『ハッカーを追え』の翻訳。特に誤訳、誤字などの指摘があったら、メールでもいただければ。

太字は英文のポップアップつき。


Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER CRACKDOWN  Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce Sterling

FCIC: The Cutting Edge Mess

連邦コンピュータ犯罪捜査組織:最前線の混乱

連邦コンピュータ犯罪捜査組織(FCIC)はアメリカのコンピュータ犯罪の領域でもっとも力をもち、影響力のある組織である。他の国の警察は、コンピュータ犯罪に対抗するヒントを数多くアメリカの方法からまなんでいるので、FCIC は世界でもっともコンピュータ犯罪に対して力をもっている組織といってもいいかもしれない。

その組織は、連邦の基準からいえば異端の組織といってもいい。州と地域の捜査官が連邦捜査官と入り混じっている。弁護士、会計検査官、コンピュータセキュリティプログラマーが、警官と意見をかわし、ベンダーと電話会社のセキュリティ担当者が装置の説明をしたり、保護や公正を求めて姿をあらわす。民間の捜査官、シンクタンクの専門家、業界の事情通が口をはさんだりもする。FCICは公式な官僚組織の正反対といっていい。

FCIC のメンバーは表にあらわしたりはしないが、この事実に誇りをもっている。自分たちのグループがふつうとは変わっていることを意識しているが、かれらにとってはこのまさに「ワイヤード」な行動がそれにもかかわらず、仕事を遂行するのに「絶対必要」であると確信している。

FCIC の常連、シークレットサービス、FBI、労働省、司法省、州警察、空軍、情報機関は、しばしば全米のあちこちで自前で会議をひらく。FCIC には助成金はない。メンバーとしてのお金もかからない。上司もいなければ、本部もない、ワシントンDCにシークレットサービスの詐欺対策本部の私書箱があるだけだ。予算もなければ、スケジュールもなし。年に三回、一種の会議といったものがある。ときには出版物を発行することもあるが、FCIC にはふつうの出版部署があるわけではないし、会計部署もないし、秘書が一人としているわけでもない。FCIC の会議には議事録さえない。連邦関係以外の人は「投票権のないメンバー」だとみなされているが、そもそも投票なんてことはあまりない。メンバーであることを示すバッチもなければ、紋章、証明書もない。みんなが名前でよびあうような調子だ。だいたい40人ほどだが、正確に何人なのか知っている人はなく、人々はやってきては去っていく。去っていった人がそこらへんをうろついてることもままある。だれもきちんとこの「組織」の「メンバーであること」がじっさいにはどういうことなのかを指摘できる人はいない。

ある人たち、コンピュータの世界になじんでいる人にとってはこれは奇妙に思えるかもしれないが、FCIC の「組織」はしっかり認められている。ここ何年も経済学者や経営理論家は情報革命の大変動が、硬直化したピラミッド型の、全てがトップダウンで中央集権的な官僚組織を破壊するだろう、という観測をのべている。高度な訓練をうけた「雇用者」がより大きな自治権をひきうけ、自発的に、自己動機づけをし、ものすごい速度と流動性であちこちを動き回り、仕事をかえるとしている。「特別な委員会」が統治をし、自然発生的にグループが組織の枠をこえてともに集まり、すぐに問題にとりくみ、真剣なコンピュータを利用した専門知識をそこに適用し、来たところにもどっていく。

これが多かれ少なかれ、コンピュータ犯罪にとりくむ連邦捜査員の世界でじっさいに起ったことだ。100年以上の歴史がある電話会社はいちじるしい例外だが、じっさいにはこの本でなんらかの重要な役割を果たしている「すべての」組織はまさにFCIC のように機能している。シカゴタスクフォース、アリゾナ組織犯罪・恐喝班、Legion of Doom、Phrack、EFF、かれら「すべて」が「専門チーム」や「ユーザグループ」のようにみえるし、そうふるまっている。それらはすべて、自発的に要望を充たそうと奮い立った電子特別委員会といっていい。

そのなかには警官もいる。厳密に定義したら、犯罪者もいる。政治的な利害がからんだグループもある。ただどのグループをとってもあきらかに、自発性という同じ性質をもっている。「さぁ、やろうども。おれのおじさんがマリファナを手に入れたぜ、ひとつ楽しもうじゃねぇか」というような。

こうしたグループの誰もが、そうした「素人っぽさ」を恥ずかしく思っている。ただコンピュータに詳しくない人たちのもつそういったイメージのせいで、かれらはみんなできるだけお固く、きちんとした落ち着いた感じを与えるようにしている。こうした電子フロンティアの住人たちは、19世紀の州としての地位をもとめた開拓者の集団と類似点がある。ただこうした19世紀と21世紀の「開拓者」の歴史的な体験には、2つの大きな違いが存在する。

まず第一に、力をもった情報テクノロジーが小さな、流動的で、はっきりした組織をもたない集団の手の中に握られてるということだ。「開拓者」、「道楽者」、「素人」、「ディレッタント」、「ボランティア」、「活動家」、「ユーザーグループ」、「トップレベルの専門家集団」は、いつの時代にも存在した。しかしこういった種類の集団が、技術を身につけ、ばく大な専門情報をそくざに仲間、政府、マスコミに流すときには、異なる種類の動物くらいの違いはある。そう、ただのうなぎと電気うなぎくらいの違いがあるのだ。

二つ目の大きな変化は、アメリカ社会が現在永遠に技術革命が起こるような国になっているということだ。とくにコンピュータの世界では、ずっと「開拓者」でいつづけることはぜったいに不可能だ。即死するか、わざとバスから飛び降りでもしないかぎり。こうした状況は、決して制度化してしまうほど速度を緩めることはなかった。20年、30年、40年間、「コンピュータ革命」は拡大しつづけ、新しい社会のすみずみまで浸透した。まともに動くものはすでに時代遅れといっていいくらいだ。

もし一生を「開拓者」として全うするなら、「開拓者」という言葉の本来の意味は失われる。あなたの生き方が、よりしっかりして組織化された「なにかへの」入り口からだんだん遠ざかれば遠ざかるほど、まさしく「今の状況」が現れる。「永遠に続く革命」は、用語としては矛盾している。もし「騒動」が長期にわたって続けば、それは単に「新しい形の社会」であり、歴史はくりかえし、それも新しい登場人物で、新しいルールでといったことだ。

これを20世紀の法取締機関の世界にあてはめると、その結果は今までみたこともない、まさに困惑を覚えるといったものだ。コンピュータ犯罪についてなんらかの官僚的な規則を書いたとしても、書いた端から役に立たないものになり、印刷された頃には骨董品といったところだろう。FCIC の流動性とすばやい反応は、こうした点でおおきな優位性となり、その成功へと結びついている。世界で最大限のやる気をもってしても(じっさいにはそんなものは持ってないが)、アメリカのFBIの規模の組織がコンピュータ犯罪の理論と実践におけるスピードに追いつくことは不可能だ。捜査員を全員そう訓練しようとしたら、「その他のことはなにもできなくなり」、まさに「自殺行為」といっていい。

