週間翻訳日記:週間で、ある単位を目安に翻訳していきます。
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ぜんぜん新年って感じがしないなぁ、なぜなんでしょ? ましてや新世紀って感じもしないし...でも新世紀を実感するなんてことそもそもありそうにないことだけど(笑) 英文を公開できるので公開。指摘があったらメールください
第2部 船の料理番 7章 僕はブリストルへ
僕らが航海へでる準備が整うまでには、大地主さんが予想したよりずっと時間がかかった。僕たちが最初にたてた計画は、リバシー先生の僕をずっとそばに置いておくという計画さえも、その通り実行できなかった。先生は自分の代わりになる医者を探しにロンドンに行かなければならなかったのだ。大地主さんはブリストルで大忙しだったし、僕は狩猟番のレッドルース爺さんの命令の下、屋敷でほとんど囚人のように生活していた。でも航海の夢やまだ見たこともない島々や冒険のことを想像して、胸がいっぱいだった。僕は何時間もあの地図のことを考えてすごし、地図の細かい所にいたるまですっかり覚えてしまった。使用人の部屋の暖炉の側に座って、僕は空想の中でありとあらゆる方向からその島に近づいたものだった。僕はその島の表面をくまなく調査して、望遠鏡の丘という名前のあの高い丘へは千回ほども登ったろうか、その頂上からの眺めはすばらしいものでさまざまに移り変わってとても楽しめた。ときには島は野蛮人でいっぱいで、僕らは勇敢に戦った。ときには危険な獣がいっぱいで、獣は僕らを追いかけてきた。でもどれほど僕が想像しても、実際の冒険でおこったほど奇妙で痛ましいことはこれっぽっちも思いつかなかったものだ。
何週間もすぎたある日、一通の手紙がリバシー先生宛に届き、その手紙には「リバシー先生が不在のときには、トム・レッドルースもしくはホーキンズ少年が開封のこと」と付箋がついていた。それに従って、僕らは、というより僕は(というのも狩猟番は、印刷されたもの以外はあまり上手く読めなかったのだ)次の通りの重大な知らせを受け取った。
17XX年3月1日 ブリストルの古錨亭にて
リバシーさん、私はあなたが屋敷におられるか、まだロンドンなのか分からないので、両方にこの手紙を送付します。
船は購入済みで、準備万端です。いつでも海にでられる状態で、停泊しています。これほどのスクーナー船だとはあなたも思いますまい。子供にでも操縦できるほどで、200トン、名前はヒスパニオーラ。
私の古くからの友人、ブランドリーからこの船を手に入れたのです。彼は本当におどろくほどいいやつだと分かりました。この感心な男は、私のために文字どおり身を粉にして働いてくれました。というか、ブリストルの誰もが私のために働いてくれたと言っていいでしょう。我々の目指している港、つまり宝物のことですな、のことをかぎつけるやいなやね。
「レッドルースさん、」と僕は手紙を中断して言った。「リバシー先生はこういうことは喜ばないと思うな。結局、大地主さんときたらしゃべっちゃうんだもの」
「でも、他に適当な人でもいるか?」狩猟番はうなるようにまくしたてた。「大地主さんがリバシー先生に言われたからって話もできないんじゃ、いいとこなしじゃねぇか、と俺は思うな」
こう言われて、僕は口をはさむのを一切やめて、ただ手紙を読みすすめることにした。
ブランドリーが自分でヒスパニオーラ号をみつけて、卓越した手腕でとても安く手に入れてくれました。ブリストルではブランドリーのことをひどく中傷するやからもいます。やつらは、あの正直な男をつかまえて、金のためにしか動かないやつだとか、ヒスパニオーラ号はもともとやつの持ち物で、それを私にまったくの高値で売りつけたんだ、とさえいったもんですよ。まったく見えすいた嘘ですがね。ただ、だれもこの船がすばらしいことには、けちはつけられんでしょう。
なにひとつ滞っていることはありません。確かに、船の整備工やなんやらの働いてくれている人たちが、いらいらさせるほど仕事が遅いんですが、時が解決してくれました。私の悩みは船員です。
私は、原住民や海賊、あの憎むべきフランス人に備えてちょうど20人はほしいと思っていましたが、6人ほど見つけるのにさえ、四苦八苦するありさまでした。ただまったくの幸運にめぐまれて、私のまさに求めている男にめぐりあったのです。
私は波止場に立っていたのですが、その時、ほんの偶然から、その男と口をきくようになりました。私はその男が老水夫で、酒場をやっており、ブリストルの水夫という水夫をみな知ってるということを知りました。彼は陸で健康を害したので、料理番の職でまた海へ出たいと思っているということで、その朝は波止場まで潮の香りをかぎに、足を引きずってきたということでした。
私はまったく心を打たれてしまいました。もしあなたでもそうしたでしょうが、まったく可哀相に思って、その場で船の料理番として雇い入れました。ロング・ジョン・シルバーという名前で、片足をなくしているのです。ただ私はそれをむしろ推薦状だと見なしています。というのも、あの不朽の名声をほこるホークの下でお国のために働いて、片足をなくしたのですから。でも年金をもらってないんですぞ、リバシーさん。いやはや、われわれはまったくなんてひどい時代に生きてることでしょう!
さて、きみ、私は料理番を一人確保したわいと思っていたのですが、なんと乗組員全員をみつけだしていたのです。シルバーと私で、数日でこのうえなく頑強で老練な水夫の一団を確保しました。見た目は好ましいとはいいがたいですが、やつらの面構えといったら不屈の精神そのものといったぐあいです。フリゲート艦とでさえ戦えますよ。
ロング・ジョンは、私が雇い入れた6、7人のなかから2人を解雇さえしてくれたんです。彼は、すぐさまその2人が大事な冒険では避けなければならない新米ののろまだってことを私に教えてくれました。
私は心も体もすばらしく充実していて、牡牛のように食い、丸太のように寝ていますが、わが水夫たちがキャプスタンのまわりを回っている足音を聞くまでは、少しも楽しむ気持ちにはなれやしません。あぁ、海へ。宝物なんていい! 海の輝きこそが私をのぼせ上がらせてるんだ。さあ、リバシーさん、急いで来て下さい。もし私のことを尊敬しているなら、1時間たりとも無駄にしないでください。ホーキンズ少年は、レッドルースを護衛にして、すぐに母親のところにやってください。それから大急ぎで2人をブリストルへよこしてください。
ジョン・トレローニー
追伸
書きもらしたが、ブランドリーは我々が8月の終わりまでに戻らない場合、われわれを追って船をだすつもりだということでした。おまけに船長としてすばらしい人を見つけてきてくれました。型苦しい人なのが残念だが、その他のあらゆる点で掘り出し物です。ロング・ジョン・シルバーは、航海士としてまさに適任の男、アローという名前の男を見つけ出してくれました。号笛をふく水夫長もいます、リバシーさん。ヒスパニオーラ号では、物事は全て軍隊式にやりましょう。
シルバーが資産家であることも書き忘れていました。私が知る限りでは、彼は借り越したことがない銀行口座をもっています。宿屋は奥さんにまかせるみたいです。そして奥さんは黒人なので、あなたや私のような独身者が勘ぐるのを許してもらえれば、彼が海へもどるのは健康のためばかりではないということだろうかね。
J.T
追追伸
ホーキンス君を一晩母親の所に泊まらせてやりたまえ。
J.T
この手紙が僕をどれほど興奮させたか想像できるだろうか。僕はうれしさのあまり我を忘れるありさまだった。そして僕が人を軽蔑したことがあるとすれば、このときぶつぶつ不平をいって不運を嘆いているばかりのトム・レッドルース爺さんに他ならない。狩猟番の下働きのだれでも喜んで、彼と立場を交換したことだろう。でもそれでは大地主さんが喜ばないのだった。そして大地主さんが喜ぶことが、そのまま彼ら全員の間の法律のようなものなのだった。レッドルース爺さん以外は、あえてぶつぶつ言ったりするものさえいなかったことだろう。
翌朝、レッドルース爺さんと僕は徒歩でベンボウ提督亭に出発した。そして僕は母親が健康で元気であることを確認した。長いあいだ悩みの種だった船長も、悪人でもトラブルを起こさないようなところへ行ってしまった。大地主さんが全てを修繕してくれていて、ラウンジや看板も塗りなおされていた。いくつか家具が加わっていて、おまけに母親のために美しいひじかけいすが一脚、酒場に備え付けられていた。大地主さんは、僕が行ってる間、母親が手助けが必要ないように男の子を一人見習として見つけておいてさえくれたのだった。
その男の子をみたとき、僕は初めて自分の置かれた立場と言うものがわかった。そのときまで僕は自分の前に広がる冒険のことばかりを考えていて、後に残して行くわが家のことなんてこれっぽっちも考えちゃいなかった。そして今、この気のきかないよそ者がここ、母親のそばの僕の場所にいることになるのをみて、僕ははじめて涙がこみあげてきた。僕はこの男の子にきびしくあたったかもしれない。というのもその男の子は仕事になれていなかったし、僕は何百回となくその子の行動を正しては叱りつけたからだ。そして僕はそういうことにすばやく目をつけるほうだった。
一晩があけ、次の日の夕食後、レッドルース爺さんと僕は再び徒歩で帰路についた。母親にさようならをいい、生まれてからずっと過ごしてきた入り江や、なつかしきベンボウ提督亭に別れを告げた。まあ、ベンボウ提督亭は塗りなおされていたから、そうなつかしいと言うほどでもなかったが。最後に一つ考えたのは、船長のことだった。船長はつばが上に曲がった帽子をかぶり、頬には刀傷があり、あの古い真鍮の望遠鏡をかかえ、よく砂浜を闊歩していたものだった。そして僕たちは角をまがって、わが家は視界から消えた。
日が暮れる頃には、僕たちはヒースの荒野にあるジョージ国王亭で郵便馬車に乗り込んだ。僕はレッドルース爺さんとかっぷくのいい老紳士の間に押し込められた。馬車はかなり早く走っていて、夜気は冷たかったにもかかわらず、乗り込んだ当初からすぐにうとうとしたに違いない。そして山を越え谷をわたり、宿駅から宿駅に行くあいだ丸太のように眠りこけていた。というのもわき腹をひじでつつかれて、ようやく目がさめたくらいだった。目を開けると街の通りの大きなビルの前にいて、夜はすでにすっかり明けていた。
「どこにいるの?」と僕が聞くと、
「ブリストルだ、」とトムは答えて「降りるんだ」と続けた。
トレローニーさんはスクーナー船での仕事の監督をするために、波止場から少し離れた宿に居をかまえていた。そこまで僕らは歩いて行かなければならなかったが、とてもうれしかったことに、波止場にはさまざまなサイズのいろいろな装備をつけた各国の船がたくさん停泊していた。その一つでは、水夫達が働きながら歌っていた。他の船では、僕の頭上はるか高くにたくさんの男たちがいて、くもの糸ほどにも見える細いなわにぶらさがっていた。僕は生まれてこの方ずっと海辺で育ってきたけれど、これまで本当に海の近くにいなかったような気さえするほどだった。タールと潮の香りさえなにかが違っていた。僕ははるか海を越えてやってきたさまざまなすばらしい船首像を目にした。その上多くの老水兵が耳にわっかをして、ほおひげをカールして巻き毛にしたり、タールまみれの弁髪をして、肩で風をきり不恰好な水兵歩きをしていた。もし僕がこれほどたくさんの王様や大僧正をみたところで、これほど大喜びはしなかっただろう。
そして僕は出航するのだ。スクーナーに乗り込んで海へ、号笛をならす水夫長や歌を歌う弁髪の水夫たちと一緒に、海へ行くんだ。見知らぬ島に上陸して、埋められている宝物をさがすんだ!
