『ハッカーを追え』の翻訳。特に誤訳、誤字などの指摘があったら、メールでもいただければ。
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Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER
CRACKDOWN Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce
Sterling
FLETC: Training the Hacker-Trackers
FLETC:ハッカーの追跡の訓練
連邦法取締訓練センターは、ジョージア州の大西洋岸にあり、1500エーカーの設備をもっている。湿地帯で海鳥がいて、霧がかかり、海風がまとわりつく。やしの木があり、蚊とこうもりのいるような環境だ。1974年までは海軍の航空基地だった、まだ使っている滑走路、第二次世界大戦の年代ものの防塞、将校用の宿舎がある。センターはその状態から4万ドルをかけて改装されたが、施設には国境警備隊が追跡訓練をするには十分な森や沼がたくさんある。
町としては、「グリンコ」は存在していないといっていい。近くの町らしい町は Brunswick で、17号線を数マイル行ったところにある。ぼくはそこの Marshview Holiday Inn という名前の宿に泊まった。Jinright's という名前のシーフードレストランで日曜の夕食をとり、たっぷりの油であげたワニの尾を食べた。この地域の名物料理は、一口サイズの白くてやわらかい、ふわふわしたワニの肉が一杯で、外の皮の衣にはコショウがっかっていて蒸したものだ。ワニは料理としては忘れがたい味だった。とくに Jinright の小型容器から自家製の配合のソースをたっぷりかけたときには。
混み合う客には、旅行者、釣り人、よそ行きの晴れ着をきた地域の黒人住民、どこか気味が悪いほどジョージア州のユーモア作家 Lewis Grizzard に似ているように見える白人の地域民がいた。
75の連邦機関からきた2400人の FLETC の訓練生は、おだやかな地域の風景の中ではほとんど目立たない。訓練生は旅行者のようで、教官たちは深南部のくつろいだ雰囲気になじんでいるようにみえた。ぼくを迎えてくれたのは金融詐欺部門のプログラム責任者の Carlton Fitzpatrick だ。口ひげをはやした筋骨たくましい、よく日に焼けたアラバマ出身の40代後半あたりで、噛みタバコと性能がよいコンピュータとしんらつな南部の教訓話を好む人物だ。ぼくらは、アリゾナのFCICで以前に会ったことがあった。
金融詐欺部門はFLETCの9つの部門の一つで、金融詐欺のほかに、陸海運、小火器、肉体訓練があり、これらは専門業務である。それ以外に5つの一般訓練科目、基礎訓練、作戦、執行技術、法部門、行動科学がある。
このカリキュラムのどれもが、大学を卒業したての訓練生を連邦捜査員にかえるのに必要な全てである。まず訓練生にはIDカードが渡される。それから「洗濯できるスーツ」として知られている、みじめな外見の青い作業服をわたされる。訓練者は宿舎と食堂がわりあてられ、つぎに FLETC の骨も削れるような肉体訓練ルーチンがはじまる。毎日必須のジョギング以外に(湿度が高すぎて熱射病の危険があるときは、トラックの横で教官が危険を示す旗をふる)、フィットネス用機器、マーシャルアーツ、サバイバルの技術などなど。