FBI は、バージニア州クオンティコの基地で電子犯罪の基礎を捜査員におしえようとしている。そしてシークレットサービスもその他の取り締まりグループとともに、電話詐欺、企業犯罪、コンピュータ侵入に関するよく練られた参加者が多い訓練コースを、ジョージア州グリンコの連邦取締訓練センター(FLETC、「フレッティシー」と発音する)で開いている。しかしこうした官僚的な努力のどれだけをもってしても、FCICのような「最前線の混乱」の必要性は取り除くことができない。

なぜなら、みてきたように FCIC のメンバーが残りの取締機関の人たちを訓練しているからだ。事実上も文字通りでも、別名グリンココンピュータ犯罪学部といったところだ。もし FCIC がバスでがけから落ちたら、アメリカの取締コミュニティはコンピュータ犯罪の世界で目もみえず、耳もきこえなくなったようなもので、FCIC をすぐさま必死に最初から作り直さなければならない。そしてゼロからやりなおしている時間はない。

1991年の6月11日、ぼくは再びアリゾナ州のフェニックスを FCIC の直近の会議にでるため訪れた。この華々しいグループのだいたい20回目の会議だ。何回なのかははっきりしない、というのも「協議」の打ち合わせもそこにふくめるのかどうか、誰にもわからなかったからだ。協議とは FCIC がその呼び名のような威厳をもつ前の、1980年代中旬に呼ばれていた呼び名だ。

ぼくがこの前5月にアリゾナを訪ねてから、AzScam の収賄スキャンダルは広範囲に不面目が広がる事態となっていた。フェニックスの警察のトップは、捜査員が9人の州議員の悪事をビデオ録画したのだが、おとり捜査の正当性をめぐってフェニックスの市議会とはげしく争って辞任していた。

フェニックスの警察のトップは、Gail Thackeray とその仲のよい11人の仲間と政治的な理由で失業するという経験を共有したわけだ。6月時点では、アリゾナ司法局での辞任はまだ続いていた。これは見方によって、ゴミ一掃とも策略パートUとも解釈できるだろう。

FCICの会議は、Scottsdale Hilton Resort で行われた。Scottsdale はフェニックスの近郊の高級住宅地で、地域の流行を追う皮肉屋には"Scottsdull"と知られているが、豪華なショッピングモールと手入れのいきとどいた芝生があり、見捨てられたホームレスが目にはいることはない。Scottsdale Hilton Resort は最先端の南西部風スタイルの広大なホテルである。その目玉は、トルコ石風のタイルでおおわれた「宗教風の鐘楼」であり、どこかサウジ風の光塔に似ていた。

内部は、全面サンタフェ風の奔放なストライプの模様がついていて、階下にはフィットネスクラブがあり、中庭には奇妙なかたちをした大きなプールがあった。

ぼくは簡単なディスカウント割引で FCIC のメンバーとして登録をして、連邦捜査員をさがしにでかけた。果たして、ホテルの裏の方から聞き間違えようのない Gail Thackeray のおしゃべりの声が聞こえてきた。

ぼくはコンピュータの自由とプライバシー会議(これについて詳しくは後述)にも出ていたので、Thackeray が法取締機関の人たちといっしょにいるのに会うのはこれで二回目だった。またもや僕は法取締機関の人たちが Thackeray に会えるのをただ楽しみにしていることに感銘をうけた。彼女が「ある程度」注目を集めるのはふつうのことだ、なぜなら30人ほどの男たちのグループの中で、2人しかいない女性の一人なわけだし。ただそこにはそれ以上のものがあった。

Gail Thackeray は、FCICの社会を先導する役割を体現しているのだ。みんな彼女が司法長官補佐をやめたことを気にしていた。そのことを残念に思っていたし、もちろんくそったれなことに、みんな失業したわけだった。ただもしかれらが安定した退屈な仕事を好むような種類の人間だったら、そもそもがコンピュータの仕事についたりはしなかっただろう。

ぼくはふらふらと彼女の一団に加わり、知らない人5人に紹介された。そしてぼくが FCIC に参加する条件が検討された。だれの発言も直接引用しちゃいけない。出席している捜査員が表明した意見をその組織と関連づけることもしない。ぼくはシークレットサービスのやつがFBIのやつと礼儀正しく話すのを(これは純粋に仮定にすぎないが)書いちゃいけない。まぁ、その2人が話しあうなんてことは「決してない」わけだから。そしてIRS(出席していた、これも仮定)は「けっしてだれとも話をしない」わけだし。

なにより悪いことに、ぼくは最初の会議に参加するのを禁止され、参加できなかった。その午後に FCIC の人たちがドアの向こう側でなにを話し合ってたかは、全くわからない。ぼくはかれらがざっくばらんに話し合い、自分たちの失敗やへま、大失態なんかを話してたんじゃないかと思う。というのも、これが1986年の伝説のメンフィスでのビールパーティ以来の FCIC の全会議の特徴だったからだ。たぶん FCIC だけに注目が集まるのは、そこに出かけていき、くつろいで、話している内容をちゃんと理解してくれる人たちとまったく対等に話ができるところにあるのだろう。あなたが話していることを理解してくれるだけでなく、「本当に注意をはらって」くれて、「自分のするどい所をほめて」くれ、おまけに許してくれる。それらはほとんど、あなたの上司でさえできないことだ。なぜなら上司ときたら、あなたが「ROM」、「BBS」、「T-1 回線」なんていいだしたら、すぐに目がどろんとしてしまうから。

ぼくはその午後には、それ以上することがなかった。FCIC の連中は会議室でせっせと働いていた。ドアはしっかり閉まっていて、窓は覗き込むには暗すぎた。ぼくは本当のハッカー、コンピューター侵入者ならこうした会議でどうするかを考えてみた。

答えはすぐにでる。その場をめちゃくちゃに「荒らす」だ。なにか傍若無人に暴力でその場を荒らすわけじゃない。「荒らす」とは、ハッカーの用語ではそういった意味ではない。しずかに「ゴミ箱を荒らして」、不用意にもすてられた価値あるデータを手にするわけだ。

ジャーナリストはこうしたことをするので知られている(今までハッカーがやってきた非倫理的な行動のどれも、ジャーナリストが情報を集めるのにやるのが知られているものばかりだ。それどころかジャーナリストしかやらないようなひどいやり方もあったりする)。「ゴミ箱荒し」が合法かは疑わしいが、じっさいに明らかに法律に違反しているわけではない。ただ、FCIC のゴミ箱荒しをしようと考えるのはばかげている。参加者はゴミ箱荒しのことを良く知ってるし、ぼくが15秒と続けられないことはいうまでもない。

ただ、アイデアは悪くはなかった。最近そういった行為についてはいろいろ聞かされていた。とっさの思いつきで、ぼくは FCIC の会議室の「反対側」の、捜査員たちにはなんの関係もない部屋のゴミ箱を荒してみることにした。

そこは小さな部屋で、いすが6つと、テーブルが一つ。ただドアが開いていたので、プラスティック製のゴミ箱をあさった。全く驚いたことに、破り捨てられたSPRINT長距離電話請求書をみつけた。もっとあさってみると、銀行口座の報告書と手書きの手紙をやぶったものが、ガム、すいがらやキャンディーのつつみ紙、昨日の USA TODAY といっしょにでてきた。