僕がまだこうした楽しい夢にひたっているあいだに、僕らは突然大きな宿の前にでてきて、大地主のトレローニーさんと出くわした。上から下まで高級船員のような服装をして、丈夫な青い服をきて顔に笑みを浮かべ、水夫の歩き方を立派に真似しながらドアから出てくるところだった。
「やってきたな、」大地主さんは叫んだ。「先生も昨晩ロンドンからやってきたよ。ブラボー! 勢ぞろいだ!」
「えぇ、」僕も叫んだ。「で、いつ出航です?」
「出航!」大地主さんは言った。「明日出航だよ!」
指摘点を何点か修正。えーと今回は英文を公開できるので公開。Sogoさんご指摘ありがとうございます。
>>今度はしごく近くなので僕は馬にも乗らず
>「すぐ近くだったので」の方が私にはしっくりきます。
そうですね、修正します。
>>長い何回かの旅行ですっかり荒れて赤茶けたしわだらけの顔をしていた。
>「何回か」というのがひっかかります。私ならこうします。
>「その顔は長い旅行を重ねたためにすっかり荒れてしまっていて、
>赤茶けてしわだらけだった。」
前の文との関係を整理してこうします。
長い旅行を重ねたためすっかり荒れた、赤茶けてしわだらけの顔をしていた。
>>2人の紳士が身を乗り出しお互いに見つめあいながら
>驚きと興味のあまりタバコを吸うことも忘れて
>読点を入れた方がわかりやすいと思います。
>「2人の紳士が身を乗り出してお互いに見つめあいながら、
>驚きと興味のあまりタバコを吸うことも忘れて」
いれます。
>>リバシー先生は腿をパンと打つと、大地主は「偉いぞ!」と叫び、
>1.「先生は〜すると、大地主は〜と叫び」の文体がひっかかります。
>2.「大地主」は「大地主さん」のtypoだと思います。
>私ならこうします。
>「リバシー先生は腿をパンと打ち、大地主さんは「偉いぞ!」と叫び、」
両方修正します。
>>トレローニーさんは(おぼえているだろうか、
>Mr. Trelawney (that, you
will remember,
>
>それまでに名前を一度も言ってないですし、原文でもwillですから、
>私ならこうします。
>「トレローニーさんは(おぼえておいてほしいのだが、」
えーと一章のいの一番に出てきてますかね。
>>「どうぞ、リバシーさん」大地主さんは言った。
>大地主さんの人柄を考えるとこうは言わないと思います。特に、
>大地主さんが先生を呼ぶときの呼称が気にかかります。
>私ならこうします。
>「そうしたまえ、リバシー君」大地主さんは言った。
たしかにもっと乱暴な口調にするのもありかなと迷ったんですが、
この章の最後の文にあるように、お互いに敬意をいだいている感じを
だすためにこういう口調&訳にしています。
>>「フリントのことは聞いたことがあるだろうねぇ」
>先生の人柄を考えるとこうは言わないと思います。
>私ならこうします。
>「フリントのことは聞いたことがあるでしょうねぇ」
前のままでもそれほど違和感を感じないんですが...
>>私の乗った船の臆病者のあのラム漬けの船長が
>>逃げたんだよ、そうポートオブスペインに逃げ帰ったんだ
>
>and
the cowardly son of a rum-puncheon that I sailed with
put
>
>back--put back, sir, into Port of
Spain."
>
>なんかひっかかります。私ならこうします。でも難しいですね。
>「その時乗っていた船の、あのラムばかり呑んでいた臆病者の船長は
>逃げ出したんだ、ポートオブスペインにね。」
たしかにくどいですね。
私の乗ってた船の、あのラムばかりあおっていた臆病者の船長が逃げ出したんだ、
そう、ポートオブスペインにね。
>>「そう、私もイギリスで彼のことは耳にしましたぞ」先生は言った。
>先生の人柄を考えるとこうは言わないと思います。
>「よろしい、私もイギリスで彼のことは耳にしました」先生は言った。
たぶん礼儀正しい人の定義が僕の方が広いんでしょうかね、このままで。
>>やつらが金以外の何のために自分の身を危険にさらすもんですか?
>他の言葉から浮いています。私ならこうします。
>「やつらが金以外の何のために、自分の身を危険にさらすんだね?」
そうですね。こうします。
やつらが金以外の何のために、自分の身を危険にさらすもんかい?
>>ジム君が賛成してくれるなら
>会話をスムーズに進ませるために(好みの問題ですが)私ならこうします。
>「ジム君さえよければ」
まあこの言いかたも先生っぽいかなと、このままで。
>>「まったく訳がわからんな」先生が言うと、
>"I can't make head or tail
of this," said Dr.
Livesey.
>原文ではピリオドで終わっているので、文を終わらせた方がいいと思います。
>「「まったく訳がわからんな」先生は言った。」
わからん→明らか、と話の流れが続いているので、続けています。
原則的には段落、文章の区切りは守るんですが、
会話ではsayですぐ切れちゃうので日本語に訳すときは意識的に
無視するケースがままあります。
いちいち切ってると、ハードボイルドになっちゃうんですね。
>>つまりその沖合いで海賊どもが横付けした不幸な船が
>何艘があって、乗ってた人はかわいそうにずっと昔に
>さんごにでもなってるかな、冥福を祈るよ
>you
see, here was some unhappy vessel boarded off that coast.
God
>
>help the poor souls that manned her--coral long
ago."
>
>1.「that coast.
」とピリオドで終わらせてあるところは
>訳文でも終わらせてある方がいいと思います。
>2.さんご云々のくだりはシェークスピア劇(あらし:Tempest)からの引用らしいので(新潮文庫)
>そういう風に訳した方がいいと思います。
>というわけで、私ならこうします。
>「つまりその沖合いで海賊どもが横付けした不幸な船が何隻かあったんだな。
>神よ、その人達の魂を救いたまえ―骨は珊瑚になってるんだな」
ありがとうございます。調べて修正してみます。
>>北北東より1ポイント北の、望遠鏡の丘の肩の部分、高い木
>Tall tree,
Spy-glass shoulder, bearing a point to
>
>the N. of
N.N.E.
>ここは原文通りいった方がいいかと思います。あと、ここで言う
>ポイントがどれくらいなのか注記がいるかもしれませんね。
>どれくらいか忘れましたが。
>「高い木、望遠鏡の丘の肩の部分、北北東より1ポイント北」
うーんこれも悩んだんですが、英語の住所と日本語の住所の違いみたいな
ものですか?
>>東で四分の一北の砂丘にある。
>「東から四分の一北の砂丘にある。」の方が私にはしっくりきます。
修正します。
>>短いけれども僕にはなんのことやら
>「短すぎて僕にはなんのことやら」の方が私にはしっくりきます。
but brief as it was
briefは短い、簡潔ですね。簡潔に置き換えてみると意味がわかりやすいですか
(ここでは原義の短いを使っています)
>>小船に残っていたやつらも、それから、言いましょう、それほど遠くにいないやつらも
>「言いましょう」の部分が引っかかります。私ならこうします。
>「小船に残っていたやつらも、それから、言っておきますが、それほど遠くにいないやつらも」
修正します。
>>「リバシーさん」大地主さんは答えた。「あなたのいうことはいつも正しい。…
>大地主さんの人柄を考えるとこうは言わないと思います。
>私ならこうします。
>「「リバシー君」大地主さんは答えた。「君の言うことはいつも正しい。…」
前述とおり二人を対等な敬意を払いあっている立場ということを明確にするために、
上記の通りにしています。
えーとひとまず年内に第一部は終わるようになったかな。全体で見直してプロジェクト杉田玄白にも登録依頼だしますか。英文を公開できるので公開
船長の地図
僕たちはリバシーさんの家まで馬を走らせ、玄関にたどりついた。表からみると家はまっ暗だった。ダンスさんは、僕に馬をおりてドアをノックするようにといったので、ドガーさんがあぶみを差し出してくれて僕は馬を下りた。それと同時に玄関が開き、メイドが顔をだした。
「リバシー先生はいますか?」と僕は尋ねたが、いいえというのがメイドの答えで、午後に先生は帰宅しましたけれど、大地主さんの家に夕食に呼ばれて、今晩はそこで過ごしているということだった。
「では、そこへ行くとしよう、さぁ」とダンスさんは言った。
今度はすぐ近くだったので僕は馬にも乗らず、ドガーさんのあぶみにつかまりながら走り、門番の小屋のところまで行った。すっかり葉が散っていて、月明かりに照らされている長い並木道を上っていくと、古くて立派な庭の両側に屋敷の白い輪郭が見えるところまでやってきた。そこでダンスさんも馬をおり僕を一緒に連れて、ひとこと断ると家の中に通された。
召使が先導し、僕らはマットが敷いてある廊下を歩き、つきあたりの大きな書斎に案内された。そこには書棚がならんでいて、その上には胸像がおいてあり、大地主さんとリバシー先生はパイプを手にして暖炉の両脇に腰かけていた。
僕は、そのときまで大地主さんをそんな近くで見たことはなかった。大地主さんは背の高い人で6フィート以上あり、相応に肩幅がひろく、ぶっきらぼうで無骨な顔立ちをしており、長い旅行を重ねたためすっかり荒れた、赤茶けてしわだらけの顔をしていた。まゆげはまっくろで、よく動いていた。そのために機嫌がわるいというのではないけれど、いくぶん短気で怒りっぽいようにもみえた。
「お入り、ダンス君」と大地主さんが堂々として、ていねいにこういうと、
先生も「こんばんわ、ダンス君」と言ってうなずいた。
「こんばんわ、ジム君。ここにくるなんてどういう風のふきまわしだい?」
監察官はピンとまっすぐ立つと、授業でもするかのように話を始めた。2人の紳士が身を乗り出しお互いに見つめあいながら、驚きと興味のあまりタバコを吸うことも忘れている姿がどんなふうだったか、みなさんにお見せしたかったくらいだ。2人が僕の母親がどうやって宿屋に引き返したかを聞いたとき、リバシー先生は腿をパンと打ち、大地主さんは「偉いぞ!」と叫び、長いパイプを暖炉にぶつけて壊してしまった。話し終わるずっと前から、トレローニーさんは(おぼえているだろうか、それは大地主さんの名前だ)立ち上がって、部屋を大またで歩き回っていた。そして先生はもっとよく聞こうとでもするかのように髪粉をつけたかつらをはずして座り込んでいたが、短く刈り込んだ黒い頭はとても奇妙に見えたものだった。
とうとうダンスさんは話し終えた。
「ダンス君」大地主さんは言った。「君は見上げた男だよ。あの腹黒いたちの悪い悪党を馬で踏みつけたことについて言えば、ゴキブリを踏みつぶすような善行と考えていいと思うな。ホーキンズ君も大手柄だ。ホーキンズ君、ベルをならしてくれるかな? ダンス君はビールを飲まなきゃいかん」
「そしてジム君」先生は言った。「君はやつらが捜し求めてたものをもってるんだね、そうだろう?」
「ええ、ここにあります」と僕は言って、油布の包みを先生に渡した。
先生はそれをよく調べると、先生の指はそれを開けたくてうずうずしているようだったが、開ける代わりにコートのポケットに静かにしまいこんだ。
「大地主さん」先生は言った。「ダンス君がビールを飲み終わったら、もちろん陛下のために働くため席をはずさなきゃなりません。でもジムはここにおいて、家に泊めてやろうと思うんです。お許しねがえるなら、冷たいパイをとりよせてジムに夕食をとらせてやりたいんですが」
「どうぞ、リバシーさん」大地主さんはそういうと、「ホーキンズ君は、冷たいパイよりずっとすごいものを手に入れたんだしな」と続けた。
そして大きな鳩みたいなパイが運ばれてきて、僕は鷹みたいに腹を空かせていたので心ゆくまで食事をした。その間ダンスさんはいろいろ誉められて、そして退席した。
「さて、大地主さん」先生は言った。
