週間翻訳日記:週間で、ある単位を目安に翻訳していきます。
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2000/05/29 あやしい訳一覧(3章) 6/5更新

あやしい訳、訳文と同時公開の3章。解決策の訳文の協力求む。評価は前とおなじく、

A わからない、SOS
 あやしい、自信なし、もっといい訳あるはず
 センスなーーし

項番(章ごと) 評価 原文 指摘事項 解決策
3−1 C COME AWAY, COME AWAY! 行っちゃった、行っちゃった

センスって言葉を訳者に教えてあげたい。タイトルだしもっとかっこいい訳欲しい。

 
3−2 B They were awfully nice little night-lights, and one cannot help wishing that they could have kept awake to see Peter; とても素敵で小さなナイトライトで、明かりがついたままで、ピータをみることができたらと願わざるえませんでした。 もっと擬人化が必要か、cannot help 〜ingねぇ。ナイトライトもキーワードだから訳に困るんですけど、語感も含めていい訳ないかな。 2000/05/28武井さんありがとうございます。
>「○○せざるを得ない」って訳語は,カタいですね.「見ることができたらど
>んなによかったでしょう。」ってのは,意訳しすぎかな.

カタいですよね。とりあえず。ちょっとやわらかくして「願わずにいられませんでした。」ぐらいにしてみました。指摘もよく考えてみます。

>英英辞典では, night-lights
>night-light (n) a weak light that is kept on in a bedroom at night
>ですね.意味を考えると「ベッドランプ」(←こういう言葉はないはず.広辞
>苑第四版には載っていない)かなあ.

やっぱり英英もちゃんと引くようにします。いまいち怠け者でした、大反省。ナイトライトもとりあえずもう少し考えます。

2000/06/02 最初の訳もナイトライトも当座このまま。最後には全体見直しもします。

3−3 B cut low and square えりが大きくてカクばってカットされた こういう簡単そうな表現が訳せないんだよなぁ。cut squareね  
3−4 B Now Wendy was every inch a woman, though there were not verymany inches, さてウェンディはどこからみても女の人でした。まだそんなに大きいというわけではありませんでしたけども、 inchを上手く訳出したいよね、英語の表現はユーモラスなのに日本語はギコチないよなぁ。  
3−5 C she indicated inthe charming drawing-room manner, by a touch on her night-gown,that he could sit nearer her. そこで素敵な応接間にいるかのように、自分の寝巻きをちょっとさわって、もっとわたしの近くに座れば?と示しました。 こういう女の子の動作に疎いもので、いい訳も浮かびませんなんていうのは冗談だけど、冗談でもなかったりして...  
3−6 B when the first baby laughed for the firsttime, its laugh broke into a thousand pieces, 最初にうまれてきた赤ん坊が最初に微笑んだ時に、その微笑が無数の破片にわかれてとびはねて、妖精がうまれるんだよ。 the first babyって誰のこと?長男長女?  
3−7 B Tedious talk this, but being a stay-at-home she liked it たいくつな話でしたが、いつも家にいるウェンディには気に入ったのでした。 どうしてこれが退屈な話になるの?反語的な表現?  
3−8 C "You silly ass," 「このうすらぼけまぬけ」 個人的には気に入ってるんだけど、童話ではどういう悪態がメジャー?  
3−9 B Out with the light! 明かりを消して これも難しい、何てことない表現なんだけど、意訳。  
3−10 B For a moment after Mr. and Mrs. Darling left the house the night-lights by the beds of the three children continued to burn clearly. They were awfully nice little night-lights, and one cannot help wishing that they could have kept awake to see Peter; but Wendy's light blinked and gave such a yawn that the other two yawned also, and before they could close their mouths all the three went out.
パパとママが家を後にしてしばらくの間は、3人のコドモのベットのそばのナイトライトはこうこうとあたりを照らしていました。とても素敵で小さなナイトライトで、明かりがついたままで、ピーターをみることができたらと願わずにいられませんでした。でもウェンディのライトがまばたき、そしてあくびをはじめ、他の2つのランプも同じようにあくびしました。そして口を閉じるまえに、3つ全てのランプが消えてしまったのでした。
2000/05/28武井さんありがとうございます。
>私なら,あくびするのはランプでなくて3人だと考えて,
>| そして一人があくびをはじめ、他の二人も同じようにあくびしました。三人
>| があくびをしているうちに、三つのランプ全てが消えてしまったのでした。
>ですかねえ. gave such a yawn の主語を Wendy's light ではないように取っ
>たのですが,違うかなあ.後ろを読むと,ウェンディ,ジョン,マイケルは全
>員寝ているはずなのでここで眠らせておこうかなという意図もあります.
>"あくびをしているうちに" ってのは,"口が閉じないうち"の意訳."三つのラ
>ンプ全て"のほうが,わたしとしてはすんなり読めます.

考えさせてください。

 

2000/06/02 指摘を読めば読むほどそんな気もしてくるという...ただgave such a yawn の主語がWendy's lightでないというのはやっぱり考えにくいので、現状訳のままで。ちなみにランプはライトにします。(ホントはナイトランプって訳したいんだよなぁ、だってナイトライトって消えそうにないじゃない?)
3−11 B looking as sharp as a knife with six blades and a saw 6枚刃とのこぎりみたいなぎざぎざのついたナイフみたいにきびしい目で状況をみまもりながら 2000/05/28武井さんありがとうございます。
> 刃が6枚ついていてのこぎりも
> ついているナイフみたいに鋭く状況をみまもりながら。
>原文を見ると,looking as sharp as a knife with six blades and a saw,
>ですから a knife には six blades と a saw がついてるんですよね.要はビ
>クトリノックス(aka スイスアーミーナイフ)みたいなあれのことだと思います.
>で,それが具体的にどんな目つきなのかを問われるとちょっと困るんですが.

訳も含めてもう少し調べ&考えてみよっと。
2000/06/02 まだ調べてません、週末の宿題にさせてください。

2000/06/05 6枚の刃とのこぎりがついているアーミーナイフにみたいにいっそう厳しい目で状況を見守りながら、としてみました。

3−12 B Peter did it both slowly and quickly.
ピーターはゆっくりでもすばやく飛んで見せました。 2000/05/28武井さんありがとうございます。
>原文は,
>> Peter did it both slowly and quickly.
>なので,わたしは,both A and B を忠実に考えて,
>「ピーターはゆっくりとすばやくの両方とも飛んで見せました。」
>と考えるのですけれど.

指摘はそのとおりなんですが、いい訳ないものですかねぇ。考えさせてください。
2000/06/02 いい訳は難しいという...週末の宿題にさせてください。

2000/06/05どこに迷うところがあるの? なんて思われるかもしれないけど、ピーターの行動からいって、ゆっくりと同時にすばやい飛び方をしたのかなぁなんて勝手に考えてたわけでした。
でもやっぱり「ゆっくりとすばやくの両方飛んで見せました」の方が自然なのでこうします。

3−13 C "Boy," she said courteously, "why are you crying?"

Peter could be exceeding polite also, having learned the grand
manner at fairy ceremonies, and he rose and bowed to her
beautifully. She was much pleased, and bowed beautifully to him
from the bed.

"What's your name?" he asked.

"Wendy Moira Angela Darling," she replied with some
satisfaction. "What is your name?"

"Peter Pan."

She was already sure that he must be Peter, but it did seem a
comparatively short name.

"Is that all?"

"Yes," he said rather sharply. He felt for the first time that
it was a shortish name.

"I'm so sorry," said Wendy Moira Angela.

"It doesn't matter," Peter gulped.

She asked where he lived.

"Second to the right," said Peter, "and then straight on till
morning."

"What a funny address!"

Peter had a sinking. For the first time he felt that perhaps
it was a funny address.

"No, it isn't," he said.

"I mean," Wendy said nicely, remembering that she was hostess,
"is that what they put on the letters?"

He wished she had not mentioned letters.

"Don't get any letters," he said contemptuously.

"But your mother gets letters?"

"Don't have a mother," he said. Not only had he no mother, but
he had not the slightest desire to have one. He thought them
very over-rated persons. Wendy, however, felt at once that she
was in the presence of a tragedy.

"O Peter, no wonder you were crying," she said, and got out of
bed and ran to him.

"I wasn't crying about mothers," he said rather indignantly.
"I was crying because I can't get my shadow to stick on.
Besides, I wasn't crying."

"It has come off?"

"Yes."

Then Wendy saw the shadow on the floor, looking so draggled,
and she was frightfully sorry for Peter. "How awful!" she said,
but she could not help smiling when she saw that he had been
trying to stick it on with soap. How exactly like a boy!