ゴミ箱はもとにもどし、屑のデータは自分の旅行かばんにしまいこんだ。ぼくはホテルのお土産屋に立ちよって、セロテープを買い、部屋にもどった。

偶然なのかどうか、ただじっさいに起こったことだ。どこかのかわいそうな人が、じっさいに SPRINT の請求書をホテルのゴミ箱に捨てたのだ、1991年5月、請求額は全部で252ドル36セント。ビジネス用の電話ではなく、家庭用でイブリン(仮名)という名前の人のものだった。イブリンの記録には、##支払い期限切れ##とかかれていた。そして9桁のアカウントIDがあり、コンピュータが打ち出した厳しい警告が印刷されていた。

「FONCARD(クレジットカード方式の電話カード)の取扱いは、クレジットカードと同じように考えてください。悪用に対抗するためには、電話をかける以外で決して FONCARD番号を電話に入力しないでください。疑わしい電話がかかってきた場合はすぐに顧客相談窓口に知らせてください」

時間をみたが、FCIC が終わるまでにはたっぷり時間がありそうだった。イブリンの SPRINT の請求の切れ端をならべなおし、セロテープで張り合わせた。10桁の FONCARD番号も記載されていた。ただ本当に悪用するのに必要なID番号はないように思われた。

だけど、ぼくはイブリンの自宅の電話番号はわかった。それにイブリンが長距離電話をかける友達や知り合い全員の電話番号も。San Diego、Folsom、Redondo、Las Vegas、La Jolla、Topeka、Northampton Massachusetts の人たちがいたし、Australia の人もいた。

他の文書も調べてみると、銀行口座の報告書もあった。イブリンのカリフォルニア州サン・マテオにある銀行の個人退職年金口座で、残高は1877ドル20セントだった。382ドル64セントのカードの請求書もあり、彼女は分割払いをしていた。

まったく非倫理的で、好奇心のおもむくままといった動機で、手書きの紙をしらべてみた。かなりこまかくちぎられていたので、貼り合せるのにたっぷり5分はかかってしまった。

それはラブレターの下書きだった。イブリンの勤めている会社、生物医学会社の下罫のはいった用紙に書かれていた。たぶんなにかほかのことをしなきゃいけないとき、仕事中に書いたんだろう。

「ボブへ」(これも仮名)「わたしは、誰の人生にも厳しい選択をしなきゃいけないときがあると思うの。でもこれはわたしにとって非常に厳しい選択だし、まったくひどいこと。あなたが電話してくれなかった、わたしはどうしてなのかまったくわからない、できるのはそうしたくなかったからなのかと推測することだけ。金曜日には電話をくれると思ってたのに。あなたは電話してくれたのに、私の電話でちょっと問題があっただけ。そう願ってるわ」

「ロバート、わたしに『行ってくれ』といったわね」

最初の紙はこう終わっていた「電話にちょっと問題が?」次の紙を急いでみた。

「ボブ、この週末にあなたから連絡がなかったので、私はすごく困惑したの」

次の下書き。

「ボブへ、いまは理解できないことが多すぎる。理解できることを希望してるわ。あなたと話したい、理由はわからないけどあなたは電話してくれない。わたしにとって理解するのは難しすぎるわ」

彼女はべつのも試していた。

「ボブへ、あなたのことをいつも尊敬してきたから、いい友達でいられる希望をもっていたわ。でもいま一番大事なものが失われてしまった、それは敬意。目的を達したら、人を切り捨てるあなたの態度がわたしにはショックなの。あなたが今わたしにできることで一番親切なのは、ほっといてくれること。もうあなたのことを歓迎できないわ。私の心でも家でも」

再度。

「ボブへ、わたしはあなたにどれほどの敬意が失われたかを事実に基づいて書くわ。あなたの人に対する態度、とくに私に対する態度は、気づかいのない冷たいもの。あなたが私のためにできることで一番やさしいことは、完全にわたしのことをほっといてくれることだわ。あなたはもう私の心でも、家でも歓迎されない。できるかぎりはやく借金をかえしてくれればうれしい。もうあなたと関わりたくないの。かしこ、イブリン」

なんてことだ、ぼくは思った。こいつは金を借りてたんだ。ぼくは次のページをめくった。

「ボブ、簡単に書くわ。さようなら。心理ゲームも、魅惑、冷淡、あなたへの敬意もなしよ。終わりにしましょう。完、イブ」

下書きが終わった手紙は2種類あった。でも言ってる事は同じだ。たぶん、それを投函しなかったのだろう。ぼくの悪意のある恥知らずな盗品の最後のものは、「ボブ」宛ての住所が書かれた封筒だ。でも切手もなかったし、投函されてない。

思うに、彼女は単にろくでもないボーイフレンドが週末に電話をくれなかったので荒れてただけなんだろう。たいしたことじゃない。たぶんキスでもして仲直りして、彼女とボブはチョコレートの店にでもでかけて、チョコ入りの飲み物をいっしょに飲んでいることだろう。まちがいない。

確かめるのは簡単だ。イブリンに電話すればいい。ちょっと本物らしい話と、じゅうぶんウソをつくずうずうしさがあれば彼女から本当のことを聞き出すことができただろう。電話フリークやハッカーなら、電話でしじゅう人をだましている。それは「ソーシャルエンジニアリング」とよばれている。ソーシャルエンジニアリングは、アンダーグラウンドではよくありがちな行為で、不思議なほど効果がある。人間は、コンピュータセキュリティにおいていつでも一番弱い鎖の輪なのだ。知ってはいけないとされていることを知る一番簡単な方法は、知っている人に電話をかけて教えてもらうことだ。ソーシャルエンジニアリングで、ちょっとばかり特殊な知識を活用すれば、すでに鍵を手にしたも同然で、あなたは人をだましてあなたに資格があると信じ込ませることができる。そうしたらおだてたり、おどしたりして知りたいことはほぼなんでも知ることができる。人をだますのは(とくに電話ごしなら)簡単だし、楽しい。人がだまされるのを食い物にするものは、とても楽しいことだ。だました人へのとてつもない優越感を感じることができる。

もしぼくがゴミ箱荒しをする悪意あるハッカーだったら、イブリンを思い通りにしていただろう。こうした内部情報をもってすれば、説得力のあるウソをつくのはまったくたやすい。もしぼくがすごく無慈悲で、うんざりしていて、また十分かしこかったら、彼女のこうしたうかつなちょっとした行為が、もしかしたら泣きながらの行為だったもしれないが、彼女を混乱と悲しみの満ち満ちた世界へいざなう原因となったのだ。ぼくは、「邪悪な」意図をもとうとすることまではしなかった。たぶん、彼女の「味方」をしてボブに代わりに電話をして、もしイブリンに電話してさっさとステーキの夕食にでも誘わないと両ひざをたたきわるぞと匿名でおどしてもよかったのかもしれない。ただこれは「ぼくには全く何の関係もない」ことだ。こういったことを知ること自体がいやしい行為で、それを利用するなんて全くのいやしい不当な害を与えることになる。

こういったひどいことをやるのに、ハイテクの専門知識は全く必要ない。いるのは、やろうとする意思とねじまがった想像力が一定量だ。

ぼくは下に降りていった。熱心な FCIC は、スケジュールを45分もこえて会議をして、その日は終わりになっていたが、会議はホテルのバーに持ち越されていた。ぼくらはビールで乾杯した。