FLETC にオンサイトの訓練所がある18の連邦機関は、さまざまな特殊な法取締部門、そのいくつかは聞きなれないものだが、その人材を雇っている。国境警備隊、IRS 犯罪捜査部門、公園警備隊、魚類野生動物庁、税関、移民局、シークレットサービス、財務省の制服をきた出張所などだ。もしあなたが連邦警察でFBIで働いてなければ、FLETC で訓練をうける。これには鉄道廃棄委員会監察長官の捜査員とか、同じくらいまったく聞きなれないところも含まれる。または、テネシー川流域開発公社警察はじっさいには連邦警察の役人で、テネシー川流域開発公社の連邦財産に対する犯罪者を逮捕することができるし、またじっさいに逮捕もする。
それからコンピュータ犯罪対策の人もいる。あらゆる種類のあらゆるバックグラウンドをもった人だ。Fitzpatrick は、自分の専門知識に不安をもっていない。警官は全員、あらゆる部局の全員が、彼が教えてくれることを学ぶ必要があるだろう。バックグラウンドは問題にはならない。Fitzpatrick 自身はもともとは国境警備隊のベテランで、FLETC の国境警備隊のインストラクターになった。彼のスペイン語はまだ流暢である。ただはじめて訓練センターにコンピューターが導入されたときには、不思議とその魅力にとりつかれてしまったのだ。Fitzpatrick は、電気エンジニアのバックグラウンドはなかったし、自分がコンピュータハッカーだとは思っていないが、どういうわけかこの新しい見込みのある機械に使える短いプログラムをいくつか書いたのだった。
かれはコンピュータと犯罪全般について勉強しはじめるようになり、Donn Parker の本や記事を読み、犯罪体験談、この分野の価値ある洞察、地域のコンピュータ犯罪やハイテク部門の精力的な人たちについて意識的に情報をあつめた。すぐに FLETC界隈では、ここにいる「コンピュータ専門家」という評判をえるようになっていた。評判が評判を呼び、人前にでたり、経験をつむ機会もふえ、ある日あたりをみまわすと、すっかり連邦コンピュータ犯罪の専門家になっていたというわけだ。
事実このひかえめの親切な男こそが、「唯一の」コンピュータ犯罪の専門家といってもいいかもしれない。コンピュータ関係で優秀な人は山ほどいるし、連邦捜査官にだってとても優秀な人はたくさんいる。ただ、こうした専門家の世界の重なる部分はとても小さい。そして Carlton Fitzpatrick は、1985年からまさしくそのど真ん中にいたのだ。1985年といえば協議会が始まった年だ、もちろん協議会はかれに大きな影響を及ぼしている。
かれは自分の品のいい、音響を制御するタイルが張られた事務所にいて、とても落ち着いているようにみえた。事務所には Ansel Adams 風の西部の写真芸術がかざられていて、金の額縁の上級インストラクターの証明書、「情報セキュリティに関する Datapro 報告書」、「CFCA Telecom Security '90」といったあやしいタイトルの三連リングのバインダーが高く積み上げられた本棚が見て取れた。
10分おきに電話がなり、同僚がドアのところに現れては、錠前の新たな発明についてしゃべったり、BCCI の世界的なスキャンダルの最新の憂うつな展開に頭をふったりしていた。
Carlton Fitzpatrick は、コンピュータ犯罪の体験談の宝庫だ。それもしんらつな調子でゆっくり話す。数年前にカリフォルニアで捕まえたハッカーの興味深い話をしてくれた。ハッカーはシステムに侵入し、感知するひまなくコードをタイプしつづけた。20時間、24時間、36時間ぶっとおしで。ログオンしてただけじゃない、タイプしてたんだ。捜査員は戸惑ったよ。そんなことができるやつはいないからな。トイレはどうするんだ? コードをきちんとタイプできる自動的にキーボードを打つ装置かなんかじゃないのか?