Fortunately she knew at once what to do. "It must be sewn on,"
she said, just a little patronisingly.

"What's sewn?" he asked.

"You're dreadfully ignorant."

"No, I'm not."

But she was exulting in his ignorance. "I shall sew it on for
you, my little man," she said, though he was tall as herself, and
she got out her housewife [sewing bag], and sewed the shadow on
to Peter's foot.

"I daresay it will hurt a little," she warned him.

"Oh, I shan't cry," said Peter, who was already of the opinion
that he had never cried in his life. And he clenched his teeth
and did not cry, and soon his shadow was behaving properly,
though still a little creased.
「あなた」ウェンディは礼儀正しくいいました。「どうして泣いていらっしゃるの?」

ピーターも非常に礼儀正しくふるまいました、妖精の儀式で正式な礼儀作法を習っていましたので、優雅に立ちあがってウェンディにお辞儀をしたのでした。ウェンディは大変喜びました、そしてベットからピーターに向かって優雅にお辞儀を返しました。

「お名前は」ピーターは尋ねました。

「ウェンディ・モイラ・アンジェラ・ダーリングと申します」ウェンディはいくぶん満足を覚えながら、返事をしました。「あなたは?」

「ピーターパンです」

ウェンディは最初っからピーターに違いないと確信していました、でもウェンディと比較すると、いかにも短い名前に思えたのでした。

「それで全部?」

「うん」ピーターはいくぶんつっけんどんに言いました。自分の名前がみじかいだなんて感じたのは初めてのことでした。

「ごめんなさいね」ウェンディ・モイラ・アンジェラは言いました。

「かまいません」ピーターは涙をぐっとこらえました。

ウェンディがどこに住んでいるのかと聞きました。

「2つ目の角を右にまがって、あとは朝までまっすぐ」ピーターは答えました。

「なんて面白い住所なんでしょう」

ピーターは意気消沈しました。たぶんそれが面白い住所だなんて感じたのも初めてのことなのでした。

「いいえ、そんなことはありません」とピーターは言いました。

「私が言ったのは、手紙にはどう書かれてるのって意味だったんですけど」ウェンディは自分がお客様をもてなす方だということを思い出して、こう上手く答えました。

ピーターは手紙なんかにふれないでくれたらなぁと願うような気持ちでした。
「手紙なんてもらわないです」ピーターは軽蔑したように言いました。

「お母さんはもらうでしょ?」

「お母さんはいません」ピーターはいいました。お母さんがいないだけでなく、持ちたいなんてこれっぽっちも思ったことはなかったのでした。おかあさんなんてものはとても買いかぶられてるや、なんて思っていたのでした。しかしながらウェンディはすぐさま悲劇の渦中にいるように感じたのでした。

「あらピーター、泣いてるのも無理はないわ」とウェンディは言い、ベットからでてピーターのもとへ駆けよりました。

「おかあさんのことで泣いてたんじゃないよ」ピーターはかなり憤慨したように言いました。「影がくっつかないからないてたんだよ、いいや、そもそも泣いてやしないよ」

「とれちゃったのね」

「うん」

それからウェンディは床に落ちている影を見ました。それはとても汚れて見えました。そしてウェンディはピーターのことをとてもかわいそうに思ったのでした。「なんてひどいんでしょう」ウェンディはこう言いましたけど、ピーターが石鹸でくっつけようとしているのを見ると笑いをこらえられませんでした。なんて男の子っぽいことでしょう! 
運よく、ウェンディにはすぐ何をすればいいのかがわかりました。「縫いつけないとね、」とウェンディはちょっとお母さんぶって言いました。

「縫うって?」

「なんにも知らないのね」

「そんなことないです」

でもウェンディは、ピーターがなにも知らないことが嬉しかったのでした。「あなたのために縫いつけてあげるわ、わたしの小さい子」ピーターはウェンディと同じくらいの背丈だったんですがこういうと、裁縫箱を取り出してきて、影をピーターの足に縫いつけました。

「ちょっと痛いかもしれないわ」ウェンディはピーターに注意しました。

「ええ、なきませんとも」ピーターはそういうと、すでに、生まれてこの方一回も泣いたことなんてないよって、思っていたのでした。そしてピーターは歯を食いしばって、泣きませんでした。すぐさま影は元通りになりました。まだちょっと折り目がついてましたけど。
2000/05/28武井さんありがとうございます。
>さて,表現の疑問です.
>
>> 「かまいません」ピーターは涙をぐっとこらえました。
>>
>> ウェンディがどこに住んでいるのかと聞きました。
>>
>> 「2つ目の角を右にまがって、あとは朝までまっすぐ」ピーターは答えました。
>>
>> 「なんて面白い住所なんでしょう」
>>
>> ピーターは意気消沈しました。たぶんそれが面白い住所だなんて感じたのも
>> 初めてのことなのでした。
>>
>> 「いいえ、そんなことはありません」とピーターは言いました。
>>
>> 「私が言ったのは、手紙にはどう書かれてるのって意味だったんですけど」
>> ウェンディは自分がお客様をもてなす方だということを思い出して、こう上
>> 手く答えました。
>>
>> ピーターは手紙なんかにふれないでくれたらなぁと願うような気持ちでした。
>> 「手紙なんてもらわないです」ピーターは軽蔑したように言いました。
>(中略)
>> 「縫うって?」
>>
>> 「なんにも知らないのね」
>>
>> 「そんなことないです」
>(中略)
>> 「ええ、なきませんとも」ピーターはそういうと、すでに、生まれてこの方
>> 一回も泣いたことなんてないよって、思っていたのでした。そしてピーター
>> は歯を食いしばって、泣きませんでした。すぐさま影は元通りになりました。
>> まだちょっと折り目がついてましたけど。
>
>ここのピーターパンの台詞は,なぜですます体なのでしょう?(= "正式な礼儀
>作法"は おじぎをする動作だけではないかしらと私は考えます) それ以降の台
>詞と雰囲気を合わせると,
>| 「いや」ピーターは涙をぐっとこらえました。
>| 「そんなことないよ」とピーターは言いました。
>| 「手紙なんてもの、もらったことないよ」ピーターは軽蔑したように言いました。
>| 「そんなことないよ」
>| 「泣きゃしないさ」
>
>ってのは,どうでしょうか? 3番目の文は軽蔑の意を"○○なんてもの"にこめ
>てみました.

動作と言葉は一体、女の子にはていねい、後で出てくる「ごっこ」あそびが好き、後はだんだんピーターが調子に乗って言葉づかいが悪くなるのと対比なんてことも考えてこう訳してみました。
ただ初対面だからって、そもそも礼儀ただしい言葉使いをするようなピーターじゃないか(笑)?考えさせてください。

2000/06/02ごっこあそびな感覚ということで、後の方にもみょーに礼儀正しい時もありますし、当座このままで全体見直しの対象にさせてください。「なんてもの」は反映させていただきます。


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2000/05/29 ピーターパン 3章 行っちゃった、行っちゃった

バリ, J. M.『ピーターパン』 html版 
原題:PETER PAN
訳者:katokt
公開:3章 2000/05/29 (V0.9)懲りずにV0.9なわけね(笑) 2000/05/28 V0.91

3章 行っちゃった、行っちゃった

パパとママが家を後にしてしばらくの間は、3人のコドモのベットのそばのナイトライトはこうこうとあたりを照らしていました。とても素敵で小さなナイトライトで、明かりがついたままでピーターをみることができたらと願わずにいられませんでした。でもウェンディのライトがまばたき、そしてあくびをはじめ、他の2つのライトも同じようにあくびしました。そして口を閉じるまえに3つ全てのライトが消えてしまったのでした。

部屋の中には、今や別の明かりがありました。ナイトライトより何千倍も明るくて、わたし達がこの話をしているときにもピーターの影をさがして、コドモ部屋の全てのたんすの中にはいりこんで衣裳部屋をくまなく探し、全てのポケットをひっくり返していました。それはホントのところ、明かりではありませんでした。あまりに早く点滅していたので、明かりみたいに見えたのでした。しかしちょっとの間それが休んでいると、妖精だってことがわかったでしょう。あなたの手ぐらいの大きさで、まだまだ成長しているところなのでした。妖精はティンカーベルという名前の女の子で、素晴らしく優雅にえりが大きくてカクばってカットされたすじだけの葉っぱをはおっていました。その葉っぱを通してみる姿はとても素晴らしいものでした。というのもほんのわずかなんですがティンクったら太りぎみだったので。