ぼくは、Isis に関わる男と話をした。つまり IACIS、the International Association of Computer Investigation Specialists(国際的なコンピュータ特別捜査官のあつまり)だ。かれらは「コンピュータの科学捜査」、証拠としての価値を失わずにコンピュータシステムを隔離する方法について関わっていた。IACIS はオレゴンを離れて運営されている、構成する捜査官もアメリカ、カナダ、台湾、アイルランドに及んでいる。「台湾やアイルランドだって?」 ぼくはいった。「台湾」や「アイルランド」が本当にこうしたことの最前線なのか? ぼくの話し相手は「正確にいえばちがうね」と認めた。たまたま口コミで最初に加わっただけだ。ただ、国際的な視野は必要だ。これはまさしく国際的な問題だから。電話線はどこまでもつながっている。

カナダ王立騎馬警官からも警官が一人来ていた。なかなか充実した時間を過ごしたようだった。海外のセキュリティリスクの問題をもちだしたので、だれもこのカナダ人を追放したりはしなかった。これがサイバースペースの警官たちだ。「管轄」についてはいろいろ心配することはあったが、単に地理的なことが問題になることはない。

NASA は姿をあらわさなかった。NASA はコンピュータ侵入でいろいろ被害をうけている。とくにオーストラリアの侵入者たちや、大々的に報道されたカオスコンピュータクラブの件で。そして1990年には、NASA のヒューストンの支部の一つが電話フリークの一団に計画的に盗用されていたという、短期間の報道陣の大騒ぎがあった。しかし NASA の人たちは予算をカットしており、なにもかもを削減している。

空軍のOSI、特別調査部(Office of Special Investigations)は、コンピュータセキュリティにフルタイムで関わっている「唯一」の連邦の組織だ。大挙して姿をみせるかと思われていたが、何人かはキャンセルしたようだ。国防総省の予算もピンチなわけだ。

空杯が重なるにつれ、男たちはふざけはじめ戦果話をしはじめた。「かれらも警官なのよ」 Thackeray は寛容にそういった。「仕事のはなしをしてないときは、女かビールのはなしよ」

ぼくはある男がコンピュータのディスクの「コピー」を欲しいといわれて、そのディスクのラベルをコピー機でコピーしようとした男の話を聞いた。フロッピーディスクをコピー機のガラスの上に置いて、コピー機が動いたときの大量の静電気でディスクの本当の中身は全て消えてしまったと。

べつのかわいそうなやつは、バッグいっぱいのディスクをパトロールカーのトランクの警察無線の横にほうりこんで、警察無線の協力な電波がそれらをすべて消してしまった。

ぼくらは Dave Geneson のことも少し聞いた。最初のコンピュータ犯罪取締官で、Dade郡でメインフレームの管理者をしていたが、法律家に転身した。Geneson は全力をつくすタイプの男で、コンピュータ犯罪取締へと転身した一人の高潔な人物だった。一般的に、コンピュータのことをよく知っている人が、次に警察や検察の仕事を覚える方がやさしいというのはだれもが納得することだ。コンピュータ関係の人をつれてきて、警察の仕事をできるように訓練する。しかしもちろん彼らが「警官のメンタリティ」をもっていなければならない。渡世術を覚えなければならない。忍耐、ねばりづよさ、思慮分別。かれらが大物ぶったり、目立ちたがったり、「無鉄砲なカウボーイ」でないことを確かめなければならない。

バーにいるほとんどの人たちは、軍の情報部やドラッグ課や殺人課の経験があった。「軍の情報部」はそもそも言葉の矛盾だとか、殺人課のぞっとするような世界もドラッグ捜査よりはずっとキレイなもんだとかいう辛らつな意見が交わされていた。ある男は、ヨーロッパで4年にもわたってずっと麻薬の秘密捜査員の仕事をしていた。「いまはずいぶん元にもどったよ」その男は、本物の警官ならではの、しんらつなブラックユーモアを無表情で語った。「もう、ファッカーの前にマザーをつけなくても言えるようになったしな」

「警官の世界では」他の男が意気込んで言った。「全てのものがいいか悪いか、白か黒かだ。コンピュータの世界じゃ全てが灰色だ」

ある男、FCIC の創設者で、協議会だったことからこのグループに関わってきている男が、この分野にかかわるようになった経緯を語った。元はワシントンDCの殺人課で「ハッカー」の事件に呼ばれた。「ハッカー」という言葉から、かれは自然とナイフを操る強盗を追跡することを想像して、血と死体をもとめてコンピュータセンターへと行った。そこで何が起こっているのかとうとう理解したとき(ざんざん怒鳴りちらかし、プログラマーに英語をしゃべれといったが無駄だった)、本部に電話をしてコンピュータのことなんて何も知りませんと報告した。本部はかれにどちらにせよ誰もこれっぽっちも知りゃしないんだから、戻って仕事をしろといいつけたということだ。

かれが言うには、だから比喩をつかって捜査をすすめたんだと。類推、比喩をつかってだ。だれかがコンピュータに侵入した、なんだって?「押し入ったんだな、わかった、どうやって侵入したんだ?」「電話線で、です」「電話のいやがらせだな、わかった。盗聴して逆探知しなきゃならんな」

それで上手くいき、なにもしないよりはましだった。そして同じようなことをしている別の警官と連絡をとったときにはもっと仕事が上手く進んだ。そうして二人が三人目をあつめ、そして四人とすぐに協議がはじまった。だれもが Carlton Fitzpatrick というグリンコのデータ処理の教官を知っているようだったのも大いに助けになった。

メンフィスの86年の集まりで、はでに氷がとけることがあった。協議会にはあたらしい連中がわんさかやってきた。シークレットサービス、FBI、軍、その他の連邦職員、大物たちだ。だれも何も他人に言おうと思っていなかった。もし何かを言えば、職場にもどったら首になると疑っていたのだ。かれらは居心地の悪い午後をびくびくしながらすごした。

形式主義ではなにもおこらなかった。しかし公式のセッションが終わってから、主催者がビールのケースをもちこんだ。参加者が官僚の地位や縄張り争いをやめると、すぐになにもかもが変わった。「打ち解けたんだ」あるベテランがなつかしそうに、また誇らしげに思い出していた。夜がふけて、空のビール缶がうずたかく積み上げられ、チームの歌を作曲するほど何もかもが行われていた。

FCIC だけが、コンピュータ犯罪に関係する人たちの集まりではない。DATTA(District Attorneys' Technology Theft Association)たいがいはチップの盗難や知的財産、ブラックマーケットを専門にあつかっている。HTCIA(Tech Computer Investigators Association)もシリコンバレーにあるが、FCIC より一年歴史が古く、Donald Ingraham のような傑出した人を輩出している。フロリダには LEETAC (Law Enforcement Electronic Technology Assistance Committee)があり、コンピュータ犯罪対策本部はイリノイ、メリーランド、テキサス、オハイオ、コロラド、ペンシルバニアにある。ただこれらはいずれも地域のグループだ。FCIC は、じっさいに全国をネットワークで結んだ連邦レベルの最初のグループである。