容疑者の家にいって逮捕してみると、驚くべきひどい実態が明らかになった。ハッカーはパキスタン人のコンピュータ科学の学生で、カリフォルニア大学を中退していた。やつは違法電子移民として完全にアンダーグラウンドにつかっていて、盗んだ電話課金コードを生活の糧のために売っていた。家は単にきたないとか不潔といったようなもんじゃなく、精神的な無秩序状態とでもいうべきものだったな。カルチャーショック、コンピュータ中毒、ヤク漬けが不思議なぐあいに混ざってて、容疑者は本当にコンピュータの前に一日半は続けて座っていて、スナックとドラッグが机の端の手の届くところにあったし、椅子の下にはおまるが置いてあったんだよ。
こういった話が、ハッカーを追うもののコミュニティでは広まっているわけだ。
Carlton Fitzpatrick はFLETCを車で案内してくれた。最初にみたのは、世界で最も大きな屋内射撃場だった。Fitzpatrick がていねいに教えてくれたのには、連邦捜査員の訓練生がありとあらゆる種類の自動武器をぶっぱなすところということだ。Uzis、Glocks、AK-47s などなど。中を案内してくれようとしたが、ぼくは確かに興味はあるけど、君のコンピュータの方をみせてほしいなと伝えた。Carlton Fitzpatrick はとてもびっくりしたようだったが、同時にうれしそうだった。ぼくはきっと、かれが見た中でマイクロチップのために射撃場から引き返すはじめてのジャーナリストだったんだろう。
次に行った場所は、視察にくる連邦議員お気に入りの場所だった。3マイルほどのFLETCの試験運転場だ。陸海運の訓練生が高速追跡技術、路上障害物の設置と突破、VIPのリムジンの外交儀礼にのっとった安全な運転、などを学ぶ。FLETCで喜ばれる娯楽は、視察にきた上院議員を助手席にしばりつけて、横に陸海運部門の教官が乗り込む。時速100マイルで、「よくすべる鍋」というグリースが塗られた道路の区域までまっすぐ突っ込んでいく。すると、2トンのデトロイト製の鉄の塊がホッケーのパックのように急激にスピンする。
FLETC では車はまともな運命をたどらない。最初に何度も何度も、捜索訓練のために中を探索される。それから25000マイルほど高速追跡訓練があり、70マイルごとに鋼鉄のベルトのついたラジアルタイヤが履きかえられる。それから「よくすべる鍋」に入れられ、グリースの中で横転したり、さかさまになったりする。グリースがたっぷりしみこんで、でこぼこだらけで、きしみが出る頃には、路上障害物部門に送られ、そこで情け容赦なく壊される。最後にはアルコール、タバコ、銃火器局の犠牲となり、それらの車を爆破して煙をだす残骸にすることで訓練生は車の爆破についてのすべてを学ぶ。
FLETC の敷地には鉄道の客車もあれば、陸揚げされたボートやプロペラ機もあった。すべて捜索用の訓練場所である。飛行機はつぎはぎだらけの雑草の生い茂る滑走路にあり、その隣にはうすきみわるい丸太小屋があった。「忍者地区」としてしられているところだ。そこで、対テロリスト特別班が人質の救出を訓練している。ぼくがこの現代の低強度紛争の気味が悪い典型を見ていると、急に自動火器のタッタッタという爆発音が右手の森のほうから聞こえてとびあがった。「9ミリだな」 Fitzpatrick は落ち着いて聞き分けた。
ただ気味のわるい忍者地区も、「手入れ用の家々」とよばれる本当に現実のような地域とくらべれば、なんてことはない。ここには一本の道の両側に、ふつうのコンクリートブロックでたいらな小石をうめこんだモルタル仕立ての屋根の家がならんでいる。かつては将校の住居地区だったが、今は訓練場になっている。左手の一番手前の家が、Fitzpatrick が教えてくれるには、コンピュータ捜索押収訓練用に特別にあつらえてある家ということだった。内部は天井から床までビデオの配線がされていて、18台の上下左右に遠隔操作できるビデオカメラが壁や角にうめこまれている。訓練生の一挙手一投足が教官によって記録され、後ほどテープは分析される。無駄な動き、ちゅうちょ、致命的かもしれない戦術ミス、すべてが詳しく検証される。
たぶんこの建物の一番かわったところを一つあげろといわれたら、それは玄関だろう。連邦捜査員の革靴で来る日も来る日も、何度も何度もけられて、いたるところ傷だらけになっていた。