「さて、リバシーさん」大地主さんも同時に口を開いた。
「一人ずつ、一人ずつ」リバシー先生は笑いながら言った。「フリントのことは聞いたことがあるだろうねぇ」
「フリントのことを聞いたことがあるかだって!」大地主さんが叫んだ。「聞いたことがあるかって言いましたな! やつほど残虐無比な海賊はいませんぜ。黒ひげでさえフリントに比べれば子供みたいなもんだ。スペイン人のやつらときたらあんまりやつを恐れるもんで、正直な話、私はフリントがイギリス人なのを自慢したこともあったくらいだ。実際私はこの目でフリントのトップセイル(トップマストの帆)をみたことがあるんだ、トリニダードの沖合いでね。私の乗ってた船の、あのラムばかりあおっていた臆病者の船長が逃げ出したんだ、そう、ポートオブスペインにね」
「そう、私もイギリスで彼のことは耳にしましたぞ」先生は言った。「ただ肝心なのは、やつが金をもっていたかどうかですな?」
「金だって!」大地主さんは叫んだ。「話をちゃんと聞いてなかったな? あの悪党どもが探し回っているのが金じゃないなら何なんだい? やつらが金以外のなにを欲しがるというんだ? やつらが金以外の何のために、自分の身を危険にさらすもんかい?」
「すぐにわかりますよ」先生は答えた。「でもそんなにひどく興奮して大声をだされるようだと、一言もいえやしませんよ。私が知りたいのはこういうことです。私のいまこのポケットにあるものがフリントが宝物を埋めた場所への手がかりだとしたら、その宝物はすごいものでしょうかな?」
「そりゃあ!」大地主さんは叫ぶと、こう続けた。「そうですな、あなたが言うとおりの手がかりがあるなら、わたしはブリストルの波止場で船を見つけてきて、あなたとこのホーキンズ君と一緒にいきますぞ。一年がかりでもその宝物を手に入れますよ。そう、それくらいの価値は十分にあるでしょうよ」
「よろしい」先生は続けた。「では、ジム君が賛成してくれるなら、この包みをあけてみることにしましょう」と包みをテーブルの上に置いた。
包みは縫いつけられていたので、先生は自分の医療箱をだしてきて、医療用のはさみで縫い目を切らなければならなかった。中には2つのものが入っていて、1冊の帳簿と、一枚の封をした紙があった。
「まず帳簿を調べてみよう」先生はそう言った。
大地主さんと僕は先生の肩ごしに帳簿を開くのをみていた。リバシー先生は親切に僕にも食事をしていたサイドテーブルからこちらへくるように手招きしてくれたので、僕もそれを調べる楽しみに加わることができたのだ。最初のページにはペンを手にした人が試し書きでもしたような殴り書きがあるだけだった。その一つはあの入れ墨と同じ「ビリーボーンズのお気に入り」というものだったし、「W。ボーンズ氏、船乗り」、「ラムはけっこう」、「パルムキーの沖でそれを手に入れた」とかそんな殴り書きが、ほとんどは単語ではっきりしないものが書かれていた。僕は「それを手に入れた」というのは誰がなのかとか手に入れた「それ」とは何なのか、不審に思わずにはいられなかった。背中にナイフでもくらったとかそんなことなんだろう。
「ここにはたいした手がかりはないな」リバシー先生はページを送りながらそう言った。
次の10〜12ぺージは奇妙な書き込みの連続で埋めつくされていた。行の端に日付があり、もう一方の端に金額があるのは普通の会計の帳簿と同じだったが、2つの間には説明書きのかわりにただ十字のしるしがそれぞれの行に違った数記入されているだけだった。例えば、1745年の6月12日には明らかに70ポンドを誰かに支払っていた。ただその理由を説明しているのは6つの十字だけだった。確かに場所の名前が、「カラカッサ沖」とか単に緯度経度が62度17分20秒、19度2分40秒といったぐあいに書いてあるところもあった。
記録はほとんど20年をこえるくらいも続いていて、金額の合計は年を経るにつれてだんだん大きくなっていき、ついには総合計が5、6回も間違って合計されたあげくにはじき出されていて、「ボーンズ、その財産」となっていた。
「まったく訳がわからんな」先生が言うと、
「きわめて明らかじゃないか」大地主さんは叫んで、「これはあの悪魔のような犬畜生の会計簿ですよ。この十字のしるしはやつらが沈めたり、略奪した船や町の名前を示しているんでしょう。金額があの悪いやつの取り分で、あいまいかもしれないと思ったところに、あんたも見たようにはっきりと書き加えているんですな、“カラカッサ沖”とか。つまりその沖合いで海賊どもが横付けした不幸な船が何艘があって、乗ってた人はかわいそうにずっと昔にさんごにでもなってるかな、冥福を祈るよ」
「その通りだ!」先生は言った。「やっぱり旅行家たるものは違うなぁ。その通りだ! 金額が増えているのは、そうだ、やつが偉くなるにつれてなんだ」
その冊子にはあとは終わりの数ページの白紙にいくつかの場所の方角と、フランスとイギリスとスペインの換算表が書いてあるくらいのものだった。
「しっかりした男だ!」先生は叫んだ。「だまされるような男じゃないな」
「さて」大地主は言った。「もう一つだ」
その紙は何ヶ所も指貫で封印がされていた。たぶん僕が船長のポケットで見つけたあの指貫だ。先生はとても注意深く封を開けると、島の地図が出てきて、緯度経度と、水深、丘や湾そして入り江の名前があり、船が安全にその岸の停泊所に入港するのに必要な点がすべて記入されていた。縦に9マイル横に5マイルほどで、その形は、こう言えるかもしれない、太った竜が立ち上がっているような形だと。2つの陸に囲まれた良港があり、中央には「望遠鏡」という名前の丘が一つあった。その後の日付でもいくつかの追記があったが、結局、赤いインクで3つの十字が、2つは島の北の方に、1つが南西の方に記されていた。南西の方のしるしの側には、同じ赤いインクだが、小さなきちんとした字で、船長のよろめいた字とは似ても似つかない文字でこう書かれていた。「宝物の大部分はここに」
裏にも同じ筆跡でより詳しいことが書かれていた。
北北東より1ポイント北の、望遠鏡の丘の肩の部分、高い木
どくろの島の東南東より東
10フィート
銀の延べ棒が北の隠し場所。東の小高い丘の傾斜面で、10尋(ひろ:手をひろげた大きさ)南の黒いごつごつした岩に面したところで見つかるだろう。
武器はすぐにも見つかる。北の入り江の岬の北方の、東から四分の一北の砂丘にある。
J・F
以上で、短いけれども僕にはなんのことやらぜんぜん分からなかったが、大地主さんとリバシー先生ときたら大喜びだった。
「リバシーさん」大地主さんが言った。「君はこんな惨めな仕事はさっさとやめるんだね。私は明日ブリストルに行く。三週間のうちに、三週間! いや二週間、いや十日だ。われわれはイギリスで最上の船で、とっておきの船員を手にいれるんだ。ホーキンズ君も客室のボーイとして一緒にくるんだ。ホーキンズ君、君はすてきなボーイになるよ。リバシー君は船医だ、私は提督だな。レッドルースとジョイス、それからハンターも連れて行こう。順風満帆で、その場所も簡単にみつかるさ。そしてそれから後は、食べて、贅沢にくらして、湯水のように使えるくらいの金を手に入れるんだ」
「トレローニーさん」先生は言った。「ご一緒しますよ。ジムも行くことは請合いましょう。この冒険の名誉を担うでしょう。でもたった一人だけ心配な人がいるんですよ」
「だれだい?」大地主さんはさけんだ「そいつの名前をいいたまえ、君!」
「あなたですよ」先生は答えた。「あなたは黙っていられないお人だから。この紙のことを知っているのは、私たちだけではないんです。今晩あの宿を襲ったやつら、乱暴な手におえないやつらですよ。たしかにあの小船に残っていたやつらも、それから言っておきますが、それほど遠くにいないやつらも一人残らず、なにがあろうと、その金を手に入れようとするでしょう。海にでるまでは、誰も離れちゃいけません。ジムと私は、それまで一緒にいましょう。あなたはジョイスとハンターと一緒にブリストルに行って下さい。最初から最後まで私たちの誰一人として、見つけたものについて一言でももらしちゃいけません」
「リバシーさん」大地主さんは答えた。「あなたのいうことはいつも正しい。わたしは墓場のように静かにしてることにするよ」
指摘点を何点か修正。えーと今回は英文を公開できるので公開。Sogoさんご指摘ありがとうございます。
>
>>「やどのやつらだ、あのこぞうだな。
>細かいことですが、「やど」は漢字の方が
>いいと思います。
漢字にします。
>>おれは、一文なしのラムをせびるペコペコ頭をさげるこじきになるのか、
>
>I'm
to be a poor, crawling beggar, sponging for rum,
>
>わかりにくいです。私なら語順を生かしてこうします。(主語は省略)
>「一文なしの、人に頭を下げて、ラムをせびるこじきになるというのか、」
そうですね、主語はありで
おれは、一文なしの、人にペコペコ頭を下げて、ラムをせびるこじきになるのか
くらいにしておきましょうか
>>この争いが僕たちの救いとなって、そうこうしているうちに、
>
>This
quarrel was the saving of us, for while it was
>
>still
raging,
>
>ここはいったん文を切った方がいいと思います。
>「この争いが僕たちの救いとなった。そうこうしているうちに、」
>
>>丘の頂上あたりから別の物音がして、それは馬の走る音だった。
>
>another
sound came from the top of the
>
>hill on the side of
the hamlet--the tramp of horses
>
>galloping.
>「〜がして、〜だった。」というつながりは変に思えます。
>「丘の頂上あたりから別の物音が聞こえてきた。それは
>馬の走る音だった。」
あんまり文を短く分断するのが好きではないんですよね。なるべく原文の流れを
保存したいといったところですかね。
「〜がして、それは〜だった」と考えればそれほど変ではないかなと。
>
>>ピューは夜にひびきわたる甲高い悲鳴とともに
>「夜にひびきわたる」という表現が引っかかります。
>「闇を引き裂く」とかの方が私にはしっくりきます。
>でも、これは好みの問題ですね。
このままにしておきましょうか。
>
>>僕は立ち上がると、馬の人たちを呼び止めた。
>「馬の人たち」という表現が引っかかります。
>「乗り手」とかの方が私にはしっくりきます。
>でも、これは好みの問題ですね。
こいつは「乗り手」に修正
>
>>やつらはすっかり逃げておおせたし、
>「やつらはすっかり逃げおおせたし」ではないでしょうか。
修正します。
>>ダンス氏といっしょに
>全体の雰囲気からすると、「ダンスさん」の方がしっくりきます。
>でも、これは好みの問題ですね。
全部「さん」で統一しておきます。
>>僕はダンス氏に心からお礼をいった。そして馬が置いて
>ある村へ歩いて一緒にもどると、僕が母親にどうするかを
>話している頃には、みんな馬にまたがっていた。
>
>I
thanked him heartily for the offer, and we walked
back
>
>to the hamlet where the horses were. By
the time I had
>
>told mother of my purpose they were
all in the
saddle.
>
>この場合、ピリオドで切ってある文をつなぐ必要があるのでしょうか。
>私ならこうします。
>「僕はダンスさんに心からお礼を言って、馬が置いてある村まで
>一緒に戻っていった。僕が母親にどうするかを話している頃には、
>みんな馬にまたがっていた。」
そうですねぇ、この場合主語でわけてこの文の切りぐあいにしています。
>>一行はリバシー先生の家に馬で急いだ。
>
>the party struck
out
>
>at a bouncing trot on the road to Dr. Livesey's
house.