FCIC の人たちは、電話線にたよって生きている。掲示板にではない、掲示板が何かはよくしっているが、掲示板はセキュアでないと分かってる。FCIC のだれもが、信じられないような通話による電話代を払っている。FCIC の人たちは、長期にわたって電話会社の人たちと固くむすびついている。電話のサイバースペースが、かれらの生まれ育った場所なのだ。

FCIC には3つの基本的な区分がある。教育、セキュリティ、捜査の3つである。呼び方も「捜査委員会」であって「コンピュータ犯罪(computer-crime)」という言葉、悪夢のような「Cがつく言葉」を避け、いっさいふれてないのはそういったわけだ。公式には、FCICは「個人というよりは捜査員の集まり」である。非公式には、この分野は非常にせまいところで、個人や個人の専門家の影響は大きなものがある。出席は招待によってだけであり、FCIC のだれもが自分のことを今いるところでは認められていない預言者だと思っている。

何度も何度も言葉は違うが、いいたいことは同じであるこういった言葉を僕は耳にした。「わたしは荒野にずっと一人ですわっている」、「ぼくは全く孤立していた」「FCIC は、アメリカでコンピュータ犯罪に関する場所としては最高だ」「FCIC こそがじっさいに上手く動いている場所だ」「本物の人たちがじっさいにそこらで起こっていることを話してくれるのは、ここだけだ。弁護士たちがあら捜しをしてるのとは違ってね」「われわれはお互いに知ってることをすべて教えあうんだ」

こういった発言に心がこもっていることをみても、これが本当であることは確信がもてる。FCIC は本物で、その価値は計り知れない。FCIC はまたアメリカの法取締機関の中で、他の歴史や権力構造のある組織と激しく対立している。アメリカのシークレットサービスが1860年代に登場して以来、FCIC ほどいいかげんでかつ上手く動く組織はたぶん存在しなかったことだろう。FCIC の人たちは、20世紀の環境で21世紀の人たちのようにふるまっている。そしてそれについて賛成する声も山ほどあれば、反対する声も山ほどある。反対派がたまたま予算を管理しているのだ。

二人のジャージーからきたFCIC の男が思い出話に花をさかせていた。一人は1960年代のかなり過激なギャングのバイク乗りだった。「おい、やつを知ってるか?」ジャージーからきたもう一人が答えた「でかい奴だろ、ずんぐりした」

「あぁ、知ってるよ」

「あぁ、やつも俺らの仲間の一人だったんだ。ギャングのスパイをやってたんだよ」

「ほんとに? ひゅー、やつをしってたぜ、嫌なやつだったな」

Thackeray は1969年の11月にワシントン広場の反戦デモで催涙ガスで目が見えなくなったり、大学新聞でそういったことを取り扱ったのを長々と思い出していた。「あぁ、僕もそこにいたよ」他の警官が口をはさんだ。「催涙ガスがなにかの役にたったと聞いて嬉しいよ。はっはっは」。そして自分も目が見えなくなって、その日逮捕できたのは小さな木だけだったと告白していた。

FCIC は変わったグループだ、偶然と必然性でよりわけられ、新しい種類の警官が存在する。この世界には、たくさんの専門家の警官がいる、詐欺の警官、ドラッグの警官、税の警官、しかしFCIC のように全く孤立しているグループはたぶん児童ポルノの警官ぐらいだろう。両方とも秘密を扱い、必死に禁じられているデータをやりとりして隠そうとしているし、法取締機関でさえだれもその内容を聞きたがらないからだ。

FCIC の人は、職をひんぱんにかわってることが多い。希望したり必要としている装備や訓練をうけられることはほとんどない。しかもきわめてよく訴えられている。

夜もすぎていき、バーにバンドが準備され、話はだんだん暗い方向へ向かっていった。政府はなにもしないね、と誰かが意見をだした。「災害」が起こるまではね。コンピュータの災害は恐ろしい、ただそれがFCIC の人たちの信頼を高めるのに一役かっていることは否定のしようがない。たとえばインターネットのワームも「何年もわれわれはそれについて警告してきたが、これから起こることに比べればなんでもない」。こうした人たちは恐ろしいことを予想している。恐ろしいことがおきるまで、何も本当の対策がとられないことを知っているのだ。

翌日、かつてコンピュータ警官だった男からかなり長い講義をうけた。アリゾナ市議会とのごだごたに巻き込まれて、いまはコンピュータネットワークの敷設で生計を立てている(給料も大幅に上がっている)。かれは光ファイバーネットワークを離れたところまで敷設することについて話していた。

一台のコンピュータでも、周辺装置がたくさんあれば、文字通り「ネットワーク」を構成しているといえる。一群の機械がケーブルで接続され、たいがいステレオ装置もまっさおな複雑さでつながれている。FCIC の人はコンピュータを押収してそうした証拠を保存する方法を作り出し、公表している。だいたいは簡単なものだが、今日ドラッグ捜査やホワイトカラー犯罪のまんなかでいそがしいコンピュータにつまづいている警官たちにとっては非常に重要なルールである。手に触れる前に写真をとれ。なにかを抜く前に全てのケーブルの端にラベルをつけろ。ディスクドライブは動かす前にそのヘッドを「固定」しろ。ディスクを押収しろ。ディスクを磁気が発生する場所に置くな。ボールペンでディスクに何かを書くな。マニュアルも押収しろ。プリントアウトも押収しろ。手書きのノートもだ。データは見る前にコピーしろ、それからオリジナルは置いといてコピーを調べろ。

ところでわれわれの講義では、一般的なLAN(つまりLocal Area Network)の構成図のコピーが配布された。それはたまたまコネチカット州にあるLANだった。「159」台のディスクトップコンピュータ、それぞれに周辺機器がついている。3台のファイルサーバー、それぞれ32ポートの5台の「スターカプラ」、役員室には16ポートのカプラが1台設置されている。このすべての機械がおたがいに通信して、電子メールやソフトや、ありそうなことだが犯罪の証拠を配信している。すべての機械が高性能の光ファイバーで結ばれている。悪いやつが、警官は「悪いやつら」としばしばいうが、パソコンの47番か123番に隠れていて、他の事務室、もしくは他の階、もっとありそうなのは2、3マイルも向こうにある誰かの「パーソナル」コンピュータに自分の犯罪となるものを送信しているかもしれない。あるいは考えられることだが、証拠は「データ分割」されているかもしれない。意味がなくなるほど細かく分割されて、その一つ一つがぼうだいな数の全然別のディスクドライブに蓄積される。

講演は解決法について説明しようとしていた。ぼく一人ではまったくお手上げだった。僕が判断する限り、コサック人が城門のところに押し寄せているようなものだ。この一つのビルの中だけでも、サンデビル作戦を通して押収されたディスク全部よりもたくさんのディスクがあることだろう。

「内部情報提供者」と誰かがいった。正解。人間の観点からの見方がある。ハイテクの不可解な奥底を考えているとどうしても簡単なことを見落としてしまう。警官は人に話をさせる技術をもっている。そしてコンピュータに関わる人たちは椅子が一つと集中力がつづけば、声がしゃがれるまで話し続ける。この事件では、簡単なひとつの質問「どうやってやるの?」に対する記録があった事件だった。45分にわたってビデオでコンピュータ犯罪者から聞き出して、かれは完全に自分を有罪にしているだけでなく、有益な設計図さえ描いていた。

