『ハッカーを追え』の翻訳。特に誤訳、誤字などの指摘があったら、メールでもいただければ。

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Literary Freeware: Not for Commercial Use
THE HACKER CRACKDOWN  Law and Disorder on the Electronic Frontier by Bruce Sterling

The Trial of Knight Lightning

Knight Lightning の裁判

ぼくはこの本を通してずっと、ハッカーたちを「ハンドル」で扱ってきた。本名をだしてもいいことは何もないし、多くは未成年で、なんらかの犯罪に問われていないものも多い。それにすでにすっかり傷ついた、なにも疑ってなかった両親もいる。

しかし Knight Lightning の1990年7月24日から27日の裁判は、この特別な「ハッカー」を全国的な有名人にした。もしかれの名前が Craig Neidorf (NYE-dorf と発音する)であるというすっかり定着した事実をくりかえしたところで、かれやかれの家族にかくべつ被害があるということもないだろう。

Neidorf の陪審裁判は、東部地域イリノイ州北地区アメリカ合衆国地方裁判所で、Nicholas J. Bua 裁判官によって行われた。原告はアメリカ合衆国、被告は Neidorf、被告の弁護士はシカゴの弁護士事務所 Katten, Muchin and Zavis の Sheldon T. Zenner が務めた。

訴追は、シカゴコンピュータ悪用・詐欺タスクフォースの主要なメンバー、William J. Cook、Colleen D. Coughlin、David A. Glockner、全員アメリカ合衆国の検事補たちが行い、シークレットサービスの事件捜査官は、Timothy M. Foley だった。

Neidorf がアンダーグラウンドのハッカー「雑誌」、Phrack の共同編集者だったことを思いおこしてもらえるだろうか。「Phrack」 は完全な電子出版物で、掲示板や電子ネットワークを通じて配布されていた。それは、無料でくばられているアマチュアの出版物だった。Neidorf は 「Phrack」 の仕事で金を稼いだことはないし、それは共同編集者の「Taran King」やその他数多くの「Phrack」の寄稿者も同じである。

ただ、シカゴコンピュータ悪用・詐欺タスクフォースは Neidorf を詐欺で訴追することとしていた。「Phrack」が「雑誌」で、Neidorf が「出版者」だときちんと認めることは、訴追としては憲法修正第一条のパンドラの箱をあけることとなる。こうなれば、Zenner事務所や EFF の法律顧問の思うがままであり、そのメンバーには著名なニューヨークの公民権専門の弁護士たちの一団や、並外れた法律スタッフを揃えている Katten, Muchin and Zavis も含まれていた。したがってそうする代わりに、訴追はアクセス装置詐欺の問題にしぼられた。18編セクション1029では、シークレットサービスがコンピュータ犯罪を直接管轄するとしている。

Neidorf が訴えられている犯罪は、E911文書をめぐるものだった。Prophet と詐欺の計画をたてたと訴えられたのだ。Prophet は思い出してもらえるだろうか、アトランタの LoD のメンバーでE911文書を BellSouth AIMSX のシステムから違法にコピーしていた。

Prophet 自身も Neidorf の事件の被告になっていて、BellSouth の E911文書を「盗む」ための「詐欺の計画」に必要不可欠な人物だった(その文書を州境をこえてやりとりしたので、Neidorf の裁判が連邦裁判として裁かれることとなったわけだ)。Prophet は全面協力の精神を発揮して、Neidorf を有罪とする証言をすることに同意していた。

じっさいに、アトランタの3人組全員は Neidorf を有罪とする証言をいつでもする準備が整っていた。アトランタの検察官は、アトランタの3人を (a) 共同謀議、(b)コンピュータ詐欺、(c) 回線詐欺、(d) アクセス装置詐欺、(e) 盗品の州境をこえた移送(18編、セクション371、1030、1343、1029、2314)で告発していた。

トラブルの嵐にみまわれて、Prophet と Leftist は公判を回避して、軽減された告発ーそれぞれ共同謀議一つに対して有罪を認めていた。Urvile はセクション1029の奇妙な部分、「15以上」の違法なアクセス装置(かれの事件ではそれはコンピュータのパスワードだったが)を所有していると違法であるという罪を認めていた。かれらの判決は、1990年の9月14日、Neidorf の裁判のあとに予定されていた。証人として、ちゃんとふるまうことを求められていたわけだ。

ただ、Neidorf は無罪を主張していた。一斉取締りで捕まったほとんど全員が「全面協力」をし、罪が減ぜられることを希望して有罪をみとめた(Steve Jackson は有名な例外だが、もちろん当初から強く無罪を主張してきている。しかし Steve Jackson は法廷にたつことはなかった、というのもそもそも何の罪でも告発されていなかったから)

そして、Neidorf も有罪をみとめるよう勧められていた。しかし Neidorf は政治学を専攻していたし、金もうけをしたわけでもないし、コンピュータ侵入を犯したわけでもない、自分では修正第一条で守られていると考えている雑誌を出版しただけで、「詐欺」で刑務所に行くのは嫌だった。

Neidorf の裁判は、アメリカの市民の陪審の前でこの身近な問題を実際に公のものとした、一斉取締り全体で唯一、法律にもとづいた行動だった。

Neidorf も捜査には協力していた。自分から、起訴されるような証拠の大部分を提供している。書面でE911文書が「Phrack」で「出版」する前に盗まれたものであることを知っていたのにも同意している。それは告発側の立場からみれば、「出版」だと称しているものの内に、違法に回線で転送されているものがあるということだろうが。

しかしたとえE911文書の「出版」が犯罪でないと判決が下っても、Neidorf が苦境から抜け出せるわけではない。Neidorf はまたE911文書を、Prophet が Rich Andrews の Jolnet から転送したときにも受け取っている。その場合には、明らかに「出版」にはあたらない。まさしく単なる、州境をこえて転送されたハッカーの戦利品だ。

シカゴタスクフォースは、シカゴ大陪審で Neidorf を一連の罪で30年の服役にあたると告発した。こうした告発のいくつかは、Neidorf が実際に裁判を行う前にきちんと異議が申し立てられたので、シカゴタスクフォースは Neidorf が60年以上の監獄行きもありえるように告発を書き直した。初犯としては、Neidorf がじっさいにそんな衝撃的な判決をうけることはありえなかったが、シカゴタスクフォースは明らかに Neidorf を収監しようとしており、その共同謀議の「雑誌」を永久に廃刊に追い込もうとしていた。これは連邦事件であり、Neidorf は約8万ドル相当の財産の詐欺窃盗で起訴されたのだった。

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