>
>うーん、そういう文なのかなあという気がします。trot
には
>「(馬の)速足《はやあし》」という意味がありますからねえ。
>「みんな、リバシー先生の家に向かって速足《はやあし》で出発した。」
速足がどれくらいイメージできるかですよね、「馬で」を補って上記の文にしています。
こっそり一週抜かしたりしちゃいけないよね。見てくれている人にも申し訳ない...えーと年内に第一部は終わるようにしますんで。それでプロジェクト杉田玄白にも登録依頼だせるし、やる気もいよいよといった具合でしょうか? 英文を公開できるので公開
めくらの男の最後
たぶん僕の好奇心が恐怖を感じる気持ちより強かったせいだろう。僕はそのままの位置にじっとしていられず、土手の方に這って戻っていったのだ。そこで頭をエニシダのしげみの影にかくせば、自分の家の前の道をみはれるというわけだ。僕がその場所に行くか行かないかのうちに、7、8人の男が全速力で走って、歩調はてんでばらばらだったが、先頭にはランタンを持った男がやってきた。3人の男が手に手をとっており、霧が深かったが、3人の真ん中の男がめくらのこじきだろうと当たりがついた。次の瞬間、その男の声がして、僕が正しかったことがわかった。
「ドアをたたきこわせ!」めくらのこじきはさけんだ。
「アイ、アイ、サー!」2人か3人が答えて、ベンボー提督亭に突進し、ランタンを持った男が後に続いた。それから僕はやつらが立ち止まって、なにやら低い声で話しているのが聞こえた。まるでドアが開いていたことに驚いたようだった。でも立ち止まったのは一瞬で、めくらの男が再び命令を下した。めくらの男の声は、気がせいているのと怒りで非常に昂奮しているかのように、さっきよりいっそう大きく、高らかに響き渡った。
「中だ、中にはいるんだ!」そう叫ぶと、ぐずぐずしている連中に毒づいた。
4、5人の男はすぐにそれに従うと、2人がその恐ろしいめくらの男と道に残った。しばらく間があって、それから驚きの叫び声がして、「ビルが死んでる」という声が家から聞こえた。
でもめくらの男は、再度ぐずぐずするなと連中にののしった。
「やつを調べろ、何人かでいいぞ、のろまなやろうども。残りは上だ、衣装箱を手に入れるんだ」
僕は、やつらが僕の家の古い階段をかけ上がる足音を聞いて、家全体がゆれているにちがいないと思った。そのすぐ後に、新たな驚きの声があがった。船長の部屋の窓がバタンと開き、ガラスの割れる音がした。そして一人の男が月光の中に身を、頭と肩をのりだして、下の道にいるめくらのこじきにこう伝えた。
「ピュー、先をこされた。だれかが衣装箱をすっかりひっくりかえしたんでさぁ」
「あるか?」ピューはさけんだ。
「金はあるよ」
めくらの男は、金なんかと毒づき、
「俺が言ってるのは、フリントの地図だ」と叫んだ。
「ここには見当たらないでさぁ」と2階の男は答え、
「おい、1階のやつら、ビルが身につけてないか?」とめくらの男がふたたび叫んだ。
別の男が、たぶん下に残って船長の体を探していたやつだろう、宿のドアのところまでやってきて、「だれかビルをしらべたあとですぜ、なにもありゃしません」と報告した。
「宿のやつらだ、あのこぞうだな。目をくりぬいときゃあよかったな!」めくらの男、ピューはそうさけぶと、続けて「おれがさっき来た時は、ドアが閉まっていたから、それほど遠くには行ってないだろう。さあ、おまえら、手分けしてあいつらを探すんだ」
「違いねぇ、ろうそくがここにあるし」2階の男もそう付け加えた。
「手分けしてあいつらを探せ! 家中ひっくりかえすんだ!」ピューは杖でなんども道を叩きながら繰り返した。
それから僕の古い家はめちゃくちゃな騒ぎだった。あちこちで大きな足音がひびき、家具はひっくりかえるわ、ドアは蹴破られるわ、近くの岩山までその音が響き渡るくらいだった。それから男たちは一人、また一人と外にでてきた。そして口々にあいつらはここにはいないですぜと報告した。ちょうどそのとき、死んだ船長の金を数えていた僕と母親をはっとさせたのと同じ口笛が夜の空にはっきりと響き渡り、それも今度は二回だった。僕はそれをめくらの男の甲高い声、いわば襲撃のために仲間を集める声かと思っていたが、今聞いてみると村の方の丘のあたりからの合図らしかった。その合図を聞いた海賊たちの反応からすると、危険が近づいてるとでもいったような合図だったのだろう。
「またダークの合図だ、それも二回! ずらかったほうが良くねぇか、みんな」と男の一人が口にした。
「ずらかるだって、この臆病者!」ピューはどなりつけた。「ダークもだいたいからしてばかものだし、おまけに腰抜けときてる、やつにかまうんじゃねぇ。あいつらは近くにいるはずだ、それほど遠くにいけるはずがない。手のとどくところだぞ。手分けして探すんだ、おまえら! あぁ、なんてことだ、目が見えさえしたら!」めくらの男は叫んだ。
この言葉に奮い立ったようで、2人の男があたりの木の間をさがし始めたが、どうも気もそぞろといった感じだった。僕が思うに自分たちに危険が迫ってることが頭から離れないようだった。他の男たちときたら道でぐずぐずしている始末だった。
「手の届くところに大金があるのに、このまぬけども、ぐずぐずするんじゃねぇ! 見つけたら王様ぐらい金持ちになるんだ、それがここにあるんだぞ。でもっておまえらは、そこでこそこそ突っ立ってるのか。だいたいおまえらのうち一人としてビルのところへ行かないもんだから、おれが行ったんだ、目が見えないにもかかわらず! おまえらのためにチャンスをのがすのか! おれは一文なしの、人にペコペコ頭を下げて、ラムをせびるこじきになるのか、馬車を乗りまわせるかもしれんのに! もしおまえらに虫けらほどの勇気でもありゃあ、もうあいつらを捕まえてるはずだぞ」
「やめとこうぜ、タブロン金貨を手に入れたことだし、ピュー」一人がそうつぶやくと、
「地図はあいつらが隠したかもしれないし、」と他の男も続けた。「ジョージ金貨を持ってこうぜ、ピュー、とにかくここで言い争ってる場合じゃあねぇ」
言い争うというのは言いえて妙だった。ピューの怒りはその言葉でいよいよ火に油を注いだようになり、ついには完全に怒り狂って、右に左にあたりかまわず杖でなぐりつけた。殴られたものも一人ではすまなかった。
そして今度は、周りの男がピューにくってかかり、ひどくおどしつけて、しっかりにぎっている杖をうばおうとしたができなかった。
この争いが僕たちの救いとなって、そうこうしているうちに、村の方角の丘の頂上あたりから別の物音がして、それは馬の走る音だった。それと同時に、一発銃声が鳴り響いて、生垣のところでパッと火花が散った。危険の最後の合図としては十分すぎるほどのものだった。海賊たちはすぐさまきびすを返し、それぞれの方向にずらかった。あるものは入り江の海岸に、あるものは丘をななめにといった具合だった。30秒もしないうちに、ピューを残して誰一人いなくなってしまった。ピューは見捨てられた、単にパニックに陥ったからかもしれないし、ひどい事を言って杖で打ちつけたから仕返しされたのかもしれない。僕にはわからないが、とにかく置き去りにされて、狂ったように杖で道をさぐり、手探りで仲間の助けを求めていた。しまいには、間違った方角をむき、僕のほんのそばを通り過ぎて、村の方向へ「ジョニー、黒犬、ダーク」や他の名前を、「どうか年寄りのピューを見捨てないでおくれ、仲間だろ、ピューを見捨てないでくれ」とさけびながら走っていった。
ちょうどそのとき、馬の音が大きくなって、4、5人の馬に乗った人が月明かりに姿を現し、全速力で坂を下ってきた。
ピューは自分が間違えたことに気づいて、悲鳴をあげて引き返したが、みぞに転がるようにしてはまり込んでしまった。でも再びすぐさま自分で立ち上がると、駆け出した。ただまったく混乱していて、駆けおりてくる馬のちょうどすぐ近くに飛び出してしまった。
馬に乗っていた人は、助けようとしたがだめだった。ピューは夜にひびきわたる甲高い悲鳴とともに倒れて、4つのひづめがピューをけって、はねとばし、通りすぎていった。ピューは横倒しになり、ゆっくりうつぶせになると、それ以上動くことはなかった。
僕は立ち上がると、馬の乗り手を呼び止めた。その人たちは事故にとても驚いていたが、とにかく立ち止まった。僕は、すぐにだれがやってきたのかがわかった。最後に姿を現したのが、村からリバシー先生のところに行ってくれた若者だったのだ。他の人たちは密輸の監視官で、若者と途中で出会って、機転をきかせすぐに一緒にとってかえしてくれたのだった。監督官のダンスさんは、キット入り江に小型の船がいると聞きつけてちょうどこちらに来るところだったみたいで、こうして僕と母親は命拾いしたのだった。
ピューは、完全に死んでいた。僕の母親は村まで運んでもらって、少しの冷たい水と塩ですぐに気がついた。だからといっていっこうに怖がるわけでもなく、金が足りないとぶつぶつこぼしていた。そうしている間にも、監督官は全速力でキット入り江に馬でかけつけたが、一行は馬からおりて手探りで馬を引きながら、ときにはささえて峡谷を下っていかなければならず、そして絶えず、待ち伏せにも気をくばらなければならなかった。だから入り江についたときには、小船がすでに出航していたのも、なんら驚くべきことではない。ただ小船はまだすぐ近くにいたので、監督官は船に向かってさけんだが、「月明かりの下でぐずぐずしてると、鉛玉をくらわせてやる」という声と同時に弾丸が監督官の腕をかすめていった。すぐに小船は岬をまわって姿を消してしまった。ダンスさんはそこに立っていて、言うには「丘にあがった魚みたいなもんだな」ということだった。そしてできるのはせいぜい、ブリストルに人をやって沿岸警備隊に警告するくらいだった。「それも、なんにもしないのと同じだな。やつらはすっかり逃げおおせたし、それで終わりだ」とダンスさんは言ったが、こう付け加えた。「ただ、ピューのやろうを踏みつけたのはよかった」このときまでには、僕の話を聞いて知っていたのだ。
ダンスさんといっしょにベンボー提督亭にとってかえしたが、あれほどぐちゃぐちゃになった家というものがみなさんは想像できるだろうか。時計さえも母親と僕自身を怒りに任せて探すうちにやつらが投げ飛ばしているありさまだった。そして実際には船長の金の入った袋と引き出しからちょっとの銀を持っていかれたに過ぎなかったが、僕はすぐに家はもうだめだということがわかった。ダンスさんも合点がいかないようだった。
「やつらは金を持ってったといったね? まあ、それはいい。ホーキンス君、その他に何を探していたんだろう? もっと金をか? 私が考えつくのはそれくらいだ」
「違います、ダンスさん。金じゃないと思います」と僕は答えた。「本当は、僕が胸ポケットに持っているものだと思うんですが...本当のことを言えばこれを安全なところに隠しておきたいんです」
「そうだな、その通りだ」ダンスさんは言った。「よければ私があずかるが」
「リバシー先生に...」と僕が言うと、
「それがいい」ダンスさんは全然機嫌をそこねた風ではなく僕の言葉をさえぎると、「それがいいよ。紳士で、治安判事だしな。私も今思いついたが、リバシー先生か大地主さんのところまで行って、自分でちゃんと報告しておかないとな。ピューが死んで、すべてが終ったし。ただそれを残念には思わんがな。ともかく君も見たとおり、やつは死んだ。国王陛下の役人を非難する人もいるかもしれんし、もしできればだけどな。さてホーキンス君、もしよければ一緒に連れて行ってやるよ」
僕はダンスさんに心からお礼をいった。そして馬が置いてある村へ歩いて一緒にもどると、僕が母親にどうするかを話している頃には、みんな馬にまたがっていた。
「ドガー」ダンスさんが言った。「おまえの馬はいい馬だ、この子をおまえの後ろに乗せてやれ」
僕がまたがって、ドガーさんのベルトにつかまるとすぐに、監督官は号令をかけ、一行はリバシー先生の家に馬で急いだ。
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指摘点を何点か修正。えーと今回は英文を公開できるので公開
Sogoさんご指摘ありがとうございます。
>>
>母親に僕の知ってること全て打ち明けた。
>> 「を」が抜けています。
修正します。
>>
>> >おそらく戻っていった方角の反対だった。
>> なんだかしっくりこないです。とくに
>>
「おそらく」をここで使うのはしっくりこないです。
>> 私ならこうします。
>>
>>
戻っていっただろう方向の反対側にあった。
確かにそうですねぇ
村の方角は、あのめくらの男が姿をあらわし、
たぶん戻っていった方角の反対だった。
くらいにしておきます。
>>
>> >というのも、あなたもそう思うだろうが、
>> >恥ずべきことに僕ら2人と一緒にベンボウ
>>
>提督亭に引き返そうとする人は一人としていなかったんだから。
>>
>> For--you would have
thought men would
>>
>> have been ashamed of themselves--no
soul would consent
>>
>> to return with us to the Admiral
Benbow.
>>
>>
英文を見ているうちに、本当にこの訳なのかが疑問に思えてきました。
>>
「--」にはさまれた部分はそれで1つのまとまりを作って
>> いるような気がしますが。
>>
>>
というのも―彼らは自らを恥ずかしく思っただろうとあなたは
>> 思うかもしれない―僕たちと一緒にベンボウ
>>
提督亭に引き返そうといってくれた人は誰もいなかったんだ。
自らを恥かしく思う→自分でも恥かしく思う→恥ずべきこと
いうのも、あなたもそう思うだろうが恥ずべきことで、僕ら2人と一緒にベンボウ
提督亭に引き返そうとする人は一人としていなかったんだ。
くらいにしてみましょうか。
>>
>> >リバシー先生のところに行くことを快諾してくれる仲間はいたが、
>>
それは「仲間」とはいわないのではないでしょうか。
>>
>>
何人か、リバシー先生のところに行ってやろうという人はいたが、
たしかに(笑)「者」ぐらいにしておきます。
>>
>すぐにかんぬきをして、僕たちはしばらく暗闇に立ちつくしぜーぜー息をした。
>>
前半がどうも不自然です。たぶん、(家について)すぐにかんぬきをして、…
>> だと思うのですが、私ならこうします。
>>
>> 家についてすぐにかんぬきをかけた。それから、しばらく暗闇の中で
>>
ぜーぜー息をしながら立っていた。
元の訳は主語もあいまいですし...