コンピュータに関わる人はよく話す。ハッカーは「自慢」する。電話フリークは「病的な」おしゃべりだ。そうでなければ何だって、かれらが電話課金コードを盗む必要があるのだろう、十時間も国の反対側の海岸の友達とべちゃくちゃしゃべるんでなければ。コンピュータに詳しい人たちはじっさいに気のきいたコンピュータ機器と技術を保有していて、ありとあらゆる人目をひく不正行為を隠すことができる。もしかれらがただそのことについて「黙って」さえいれば、ありとあらゆる驚くべき情報犯罪を犯しても、罪に問われず逃げることができるだろう。しかし物事はそういうわけにはいかないのだ。いや少なくとも、「これまでは」そういうわけにはいかなかったということだ。

電話フリークのほとんどは、つかまるとすぐに自分のやり方や弟子や仲間のことを話した。ホワイトカラー犯罪者もほとんどうぬぼれて、自分の賢い計画が防弾チョッキみたいなものだと考えている。ただ人生ではじめてじっさいに冗談じゃなく本物の警官がこちらに身をのりだし、シャツをつかみ、目をまっすぐみてこういったときに、すぐにそうでないことを学ぶのだ。「いいか、くそったれが、おまえとおれで警察署にいくんだ」。世界中のどんなハードウェアでも、あなたをそういった実際の現実の世界での恐怖や有罪の感覚からは守ってくれない。

警官はずるがしこい犯罪者の何から何までをしらべなくても、肝心なところをつかむ方法を知っている。警官はさっさと要点をつかむ方法を知っている。警官は、他の人たちが知らないようなことをたくさん知っているのだ。

ハッカーも他の人たちが知らないようなことをたくさん知っている。ハッカーはたとえば、他人のコンピュータに電話回線を経由して忍び込む方法を知っている。しかし警官は「まさにあなたの玄関先に」あらわれて、「あなた」とコンピュータを別々の鋼鉄の箱にいれて連行することができる。ハッカーに興味をもった警官は、つかまえてきびしく尋問することもできる。警官に興味をもったハッカーは、うわさやアンダーグラウンドの伝説にたよるしかない。それは警官が世間に知らせたいと思ったことでもある。そしてシークレットサービスは、うっかり秘密をもらしてシークレット(秘密)をサービスするからその名前がついたわけではない。

講師が教えてくれたことには、光ファイバー回線を盗聴するのは「不可能」だという誤った考え方の人がいると。講師が言うには、そこで自分の子供と手軽に光ファイバーの盗聴装置を家の作業部屋でつくったということだった。講師はそれを、現場で見てもわかるように回路を中に隠したLANに接続するカードといっしょに観衆へまわした。ぼくらはそれを見た。

盗聴装置は、まぎれもない「まぬけな試作品」だった。親指ほどの長さの金属の丸い円柱で、2つのプラスティックの金具がついていて、片方の端には3本の細く黒いケーブルがぶらさがっている。そしてケーブルの端にはそれぞれ小さな黒いプラスティックのキャップがかぶっていた。ケーブルの端からその安全用のキャップをとると、針穴ほどの大きさの光ファイバーが顔をのぞかせていた。

講師はぼくらにその金属製の円柱が「波長分割多重送信」装置で、明らかにやることは光ケーブルを切って、その間に二本のケーブルでネットワークをつなぐ。それからもう一本のケーブルをなんからのモニターにつないで、通過するデータを読み取る。あまりに簡単なので、なぜ誰もいままでこんなものを思いつかなかったのか不思議でならない。またこの講師の家の作業場にいる息子にも、ティーンエイジャーの友達がいるかどうかについてもぼくは想いをはせた。

休憩になり、となりにすわっていた男は Uzisサブマシンガンを宣伝する野球帽をかぶっていた。ぼくらは Uzis の長所についてとりとめのない話をした。ながいあいだシークレットサービスのお気に入りだったが、ペルシャ湾岸戦争が勃発していらい人気がなくなったようだ。アラブの同盟国が、イスラエルの武器を携帯しているアメリカ人にいくらか腹をたてたかららしい。それに、専門家にも Uzis は壊れると聞いたことがある。今日の携帯する武器の選択は、Heckler & Koch でドイツ製である。

その Uzis の帽子をかぶった男は、犯罪捜査の写真をとっていた男だった。かれはまたコンピューター犯罪事件での数多くの写真捜査もしていた。かつてはつまりフェニックスで首になるまでは。今は民間で捜査をしており、妻といっしょに結婚写真とポートレイトの写真を専門でとる写真館をやっている。またくりかえすことになるが、収入はかなり増えたとのことだ。

かれはまだ FCIC に入っていた。もし FCIC にこれば、犯罪捜査の写真について専門家と話す必要があるかもしれない。そう、いるのは来たいからだし、来れるからでもある。もしかれが姿をあらわさなければ、みんな寂しがることだろう。

講師は、押収を実行する前にコンピュータシステムの予備捜査をするのが大事だとポイントをあげていた。そこには何台の機械があるのか、どんな種類の機械があるか、どんな種類のOSをつかっているのか、何人がそれを使っているのか、実際のデータ自体はどこにあるのかを知るのが肝心だ。事務所に押し入って、「全てのコンピュータ」を要求しても、すぐさま大混乱になるのがオチだ。

つまりじっさいには、事前に慎重な調査が必要だということだ。事実必要なのは基本的には秘密捜査ということになる。諜報活動。「スパイ」、あまりいいこととはいえない

講義のあとの話で、出席者に「ゴミ箱荒し」が効果があるのかを尋ねてみた。

ぼくは「ゴミ箱調査」の理論と実践について簡単な説明をうけた。警察の「ゴミ箱調査」は、「手紙の調査」や電話の盗聴と同じように判事の許可が必要だ。これは、警官の「ゴミ箱荒し」の仕事はハッカーのそれと全く同じで、ただずっと組織化されているということだ。僕が聞いたところでは、もっとすごいのはフェニックスのギャングたちは、特別な高セキュリティのゴミ会社が集めた鍵のかかるゴミ箱を広範囲に利用していたという。

ある事件ではアリゾナの警官の特別チームはある家のゴミを4ヶ月にわたって調べていた。毎週改造したゴミ収集車で姿をみせ、ごみ収集人のかっこをして容疑者のゴミ箱の中身を木陰まで運んで、そのゴミを徹底的に調べる。いやな仕事だ。住人に一人、腎臓透析をうけているものがいたことを考えると特にそうだ。すべての使えそうな文書はきれいにして、かわかし、調べる。廃棄されたタイプライターのリボンもとくに利用価値の高いデータ源だ。一本の当たりのリボンには、その家から出された全ての手紙の内容が含まれている。手紙は、警察の秘書によって、机にそなえつけられている大きな拡大鏡をつかってきちんとタイプしなおされる。

「ゴミ箱荒し」全体にどこかいやな胸騒ぎを起こさせるようなものがある。思ってもみない、とくに嫌な気分になる個人のパーソナルな部分を傷つけるからだ。われわれが毎日捨てているもの、全く当たり前だと思っているものがこんなに簡単に利用されてしまうのだ。いったん利用されると、こうした弱点を利用する知識は拡大しがちだ。