妖精が入ってきてしばらくして、窓は小さな星たちの息で開きました。そしてピーターが転がり込んできました。ピーターは道中の一部ティンカーベルを運んできてあげたので、妖精の粉がまだ手にこびりついていました。

「ティンカーベル」ピーターはコドモがぐっすり寝てることを確認して、声をひそめてよびました。「ティンク、どこにいるんだい?」その時ティンクは水差しの中にいてそこがとても気に入っていました。なにしろいままで水差しに入ったことがなかったので。

「その水差しからでておいで、そして教えておくれ。どこに僕の影をしまいこんだか分かったかい?」

金の鈴のような愛らしい鈴の声で答えがありました。それが妖精の言葉なのです。あなたがた普通のコドモにはそれを聞き分けることはできません。でも耳にしたなら、かつてどこかで聞いたことがあるのが分かるでしょう。

ティンクは、影は大きな箱のなかにあるといいました。ティンクがいってるのは引き出しのついてるたんすのことでした。なので、ピーターはたんすに飛びついて、まるで王様が群集にお金でもばらまくように両手で中身を床にぶちまけました。すぐに影をとりもどして、よろこびのあまりうっかりしてティンカーベルをたんすの引き出しに閉じ込めたまますっかり忘れてしまいました。

ピーターがすこしでも前もって考えていたとすれば、もっともピーターが考えておくなんてことはわたしにも思いもよらないことですけど、ピーターとその影は近づければ水滴のように自然にくっつくだろう、なんて考えてたんでしょう。そしてそのようにしてくっつかなかった時、ピーターはぞっとしたのでした。ピーターは浴室から石鹸をもってきてくっつけようとしましたけど、だめでした。ピーターの体をぞっとする身震いがおそいました。そして床に座りこみ泣き出したのでした。

ピーターの泣き声で、ウェンディは目を覚ましてベットに坐り直しました。ウェンディは見知らぬ子がコドモ部屋の床で泣いているのをみても驚きませんでした。というのもわくわくして、興味しんしんだったからですが。

「あなた」ウェンディは礼儀正しくいいました。「どうして泣いていらっしゃるの?」

ピーターも非常に礼儀正しくふるまいました、妖精の儀式で正式な礼儀作法を習っていましたので、優雅に立ちあがってウェンディにお辞儀をしたのでした。ウェンディは大変喜びました、そしてベットからピーターに向かって優雅にお辞儀を返しました。

「お名前は」ピーターは尋ねました。

「ウェンディ・モイラ・アンジェラ・ダーリングと申します」ウェンディはいくぶん満足を覚えながら、返事をしました。「あなたは?」

「ピーターパンです」

ウェンディは最初っからピーターに違いないと確信していました。でもウェンディと比較するといかにも短い名前に思えたのでした。

「それで全部?」

「うん」ピーターはいくぶんつっけんどんに言いました。自分の名前が短いだなんて感じたのは初めてのことでした。

「ごめんなさいね」ウェンディ・モイラ・アンジェラは言いました。

「かまいません」ピーターは涙をぐっとこらえました。

ウェンディがどこに住んでいるのかと聞くと、「2つ目の角を右にまがって、あとは朝までまっすぐ」とピーターは答えました。

「なんて面白い住所なんでしょう」

ピーターは意気消沈しました。たぶんそれが面白い住所だなんて感じたのも初めてのことなのでした。

「いいえ、そんなことはありません」とピーターは言いました。

「私が言ったのは、手紙にはどう書かれてるのって意味だったんですけど」ウェンディは自分がお客様をもてなす方だということを思い出して、こう上手く答えました。

ピーターは手紙なんかにふれないでくれたらなぁと願うような気持ちだったのですが、「手紙なんてものもらわないです」と軽蔑したように言いました。

「お母さんはもらうでしょ?」

「お母さんはいません」お母さんがいないだけでなく、持ちたいなんてこれっぽっちも思ったことはなかったのでした。おかあさんなんてものはとても買いかぶられてるや、なんて思っていたのでした。しかしながらウェンディはすぐさま悲劇の渦中にいるように感じたのでした。

「あらピーター、泣いてるのも無理はないわ」とウェンディは言い、ベットからでてピーターのもとへ駆けよりました。

「おかあさんのことで泣いてたんじゃないよ」ピーターはかなり憤慨したように言いました。「影がくっつかないから泣いてたんだよ、いいや、そもそも泣いてやしないよ」

「とれちゃったのね」

「うん」

それからウェンディは床に落ちている影を見ました。それはとても汚れて見えました。そしてウェンディはピーターのことをとてもかわいそうに思って、「なんてひどいんでしょう」と言いましたけど、ピーターが石鹸でくっつけようとしているのを見ると笑いをこらえられませんでした。なんて男の子っぽいことでしょう! 
運よく、ウェンディにはすぐ何をすればいいのかが分かりました。「縫いつけないとね、」とウェンディはちょっとお母さんぶって言いました。

「縫うって?」

「なんにも知らないのね」

「そんなことないです」

でもウェンディは、ピーターがなにも知らないことが嬉しかったのでした。「あなたのために縫いつけてあげるわ、わたしの小さい子」ピーターはウェンディと同じくらいの背丈だったんですが、こう言うと裁縫箱を取り出してきて影をピーターの足に縫いつけました。

「ちょっと痛いかもしれないわ」ウェンディはピーターに注意しました。

「ええ、泣くもんか」ピーターはそういうと、すでに生まれてこの方一回も泣いたことなんてないよ、って思っていたのでした。そしてピーターは歯を食いしばって泣きませんでしたし、すぐさま影は元通りになりました。まだちょっと折り目がついてましたけど。

「アイロンかけなきゃいけなかったわね」ウェンディは思いやりをもってそういいましたが、ピーターは男の子らしく見た目には無頓着で、大喜びで飛び跳ねていたのでした。あらまあ、ピーターはもうウェンディのおかげってことをすっかり忘れちゃっていました。「ぼくっはなんってかしこいんだろう」ピーターは有頂天になって歓声をあげました。「それにしても、ぼくっはかしこいなぁ」

このピーターのうぬぼれが、彼のもっとも魅力的な点の1つだなんていわなければならないのは恥ずかしいことです。思い切って正直に言わせてもらえば、すくなくとも横柄な子ではないってことなんですが。

ただその時ウェンディにはショックでした。「ぼくっはかしこいですって! ええ、そうでしょうとも」ウェンディは痛烈なあてこすりでもってこういいました。「もちろんわたしは、なんにもさせていただきませんでしたけど」

「ちょっとはしてくれたかな」ピーターは無頓着にいい、そして踊りつづけていたのでした。

「ちょっとですって」ウェンディはプライドをもっていいました。「わたしが役にたたないのなら、ともかくおいとまさせてもらうわ」というと威厳をもってベットに飛び込んで、顔まで毛布をかぶりました。

顔を出してもらおうとピーターは帰るフリをしましたが全然効果がなかったので、ベットのはしに腰掛けて足でちょんちょんとウェンディをつつきました。「ウェンディ」ピーターは言いました。「とじこもってないで、自分がうれしいときにはついついうかれちゃうんだよ、ウェンディ」ウェンディは顔は出しませんでしたけど、耳はクギヅケなのでした。「ウェンディ、」ピーターは続け、その声にあらがえる女の人はいなかったことでしょう。「ひとりの女の子は、男の子20人よりとっても役に立つね」

さてウェンディはどこからみても女の人なのでした。まだそんなに大きいというわけではありませんでしたけれども。ウェンディはベットの布の間から顔を覗かせました。

「ホントにそうおもうの? ピーター」
「もちろん」
「ホントに調子いいって思うわ」ウェンディははっきりそう言うと「起きるわ」とベットのはしにピーターと並んで腰掛けました。そして、もししてほしいのならキスしてあげてもいいわよなんて、ついでにいったのでした。しかしピーターはウェンディが何のことを言ってるのか分からなかったので、何がもらえるのかキタイしながら手のひらをだしたのでした。

「キスってなんだかわかってるんでしょうね」ウェンディはびっくりして尋ねました。

「くれればわかるよ」ピーターはかたくなに答えました。ウェンディはピーターのことを傷つけまいとして指ぬきをあげました。

「さあ、僕もキスをあげるよ」とピーターはいい、ウェンディはすこしすましてこう答えました。「したければどうぞ」はしたないことに、顔をちょっとピーターの方へ傾けたりしたのでした。でもピーターはどんぐりでできたボタンを手渡しただけでした。ウェンディは顔の位置をそっともとの場所に戻して、すてきねといって首のまわりにくさりをつけてピーターのキスをつけました。くさりで身に付けたのは幸運でした。なんといっても後でそれがウェンディの命を救ったのでしたから。