僕はすぐにかんぬきをかけ、そして2人でしばらく暗闇に立ちつくし、ぜーぜー
息をした。
にします。
>>
>両目は開いたままで、片腕がぶらさがっていた。
>> 床に倒れているんですから、ぶらさがることはないと
>>
思います。「だらんとのびていた」くらいでどうでしょうか。
修正します。
>>
>> >真鍮の土台の羅針盤1つ、5、6つのめずらしい西インドの貝殻など。それ以来よく思いを
>>
この並びだと混乱してしまいます。
>>
>>
真鍮の土台の羅針盤1つ、それに西インドのめずらしい貝殻が5・6枚あった。
>>
>>
今でも不思議に思っているのだが、←この部分は思いっきり意訳ですが
貝殻→次の文への流れを保存して、
真鍮の土台の羅針盤1つ、それから5、6枚のめずらしい西インドの貝殻。
それ以来〜この貝殻
にします。
>>
>> >「あの悪党どもに、私が正直だってことを見せつけてやるよ」
>>
別に見せつけるような文脈には思えないのですが。
>> 「(前略)正直だってことを見せてやるよ」でどうでしょう。
そうですか? 母親は演説するくらいだから全般的にかなり熱いし、
おまけに後ろの方でもがんこっていうのもでてきますし、rogueって
表現や「I'll
show you. 目にもの見せてやるぞ」って表現もありますし、
こんな具合にしています。
ただ、「私が正直者だって」に修正
>>
>「ジム」突然母親が口にした。
>> "My dear," said my mother suddenly,
>>
好みの問題ですが、英文がこうなので、「息子や」の方が
>> 適切かと思います。
えーと自分の息子に「息子や」っていうのもなんか気持ち悪くて...
>>
>たしかに母親は、ため息を一つつくと僕の肩に倒れこんだ。
>>
「たしかに」って、どこを訳したのでしょうか。こんな言葉が
>> でてくる文脈ではないように思うのですが。
「sure
enough 確かに、思った通り」ですかね。
でもここでは、. I am going to
faint.を受けていると思われるので、
「自分で言った通り」にしておきます。
集中力なし。いつも翻訳を始める時は「僕、僕、僕にやらせてくれ!」って感じで始めるんだけど(笑)「僕、僕にやらせてくれ!」ってくらいかな、まあ二つもあれば十分か? 英文を公開
船乗りの衣装箱
僕は、もちろんすぐさま母親に僕の知ってることを全て打ち明けた。たぶんもっと前に打ち明けるべきだったんだろう。僕たちは、すぐに今の状況がきわめて困難かつ危険であることを悟った。やつがいくばくかの金をもっていたとしたら、それは間違いなく僕らのものである。でもあの船長の船乗りの知り合い、とりわけ僕がみたあの2人の黒犬とめくらのこじきが、死んだやつの借金のかたとしてその戦利品を簡単にあきらめるなんてありそうにないことだった。船長の下した命令、馬にのってただちにリバシー先生のところへいくことは、母親を一人無防備なまま残すことになるので、論外だった。特に2人のうちどちらかでもこれ以上この家にとどまっているのは、無理みたいだった。台所の火床では石炭が崩れ落ち、時計のチクタクという音がいよいよ鳴り響き、僕らをとても不安にした。僕らの耳には、家に誰かが近寄る足音が聞こえたような気がした。1階の船長の死体とあのいまわしいめくらのこじきが、まだそこら、ほんの近所をうろついていて今にも戻ってくるのではという考えの間で揺れ動いていて、ことわざで言うとおり、恐怖のあまり飛び上がりそうになる始末だった。すぐにでもどうにかしなくてはならず、とうとう僕らはふたり一緒に近くの村まで助けを求めにいくことにした。そう口にだすなり出発して、帽子もかぶらす、すぐさま暮れゆく夜の、凍りつくような霧の中を急いだのだった。
近くの村は、となりの入り江の反対側にあったので見えはしなかったが、それほど遠いわけではなかった。あと僕にとってはほっとしたことに、村の方角はあのめくらの男が姿をあらわし、たぶん戻っていった方角の反対だった。村につくまではそれほど時間はかからなかったと思うが、時々立ち止まるとおたがいの手をしっかり握りしめ、耳をすませた。でもかわった音は何一つ聞こえず、さざなみがひくく打ち寄せる音と、森からはなにかがガーガーと鳴きたてる声が聞こえてくるだけだった。
僕らが村についたのはすでに夕暮れ時だった。そしてどれほど窓やとびらから見える明かりをみてほっとしたか、決して忘れることはないだろう。でも、すぐにわかったように、それが僕らがここで手に入れることができそうな唯一の助けだった。というのも、あなたもそう思うだろうが恥ずべきことで、僕ら2人と一緒にベンボウ提督亭に引き返そうとする人は一人としていなかったんだから。僕らが困っている話をすればするほど、いっそう村の人達は、男も女もそして子供も、自分の家にしがみつくありさまだった。フリント船長の名前は、僕にはなじみがなかったが、そこの人達にはきわめてよく知れ渡っており、恐怖の的だったのだ。その上さらに、ベンボウ提督亭の向こう側の農場で働いたことのある人のなかには、見知らぬものが数人道をとおりかかるのをみかけて、密輸業者かとおもって逃げだしてきたことを覚えていたものもいた。少なくとも一人は僕らがキットの穴と呼んでいた場所で、小さな船をみたということだった。さらに言うなら、船長の仲間は誰でも、村の人から死ぬほど怖がられていたのだった。結局、別の方向のリバシー先生のところに行ってやろうという者は何人かいたが、僕たちが宿を守るのを助けようとしてくれる人は一人もいなかった。
村の人達は、臆病は人から人へうつるもんだなんて言っていたが、その反対に口だけは勇ましいものだった。めいめいが勝手にあれこれ言っていたが、母親がみんなに一席弁じたてた。私は、この父親をなくした子のものであるお金を失うつもりはないと。「もしあなたがたの誰一人としてやらないつもりなら、」と声を張り上げ、「ジムと私がやります、きた道をもどって、あなた方の図体だけ大きくておせっかいで臆病な人達にはつつましく感謝しましょうかね。もしそのために死ぬことになっても、あの衣装箱を開けます。クロッスリー夫人、このバッグをありがとう、これに私たちの正当なお金を入れてきます」と断言したのだった。
もちろん僕も母親と一緒に行くと言いはり、村の人は全員、僕らを向こう見ずで無茶だとわめきたてた。でもただの一人として、僕らといっしょに行こうと申し出るものはなかった。してくれたのはせいぜい、襲われたときのために僕に弾をこめたピストルをくれたことと、僕らが帰り道で追いかけられたときのために、鞍のついた馬を用意しようと約束してくれるくらいのものだった。そして、一人の若者が医者のところへ武装した援軍をたのみに馬ででかけることになった。
寒い夜の中、危険な企てに2人で出発するとき、僕の心は打ち震えた。満月が昇り始め、霧の上から赤みを帯びた顔をのぞかせていた。だから僕たちはいそがなきゃならなかった。というのも家に戻る前に、まるで昼間みたいに明るくなってしまうのは明らかだったから。そして僕たちの出発は、見張っているものがいればすぐに見つかってしまっただろう。僕らは、生垣にそって音を立てないようにすばやく歩をすすめた。ほっとしたことにベンボウ提督亭の玄関に滑り込むまで、恐怖をかきたてるようなことは見聞きしなかった。
僕はすぐにかんぬきをかけ、そして2人でしばらく暗闇に立ちつくし、ぜーぜー息をした。その家に他にいるものといったら、船長の死体くらいのものだった。それから母親が酒場からろうそくをもってきて、お互いの手を握りしめながら、ラウンジに入っていった。やつは僕らが残してきたままの姿で、仰向けに倒れて、両目は開いたままで、片腕がだらんとのびていた。
「窓の日よけをおろして、ジム」母親がささやくようにいった。「あいつらがやってきて、外で見張ってるかもしれないから。それから、」僕がそうすると母親は続けた。「あれのカギを手に入れなきゃ、まったくさわりたくないわねぇ」と言いながらすすり泣いているようだった。
僕はすぐにひざまずいた。死体の手の近くの床の上に、片面が黒くぬられた丸い紙切れがあって、僕は黒点にちがいないと思った。拾い上げてみると、反対側にははっきりしたきれいな字で短く「10時までだ」と書かれていた。
「10時までだって、お母さん」と僕がいうと、ちょうどそのとき古時計が時を打ちはじめた。この突然の音でめんくらってしまったが、いい知らせだった。まだ6時だったのだ。
「さあ、ジム」母親が言った。「あれのカギを」
僕はポケットを次から次へと探ったが、小銭と指ぬき、それから大きな針と糸、端に噛んだ跡のあるねじりタバコ、曲がった柄のナイフ、小さいコンパス、そして火打ち箱がでてきたもの全てで、僕はあきらめてしまいそうになった。
「たぶん首にかけてるんだよ」母親が言った。
まったく気持ち悪いことだったが我慢して、シャツの首のところを引き裂くと、なるほど確かにタールまみれのひもでカギがぶら下がっており、僕はやつのナイフでひもを切り取ると、カギを手に入れた。上手く手に入れることができたので喜び勇んで、2階へかけあがり、すぐさまやつがずっと寝起きしていた小さな部屋にいき、そこにはやつがこの宿にきた日からずっとあの箱が置いてあった。
外見は普通の船乗りの衣装箱のようで、ふたのところにはイニシャルが“B”と焼印されていた。そして箱の四隅は長い間ひどい扱いを受け、いくぶんつぶれて壊れかけていた。
「カギをよこしなさい」母親が言った。カギはしっかりかかっていたが、こじあけると、あっという間にふたを開けた。
中からは、タバコとタールの強烈なにおいがした。だが上にはとても上品な服がひとそろいあるだけだった。ていねいにブラシがかかっていて折りたたまれていた。母親が言うには、着たようには見えないわねということだった。その下は、いろいろなものの寄せ集めだった。四分儀、ブリキの缶、タバコが何本かと、ふたつ一組のとても優雅な拳銃、銀の延べ棒、古いスペイン時計、その他ほとんど価値のないおそらく外国製のこまごまとしたもの、真鍮の土台の羅針盤1つ、それから5、6枚のめずらしい西インドの貝殻。それ以来よく思いをはせることがあるのだが、やつはいったいなんだって放浪の罪深いお尋ね者の生活で、この貝殻を持ち運ばなければならなかったのだろう。
そうこうしている中で、僕らが見つけた価値のあるものといったら銀とこまごまとしたものだったが、どちらも僕らが求めているものではなかった。さらにその下には、古いボート着があり、あちこちの港の潮で白くなっていた。母親はいらいらした様子でそれを引っ張りあげると、箱の一番最後のものが現れた。油布にくるまれた包みで書類みたいにみえるものと、もちあげるとじゃらじゃら金の音のするズック袋だった。
「あの悪党どもに、私が正直者だってことを見せつけてやるよ」と母親は言った。「取り分だけをもらうよ、それ以上はびた一文だって。クロッスリー夫人のバッグをもってて」そして船乗りの袋から僕のもっているバッグに船長の勘定分を数えて移した。
それは時間がかかって大変な仕事だった。というのもいろいろな国やサイズの硬貨があって、ダブロン金貨、ルイ金貨、ギニー金貨そして8印銀貨、その上僕には何だかわからないものまで、全てがごちゃまぜになっていた。ギニーがどうやら一番少ないようだったが、母親がどうやら数えられるものといったらそれがせいぜいだった。
半分くらいやり終えた頃、僕はとつぜん母親の腕に自分の手をおいた。というのも静まり返った寒気の中から心臓が口から飛び出そうになるほど驚かせる音が、めくらの男の凍った道を杖でコツコツと鳴らす音が聞こえたからだった。その音はだんだん近づいてきて、僕らはただ息を殺して座っているだけだった。それから宿のドアをはげしく叩くと、取っ手をまわして、押し入ろうとしてかんぬきをがたがたいわせているのが聞こえてきた。それからしばらく家の中でも外でもなんの音もしなかったが、ついにコツコツという音がまた聞こえて、それがだんだん小さく遠くなり、とうとう聞こえなくなったときの喜びとうれしさといったら言い表しようもないほどだった。
「お母さん」僕は言った「全部もっていこうよ」かんぬきがかかってたから怪しむに違いないし、大勢の敵が押しかけてくるだろう。でもかんぬきをかけたことをどれほど感謝したことだろう、あの恐ろしいめくらの男をみたことがないとそれはわかるまい。
でも母親は、僕と同じくらいびくびくはしていたが、自分の取り分以上はびた一文とらない意気込みはかわらなく、かといって少ないのもよしとはしなかった。まだ7時にもならないし、時間はたっぷりあると母親は言い張った。権利はあるのだからとにかくもらうの一点ばりだった。そんなふうに母親と僕が言い争っているときに、かなり離れた丘のほうから低い口笛の音が聞こえてきた。十分だった、僕と母親にとっては十分以上といえるほどだった。
「これだけ持ってくよ」母親は飛び上がるようにして立ち上がり言った。
「足りない分、僕がこれをもっていくよ」と僕は油布の包みを手にした。
すぐに僕たちは、ろうそくは空の衣装箱のそばに残して、手探りで階下におりた。そしてドアをあけ、一目散に逃げ出した。もう少しで手遅れになるところだった。霧は急速に晴れていき、既に月は高台の両側をはっきりとてらしだしていた。ただその小さい谷の底だけに、宿屋のドアのまわりにうすい霧のベールがまだ立ち込めて、僕らが逃げ出すのを隠してくれたのだった。半分も行かない内に、丘のふもとからほんの少し行ったところで、月の明かりの中を進んでいかなくてはならなくなった。そればかりではなく、何人かがこちらに走ってくる足音が僕らの耳にとどいた。そしてその方向を振り返ると、明かりが一つ前後にゆれながら急速にこちらに近づいてきて、新しくきたやつらのなかには明かりをもっているやつがいることがわかった。
「ジム」突然母親が口にした。「このお金をもって走っていっておくれ、わたしはもう気をうしないそうだよ」
これでとうとう僕らは二人ともおしまいだと僕は思った。どれほど村の人の臆病さをのろったことだろう。母親の正直さと欲張りなこと、そしてさっきまでの頑固さと今の弱音をどれほど責めたことだろう。僕たちは、幸運にもちょうど小さな橋にさしかかっていた。そしてよろめく母親を助け、土手の端まで連れて行った。母親は、自分で言った通りため息を一つつくと僕の肩に倒れこんだ。いったい全体どうしてあんなことをする力があったのか分からない。たぶん手荒にやったんじゃないかと思うが、僕はどうにか母親を土手の下まで、橋の下に少し隠れるところまで引きずっていった。もっと引っ張っていこうとしたが、橋はとても低くて僕が腹ばいでその下に入り込むのが精一杯だった。そこで僕らはじっとしていなければならなかった。母親はほとんど全身が見えていたし、僕ら二人とも宿から声の届くくらいのところにいたのだった。
指摘点を何点か修正。えーと今回は英文を公開できるので公開、しつこいか
Sogoさんご指摘ありがとうございます。
>>
>> >「どうか、とてもそんなことはできないよ」と僕が言うと
>>
>> "Sir," said I,
"upon my word I dare not."
