入れられる。すごいハッカーたちは、ティーンエイジャーの自称ハッカーとは違って、凝っていたり高価なハードにはこだわらない。ハッカーのマシンは改造車のように、金網、メモリー、鉄ぐしを手早く組み上げたカスタムの部品がついているデジタルの中古ものであることが多い。大人で、コンピュータのソフトウェアのライターやコンサルタントを職業にして、かなり暮らし向きもいいものもいる。中には電話会社でじっさいに働いているものもいる。そうしたものにとって、つまりじっさいに Ma Bell の傘下にいるハッカーたちにとっても、1990年は情け容赦がなかった。

ベストなハッカーたちは、決して捕まることがないというのもアンダーグラウンドの長い間の信条だった。たぶんあまりに賢しこすぎるからだろう。かれらは自慢したり、いばったり、見せびらかしたりすることはないから決して捕まらない。こういった神たちはアンダーグラウンドの掲示板を読むかもしれないが(さげずむような笑みをうかべながら)、そこで発言することはない。ベストなハッカーたちは、伝説によれば、大人のコンピュータのプロで、たとえばメインフレームのシステム管理者であり、セキュリティの細かいところをすみずみまで知り尽くしている。かれらは手当たり次第、コンピュータに侵入することもない。セキュリティホールに関する知識はあまりに専門的で、異なったソフトやハードではまったく異なったものになっているからだ。ただ、もしたとえばUNIXのメインフレームやVAX/VMSのマシンを動かすのにとりかかったら、徹底的にセキュリティをしらべつくすだろう。こうした知識をもっていて、もしそうしたければだれのUNIXやVMSでも、トラブルやリスクをおかすことなく覗くことができる。そしてハッカーの伝説によれば、ハッカーたちはもちろんやりたいようにするし、実際にもそうしている。自分がやったことを大げさにすることもない。だから誰にも見つからない。

アンダーグラウンドの信条では、電話会社の社員も狂った卑怯者たちのように電話をただがけしている。もちろんマドンナの通話を盗み聞きもしている、誰だってやるだろ? もちろんただで長距離通話をつかう、いったい何だってお金をださなきゃならないんだ、自分たちで全てを動かしているというのに。

3つ目の長い間信じられていた信条は、ハッカーは捕まってもどうやってそうしたかを告白すれば、ひどい罰をうけることはないということだ。ハッカーたちは、政府の省や大企業はサイバースペースでは目をもたないくらげや洞窟の山椒魚のようにさまよっているだけだと信じている。そういった図体は大きいが哀れなほどに無知な組織は、天才のすぐれたやり方を明かしてくれようとしている有能な侵入者に対して、心の底からの感謝と、たぶんセキュリティのポストや高い給料さえ申し出るのだとハッカーたちは思っていた。

長い間 LoD のメンバーだった Control-C の場合は、だいたいこのとおりのことが起こった。Control-C はミシガンベルをひどくてこずらせてきた。ただ1987年に捕まったときには、利発だがあきらかにひ弱で無害な、若い電話にとりつかれたマニアにすぎないことがわかった。Control-C が、じっさいにミシガンベルから盗んだ長距離通話の理論上巨額の支払いができることはありえない。いつでも詐欺やコンピュータ侵入で起訴することはできたが、そうすることは無駄なように思われた。彼は、コンピュータにダメージを与えたことも全くなかったし、有罪をみとめたので、形ばかりの叱責をうけただけだった。一方ミシガンベルでは、この事件を法廷に持ち出すべきだという大きな騒ぎもおこっていた。しかし給料をはらいつづけさえすれば、彼は少なくとも仲間のハッカーたちを食い止めてくれた。