もっと下をみて「マンホールのふた」をとりあげてみよう。つまらないマンホールのふたは、コンピュータセキュリティの多くのジレンマの縮小図を描き出している。マンホールのふたは、もちろん、人工物であるが、都市のインフラへのアクセスポイントになっている。ぼくら大衆にとっては、マンホールのふたは気づきもしないものだ。現在何年にもわたって、シークレットサービスは大統領パレードのすべてのルートについてマンホールのふたをふさぐよう主張してきている。もちろんこれはテロリストが地下から飛び出してきたり、もっとありそうなのは遠隔装置の小型爆弾を道にしかけるのを防止するためである。

最近では、マンホールのふたは犯罪に利用されるようになってきている、とくにニューヨークでは。このあいだ、ニューヨークの電話会社は、ケーブルテレビ会社が電話会社のマンホールに忍び込んで、電話線にそって「使用料金を払わずに」ケーブルを敷設したのを見つけている。ニューヨークの会社は、以下のような犯罪にも悩まされてきた。(a)地下の銅線ケーブルの盗難 (b)ゴミの不法投棄、有毒物質をふくむ (c)殺人の犠牲者を慌てて隠す

マンホールのふたに対する不満はニューイングランドの革新的なセキュリティ会社の耳にはいり、その結果「Intimidator(脅迫者)」という新しい製品がうみだされた。正確に規格化された太いチタン製のボルトであり、そのボルトを外すには特別な道具が必要になる。これらすべての「鍵」には、シリアル番号が登録され製造者が保管している。現在では何千本ものこうした「Intimidator」のボルトが、大統領がとおるアメリカの道路に埋め込まれていて、それはまるでバラの花が撒かれているのの不吉なパロディみたいだ。それらは鋼鉄のタンポポのようにすごい勢いで、アメリカ中の基地や民間の企業のセンターに拡がっている。

たいていはマンホールのふたの下をのぞいて降りていって、そこらがどんな風なのか懐中電灯を片手に歩き回るなんてことは思いつきもしないだろう。厳密にいえば、これは不法侵入になるかもしれない。ただ何かを壊しているわけでもないし、頻繁にそうしたりしなければ、じっさいには誰も気にしないだろう。マンホールに忍び込む自由は、たぶんあなたが行使しようともおもわなかった自由だ。

たぶん今ではあなたの自由は少し制限されている。ただここでそのことを読むまでは、それがなくなったことにも気づかなかっただろう。でもあなたがニューヨークに住んでいれば、その自由はなくなって、その他の場所でもそうなりつつある。これは犯罪、およびその犯罪への対抗策がわれわれにもたらすものの一つである。

電子フロンティア財団が到着すると、会議の方向性が変わった。EFF(その構成人物と歴史については次章で詳しく見る)、市民の自由のグループのパイオニアで1990年のハッカー一斉取締りに直接反応して立ち上がったところだ。

その財団の代表である Mitchell Kapor と主任弁護士の Michael Godwin は「少数派」の連邦の法取締機関とはじめて対決していた。多方面にわたるパブリシティの利用にも気をくばっており、Mitch Kapor と Mike Godwin は専属のジャーナリストを同行させていた。オースティンの Robert Draper で、かれの最近の ROLLING STONE誌についての評判のよい本はいまだに売れている。Draper はTEXAS MONTHLY の仕事できていた。

Steve Jackson/EFF によるシカゴコンピュータ詐欺悪用タスクフォースに対する民事訴訟は、テキサスではかなり地域の話題となった。この場には二人のオースティン出身のジャーナリストがそろったわけだ。じつは、Godwin も(もとはオースティンに住んでいてジャーナリストだった)数えれば、3人がそろっていた。ランチはまるで古きよき故郷で過ごす時間のようだった。

そのあと、Draper を誘ってぼくのホテルの部屋へとあがっていった。ぼくらはこの件についてざっくばらんに長い間話し込んだ。まるで FCIC の縮図でフリーランスのジャーナリスト版のように熱心に情報を交換した。個人的にジャーナリストが取材するときの数々の失敗を告白し、誰が誰なのか、いったいなにが起こっているのかいっしょうけんめい分かるようにしようとした。ぼくは、ヒルトンのゴミ箱からほじくりだしたものもすべて Draper に見せた。ぼくらは「ゴミ箱荒し」の倫理についてしばらく考えたが、憂うつなものだということで意見が一致した。また SPRINT の請求書がはじめてなのに見つかったのは、すごい偶然だということでも意見は一致した。

最初にぼくは「ゴミ箱をしらべ」、それからたった何時間後なのに、他人に自慢している。ハッカーのライフスタイルにかかわるようになっていたぼくは、おもいがけなくその論理に従っていたわけだ。なにかすごいものを不正な手段で見つけたら、僕はもちろん「自慢」しなければ「ならない」し、通りがかりの Draper を自分の不正行為に引きずり込まずにはいられない。ぼくは証人がほしいと思ったのだ、そうでもしなければ、誰も僕が発見したものを信じてくれないだろうから。 

会議にもどると、Thackeray はていねいに、というか幾分ためらいがちに、Kapor と Godwin を同僚に紹介していた。資料が配られた。Kapor はステージの中央にたった。頭脳明晰なボストン出身のハイテク起業家で、自分の財団ではタカのようにふるまい、公衆の面前での講演も非常に上手い。みるからに緊張しているように見えたが、率直にそう認めていた。かれはコンピュータへの侵入は道徳的に間違っていると考えている、ということから話し始めた。それからマスコミが何を書こうと、EFFは「ハッカーを擁護する財団」ではないと続けた。Kapor は自分たちのグループの基本的な動機についてちょっと話し、法取締機関と共通の土台(いつ、とか、その可能性とか)を拝聴したり、もとめていく信念もやる気もあることを強調した。

それから、Godwin にうながされて、Kapor は突然EFFのインターネットのコンピュータが最近「ハック」されたことを明かした。そしてEFFはこれを単なるお遊びとはみなしてないことも。

このおどろくべき告白のあと、会場はものすごく打ち解けた雰囲気になった。すぐに、Kapor は質問にさらされ、たくみな返事で反論をかわし、定義の議論をはじめ、いつものおなじみの楽しみのようにパラダイムをもてあそびだした。Kapor は、電話会社の「発信者番号通知」サービスのメリットについての彼のするどい懐疑的な分析で大きな反響をえたようだ(この話題では FCIC と EFF は争ったことはないし、特別弁護しなければならない土台ももっていない)。発信者番号は消費者のプライバシーのためということで推進されてきたが、Kapor のプレゼンテーションではそれは「煙幕」であり、発信者番号の本当の目的は「企業の顧客に電話をかけてきたりファックスをしてきた人すべての広大な商業データベースを作れるようにする」ということだった。明らかにこの部屋のほとんどの人たちが、この可能性については考えたことがなかったようだった。ただたぶん後から遅れて入ったきて、神経質な笑みをうかべていた二人の US WEST RBOC のセキュリティは除いてだが。