>>
>>
この文の訳としては「どうか」は不自然だと思います。
>> 前後のつながりからいって、「そんな」とか、
>>
そういう感じの方がいいと思います。
Sirの意味合いをとってるつもりなんですが、たしかに無理ありますね。
無難に「だんな」ぐらいにしておきます。
「だんな、とてもそんなことはできないよ」
>>
>> >「来るんだ、さあ、行け」
>> "Come, now, march," の訳なら、
>>
「連れていけ」の方がいいように思います。
確かに。「行くんだ、さあ、連れて行け」にします。
>>
>> >その男はさえぎると、僕はそのめくらの男の声ほど
>>
>残酷で冷たくひどい声は聞いたことがなかった。
>> 「さえぎると、〜聞いたことがなかった」
>>
のつながりは不自然です。「;」でいったん切って、
>>
>>
その男は僕の言葉をさえぎった。そのめくらの
>> 声くらい残酷で冷たくひどい声は聞いたことがなかった。
>>
>> みたいな感じでどうでしょうか。
少しだけ主語を足して、
その男は僕の言葉をさえぎった。僕はそのめくらの男の声ほど
残酷で冷たくひどい声は聞いたことがなかった。
にします。
えーと脱力中のわけは、花粉症だからか? なんでだいたい秋なのに花粉症なんだ。まあ今回は最後までこれを恒例にしましょうか、英文を公開できるので公開と。翻訳にも、もう少しはリソースを割きたいところだなぁ。
黒点
昼ごろ僕は、冷たい飲み物と薬をもって船長の所に行った。やつは僕らが寝かせたのと同じかっこうで横になっていて、すこしだけ体をおこしていたが、衰弱していると同時に興奮しているようだった。
「ジム」やつは言った。「おまえだけだよ、頼りになるのは、おれがいつもお前によくしてやったのはわかってるな。一月たりとも4ペニー銀貨を欠かしたことはないし。おれはすっかり弱ってるし、みんなに見放されちまっている。でだ、ジム、おまえはおれのところにラムをほんのちょっぴりもってきてくれるよな、相棒?」
「お医者さんが、」と僕が口を開くと、
やつは医者に毒づき、弱々しいがはっきりした声で言いきった。「医者なんてもんは、まぬけと相場がきまってる。おまけにここのあの医者に、なんだって海の男のことが分かると言うんだ? おれは地獄みたいに暑いとこに行ったこともありゃ、仲間が黄熱病でばたばた倒れていったこともある。地震で海の上にいるみたいにゆっさゆっさとゆれる、あののろわれた土地にも行ったんだぞ、いったいあの医者がそんな土地の何を知ってるというんだ? おれはラムで生き長らえてるんだ、お前にも言っとくぞ。それが血となり肉となり、夫婦みたいなもんだ、おれにとってはな。いまラムが飲めなかったら、今まさに風下の岸に打ちつけられたこんな惨めなぼろ船みたいなときに、ラムが飲めなかったら、お前にたたってやるぞ、ジム、あとあのくされ医者もだ」やつは再び罵詈雑言の限りをつくしたが、一転して嘆願するような口調でこう続けた。「見てくれよ、ジム、おれの指の震えを。じっとさせておけねぇんだ、自分じゃな。こののろわれた今日は、一滴たりとも口にしてないときてるのにな。あの医者はばかだ、おれは言っとくぞ。もしラムを一杯やらなかったら、ジム、おれはアル中みたいに震えちまう。おれにはもうやつらが見えてるぞ。あの隅のところに、ほら、おまえの後にフリントだ。印刷したみたいにはっきり見えるぞ。おれにアル中の震えがきたら、なにしろめちゃくちゃな生き方をしてきたからな、大騒ぎをやらかすぞ。あの医者だって、一杯ぐらいならかまわんといったろう、ちょっぴりでいい、一ギニー金貨をくれてやるぞ、ジム」
やつはいよいよ興奮してきたので、僕は親父の事の方が心配になった。親父はその日は特に体調が悪くて安静にしている必要があったのだ。その上先生も今やつが僕に言ったように、たしかに一杯ぐらいならかまわないって言ったことだし、大丈夫だろうと思ったんだ。でもわいろの申し出の方が気に障った。
「あなたの出す金なんて欲しくないや」と僕は言った。「でも僕の親父に借りがあるはずだよ、一杯持って来てやるよ、一杯だけ」
僕がラムをもってくると、やつはがつがつとひったくって、飲みほした。
「おぉ、おぉ」やつは言った。「ちっとはましになった。一息ついたぞ。さて、相棒、あの医者はどれくらい、ここに、この古ぼけたベッドで寝てなきゃならんと言ったんだ?」
「最低一週間」僕が言うと、
「くそったれ!」やつは叫んだ。「一週間だと! そうしてられるかい、それまでにはやつらがおれに黒点をつけちまう。いまこの時にも、やつらまぬけどもがおれを追いつめようとしてるんだ。やつらまぬけどもは手に入れたものを持ってられないばかりか、人の分もほしがるしまつだ。それが海の男のやることかい、知りたいもんだよ? でもおれは倹約家なんだ。おれは、自分の大事な金はむだづかいしないんだよ、もちろん失くさない。よし、やつらをもう一回ひっかけてやる。やつらなんか恐くない。よし、相棒、また帆をあげて、やつらをまいてやる」
そう言いながら、やつはベッドからかなり苦しそうに起きあがると、僕の肩を悲鳴をあげるほど強くつかんで、足ときたら意のままに動かないといったようだった。やつの言葉は、中身はいさましかったが、実際口にだした声が弱々しかったので、いっそう寂しげに響いたものだった。やつは、ベッドの端に腰かけると一息ついた。
「あの医者のやつ、やりやがった」とつぶやいた。「耳鳴りがしやがる、寝かしてくれ」
僕が手を貸すまでもなく、やつは元通り倒れこんでしまって、しばらく黙りこくっていた。
やっとのことで口を開くと、「ジム、今日あの船乗りを見ただろう?」といった。
「黒犬?」僕は尋ねた。
「あぁ! 黒犬だ」やつは答えた。「あいつは悪いやつだ。でもやつを仕向けたもっと悪いやつがいるんだ。さて、もしおれがどうやっても逃げられなくて、やつらがおれに黒点をつけたら、覚えておいてくれ、やつらが探してるのは、おれの船乗りの衣装箱なんだ。おまえは馬に乗るんだ、乗れるな、乗れるんだろう? よし、じゃあ馬に乗って、行くんだ。うん、そうだ、言っちまおう! あの永遠なる医者やろうの所に行くんだ。それで医者に言って人手を集めてもらって、判事だのそんなやつらだ、それで医者はこのベンボウ提督亭で全員をひっとらえてくれるだろう。全員っていうのは、生涯フリント号の船員のやつらで、生き残りのやつらだ。おれは一等航海士だったんだ、おれはフリント号の一等航海士だ。しかもあの場所を知っている唯一の人間なんだぞ。フリント船長が、おれにサバンナで、そうだな、ちょうど今のおれみたいに死にかけている時に教えてくれたんだ。でもやつらが黒点をおれにつけるまで、告げ口に行くんじゃねえぞ。あとはな、おまえが黒犬をまた見るか、もしくは一本足の船乗りを見かけた時にだ、ジム、なによりやつなんだ」
「でも黒点って何ですか、船長?」僕は尋ねた。
「それは呼出状なんだ、相棒。もしやつらがよこしたら、おまえに教えてやる。でもおまえも用心を怠るな、ジム。そうすれば、誓って、おまえと二人で山分けだ」
やつはもうしばらくとりとめのないことを言っていたが、声はだんだん弱くなっていった。僕が薬を飲ませると、こんなことを言いながら「もし船乗りでちゃんと薬を飲むやつがいれば、それはおれぐらいなもんだな」子供みたいにそいつを飲んで、すぐにぐっすりと気絶したように眠りについたので、僕は部屋を離れた。そのとき何をすればよかったのか、僕にはわからない。たぶん僕は先生になにもかも話しただろう、というのも船長がいろいろ僕に話したことを後悔して、僕を片付けたりしないか死ぬほどびくびくしていたから。でも実際にどうなったかといえば、僕の親父がその晩に本当に急に亡くなったので、他のことは何もかもそっちのけになってしまった。僕ら家族は涙にくれ、近所の人がお悔やみにきて、葬儀屋が手配され、その間すべての宿の仕事が僕の両肩にかかってきたのでとてもいそがしくて、船長のことを考えてる時間も、ましてや恐がったりする時間なんてこれっぽっちもなかった。
やつは確かに次の朝、一階に降りてきていつも通り食事をした。でもほとんど食べなかった。僕はびくびくしたが、いつもよりたくさんラムをがぶ飲みした。もう自分で酒場から、眉をひそめ、鼻をならしながらラムを持ち出してきたのだ。だれもあえてやつを止めようとはしなかった。葬式の前の晩には、やつはいつものように酔っぱらっていた。喪中の家でやつのだみ声で船乗り歌が響きわたるのを耳にするのは、ひどく不愉快なことだった。でもやつは弱っていたので、みんなやつが死ぬことも恐れていた。お医者さんも、僕のお父さんを看取ったあと、突然何マイルも先の患者のところまで出かけて行って、宿の近くにはいなかった。僕はやつが弱っているといったが、実際やつは元気をとりもどしているというよりはだんだん衰弱しているように見えた。階段を上ったり降りたり、ラウンジから酒場に行ったり、また戻ったりといったぐあいで、時折海のにおいをかごうと戸口から鼻をつきだして、壁に手をついて体を支えながら、まるで切り立った山に登る人のように深く激しく息をしていた。やつは格別、僕に話しかけはしなかったので、すっかりあの話を僕にしたことを忘れてしまったのだと思いこんでいた。やつの機嫌はいよいよ気まぐれになり、体が弱ってることを考え合わせると、以前よりもっと乱暴になっていたとさえ言えるだろう。酔っ払った時、やつはびっくりするような態度、短剣を抜いて、テーブルの自分の前に抜いたまま置いておくといったような態度をとったりもした。その他いろいろな態度をとり、人のことは気にしなくなり、黙り込んで物思いにふけって、むしろぼんやりしているようにも見えた。例えば、一度は僕たちがとてもびっくりしたことに、以前とは違った風に歌を歌いはじめたことさえあった。その歌は、田舎の恋歌といったようなもので、海賊稼業を始める前の若い頃に習い覚えたものに違いない。