お互いに紹介しあったら、年を尋ねるのが礼儀というものです。そういうことをするのが大好きなウェンディは、ピーターにおいくつと尋ねました。ピーターにそう尋ねるのは、実のところ適切な質問というわけではありませんでした。まるで試験問題にイングランドの王様のことが出たらなぁと思ってたところに文法の問題が出るようなものでした。

「知らないや」ピーターは不愉快そうに答えました。「でもまだとっても若いんだ」ホントにピーターは年のことなんてぜんぜん知らなかったのでした。自分でも疑わしかったのですが、思い切ってこういいました。「ウェンディ、僕は生まれたその日に逃げ出しちゃったんだ」

ウェンディはびっくりぎょうてんでした、でも興味しんしんです。そこで素敵な応接間にいるかのように、自分の寝巻きをちょっとさわって、もっとわたしの近くに座れば? と示しました。

「逃げ出したのは、パパとママが僕が大人になったら、何になってほしいなんてことを話してるのを聞いちゃったからなんだ」と最初は小さい声で説明していましたが、声を大きくすると「いつまでもオトナになんてなりたくないや」と情熱をこめていいました。「いつまでも小さい男の子のままでいて楽しくやるんだ。だからケンジントン公園から逃げ出して、妖精たちの間でずっとずっと暮らしてきたんだ」

ウェンディはものすごく感心したようにピーターをみて、ピーターはそれを僕が逃げ出したことに感心してるんだなぁなんて思ってましたが、実のところピーターが妖精と知り合いであることに感心していたのでした。ウェンディは家でふつうに生活していたので、妖精と知り合いになれるなんてすごく楽しいことのように彼女の目には映ったのでした。ウェンディは妖精について矢継ぎ早に質問すると、ピーターは驚きました。というのも妖精なんてピーターにしてみればじゃまっけでピーターのことをじゃましたりなんだりもして、実際ときにはピーターは妖精におしおきしたりもするのでした。ただ、まあまあ妖精のことは気に入っていたので、妖精がどうやって生まれるのかをウェンディにお話してあげました。

「いいかい、最初にうまれてきた赤ん坊が最初に微笑んだ時に、その微笑が無数の破片にわかれてとびはねて妖精がうまれるんだよ」

たいくつな話でしたが、いつも家にいるウェンディには気に入ったのでした。

それでピーターは楽しそうに続けました。「男の子にも女の子にも必ず一人づつ妖精がいるんだよ」

「かならず? いないんじゃないの?」

「まあね、いまのコドモは物知りだろう。すぐに妖精がいるなんて信じなくなっちゃうんだ。コドモが”妖精なんてしんじないや”なんていうたびに、どこかの妖精が地面に落ちて死んじゃうんだ」

そうそう、ピーターは妖精についてはもう十分に話したと思ったのですが、ふっとティンカーベルが静かにしてることに思い当たりました。「ティンクがどこにいっちゃったのかわかんないや」とピーターが立ち上がりながら言うと、ティンクの名前をよびました。ウェンディの心臓は突然のスリルでドキドキしはじめました。

「ピーター」ウェンディはピーターをつかむと声を大きくしました。「この部屋に妖精がいるなんていわないでよ」

「ティンクは今ここにいるよ」ピーターは少しイライラしながらいいました。「聞こえないかな?」とピーターとウェンディは耳をすませました。

「鈴の音みたいな音しか聞こえないわ」とウェンディは言いました。

「そうだよ、それがティンクだよ。それが妖精の言葉なんだよ。僕にも聞こえるや」

音はたんすの引出しから聞こえてきました。ピーターは愉快な顔をすると、ピーターみたいにホントに愉快な顔をする人はみたことがありません。ホントに愛らしくのどを鳴らして笑うのでした。うまれて初めて笑ったときのままの笑顔なのでした。

「ウェンディ、」ピーターは大喜びでささやきました。「どうやら僕はティンクをたんすにとじこめちゃったらしいや」

ピーターは、かわいそうなティンクをひきだしから出してあげました。ティンクは怒りのあまりのカナキリ声をあげながら、コドモ部屋を飛び回りました。「そんなこというもんじゃないよ」ピーターは言い返しました。「もちろんものすごく悪かったよ。でも僕にだってどうやって君がたんすの中にいたなんてわかるんだい?」

ウェンディはピーターの言うことなんて聞いてませんでした。「ねぇピーター」彼女は叫びました。「ティンクがじっとしてて姿をみせてくれたらねぇ」

「妖精はじっとしていられないんだよ」ピーターはそういいましたが、ウェンディはティンクがちょっとの間かっこう時計の上で休もうとした時に、そのロマンティックな姿をみました。「なんてかわいいの」彼女は叫びましたがティンクの顔はまだ怒りでゆがんでいるのでした。

「ティンク」とピーターは感じよくいいました。
「このお嬢さんが君に彼女の妖精になってほしいっていってるよ」

ティンカーベルは無礼に返事をしました。

「なんていったの、ピーター?」

ピーターは通訳してあげなければなりませんでした。「ティンクはあまり礼儀正しくないんだ。ティンクがいうには、君はばかでかいくてみにくいだなんていうんだ、おまけにティンクは僕の妖精だなんていってるし」

ピーターはティンクを説得しようとしました。「僕の妖精になれないことぐらいわかってるよね、ティンク、僕は男の子だし君は女の子だよ」

これに対するティンクの答えときたら、「このすっとこばか」だなんて言うんですから、そして浴室に姿を消しました。「妖精ってああいうもんなんだよ」ピーターは弁解するように言いました。「彼女はティンカーベルって呼ばれてて、というのはポットとやかんを修理するからなんだ」(ティンカーっていうのはティン(すず)のワーカー(職人)っていう意味)

このときピーターとウェンディは肘掛け椅子にすわっていて、ウェンディはピーターを質問攻めにしました。

「今はケンジントン公園に住んでないとしたら...」

「時々はまだ住んでるよ」

「今は大体はどこにすんでるの?」

「迷子の男の子達といっしょにね」

「迷子の男の子達ってだれなの?」

「迷子の男の子達っていうのは、乳母がよそ見をしてるときに乳母車から落ちちゃったコドモ達なんだよ、7日間の間に這い上がれないと、その罰としてはるか遠くのネバーランドにやられちゃうんだ。僕が隊長なんだよ」

「面白いんでしょうねぇ」

「うん、」抜け目のないピーターはこう付け加えました。「でもぼくらはずいぶん寂しい思いもしてるよ、女の子の友達はいないし」

「女の子は一人もいないの?」

「うん、女の子は、えーっと、すごくカシコイから乳母車から落ちたりしないんだよ」

こういわれて、ウェンディはすごくよろこびました。「わたしが思うには」ウェンディはいいました。「あなたの女の子についての話し方は、ものすごく感じいいわ。そこのジョンなんて女の子のことをはなからバカにしてるのよ」

返事をする代わりに、ピーターは立ち上がってジョンをベットからけり落としました、毛布やなんやかんやといっしょに一蹴りで。この態度はウェンディにとっては初めて会ったにしてはかなりあつかましいように思えたので、思い切ってピーターはこの家の隊長ではないことを言いました。だけど、ジョンは床の上で何事もなかったかのようにぐっくり寝ていたので、そのままにしておいたのでした。「あなたがやさしくしてくれようとしてるのはわかるしね」ウェンディはやさしくなっていいました。「キスしてもいいわよ」

その時には、ウェンディはピーターがキスのことを知らないのを忘れていたのでした。「君が返して欲しいんじゃないかって思ってたよ」ピーターは少しにがにがしく言うと指抜きを返すよっていいました。

「まあ、キスのことじゃないのよ、指ぬきのことを言ったのよ」機転のきくウェンディはいいました。

「それはなに?」

「こういうこと」ウェンディはピーターにキスしました。

「おもしろい」ピーターはまじめくさって言いました「指ぬきしてもいい?」
「どうぞ」ウェンディは今回は頭を傾けずにいいました。

ピーターはウェンディに指ぬきするとすぐさま、ウェンディは金切り声をあげました。「どうしたの、ウェンディ」

「まるでだれかがわたしの髪をひっぱったみたいなの」

「ティンクがやったに違いないよ。前はこんなに乱暴じゃなかったのになぁ」

確かにティンクは再び、あれこれ非難しながらあたりをダーツの矢のように飛び回りました。

「ティンクがいうには、僕が君に指ぬきするたんびに、君の髪を引っ張るんだって、ウェンディ」

「でも、どうして?」

「どうしてだい、ティンク?」

今度もティンクはこう答えました。「このすっとこばかまぬけ」ピーターはどうしてこんなことをいうのかわかりませんでしたが、ウェンディには理解できました。そしてウェンディはピーターが彼女に会いにではなく、お話を聞くためにコドモ部屋の窓のところまで来てたと認めたとき、ほんのちょっとですががっかりしたのでした。