Control-C には使い道があった。たとえばミシガンベル社内のポスターに登場して、従業員にゴミはシュレッダーにかけるように厳しく警告するのだ。Control-C は、いつも一番いい内部情報をゴミ箱あさりから手に入れた、つまり電話会社のゴミ容器をあさり不注意に捨てられた有用なデータを手に入れていた。こういったポスターにControl-C は、サインさえした。Control-C はミシガンベルのマスコットのようなもので、じっさいに他のハッカーたちを食い止めた。小物のハッカーたちは Control-C や彼の Legion of Doom のやり手の友達たちを本当に恐れていて、大物のハッカーたちは彼の友達だったし、その気楽な立場をまずくするようなことは望まなかった。

誰かが LoD についてあれこれいおうが、LoD の団結はかたかった。Wasp という明らかに悪意のあるニューヨークのハッカーが、ベルコアのマシンをクラッシュさせたとき、Control-C は Mentor とジョージアのLoD グループ、The Prophet、Urvile、Leftist のすばやい自発的な助けを借りた。Mentor の Phoenix Project の掲示板を使って協力し、Doom の連中は電話会社のセキュリティが Wasp を盗聴と逆探知が設定されたマシンにおびきよせて、罠にかけるのを手助けした。Waspは敗北し、LoDが勝った! そしてなんとまぁ、LoDときたらそれを自慢したもんだ。

Urvile、Prophet、Leftist は、こういったことをやり遂げる手腕は十分にあった。たぶん上手くやりとげたControl-C よりも腕前はあったのだろう。ジョージアの少年たちは、電話の交換機についてありとあらゆることを知っていた。Legion of Doom では比較的新参者だったが、やっかいなシステム侵入ではLoD の上級者たちの何人かであると認められていた。かれらは幸運にもアトランタまたはその近辺に住んでおり、そのあたりはやる気がない、明らかに寛容なベルサウスRBOCの領域だった。

RBOCのセキュリティとくらべれば、ベルサウスは「ケーキ」みたいなものだ。アメリカの西側(アリゾナ、ロッキー、太平洋岸の北西部)は非常にタフかつ攻撃的で、たぶんRBOCでもきびしいところだろう。Pacific Bell、 California's PacBell は準備万端でハイテクをそなえており、長い間ロサンゼルスでの電話フリークとの戦争できたえられている。NYNEX は不幸にもニューヨーク地域で運営していて、たいがいのことには対応できた。ミシガンベルは、Ameritech RBOCの一部だったが、少なくとも使える「かかし」としてハッカーをかかえておくくらいの最低限の意識はあった。しかしベルサウスでは、企業広告では自分たちで「あなたがリーダーに望むものはなんでも提供します」という具合だが、実体は悲惨このうえなかった。

ジョージアの交換機ネットワークの LoD のやり手のうわさが、ベルコアや電話会社のセキュリティの口コミでベルサウスに届いても、かれらは当初そのうわさを信じなかった。こういったハッカーたちのそこらに出回るうわさ全てに注意をはらうのは、奇人変人のたわごとにいちいち耳をかたむけるようなものだというわけだ。つまり国家安全保障局は全てのアメリカの通話を傍受しているだとか、CIAやDEAは単語分析プログラムを使って掲示板の書き込みを記録してるだとか、コンドルが公衆電話から第三次世界大戦をはじめようとしているだとかいうたぐいだ。

もしベルサウスの交換機にハッカーが侵入しているんだったら、どうして何もおこらないんだ? 壊されたものもなにもない。ベルサウスのコンピュータは、クラッシュしていない。ベルサウスは、手ひどく不正行為で損害をうけてるわけでもない。顧客からの文句もない。ベルサウスは、新たなハイテクサンベルト地帯の中心都市であるアトランタに本部をかまえていた。ベルサウスは飛躍的にそのネットワークを拡張し、片っ端からデジタル化しようとしていて、怠慢だとか経験がないとは思われていなかった。ベルサウスの専門知識は比類のないものだというわけだ、(わざわざうわさを伝えてくれて)ご親切にどうも。

しかしフロリダから事態はおこった。

INDEXに戻る