手入れ用の家々のたちならぶ向こうの方では、何人かが殺人の訓練をしていた。数人の若い、とても緊張した面持ちの連邦訓練生が、いい体格のはげ頭の男に手入れ用の家の芝生で尋問している横をぼくらはゆっくり通りかかった。殺人を扱うには多くの訓練が必要だ。まず最初に自分の本能的な嫌悪感やパニックをコントロールすることを学ばなければならない。それに神経がまいってしまった市民の集団への対応をコントロールすることを学ばなければならない。市民の中には愛するものを失ったかもしれないものもいれば、殺人者かもしれないものがいる、その両方に該当するということも十分ありうる。
ダミー人形が死体となっていた。先立たれた人、好奇心の強いやじうま、殺人犯は地元のジョージアの人がお金をもらって演じている。ウェイトレス、ミュージシャン、アルバイトをしたくて台本が覚えられれば誰でもいい。そうした人たちは何年も何年も FLETC のレギュラーというわけで、まちがいなく世界でももっとも奇妙な仕事の一つに違いない。
こうした風景における何か。奇妙な状況での「ふつうの」人たち、明るいジョージアの日差しの中で立って話をしながら、ぎこちなくなにか恐ろしいことが起きたフリをする。一方、ダミー人形は偽物の血の海の中に倒れている。そしてこうした奇妙な仮想劇の裏側で、ロシア人形の入れ子みたいに、本物の死、本物の暴力、本物の人間の本物の殺人がくりひろげられる残酷な現実がある。こうした若い捜査員たちは在職中に何回も、じっさいこうした捜査をすることだろう。何回も何回も。予想される殺人も今回と同じようにみえるのだろうか? 同じように感じるのだろうか? こうした素人の俳優がみせかけようとしているものより「現実」っぽくないのだろうか、あるいは両方とも「現実」みたいなんだろうか、偽物の芝生の上のそこらに偽物の人たちが立っているのをみるほど現実っぽくないのだろうか? こうした風景における何かが、ぼくを動揺させた。ぼくには悪夢、カフカ的に思えた。どう理解していいのか全くわからなかった。頭が混乱した。笑ったらいいのか、泣いたらいいのか、それとも単にぞっとすればよかったのだろうか。
案内が終わると、Carlton Fitzpatrick とぼくはコンピュータについて語り合った。サイバースペースがこんなに心地いい場所に思えたのは初めてだった。サイバースペースは突然ぼくにとってはとても現実的な場所に思えたのだ。自分が何を話しているか分かっている場所だし、なれている場所でもある。現実、そう、どうあれ「現実」なんだ。
Carlton Fitzpatrick はぼくがサイバースペース界隈で出会った人のなかで、唯一自分の環境に満足している人物だった。5MのRAMをつんだPCで、112M のハードディスクを積んでいた。それも660Mになる予定だ。コンパックの386のディスクトップと、120Mの Zenith の386のラップトップをもっていた。下の部屋には、CD-ROMドライブつきのNECの Multi-Sync 2A があり、4つの回線のついた9600bpsのモデムがあった。訓練用のミニコンピューター、センター用の10Mのミニコンピューター、それに訓練生用のPC互換機がたくさんと、マックやその他が半ダースほど。ボードに8Mのメモリをのせ、370Mのハードディスクがある Data General MV 2500 もあった。
Fitzpatrick は Data General で、自分でかいたソフトで、ベータテストが終わったらすぐにでもUNIXの掲示板を走らせる計画をたてていた。。電子メール機能があり、コンピュータ犯罪、捜査手順といったありとあらゆることに関する大量のファイルが扱え、国防総省の「オレンジ本」のコンピュータセキュリティ基準に適合したものになる予定だった。かれはそれが連邦政府で最大のBBSになるだろうと考えていた。
「Phrack もそこには入るのかな?」ぼくは皮肉っぽくたずねた。
「もちろん」かれは答えた。「Phrack、TAP、Computer Underground Digest、そういったものは全部。もちろん適切な免責条項つきでね」
ぼくは彼に、シスオペにもなるつもりかと尋ねた。そんな規模のシステムを運用するのはかなり時間がかかるし、Fitzpatrick は毎日3時間の講義を2つ教えている。
いいや、かれは首をふった。FLETC ではインストラクターは賃金にみあった仕事をしなくてはならない。かれは地域のボランティアにでも頼めるかもしれないと考えていた、高校の生徒とか。
かれはもう少しつけくわえて、ボーイスカウトの法取締連絡プログラムなんてのを考えてるがと言った。しかし ぼくの心は信じられない想いでいっぱいだった。