「だって、僕はひとつとしてお話をしらないんだもの、迷子の男の子でお話を知ってる子はいないんだ」

「なんてぞっとしちゃうんでしょう」ウェンディはいいました。

「ツバメがどうして家の軒に巣を作るか知ってるかい?」ピーターは尋ねました。「お話がききたいからなんだよ、ねぇウェンディ、君のお母さんはとっても素敵な話をしてくれてたよね」

「どのお話のこと?」

「ガラスの靴をはいた女の子を見つけられなかった王子様の話とか」

「ピーターったら、」ウェンディは興奮していいました。「それはシンデレラの話よ、王子様はシンデレラを見つけたわ、それで末ながく幸せに暮らしたのよ」

ピーターは大喜びで、いままで座りこんでいた床から飛び上がり急いで窓のところにいきました。

「どこにいくの?」ウェンディは心配でさけびました。

「他の男の子達に話してやらなくちゃ」

「行っちゃだめ、ピーター」ウェンディはお願いするように言いました。「わたしはそんなお話をたくさーん知ってるのよ」

これがウェンディの一言一句そのままでした。これではピーターを最初に誘惑したのはウェンディだってことは、否定のしようのない事実です。

ピーターは引き返してきましたが、ウェンディを警戒させるようなぎらぎらした目つきをしていました。といってもウェンディはぜんぜん警戒してなかったのですが。

「あぁ、男の子達にお話をしてあげられればねぇ!」ウェンディがそういうと、ピーターはウェンディをつかんで、窓の方へひっぱっていこうとしました。

「放して」ウェンディはピーターに命令しました。

「ウェンディ、僕と一緒にきて他の男の子達にもお話ししてあげてよ」

もちろんこう頼まれてとってもうれしかったのですが、こういわなきゃいけませんでした。「あら、いけないわ、ママのことを考えなきゃ、だいいち飛べないもの」

「教えるよ」

「まあ、飛ぶのは素敵でしょうね」

「風にのって飛ぶ方法を教えるよ、そうするとうんと遠くまでいけるよ」

「あらまあ」ウェンディは大喜びして声をあげました。

「ウェンディ、ウェンディ、あんなちっぽけなベットで寝ている間に、僕と一緒に飛び回って星に楽しいことを言ったりできるんだよ」

「まあ」

「そのうえ、ウェンディ、人魚もいるんだよ」

「人魚ですって、尾っぽのある?」

「とても長い尾っぽがね」

「まあ、」ウェンディはさけんびました。「人魚を見てみたい」

ピーターったら恐ろしく抜け目なくなりました。「ウェンディ、どんなにぼくらが君のことをあこがれてることか!」なんて言うのでした。

ウェンディは困って体をもじもじさせました。まるでがんばってコドモ部屋に残ろうとしているみたいに。

でもピーターは、容赦はしませんでした。

「ウェンディ」ピーターはいいました、卑怯な手です。「夜はぼくらをベットに入れてくれるよね」

「まあ」

「夜にぼくらをベットに入れてくれる人は、いままでだれもいなかったんだよ」

「まあ」といって、ウェンディは手をピーターの方に伸ばしました。

「君はぼくらの服を縫ってくれて、ポケットをつくってくれるよね。僕らはだれもポケットをもってないんだ」

ウェンディはどうやって抵抗すればよかったのでしょう? 「もちろんよ、ものすごく魅力的だわ」ウェンディはそういうと「ピーター、ジョンとマイケルにも飛び方を教えてくださるわよねぇ」と頼みました。

「君がそうして欲しいならね」ピーターはあまり関心なさそうにいいました。そしてウェンディはジョンとマイケルのところにかけより、体をゆすりました。「おきなさい」ウェンディはこういいました。「ピーターパンがやってきて飛び方を教えてくれるのよ」

ジョンは目をこすって、「それならおきるよ」と言いました、もちろん床の上にいたのですが。「おはよう、おきたよ」と言ったのでした。

マイケルもこのときまでには起きてました、6枚の刃とのこぎりがついているアーミーナイフにみたいにいっそう厳しい目で状況を見守りながら。でもピーターは突然静かにするように合図をしました。みんなの顔にはオトナの世界の音に耳をすますコドモの抜け目のなさが見てとれました。しーんと静まりかえっていますし、何事もなかったのでした、いやまって、逆です、何事もないどころじゃありません、ナナです。宵のうちはずっと悲痛にほえていましたが、今はすっかり静かなのでした。ナナから物音ひとつ聞こえてこないのでした。

「明かりを消して、隠れろ、早く」ジョンがいいました。冒険全体を通じて、ジョンが命令を下したのはこのときだけだったんですが。そしてナナをつれてリザが入ってきた時、コドモ部屋はまったくいつもどおりで、真っ暗で、誓ってもいいですが、聞こえるのは3人のまるで寝ているかのような天使のようなねいきだけでした。実際には窓のカーテンの後ろから上手くねいきをたてる真似をしていたのでしたが。

リザは機嫌がわるかったのでした、台所でクリスマスプディングを混ぜ合わせていたのに、ナナのばかげた疑りぶかさのせいで、レーズンをほおにつけたまま、プディングから引き離されてきたので。リザは静かにさせる一番の方法は、ちょっとの間でもナナをコドモ部屋につれて行くことだと思ったのでした。もちろんくさりはつけたままですが。

「それごらん、おまえはホントに疑りぶかいよ」リザはナナが罰をうけていることもかわいそうなんて思ってなかったのでそう言いました。「みんな安全だろ、そうだよ。あの小さい天使みんながベットでぐっすりねてるよ。ほらあのやすらかなねいきを聞いてごらん」

それでマイケルがごまかせているのに気をよくして、あんまり大きく息をたてたのでもうすこしでばれちゃうところでした。ナナはごまかしてるねいきを先刻承知だったので、リザがくさりをひっぱっているのから逃れようとしました。

でもリザはなにもわかってなかったのでした。「もうだめだったら、ナナ」リザはナナを部屋からひっぱり出しながら、厳しくいいました。「言っとくよ、もう一回ほえたら、ご主人様のところへ行ってパーティから帰ってきてもらうからね。それから、まぁご主人様はおまえをひどくむちでうつだろうねぇ」

リザはかわいそうにナナをまた縛りつけました、でもナナがほえるのをやめると思います? ご主人様をパーティからつれもどさなきゃ。そう、それこそナナがまさに望んでたことでした。乳母である自分にまかされたコドモ達が無事でありさえすれば、ナナがむちで打たれるかどうかなんて気にしたと思います? 残念なことにリザはクリスマスプディングに取りかかってしまい、ナナはリザからは助けが期待できないと知ると、くさりをひっぱりにひっぱってついにひきちぎっちゃいました。その次の瞬間には、27番地の食堂に飛び込むと前足2本を天まで届くくらい高く上げました、これはナナがものを伝えたいときにもっとも強く感情を訴える方法なのでした。パパとママはすぐに恐ろしいことがコドモ部屋で起こっていることがわかって、招待されたお宅の奥さんにさようならもいわずに道に駆け出しました。

でも3人のワルイ子たちがカーテンの陰でねいきを立ててる真似をしてから、ゆうに10分は経っていましたし、ピーターパンには10分もあればいろいろできちゃうのでした。

さあコドモ部屋にもどってみましょう。

「大丈夫だ」ジョンが隠れてた場所から姿をあらわして知らせました。「ねえ、ピーター、ホントに飛べるの?」

わざわざ答える代わりにピーターは、マントルピース(だんろの上にあるかざり)をつかんだりしながら、部屋中を飛びまわりました。

ジョンとマイケルは「すっごいなぁ」といい、

ウェンディは「すてきっ」とさけびました。

「ああぼくはすてきなんだ、すてきなんだ」ピーターはまた礼儀正しくするのを忘れて、そういいました。

飛ぶのは楽しくなるほど簡単にみえました、コドモたちが床からベットまで飛ぼうと最初に試してみたんですが、どうしても飛ぶどころか床に落ちちゃうのでした。

「ねぇ、どうやって飛ぶの?」ジョンが、ひざをさすりながら尋ねました。ジョンはなかなかかしこい子なのでした。

「ただすてきですばらしいことを考えるだけだよ」ピーターはそう説明しました。「そうすると空中にうくんだ」

ピーターはふたたび飛ぶのを見せてあげました。

「君は速すぎるよ」とジョンは言いました。「もっとゆっくり飛んでくれない?」

ピーターはゆっくりとすばやくの両方飛んで見せました。「わかったよ、ウェンディ」ジョンはいいました。でもすぐに飛べないことが分かりました。3人のうち誰一人として少しも飛べませんでした。マイケルでさえ2音節の言葉を知ってて、ピーターときたらAからZさえも知らなかったにもかかわらずです。