葬式の次の日には、こんな風に一日が過ぎていき、3時を回った頃には、身をさすように寒く、霧がかかった、霜の降りた午後だったが、僕はドアの前に立ちつくし、親父のことで悲しい思いでいっぱいだった。その時、僕は誰かが道をゆっくりとこちらにやってくるのが目にはいった。その男はあきらかに目が見えないようだった。杖で道を探っていたし、目と鼻の上に大きな緑の覆いをつけていた。まるで年をとったせいか病気でそうなったようにせむしであり、大きな古ぼけたぼろきれのフードつきの船乗りのコートを着て、明らかにぶかっこうだった。僕はいままでこんなにひどい姿をみたことはない。その男は、うちの宿から少し離れたところで立ち止まると、自分の前に向かって、妙な一本調子の声を張り上げた。「だれか親切な人がいらっしゃったら、あわれな目くらに教えてくだされ。祖国を守る恵み深い戦いで大事な両目を失ったものです。ジョージ国王に恵みあれ! ここはどこ、どのあたりなんでしょうか?」
「ここは、ブラックヒル入り江のベンボウ提督亭だよ」と僕は声をかけた。
「聞こえました、若い人の声じゃな。手をかしてくださるかな、おやさしい若い人。手をひいてくだされ」とその男は答えた。
手をさしだすと、その瞬間、そのひどい姿の、ものやさしい話し方のめくらの男は、万力のような力で僕の手をしめつけた。僕はとてもびっくりしたので、手をひっこめようとしたが、そのめくらの男は手をさっと動かしただけで、自分の方へ僕をひきよせた。
「さて、ぼうや」その男は言った。「わしを船長のところへ連れていってもらおうかな」
「だんな、とてもそんなことはできないよ」と僕が言うと、
「はぁ」とせせら笑い、「そうかい! すぐさま連れてくんだ、さもなくば腕をへし折るぞ」
そして言ったとおりに腕をぐいっとねじりあげたので、僕は悲鳴をあげた。
「ちがいます、僕はだんなのために言ってるんだよ。船長はすっかり変わっちゃってるんだ、短剣をぬいたまま座ってるし、違う人なんか、」
「行くんだ、さあ、連れて行け」その男は僕の言葉をさえぎった。僕は、そのめくらの男の声ほど残酷で冷たくひどい声は聞いたことがなかった。その声はさきほどの痛みより僕には脅しになって、すぐに言うとおりにして、ドアから入ってまっすぐラウンジまで歩いていった。そこではあの病気の老海賊が座って、ラムで酔っぱらっていた。めくらの男は、僕の手を鉄のようなこぶしで握り締め、支えられないほど僕に寄りかかり、僕をぐっと引き寄せた。「やつのところまで、まっすぐ連れて行くんだ。やつがわしを見つけたら、“お友達ですよ、ビル”と叫ぶんだ」もしそうしなかったら、こうだぞ、と言って気絶するんじゃないかというほど強く引っ張った。そんなふうだったので僕はめくらのこじきにすっかりおびえて、船長の恐さなんて忘れてしまって、ラウンジのドアを開けた時、あの震える声で言いつけられたとおりの言葉を叫んだ。
かわいそうな船長は両目を開くと、ちらっと見ただけでラムが抜けて、すっかりしらふになった。表情は恐怖の表情というよりは、臨終の間際のそれだった。船長は立ちあがろうと体を動かしたが、体にはそんな力が残っているようには見えなかった。
「さて、ビル、そこに座ってろ」こじきは一言そういうと、「目は見えないかもしれんが、指一本動かす音も聞こえるからな。情け容赦しないぞ。左手をあげるんだ、ぼうや、やつの左手の手首をつかんでわしの右手のところまで持ってくるんだ」
僕と船長は2人ともめくらの男のいいなりで、僕は杖を握っていた手の中からなにかを船長の手にわたして、船長がすぐにそれを握り締めるのを見た。
「さて、それだけだ」めくらの男はそう言って僕の手を離すと、信じられないほどの正確さとすばやさで、ラウンジから出て道へ駆け出して行った。僕はまだ身動き一つせずそこに立っていたが、杖の音がこつ、こつ、こつと遠くに離れて行くのが聞こえた。
僕と船長が、正気をとりもどすにはしばらく間があった。でもしまいには、僕がまだにぎっていた船長の手首をはなすのと同時に、船長は手をひっこめて手の中をにらみつけた。
「10時だと! 6時間ある。まだ目にものをみせてくれるぞ」と叫ぶと、飛びあがった。
そうしたからだろうか、船長はふらつくと、のどに手をあててしばらくよろめいていたが、それから変な声をあげたかと思うと、床に顔からばったり倒れた。
僕はすぐにかけよって、母親を呼んだ。でも急いでも無駄だった。船長は、卒中におそわれて既に亡くなっていた。考えてみれば不思議なことだが、僕はやつのことをこれっぽっちも好きだったことはなくて、最近かわいそうに思い始めていただけなのに、やつが死んだのを見た瞬間に、ぼろぼろ涙がでてきたのだった。これは僕の経験した2度目の死で、最初の死の悲しみが、まだ胸にうずいていた。
指摘点を何点か修正。えーと今回は英文を公開できるので公開、しつこいか
Sogoさんともかくご指摘ありがとうございます。
>>
>僕の親父が、春をふたたびみることなさそうなことも
>>
>>
1.ジム・ホーキンスは大人になってから
>> この文を書いている(という設定な)ので、
>>
親父とは書かないと思います。
>> 母親と会わせて「父」「母」でいいのでは
>> ないかと思います。
えーと、悩ましいところですね。冒頭の「今は西暦17××年だけど
」にみられるようにたしかに回想風に書いています。
ただ主語の選択のところでも迷ったんですが、書き手よりは
読み手の立場になって「私」より「僕」を「父」より「親父」
を選んでます。宿屋の腕白そうな息子が子供の頃に「父」って
いうイメージでもないような気もしたので、「親父」にしてます。
なるべく子供の視点をもって、訳そうかなと思ってるところが
ありますね。いくつか口語風な文章をいれてるのはそんな意識
でいれてます。
>>
2.ふたたびみること「が」なさそうなことも
>> 「」のところが抜けていると思います。
>>
>>
>憤慨のあまり鼻をはなした音だった
>> 「はなした」の部分がよくわからないです。
>>
「ならした」ですか?
両方とも間違いです。修正します。
>>
>なくなっていた。おまけに短剣はもっていたけれど、およそ戦うようには
>>
>> the left hand,
and
>>
>> though he wore a cutlass, he did not look
>>
>> 「おまけに」っているのでしょうか。いらないと思うのですが。
本文も切らず、andで続けていること、前の文意からの流れで
fighterには見えないという意味にとってます。
>>
>その男は「ラムがあれば」といったが
>> 「ラムをくれ」の方がしっくりきます。
I asked him what was for his service, and he said he would take rum;
wouldとしては、「ラムをくれ」っていうのがしっくりこないんですよねぇ
「ラムがあれば」はおどおどしすぎだけど、「ラムをもらおうか」くらいに
しておきますか。
>>
>僕はビルってあなたの友達は知らないけれど、
>> >ここはこの宿にとまっている人、僕らは船長
>>
>って呼んでる人のテーブルだと答えた。
>>
>> I told him I did not know his mate
Bill, and this was for
>>
>> a person who stayed in our house
whom we called the captain.
>>
>>
「けれど」の部分が不自然な気がします。
>> 他のとあわせて私ならこうします。
>>
>>
僕はこう答えた。「あなたの友達であるビルは知りません。
>> ここはうちの宿にとまっている人のためのテーブルです。
>>
僕らはその人を“船長”って呼んでます。」
そうですねぇ。andには
それなのに,しかし
She
was very careful, and the result was a complete failure.
彼女はとても気をつけていたのだけど,結果は完全な失敗だった.
なんて意味もあるので、それほど不自然には感じないですね。
ただいかんせん文章がだらだらしてますね。
間接話法を直接話法(でしたっけ?)にするのも、
なるべく禁じ手にしてるんで、
僕はこう答えた。あなたの友達のビルっていう人は知らないけれど、
このテーブルはうちの宿に泊まっている人が使ってる。僕らは
その人を船長って呼んでるけどねと。
ぐらいにしておきます。
>>
>特に飲んだりするとな。俺の友達のビルは。
>> 最初の「。」は「、」ではないでしょうか。それとも、
>>
何か文に欠けているところがあるのでしょうか。
修正します。
>>
>まるでのどにいわゆる塊でもあるかのように
>> 「いわゆる」の部分がどうも引っかかります。
>>
でも、英文を見てもどうしたらいいのか分からないのですが。
たしかにひっかかりますよね。
he kept swallowing
as if he felt
what we used to call a lump in the throat.
まるでのどに何かつっかえでもしているかのように
>>
>邪魔されていなければ、頭がまっぷたつなのは確実だっただろう。
>>
「黒犬の」頭というふうな言葉があった方がいいと思います。
そうですね、入れておきましょう。
>>
>良心がおもむくままに言うんだが
>>
>> "I clear my
>>
conscience--the name of rum for you is death."