「ティーンエイジャーに、連邦のセキュリティBBSの管理をさせようっていうんだって?」 ぼくには言葉がなかった。FLETC の金融詐欺部門がハッカーのゴミ荒しの「究極の」目的であるという考えが頭を去らなかった。ここにはすごいブツがある、デジタルアンダーグラウンドのどんな基準でみても完全でこの上なくクールなブツが。知り合いのハッカーたちが、コンピュータ犯罪のシークレットサービスを訓練しているのに使っている超極秘のコンピュータをクラッキングすることを考えただけで、禁じられた知識を手に入れようとする欲望で気を失わんばかりになることをぼくは想像した。
「ううむ、Carlton」 ぼくは、まくしたてた。「管理をする子はたしかにいい子なんだろう。でも、そうだな、コンピューターにさわったばかりの子の前にそういったものを置くのは、すごい誘惑になるんじゃないかな」
「あぁ」 彼は答えた 「私にもそういう経験はあるよ」 そのときはじめて、かれに一杯くらわされてるんじゃないかと疑いはじめた。
現在すすめているJICC(Joint Intelligence Control Council:共同情報管理協議会)というプロジェクトの話をするとき、彼はいちばん得意げにみえた。それはEPIC(El Paso Intelligence Center)が推進しているサービスを基盤にするもので、EPICは麻薬取締局、税関、海岸警備隊、南の国境の4州の州警察にデータと情報を提供している。あるEPICのファイルは、中米、南米、カリブでもアクセス可能であり、かれらの間でも情報をやりとりできる。ドミニカ共和国出身の Lopez という2人の兄弟によって書かれた「White Hat」という通信プログラムをつかえば、警官は安価なPCからでも国際的なネットワークを利用することができる。Carlton Fitzpatrick は第三世界からの麻薬戦争の捜査員のクラスを教えているし、その成果にも誇りをもっている。たぶんすぐにでもメデリン・カルテルの複雑な密輸ネットワークには、メデリン・カルテルを一掃する勢力の複雑なコンピュータネットワークで対抗できるだろう。船を追跡し、密輸品を追いかけ、国境をいとも簡単に越える国際的な麻薬王たちを追いつめるだろう。今は、分断された国の司法権を上手く利用して警官を打ち負かしているが。
JICC や EPIC はこの本でとりあつかう範疇をこえている。それらはぼくにとっては、適切に判断できない物事を伴っているとても大きな問題のように思える。だけどぼくにも国際的な、コンピュータの助けをかりた警察のネットワークが国境をこえて、Carlton Fitzpatrick がとても重要だと考えているようなもの、あるべき将来像だということはわかる。またネットワークには本来、現実の国境なんて関係ないということも知っている。それにコミュニケーションのあるところにコミュニティができ、そうしたコミュニティが自分がコミュニティであることを自覚すれば、自分たちを守るために、そして自分たちの勢力を拡大するために戦う、ということを知っている。ぼくにはこれがいいことか悪いことかは判断ができない。それがサイバースペースで、物事のありようだ。
ぼくは Carlton Fitzpatrick に、いつか電子法取締の世界で活躍したいと考えている20才の若者になにかアドバイスがあるかと尋ねた。
彼が答えたのは、第一にはコンピュータを恐れないこと。熱心な「コンピュータおたく」になる必要はないが、あるマシンが風変わりだからといって、お手上げではいけない。コンピュータが賢い犯罪者に与える優位さには、コンピュータが賢い警官に与えてくれる優位さによって対抗しなければならない。将来の警官は法律を「拳銃ではなく、頭で」守らせなければならないだろう。現在でも事務所を離れなくても事件の処理ができる。将来には、コンピュータ革命に反抗する警官は受け持ち区間を巡回するのがせいぜいといったことになるだろう。
ぼくは Carlton Fitzpatrick に、一般の人にむけて何か一ついいたいことはあるかとたずねた。アメリカの一般の人にむけて、彼の仕事について知ってもらいたいことが何か一つあるかと。
しばらく考えて、かれはこう答えた。「そうだな、俺にルールを『言って』くれ。そうしたら俺はそのルールを教えるから」かれはぼくの目をまっすぐみて、こうつけ加えた。「できるかぎりはベストをつくすよ」