もちろんピーターはみんなをからかって遊んでいたのでした。妖精の粉をふりかけられずに飛べる人なんていやしません。幸運なことに、前にもいった通りピーターの片手には粉がついてたので、めいめいに粉をすこしずつふりかけてあげました、すると素晴らしいことに。

「さて肩をこういうふうに震わせてごらん、そしてとぶんだ」とピーターは言いました。

みんなベットの上にいて、勇敢なマイケルが最初に飛びました。正確にはマイケルは飛ぶつもりはなかったのでしたが、飛んじゃったのでした。そしてすぐに部屋をよこぎりました。

「飛んだよ」まだ空中にいる間から叫んだのでした。

ジョンも飛びあがり、浴室のそばでウェンディと顔を見合わせました。

「なんてすてきなの」

「すごいや」

「みてよ」

「みろよ」

「みて」

みんなはピーターほど優雅というわけではありませんでした。少し足でけらなければならなかったのです。一方頭は天井にぶつかってゆらゆらしました。そしてこれほど愉快なことはありませんでした。ピーターは最初はウェンディに手を貸してあげましたが、やめなければなりませんでした。ティンクがカンカンに怒るので。

3人は上下にくるくる飛びまわりました。天国にいるみたいとウェンディはいいました。

「さあ」ジョンはいいました。「外にいこうよ」

もちろんピーターがコドモ達を誘惑してたのは、このことでした。

マイケルは今にも行きそうでした。1兆マイルをどれくらいでいけるのか知りたくて知りたくてたまらなかったのでした。でもウェンディは躊躇していました。

「人魚だよ」ピーターは再び言いました。

「あぁ」

「海賊もいるよ」

「海賊だって」ジョンはお出かけ用の帽子をつかみながら叫びました。「すぐいかないと」

パパとママがナナと一緒に27番地をでたのは、ちょうどそのときでした。通りの真ん中まで駆け出して、コドモ部屋の窓を見上げました。そうです、まだ閉まっています。でも部屋は明かりでこうこうと照らされていました。それはとにかく心臓をわしづかみにされたようなびっくりさせる光景でした、カーテンに映った影で、3人の寝巻きをきた小さな姿がくるくる回っているのが見えたのでした。しかも床の上ではなく空中を。

3人の姿じゃありません、4人なのでした。

ぶるぶる震えて、パパとママは通りに面したドアを開けました。パパは階段を駆け上がりました、でもママはパパに落ち着いていくように身振りでしらせ、自分も落ち着くようにしていたのでした。

コドモ部屋には間に合ったのでしょうか。間に合ったのなら、どんなにパパとママは喜んだことでしょう、わたしたちみんなも安堵のため息をつくことでしょう、でもそれじゃあお話にならないんです。とはいっても、間に合わなくても私は神にちかって、オシマイにはなにもかも上手くいくことを約束します。

もしあの小さい星達がパパとママを見守ってなければ、コドモ部屋に間に合ったかもしれませんでした。もう一度星達が窓を息で開けて、あの一番小さい星が大声で叫びました。

「お逃げ、ピーター」

それでピーターは一刻の余裕もないことを知って「来いっ」と命令すると、すぐに夜の闇へ飛び出して行き、ジョンとマイケルとウェンディが続きました。

パパとママとナナがコドモ部屋に駆け込んだのは遅すぎたのでした。鳥たちは飛び去ってしまいました。

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2000/05/26 あやしい訳一覧(2章)

あやしい訳つづきの2章。解決策の訳文の協力求む。評価は前とおなじく、

A わからない、SOS
 あやしい、自信なし、もっといい訳あるはず
 センスなーーし

項番(章ごと) 評価 原文 指摘事項 解決策
2−1 C , and she ran down into the street to look for his little body, but it was not there; and shelooked up, and in the black night she could see nothing but whatshe thought was a shooting star. ママは男の子の遺体を探すために、通りまでかけ下りましたけれど、そこではみつかりませんでした。ママが上を見上げても、暗闇の中に、ママには流れ星としか思えないようなものしかみることはできませんでした。

いくらbodyだからって遺体はないよなぁ。後は、そこにはありませんでした。の方がいいかな?全体的に訳がいまいち。もっといい訳がほしい。

 
2−2 "MEA CULPA, MEA CULPA." He hadhad a classical education. そしてラテン語で「わしがわるいんだ、わしがな」といいました。パパはラテン語の素養もあったのです。 調べた限りではラテン語なんだけど、ホント?classicalって古典でギリシャ語とラテン語のことだったよなぁ、たしか?  
2−3 C They sat thus night after night recalling that fatal Friday,till every detail of it was stamped on their brains and camethrough on the other side like the faces on a bad coinage. それからかれらは座り込んで、来る夜も来る夜もあの運命の金曜日のことを思い出していたので、しまいにはどんな細かいことまでも頭の中に刻み込まれて、頭の反対側までも突き抜けそうでした。それはまるで、できの悪いコインに刻まれた顔が、反対側まで突き抜けてしまっているかのようでした 気持ちはわかるんだけど、いかんせん訳はいまいち。日本語に置き換えてめちゃくちゃいい例えがあるなら、多少なら原文と離れるのもありか?それも思いつかないけど。記憶に強く残ることの例えねぇ  
2−4 C Sometimes the thing yielded to him without a contest, パパは時々争わないでマケを認めるようなことがありましたが もっといい訳がありそう  
2−5 Bring in the whole world. 世界中にでも聞かせてやるさ。 気持ちはわからないでもないけど、イディオム?  
2−6 C the wretched father went and
sat in the passage, with his knuckles to his eyes.
かわいそうなパパは廊下に行き、座り込んで、硬く握りしめたこぶしを目にあてていたのでした。 こぶしを目にあてるのか、目が疲れてたりするとそうするな、ツボが押せるんだよ、なんてことはどうでもよくて。この場合は、頭とかを抱える方がそれっぽいんだけど?  


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2000/05/25 あやしい訳一覧(1章)   5/26 1-1 更新

おもわぬ数の反応があって、全くの誤訳(正反対の意味)なんてのはないと信じたいんだけど、あやしい訳を手元に置いとく(隠しとく)わけにもいかなくなったので、公開!協力してくれる時は、タスクリストの注意事項参照。あやしい訳にも3段階。もちろん重要なものから解決策(ちゃんと辞書引けとかじゃなくて、訳ね)をメールで教えてもらえたらうれしい。

A わからない、SOS
 あやしい、自信なし、もっといい訳あるはず
 センスなーーし

以下は自己申告(評価が甘いって言わないで)ですが、もちろん解決策だけじゃなく、解決策なしで指摘事項までの指摘も大歓迎

項番(章ごと) 評価 原文 指摘事項 解決策
1−1 C All children, except one, grow up. They soon know that they will grow up, and the way Wendy knew was this. One day when she was two years old she was playing in a garden, and she plucked another flower and ran with it to her mother. I suppose she must have looked rather delightful, for Mrs. Darling put her hand to her heart and cried,"Oh, why can't you remain like this for ever!" This was all that passed between them on the subject, but henceforth Wendy knew that she must grow up. You always know after you are two. Two is the beginning of the end. コドモはみんな成長するものである、一人を除いては。コドモはすぐに、自分が成長するものだという事がわかるもので、ウェンディがそれをわかったのは、このようにしてでした。2才のある日のこと、庭で遊び、花をつんで、それをもってママの所へ走っていきました。そうしているウェンディは、幸福にみちみちているように見えたことでしょう、なぜならママは胸に手をあてて「まぁどうしていつまでもこのままにしておけないのかしら」と言ったのですから。コドモの成長について、ママとウェンディの間で交わされたことは、これがすべてです。ただこのことによって、ウェンディは自分が成長しなければならないということを分かったのでした。2才にもなれば、分かるものなのです。2才ともなれば、きざしがあらわれるものなのです。