>>
>>
なんだか不自然な感じです。私なら「医者として、いわねばならん。ラムは…」
>>
みたいな感じにします。でも、難しいですね。
conscienceって医者として以前の問題としての良心って意味だと思ったんですが、
「良心の命じるところに従って言っておこう」くらいにします。
いぜんとしてなぜか脱力中、訳文は脱力してちゃいけないんだけど。今回は英文を公開できるので公開
黒犬が姿をあらわし、そして消えた。
それからほどなく、あのいわくありげな出来事の最初のひとつがおきたのだった。そのおかげで僕たちは、とうとうやつの心配をしなくてもすむようになったわけだ。もちろん君たちが思ってるとおり、やつがこの話にかかわらなくなったわけではなかったけれど。とにかく身を切るように寒い冬で、長い間厳しい霜がおり風が強かった。だから僕の親父が、春をふたたびみることがなさそうなことも最初からわかりきったことだった。親父は日ごとに衰弱していって、母親と僕で全ての宿屋の仕事をきりもりし、あまりにいそがしかったので、あの不愉快なやつにはあまり注意をはらうこともなかった。
ある1月の朝のことだった。朝とても早くに、身が引き締まるほど寒く、霜がおりて入り江は灰色にかすみ、さざなみが岩にそっと打ち寄せていた。日は低くまだ丘の頂上から顔をだしただけで、朝日が海をてらしていた。やつは普段より早起きしていて、短剣をあの古ぼけた青いコートの広いすその下でぶらぶらさせ、真鍮製の望遠鏡をこわきに抱え、帽子は頭の上で後ろの方にかたむけたようななりで、浜まで出かけていた。僕は覚えている。やつが大またで歩いていった跡には吐く息が煙のように漂い、そして大きな岩を回ったときにやつから最後に聞こえてきたのは、憤慨のあまり鼻をならした音で、それはまるでやつの心が、リバシー先生とのことにまだとらわれているかのようだった。
さて、母親は親父と一緒に二階にいて、僕はやつが帰ってくる前に朝食用のテーブルを用意していた。そのときラウンジのドアが開き、一人の男、僕がまったく知らない男、が入ってきた。その男は青白く蝋のような顔色で、左手の指は二本なくなっていた。おまけに短剣はもっていたけれど、およそ戦うようには見えなかった。僕はいつも目をよく開いて、一本足かそれとも二本足の船乗りの男たちを見張っていた。でも思いおこしてもわけがわからないが、この男は船乗りには見えなかったにもかかわらず、やつと同じように船乗りを感じさせるようなものがあったんだ。
僕はその男に「いかがなさいます」って聞いた。その男は「ラムをもらおうか」といったが、僕がラムを取りに部屋からでていこうとしたら、テーブルの上にすわり僕を呼び止めた。僕はナプキンを手にしたまま、その場に立ち止まった。
「ぼうや、こっちへくるんだ、もっと近く」
僕は一歩近づいた。
「ここは俺の友達のビルのテーブルだろ?」とその男は、にらみつけるように尋ねた。
僕はこう答えた。あなたの友達のビルっていう人は知らないけれど、このテーブルはうちの宿に泊まっている人が使ってる。僕らはその人を船長って呼んでると。
「よし、俺の友達のビルは船長と呼ばれている、まあそんなもんだな。やつには片ほおに傷があり、まあゆかいなやつだな、特に飲んだりするとな、俺の友達のビルは。仮にな、おまえのとこの船長とやらに片ほおに傷があるとしよう、仮にな。もしよければ、そのほおが右ほおだとしようじゃないか。どうだい! 言ったろう。さあ、俺の友達のビルがここ、この宿にいるんだろう?」
僕はその男にやつは外に散歩にいったと答えた。
「どっちだ、ぼうや? どっちにいったんだ?」
そして僕はあの岩の方を指さすと、どうやって船長が帰ってくるのかとか、どれくらいで帰ってくるのか? などなどいろいろな質問に答えた。「あぁ」その男は言った。「これは俺の友達のビルにとっては、飲むのと同じくらいうれしいことになるだろうよ」
そういったときのその男の表情は、まったく不愉快なものだった。そして僕はたとえ本気でそう言ってるとしても、この見知らぬ男は間違ってると思った。でも僕には関係ないことだと思っていたし、その上そもそも何をすればいいか全然わからなかった。この見知らぬ男は、宿のドアを入ったすぐのところでうろうろしており、猫がねずみを待ちかまえているかのように、角を曲がった所をのぞきこんでいた。僕が道まで出て行くと、その男はすぐに僕を呼び戻した。そして僕がすぐにそれに従わなかったのが、その男には気に入らなかったらしく、急にその男の蝋のような顔色が変わると、僕を飛び上がらせるほどの悪態をついて命令した。僕がもどるとすぐにその男の態度は元のとおりになり、半分こびへつらい、半分あざ笑うかのように僕の肩を軽く叩きながら、いい子だ、俺のお気に入りだぞなんて口にした。「俺にも子供がいる、おまえと同じような子供がな。俺の自慢の種だよ。だが子供に本当に大事なのは、しつけなんだ。いいかい、ぼうや、しつけだ。そうだな、もしビルと船にのって、2回命令されるようなことがあれば、おまえはそこに立ってられないぞ。これはビルだけじゃない、やつと一緒に船に乗ってきたような仲間はみんなそうだぞ。さあ、いいぞ、俺の友達のビルじゃねえか。小さい望遠鏡を抱えてる、いいやつだぜ、たしかにやつだ。おまえと俺はラウンジまで戻るんだ、ぼうや、ドアの後ろに陣取って、少しばっかり驚かしてやろうじゃないか、いいやつだぜ、まったく」
そういうと、その男は僕をひきつれてラウンジまでもどり、僕を隠すように隅の方に立ち2人とも開いたドアの影に隠れるようにした。僕はひどくどきどきして、不安になった。わかるだろう、それにその男も確かにびくびくしているのに気づいて、いっそう不安は増すばかりだった。その男は短剣を柄からはずして、さやからいつでも抜けるようにした。そこで待っているあいだ、まるでのどに何かつっかえでもしているかのように、その男はずっとつばを飲み込んでいた。
とうとう船長がはいってきて、ドアをバタンと閉じると、わき目もふらずまっすぐ部屋をよこぎって、朝食が用意されているところまで歩いていった。
「ビル」その男の声は、自分を強くみせかけようとしてるように僕には感じた。
船長はかかとでくるりと回ると、僕たちと向かい会った。日焼けしているやつの顔から色がなくなり、鼻なんて真っ青だった。幽霊や悪霊でも、いやもっとなにか悪いものでも、もしあればだが、見たような風だった。誓っていうが、僕は一瞬の内にそれほど老けて、まるで病人のようになったやつをみて気の毒に思った。
「こいよ、ビル、忘れたとはいわせんぞ、船乗り仲間をな。ビル」
船長ははっと息をのむと、
「黒犬!」と言った。
「だれだと思ったんだ?」その男は、いよいよ落ち着き払っていい返した。「昔ながらの黒犬が、古い仲間のビリーに会いにやってきたんだ、ベンボウ提督亭までな。おい、ビル、ビル。ずいぶん長い間いっしょにやってきたよなぁ、俺たち2人でな。この2本の指を失ってこのかたな」黒犬は2本の指がなくなった手をみせびらかした。
「さて、あぁ」船長はこう続けた。「おまえは俺を追いつめた。逃げも隠れもしない。よしよし、さぁ、言えよ、どうしたいんだ?」
「それでこそおまえだ、ビル」黒犬は答えた。「おまえはまったく正しいよ、ビリー。このかわいい子からラムでも一杯もらおうか、俺はこの子がやけに気にいったんでな。おまえさんさえよければ、一緒に腰かけてざっくばらんに話そう、昔からの船乗り仲間じゃねぇか」
僕がラムを持ってもどってみると、やつらは既に船長の朝食用テーブルに向かい合って腰かけて、黒犬がドアの方にななめに腰かけていた。僕が思うには、片目で船長を見張りつつ、もう一方の目では逃げ道を探すためにそうしてたんだろう。
黒犬は僕に出て行け、ただドアは開けたままにしておくんだといいつけた。「鍵穴からのぞくんじゃねえぞ、ぼうや」僕はやつらを残して酒場の方へ引っ込んだ。
長い間、僕はがんばって中の様子に耳をすませていたが、なにやら低いいいあらそうような声以外はなにも聞こえなかった。でもしまいには、声はだんだん大きくなっていき、一言二言わかるようになったが、大体は船長の悪態だった。
「だめだ、だめだったら、だめだ、それじゃあ何もかも終わりだ!」船長はそうさけぶと、再びこういった「しばり首になるくらいなら、みんなもしばり首だと言ってるんだ」
それから突然、罵詈雑言がとびかい、他の物音、椅子やら机やらがひとかたまりでひっくりかえり、剣のかち合う音が続き悲鳴があがった。その次の瞬間には、僕は黒犬が大慌てで逃げ出して、船長は怒り狂って後を追いかけていくのを目にした。二人とも短剣を抜いていて、黒犬は左肩から血を流していた。ちょうどドアのところで、船長は逃げる黒犬に最後の一太刀をあびせようとしたが、もしうちの大きなベンホウ提督亭の看板に邪魔されていなければ、黒犬の頭がまっぷたつなのは確実だっただろう。今でも枠の下側にその切れ込みがみてとれるぐらいなんだ。
その一撃が争いの終わりで、黒犬は怪我をしているにもかかわらず道にでると、一目散に逃げ出して、30秒もたたないうちに丘の端に姿を消した。船長はといえば茫然自失として、看板を見つめて立っていたが、何度も手で目をこすりやがて家に入っていった。
「ジム、ラムだ」そしてそういった時、少しよろめき壁に片手をつくありさまだった。
「けがしたの?」僕がさけぶと
「ラムだ」と繰り返し、「俺はここからおさらばしなきゃなんねぇ、ラムだ! ラム」
僕は走って、ラムをとってこようとしたが、さきほどから起こったことにすっかり昂奮して、グラスを一つ割ったり、たるの栓をひねりそこねたりしてしまった。そしてまだ、まごまごしている内に、ラウンジの方で大きな倒れる音をききつけて、ラウンジに駆け込むと、船長が床にすっかり伸びている姿が目に入った。同時に母親も叫び声や争う音に気がついて、僕を助けに二階から降りてきた。二人で頭をもちあげると、やつは大きな激しい息をしていたが、目は両方とも閉じていて、顔色といったらひどい色だった。
「まあ、まったく」母親は声を荒げた。「なんて家の恥かしら! お父さんはかわいそうに病気なのに!」
その間、船長をどうしたらよいか皆目わからなかった、ただ船長もあの男との争いで致命傷を負ったということがわかっていただけだった。僕はたしかラムを持ってきて、船長ののどにながしこもうとした。でも歯が固く閉じられていて、あごは鉄のように丈夫だった。ドアが開いて、リバシー先生が入ってきたときは、二人ともほっと一息ついたものだった。先生は親父を診察しにきたのだった。
「あぁ、先生」僕と母親は声をあげた。「どうすればいいんです? どこに傷があるんですか?」
「傷だって? ばかばかしい!」医者は言った。「私やきみたちみたいに傷なんてひとつもないよ。この男は私が警告したように発作をおこしたんだ。さてホーキンズさん、二階のご主人のとこまでいってもらって、もしできるなら、なんでもないことだと言ってください。私はと、この男のまったく価値のない命を全力をつくして救わねばならん、ジム、洗面器を一つもってきてくれ」
僕が洗面器をもって戻ってみると、先生は既に船長の袖を切り取って、がっしりとした腕が目にはいった。そこには何箇所かいれずみがあり、「幸運」「順風」とか「ビリー・ボーンズの夢」といった言葉が前腕にくっきり、そしてはっきりと彫られていた。肩に近い所には、絞首台と一人の男がぶら下がっていて、既に刑が執行されていた、僕からみてもじつにいきいきとした絵があった。
「予言だな」医者は、指でその絵に触れながら声にだした。「さぁ、ビリーボーンズ君、これが君の名前ならね、私たちは君の血の色を見なくてはならん、ジム、血が怖くないかな?」
「ええ、大丈夫です」僕は言った。
「よろしい、それなら洗面器をもってもらおう」というと、それから針をとりだして、静脈に突き刺した。
大量の血が流れでて、船長が目を開くとぼんやりとあたりを見回した。最初に先生がいるのがわかると、明らかに不愉快な顔をみせたが、それから僕をみるとほっとしたようだった。でも突然顔色がかわり、「黒犬はどこだ?」とさけびながら体を起こそうとした。
「黒犬はここにはいない」先生は答えた。「おまえが恨みをはらそうとする相手以外はな。ラムを飲んでいただろう。おまえは発作をおこしたんだ、まさに私がおまえに言ったように。で、私が全然気はすすまなかったが、向こう見ずにも墓からおまえを引っ張り出したというわけだ。さてボーンズ君、」
「それはおれの名前じゃねえ」と船長がさえぎったが、
「まあ気にしないよ」と先生は答えて、「それは私が知っているある海賊の名前でね。私はおまえをよぶのに縮めてそうよんだだけだ。私がおまえにいっておかなきゃならんのは、こういうことだ。一杯のラムがおまえの命取りになることはないだろう、ただもし一杯飲めば、それがもう一杯、もう一杯となるんだ。すぐに手を切らないと、私は賭けてもいい。おまえは命を落とすことになる。わかるか? 死ぬんだぞ。聖書のあの男みたいに地獄にいくんだ。さぁ、せいぜいがんばるんだな。ベッドにいくのをいまいちど手伝ってやろう」
2人で苦労してなんとかやつを2階に運び上げ、ベッドにねかせた。やつはもう気を失っているかのように、後ろ向きに頭から枕の上に倒れこんだ。
「さて、いいかな」先生は言った。「良心の命じるところに従って言っておこう、ラムはおまえにとっては死だ」
そして、それから父親を診察しに僕の腕を引っ張って立ち去った。
「たいしたことじゃない」先生はドアをしめるとすぐにそう言った。「しばらく静かにしているように、やつからたっぷり血を抜いておいた。そこに一週間は寝ているだろう。やつにとってもおまえたちにとっても、それが一番いいことだろう。ただもう一度発作が起きたら、やつはおしまいだがな」
力をぬくと、いい意味じゃなくてすぐ悪い意味でぬけちゃうという。指摘点を何点か修正。あと考えてみれば今回は英文を公開できるので公開
Sogoさんご指摘ありがとうございます。
>>宿の入り口のところまで重い足をひきずり
>>ながらやってくると、その後ろには船乗り
>>の衣装箱を手押し車で運ばせていた。
>主語があった方がこの場合は適切だと思います。
そうですね、やつが現われた話をしてるんでというのも
あったんですが、いれておきます。
>>それからやつは持ってるてこ棒みたいな棒で
>「持っていた」の方が適切だと思います。
そうですね。「手に持っていた」くらいにしておきます。
>>親父は、やつにぜんぜん客なんていやしない
>>ですよ、残念ながらね、なんて答えてた。
>宿屋を指すのにやつは不適当だと思います。
>英文が分からないので、どう直したらいいのか
>わかりませんが。
やつはやつで宿屋じゃないんですけど、読点の位置がヘンですね。
こう変えましょうか。
親父は、ぜんぜん客なんていやしないですよ、残念ながらね、なんてやつに答えてた。
>>なんだって、みんなこんなに脅されやりこめ
>>られて、震えながらベッドに入るようでは宿
>>に来るのをやめていまうだろうと思ったのだ。
>疑問文ですか?平叙文ですか?
>「なんだって」→「思ったのだ」というつながりは
>変な感じを受けます。あと、
>「やめていまうだろう」は「やめてしまうだろう」
>のtypoだと思うのですが。
typoが多くてすみません。見直しが足りてないですね。
英文は
, for people would soon cease coming
there to be tyrannized over and put down, and sent
shivering to their beds;
で余計な言葉をのぞいて、
みんなこんなに脅されやりこめられて、震えながらベッドに入るようでは宿
に来るのをやめてしまうだろうと思ったのだ。
>>やつの着ているものは変わず、靴下を何足か
>「来ているものは変わらず」のtypoでしょうか。
All
the time he lived with us the captain made no change
whatever in his dress but to buy some stockings from a
hawker.