それから Mike Godwin が、「コンピュータの捜索と押収において市民の自由が意味するもの」という大々的なプレゼンテーションを行った。そしてとうとうここで本当の肝心かなめの点に至り、真の政治的な駆け引きがはじまった。聴衆は熱心にききいり、ときおり怒りにみちたつぶやきをもらした「おれらの仕事をどうやるか教えてくれるつもりか」「何年もそんなことは考えてるよ! 毎日そんな問題については考えてるんだ」「もし物品を押収しなかったら、その被害者に訴えられるのは私だ」「一万枚の違法な『海賊ソフト』や『盗まれた課金コード』のディスクを放置したら、私が法に違反したことになる」「人々が憲法に違反してないか確かめるのが、われわれの仕事だ。われわれこそが憲法の『保護者』なんだ」「われわれは、押収物がどちらにせよ被害者への賠償として没収されると分かっているときだけ、押収するんだ」

「もし押収するなら、捜査令状じゃなく、押収令状をとればいい」 Godwin は冷静に反論する。さらにすすんでコンピュータ犯罪における容疑者のほとんどは自分のコンピュータが運び出され、どこに行きどれだけの期間かだれもわからない状態になるのを「望まない」と述べた。捜索や徹底的な捜索は問題ではないが、コンピュータはその場で調べて欲しいとおもっているのだ。

「やつらが食事でもだしてくれるのかい?」誰かが皮肉たっぷりに尋ねた。

「データのコピーをとったらどうだい?」Godwin は受け流した。

「それじゃあ、法廷で認められない」

「わかったよ、まずコピーをとる、『かれらに』はコピーをわたそう、でオリジナルを押収すればいい」

うーむ。

Godwin は掲示板システムを、憲法修正第一条が保護する言論の自由がつまっているところだと擁護した。連邦のコンピュータ犯罪訓練マニュアルは、掲示板が悪いものだと決め付けてると非難した。掲示板は、幼児ポルノや犯罪者が跳梁跋扈する犯罪の温床だと暗示していると。じっさいには国中にある何千という掲示板のほとんどは全く無害で、疑わしいことはみじんもないにもかかわらずだ。

掲示板を熱心に運営している人は、そのシステムが押収されれば不満に思う。そしてその掲示板の何十人、何百人というユーザーはその様子をひどい恐怖をもって眺める。かれらの表現の自由の権利は、急に制約をうける。他人と意見をかわす権利が侵害される。そしてかれらのプライバシーは、かれらの電子メールが警察の所有となることで侵される。

掲示板の押収行為について、立ち上がって弁護するものは一人もいなかった。その問題については懲罰的な沈黙の中で終了した。法的な原則は横においといても(そしてこうした原則は法案が成立するか、裁判で決着がつかないと解決できない)、掲示板の押収はアメリカのコンピュータ警察にとって、宣伝広報のガンとなっていた。

それにどちらにせよ、押収なんてことは全く必要ないのだ。もし警官なら、海賊掲示板で内部情報提供者をつかって欲しい情報はなんでも手に入れることができる。たくさんの自警団員、そう「関係する市民」が海賊掲示板が自分たちの領域にかかわってきたらすぐに警察に通報するだろう(そして警察になにもかもを、技術的な詳細に至るまで、じっさいもう黙って欲しいと思うまで何もかもを話してくれるだろう)。かれらは警察によろこんで、大量のダウンロードやプリントアウトを提供してくれるだろう。こういった流動的な電子情報を、警察の手のとどかないところにしまっておくのは「不可能」だ。

電子コミュニティの人のなかには、警官が掲示板を「監視」することになることに激怒する人もいる。シークレットサービスは特に定期的に掲示板を調査しているので、これはやっかいな問題である。しかしこういった特別な媒体でのみ電子警察が耳も聞こえなければ目もみえないといった状態であることを期待するのは、明らかに常識に反している。警察はテレビを監視し、ラジオを聞き、新聞や雑誌を読む。どうして新しい媒体の掲示板だけが違うのだろう? 警官は、その他の人と同じように電子情報にアクセスできる。これまでみてきたように、コンピュータ警官のなかには「自ら」掲示板を運営しているものもいる。そこには反ハッカーの「おとり」掲示板もふくまれていて、たいていきわめて効果的なことがわかっている。

最後の決定的な要因として、あのカナダの騎馬隊員(そしてアイルランドと台湾の仲間)は修正第一条もなければアメリカ憲法の制限もない。しかしかれらのところにも電話線はつながっているし、いつでも好きなときにアメリカのどんな掲示板でもアクセスできる。ハッカー、電話フリーク、ソフト海賊を助けるような、技術が全てを決めるという同じ考え方が、警官の助けにもなる。「技術が全てを決める」ということには、何ら人間的な忠誠心は関係ない。黒人か白人か、体制側の人間かアンダーグラウンドの人間か、なにかに賛成しているのでもなければ反対しているのでもない。

Godwin は長い時間をかけて、かれが言うところの「賢いオタク仮説」なるものを批判した。その仮定では、手入れをしたハッカーは明らかに技術的な天才で、だから徹底的に捜査しなければならない。そして法的な見地からは、なにを見過ごしちゃいけない。全部を押収しろと。そいつのコンピュータを押収しろ、本も、ノートも、電子メールのラブレターの草稿も、ウォークマンも、妻のコンピュータも、父親のコンピュータも、ちいさい妹のコンピュータも押収しろ。従業員のコンピュータも、CD も押収しろ、それらは CD-ROM かもしれない、ポップミュージックにごまかしてるかもしれないから。レーザープリンターも押収しろ、なにか肝心なものをプリンターの5Mのメモリに隠しているかもしれない。ソフトのマニュアルとハードのドキュメントも押収しろ。SF小説とシミュレーションゲーム本も押収しろ。任天堂のゲームボーイとパックマンのアーケードゲームもだ。留守番電話も壁掛け電話もだ。なんであれ、うたがわしき物は全て押収しろと。

Godwin はほとんどの「ハッカー」はじっさいは、技術の天才オタクなんかじゃないと指摘した。洗練された技術をもっていない悪者や詐欺師がほんの少しいて、経験だけがたよりの盗みの技術をちょこっとばかりもっているだけなのだ。同じことは、課金コードを盗むプログラムを海賊掲示板からダウンロードしてる15歳のほとんどにも当てはまる。手当たり次第なんでも押収する必要は全くない。法廷で事件を立証するのに全コンピュータシステムと一万枚のディスクは必要ないのだ。

もしコンピュータが犯罪の手段になっていたら? だれかが尋ねた。

Godwin は、犯罪の手段を押収する原則はアメリカの法システムでは明確に確立しているものだと静かにみとめた。

会議はそこで終わりになった。Godwin と Kapor は帰らなければならなかった。Kapor は翌朝マサチューセッツの公共事業部門で、ISDNのナローバンドの広域ネットワークについて証言するのだ。

二人が帰ると、Thackeray は大得意にみえた。このことについては大きなリスクを背負っていたのだ。同僚たちは、じっさいに Kapor や Godwin をめちゃくちゃに叩きつぶしたりはしなかった。そのことで大変かれらを誇りに思っていて、こうもらした。

「Godwin が『犯罪手段の押収』って言った意味がわかる?」彼女は、だれとはなしに向かって勝ち誇っていた。「それは『Mitch は私を訴えるつもりはない』ってことなのよ」

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