最初ってカンジンなんだよね、訳が最後の文も含めていまいち

2000/05/26匿名希望さん、ありがとうございます。

> で、1-1 のところですが、
> おおざっぱに流れだけ追ってみますと(大意ですよ)、
>
> 走ってきたウェンディはよっぽどはしゃいでたんでしょうな。
>   ↓
> だってママは思わずこうおっしゃった。
> 「どーしてあんた、いつまでもかわいい子供のままで
>  いられないのかしらー!」
>   ↓
> それを聞いたウェンディは
> 「あたしっていつまでもこのままじゃいられないんだー」
> と悟りを開く。
>
> という感じではないでしょうか。
> もしかしたらそのように理解しておられるのかもしれませんが、
> そうだとしたらママのセリフに問題があると思います。

この話はもっとも、でも訳としてはなぁって気持ちもあってちょっと預かりにさせてください。(この件について他の方からも意見があればそれもうれしいっす。)
2000/05/28熟考?の結果、意見をとりいれて、「まぁ、どうしてあなたはずっとこのままでいられないんでしょうねぇ」に修正。もちろんここのその他の訳文も改善意欲はあるので、指摘があったらよろしく。
1−2 C Her romantic mind was like the tiny boxes, one within the other, that come from the puzzling East, however many you discover there is always one more; and her sweet mocking mouth had one kiss on it that Wendy could never get, though there is was, perfectly conspicuous in the right-hand corner. ロマンティックな心は、まるであの不思議なる東洋から来た、一つの箱の中にもう一つの箱がある入れ子の小さい箱のようで、いくつ箱を開けても、そこにはいつももうひとつ箱があるのでした。彼女はかわいらしくこまっしゃくれた口もとにキスを浮かべていたのですが、右はしにはっきりと見えていて、まさにそこにあるにもかかわらず、ウェンディには決して手が届かなかったのでした。 ママのキスも、以降重要なファクターだが、訳がいまいち。  
1−3 C stocks and shares 債券と株式 文脈もあるけど、英国ではこれでいいのかな?  
1−4 Mrs. Darling was married in white, ママは白いウェディングドレスで結婚して 意訳みえみえ、もっと意訳すると以降の文章からの流れだと、なんにも花嫁修業とかしないで無垢のまま結婚したなんて方がストーリー的にはいいんだけど、さすがに妄想はげしすぎ? 2000/05/28武井さんありがとうございます。
>あと Mrs. Darling was married in white ですけども,英英辞典では
>white (n) (1)省略 (2)[Uncountable] white clothes or material
>ですけど? 意訳でなくてそのままの意味で「ママは白いウェディングドレス
>で結婚して」になるのですが.ああ,意訳ってのは"ウェディング"を追加して
>あるという意味ですか.

買いかぶられすぎですね(笑)僕の根本的な調べ不足です。ウェディングは怪我の功名ってことで訳はこのままにしておきます。妄想も全面的に取消し。だいたいちゃんと訳そうって意識が低すぎるね、深く反省(ホントにしてるんだってば)
1−5 C at first she kept the books perfectly, almost gleefully, as if it were a game, not so much as a Brussels sprout was missing; but by and by whole cauliflowers dropped out, 最初のうちは完璧に、芽キャベツ1つでさえもらさないように、まるでゲームみたいにまったく楽しそうに家計簿をつけていました。が、そのうちカリフラワーもつけそこなって、その代わりに顔のない赤ん坊の絵を書いてるしまつでした 芽キャベツ1つとカリフラワー、日本では何に当たるの、 適当な例が思い浮かばず、もっといい訳し方はないもの?  
1−6 , making two nine and six, with your eighteen and three makes three nine seven, すると2ポンド9シリング6ペンスで、おまえの18シリングと3ペンスと合わせて、3ポンド9シリング7ペンスになる。 ならないんですけど、3ポンド7シリング9ペンスになるんですけど(1ポンド=20シリング、1シリング=12ペンスだよねぇ。昔のイギリスは)  
1−7 with mumps reduced to twelve six おたふく風邪を12シリング6ペンス、 どうしておたふく風邪が30シリングから12シリング6ペンスになるの?25シリングからなら半分で、分かりやすいんだけど。この数字の意味がわかんなくて、話の落ちが読めてないとしたら寂しい。  
1−8 C She had a genius for knowing whena cough is a thing to have no patience with and when it needsstocking around your throat. ナナはコドモが一回咳をしてもがまんさせちゃいけなさそうな具合だぞとか、のどに靴下をまかなきゃいけない頃だということがわかる非凡な才能をもっていました。 どこもいまいち  
1−9 but if they did come she first whipped off Michael's pinafore and put him into the one with blue braiding,and smoothed out Wendy and made a dash at John's hair. 実際来たときにはまずマイケルのエプロンをさっとぬがせて、青い組みひもで縁取られたエプロンを着せて、ウェンディの髪をなでつけ、それからいそいでジョンの髪をとかしつけるのでした。
どんなエプロンかいまいちわからん、よだれかけの方がいいのか?髪をなでつけ&とかしつけでいいのか?  
1−10 Doctors sometimes draw maps of other parts of you, and your own map can become intensely interesting, お医者さんはあなたの心以外の地図は時々描きます。そしてあなた自身の地図はとても興味深いものでしょう。 2文目の訳がいまいちなのか、意味がとれてないか。  
1−11 and either these are part of the island or they areanother map showing through, and it is all rather confusing,especially as nothing will stand still. そしてそれらはすべてネバーランドの一部、もしくは隠しても見えてくる別の地図といったぐあいで、とにかく全く混乱しており、しっかり根をおろしてかわらないものなどなにもないのでした 隠しても見えてくる別の地図?なんだかなぁ、もっといい訳ないかな  
1−12 C sprawly 不規則に拡大してたりはしないのでした。 出来が悪い、スプロール現象って昔の社会科を思い出す、笑。もっといい訳ないのかなぁ  
1−13 sat on the foot of her bed ウェンディのベットの足の方に腰掛けて 意訳っぽいなぁ  
1−14 C so she didn't know how she knew, she just knew. ウェンディはどういうふうにして”おなじおおきさ”ってことがわかったかはわからないけど、とにかくわかっていたのでした。 訳した本人は悦にいってるかもしれないけど、読まされる身にもなって。もっといい訳求む、でもふつーの訳じゃ差し替えないよ(笑)  
1−15 C All were looking so safe and cosy ママはなにもかもが安全でここちよく感じられたので safeって安全じゃなくてもっとぴったりくる訳ないのかね  
1−16 C There should have been a fourth night-light. 4つ目のナイトライトがあるべきだったのでした。 これでいいの?4つ目があっても、なんら状況はかわらないような気もするんだけど、やっぱり訳が間違ってるの? 2000/05/28武井さんありがとうございます。

>ああそうだ,1章のナイトライトが4つってのは,ママが寝ちゃったから眠って
>いる人の人数が 4人なので1個/人で4個ってことなのでは?

そうなんでしょうねぇ...「ママの分のナイトライトもあるべきだったのでした」がちょー意訳になるかな?変更せず。

1−17 C But in herdream he had rent the film that obscures the Neverland, and shesaw Wendy and John and Michael peeping through the gap. でも夢の中では、男の子はネバーランドをおおい隠していたうすいまくをひきちぎってしまいました。それで、ママにはウェンディとジョンとマイケルがその裂け目から、のぞいているのが見えました。 filmうすいまく gap裂け目 →なんとかならないもんかねぇ  
1−18 C He was a lovely boy, clad in skeleton leaves and the juices that ooze out of trees 男の子は愛らしい子で、すじばっかりの葉っぱと木からにじみでた樹液でできた服をきていて ピーターの魅力が感じられず。樹液って聞くとカブトムシを思い出す。  


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2000/05/24 中間報告(依頼事項 Task List)その2

親切な人がいて、なにかしたいんだけど、なにしたらいいですか?ってメールもらっちゃいました。しらないやい、少しは自分の頭つかいなよ、さびるよ。なんていわずに、すぐタスクリストを作るあたりに、サイト作成者のやさしさがにじみでるのである(ホントか?)
まず一番基本的な注意事項は、プロジェクト杉田玄白の正式参加テキストの要件を満たすってこと、だからもちろんそれに賛同できない人は残念ながら、一番下の協力でお願いします。

協力したらどうなるのっていうのは、難しい問題だけど、名前&メールアドレス&サイトアドレス&コメント(編集しちゃうよ)くらいなら、希望するならこのページで紹介できるかな。 なんなら、リンク日記とかに取り上げさせてもらってもいいよ、少なくとも他人が自分のサイトをどう見てるかの一例はわかる。(その場合、好意的な解説かどうかは保証の限りじゃないけど...)。あとは協力の種類によっては、先の章の翻訳がサイトに乗る前に入手できるなんてこともあるかも?あとはこんなことはしてくれないの?っていうのもおもしろそうなら乗るよ。

基本的には、してくれたらうれしい順に並べています。

1.ピーターパンの絵を探して欲しい&無かったら書いて欲しい(ちょっと無茶な依頼か?)

