『ハッカーを追え』の翻訳。特に誤訳、誤字などの指摘があったら、メールでもいただければ。
太字は英文のポップアップつき。
Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER
CRACKDOWN Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce
Sterling
War Games
戦争ゲーム
さてここで Steve Jackson Games 自体に注目し、そしてSJGがどのようなものか、じっさいに何をしているのか、どのようにしてこの特別に奇妙で敵意に満ちたトラブルに巻き込まれるようになったかを説明しよう。読者は、この会社が話にでてきたのは初めてでなく二度目だということを思い出せるかもしれない。GURPS という名前の Steve Jackson のゲームは、アトランタのハッカーの Urvile が一番好きな娯楽であり、Urvileのサイエンスフィクションのゲームノートは、じっさいのコンピュータ侵入についてのノートとごちゃ混ぜになっていた。
第一に、Steve Jackson Games株式会社は、コンピュータゲームの出版社ではない。SJG はシミュレーションゲームを出版しており、それは紙の上で、鉛筆とサイコロとルールと統計表がたくさんの印刷されたガイドブックをつかってやる室内ゲームである。ゲームそれ自体にはコンピュータの要素はまったくない。Steve Jackson Game を買っても、ソフトウェアのディスクはついてこない。手に入るものは、何枚かのボール紙のゲーム用の駒と、たぶん何枚かの地図やカードが一組がはいったプラスティックの袋だけだ。製品のほとんどは本である。
しかしながら、コンピュータは Steve Jackson Games のビジネスには欠かせないものになっている。ほとんどの現代の出版社と同じように、Steve Jackson とその15人の従業員はテキスト書き、記録をとり、仕事全般を片づけるのにコンピュータを利用する。また Steve Jackson Games の掲示板、Illuminati という名前の掲示板を動かすのにもコンピュータを使っている。Illuminati には、コンピュータとモデムを持っているシミュレーションゲーマーたちが集まってきて、メールをやりとりし、ゲームの理論と実践を討議し、会社の最新のニュースと製品の紹介についていくようにしている。
Illuminati は適度に人気がある掲示板で、記憶容量が限られていて一度に一回線しかなく、巨大なコンピュータネットワークにはつながっていない小型コンピュータで動いている。しかしながら何百人のユーザーがいて、その多くは州外からも喜んで通信をするようなゲームに打ち込んでいる人々だ。
Illuminati は、アンダーグラウンドの掲示板ではない。コンピュータ侵入のヒントやアナーキーファイル、不正に投稿されたクレジットカード番号、長距離アクセスコードは扱っていない。ただ、Illuminati のユーザーの何人かは Legion of Doom のメンバーだった。というのもSteve Jackson の古参の社員の一人が、Legion of Doom のメンバー、つまり Mentor だったのだ。Mentor は、Phrack のために執筆し、また Phoenix Project というアンダーグラウンドの掲示板を運営していた。しかし、Mentor はコンピュータのプロではなかったのだ。Mentor は、Steve Jackson Games の編集長であり、職業はプロのゲームデザイナーだった。これらの LoD のメンバーたちは、Illuminati をハッキングの行動を助けるためには利用していなかった。ゲームで遊ぶのを手助けするために使ったのだ。そしてかれらはハッキングよりはむしろシミュレーションゲームに熱心に取り組んでいた。
Illuminati は、その名前をこの会社の創設者であり単独の所有者である Steve Jackson 自身がつくったカードゲームからとっている。多人数のカードゲームでJackson が作ったもっとも有名で成功した、技術的な革新を起こした製品である。Illuminati は、さまざまな反社会的カルトが世界の覇権をあらそって密かにあらそうパラノイアの陰謀がうずまくゲームであり、とても面白く、遊ぶのは楽しい。そして空飛ぶ円盤、CIA、KGB、電話会社、Ku Klux Klan、南アメリカのナチズム、コカインカルテル、ボーイスカウト、その他にも Jackson の強烈な想像力のゆがんだ深遠さから生まれたいろいろなグループが何十とでてくる。初心者にとっては、Illuminati のカードゲームについて公で論議をすると、かわるがわる、ひどく脅しているか全く気が狂っているかのように聞こえてしまう。
それから SJG の Car Wars は、チューンアップした装甲つきの、ロケットランチャーとマシンガンを装着した改造車が未来のアメリカの高速道路であらそうものだ。Illuminati 掲示板でのじっさいの Car Wars についての論争は、手榴弾、地雷、火炎放射器、ナパーム弾の効果についての細部にこだわり、念入りな議論で、ハッカーのアナーキーファイルをぶちまけてように見えることだろう。
Jackson と従業員は、人々にまがいものの冒険や奇妙なアイデアをもたらすことで、日々の糧を得ている。発想が奇抜であればあるほど、いいのだ。
シミュレーションゲームは一般的な娯楽ではない。ただゲーマーたちは通常はシークレットサービスにゲームをやる許可をもらったりする必要はない。戦争ゲームやロールプレイングの冒険ものは古くからの立派な娯楽で、プロの軍隊の戦略家にも好まれている。かつてはほとんど知られていなかったこういったゲームは、現在では何十万人という愛好家が北アメリカ、ヨーロッパ、日本に存在する。かつては直販店でしか置いてなかったゲームが、B. Dalton's や Waldenbooks といったチェーンストアにもふつうに置かれるようになっており、売上もなかなかだ。
テキサス州、オースティンの Steve Jackson Games株式会社は、中堅のゲーム会社だ。1989年にはSJGは100万ドルくらいを売り上げている。Jackson 自身は、才能があり革新的でかなり型にはまらないゲームのデザイナーとして業界では評判をえている。しかし彼の会社はその分野の大手といえるような規模ではなく、数百万ドルも売り上げる TSR Inc.やイギリスの巨大な Games Workshop とは明らかに異なるといっていい。
SJG のオースティンの本社は、地味な二階建ての煉瓦造りのオフィスで、電話やコピー機、ファックス、コンピュータが散らかっているような場所だ。あまり組織立っていない行動がめだち、ぴかぴかの宣伝パンフや付箋のついたSF小説が散らかっているようなところだ。事務所に隣接して、大きなブリキ屋根の倉庫があり、ゲームや本のつまったダンボール箱が20フィートくらいは積みあがっている。ゲームの中に存在する奇妙な想像の産物は別としても、SJG の本社はきわめてありふれた、日常的な場所である。見た通りの場所で、出版者の巣窟だ。
Car Wars や Illuminati はともによく知られた人気のあるゲームだが、Jacksonの会社の大黒柱は汎用共通ロールプレーイングシステム、G.U.R.P.Sだ。GURPS は、充実したよくデザインされた、プレーヤーにとって価値のあるゲームである。しかしたぶん、GURPSのシステムの一番人気がある機能は、ゲームマスターが有名な本や映画、その他のファンタジーを真似してシナリオをつくることができるというものだ。Jackson は多くのサイエンスフィクションとファンタジーの作家からライセンスをとり、作品をつくっていた。*GURPS Conan,* *GURPS Riverworld,* *GURPS Horseclans,* *GURPS Witch World,*といったゲームがあり、その名前はサイエンスフィクションの読者にはきわめてなじみがあるものだ。そしてスパイファンタジーと型破りな軍事行動の世界からの*GURPS Special Ops,* もある。
そして*GURPS Cyberpunk*も存在する。