もちろん著作権切れで、なるべく原作に近いものが好ましいなぁ。 無かったら、書いて欲しい。書いた場合もプロジェクト杉田玄白の正式参加テキストの要件を満たすってことで。html版やpdf版に添付したい。絵があるといいよねぇ。

2.構成とくに絵を含めた文の構成っていうのかな?配置&段落わけなんかをしてほしい。

出版物みたいにね、なんせこのサイトで分かるように全くセンスなーーーしなので。

3.子供向けバージョンをつくってほしい。

いわゆる絵本みたいな要約版じゃないよ、あくまで原作のままで、翻訳の漢字を減らしたり、読み仮名を振ったり、むずかしい表現を簡単な表現にいいかえるなんて作業になるかな。

4.作者J.M.バリの略歴&ピーターパンの作品紹介文

作者について今知ってることは、James Matthew Barrieって名前と1860-1937ってことぐらいかな。 作品については、有名な作品だし、いろいろな現代的な意義(ピーターパンシンドロームとかね) なんかも含めて、うんちくみたいな解説があれば面白いなぁ。

5.翻訳のお手伝い

章単位がうれしいんだけど、もっと少ない単位でも協力してくれる人がいたら、相談してくれたらうれしい。

6.誤訳の指摘

別途であやしい訳一覧もつくるし、ホントにあやしいんだって(笑)。それ以外でも誤訳があれば、積極的に臆することなく指摘してください。

7.誤字、脱字の指摘

これもかなりうれしい、基本的に自分のチェックしかかかってないもので。 おまけにその本人があやしいときたもんだ。これも多少あやしげなものも思い切って指摘してもらえば、サイト作成者の日本語の勉強(いやみとかじゃなくてホントに)にもなるので。

8.バーナークリック

上記のことはなにもできないんだけどなんて人は、トップページでスポンサーを訪れていただければ...

とりあえず今の時点ではこんなものかな?やりたいんだけどなんて思ったら、、迷わずすぐメールください。

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2000/05/24 修正 その1(1章&2章)

どうしてこんなにチェック早いのかなぁ、武井さんからチェックをいただきました。ありがとうございます。

1.typo(誤字、脱字)

ネーバーランド→ネバーランド
気持ちはわかるでしょ(笑)

2.誤訳

フラミンゴの群れ、ラグーンの群れ
単数、複数、冠詞は、訳すのに一番たいへん。山形浩生訳の暗闇のスキャナーのあとがきもみてね。でもこの間違いはそんなレベルじゃなくて単純なケアレスミス。言い訳してみるとラグーンの訳に困ってて、ラグーンを語感を生かしてそのまま採用。で礁湖って説明もなんだから、丁寧に説明をなんて方に気をとられてたらすっかり間違えました。単なる言い訳だね。(ちなみにもとは単数形で訳してました)

3.句点、読点

普通に文章を書くと昔からなぜか読点なくなっちゃうんですよね、なぜなんだろう?句点も打たなきゃね。。。読点も好みの問題もあるけど指摘してください、指摘のほうがよさそうなら直します。

4.読点の半角、全角混在

全く恥ずかしい限り、でも半角の読点なんて打てないように設定できないのかな?できるんだろうなぁ、調べよっと。
2000/05/26 MS-IME2000 プロパティ−オートコレクト−全角半角で指定できるんだけど有効になってるのかなぁ?

この修正で1章をV0.91→V0.92、2章をV0.9→V0.91へ。よく考えれば、10回の修正で正式版になるのか?この2つの章の反省を踏まえて、最初のバージョン番号をふるようにします。

もちろんそのほかにも修正点があればください、できるかぎり(笑)修正やります。

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2000/05/22 中間報告 その1

どうしてこんなにチェック早いのかなぁ、まあサーチエンジンとかでひっかかったんだろうけど、 めちゃくちゃ忙しそうなイメージがあるんだけど。プロジェクト杉田玄白山形浩生からメール貰っちゃったよ。書くのは恥ずかしいんだけど、彼の大ファンだからうれしかったなぁ。プロジェクトにも登録します、しかも正式参加作品としてどうですかだって。1章だけだから進行中の方へって謙虚なところも見せてみたんだけど(笑)、まあポジティブに考えれば、読む人にはグリーンマイルみたいに少しずつ届くのも続きが楽しみで?面白いかもしれないし、特に他に翻訳する人にとっては少しずつでもいいんだって、はげみになるかもって思って、煮るなり焼くなり正式参加作品にするなり好きにしてくださいって感じ?

まぁ僕としては社交辞令でも、十分できてます、なんて言われちゃったし、いまんとこ今年一番にうれしいできごとだなぁ、やれやれ。

ばっかじゃないの、ただ翻訳して、リンクしてもらっただけじゃない、なんてのはファン心理がわかってない。それにしても熱くなりつつ冷静で、冷静でありつつ熱いのがカッコいいよね。翻訳もちゃくちゃくと進めていきます、いやいく予定です(笑)。さっそく1章、2章の順番が逆で読みにくいとかの指摘をあちこちからいただきましたけど、その件については今のところは作りやすさを優先させてください。全部終わったら、読みやすくもしたいと思うので。

もちろんそのほかにも意見があればください、できることはできるかぎり(笑)やります。

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2000/05/22 ピーターパン 2章 その影

バリ, J. M.『ピーターパン』 html版 
原題:PETER PAN
訳者:katokt
公開:2章 2000/05/22 (V0.91)

2章 その影

ママは悲鳴をあげました、そしてベルが鳴らされたかのようにドアが開いて、ナナが入ってきました、ナナは低くうなり、その男の子に飛びかかりました、と男の子は身軽に窓から飛び降りました。再びママが悲鳴を、今度は男の子の身を案じてです、男の子が死んでしまったと思ったのです。ママは男の子の遺体を探すために、通りまでかけ下りましたけれど、そこではみつかりませんでした。ママが上を見上げても、暗闇の中に、ママには流れ星としか思えないようなものしかみることはできませんでした。

ママは子供部屋に帰ってきて、ナナが口になにかをくわえているのをみつけました。それはあの男の子の影でした。男の子が窓から飛び降りる時、ナナはすかさず近寄って、捕まえることこそできなかったものの、影を逃がしはしなかったのです。窓をぴしゃりとしめ、影はポキリと折れたのでした。

あなたが思うように、ママはその影を注意深く調べました、でもまったくなんのへんてつもない、普通の影なのでした。

ナナにはもちろんこの影をどうすればいいのか、わかっていました。というのは影を窓の外にぶら下げておけば、それを取り戻すために男の子は必ずもどってくるといった具合です。コドモ達には害がなく、男の子が簡単に取り戻せるところに、その影をおいときましょうということなのです。

ただ不幸にも、ママは窓に影をぶらさげたままにはしておけませんでした。それはまるで洗濯物みたいで、家の格を下げることになってしまうからでした。ママはパパに影を見せようかと思いましたが、パパは頭を冷やすために冷たいタオルを巻きつけ、ジョンとマイケルの冬のりっぱなコートの出費の計算をしていたので、わずらわすのは申し訳ないような気がするのでした。その上、パパが「イヌを乳母なんかにするから、こんなことになるんだ」なんて言うのが、ありありと目に浮かぶようでした。

ママは影をたたんで、パパに相談できるいい機会がくるまで、たんすの中にていねいにしまいこんでおきました。あらまあ。

機会は一週間後に訪れました、あの決して忘れることのできない金曜日に、もちろん金曜日なのでした。

「わたしが金曜日には、特別注意するべきだったんだわ」後になって、ママはパパによくそういいました。そういってるときに、おそらくナナはパパの反対側のママの手をにぎっていたことでしょう。

「いやいや」パパはいつもこういうのでした、「わしに全責任がある、わしジョージ・ダーリングがやるべきだったんだ」そしてラテン語で「わしがわるいんだ、わしがな」といいました。パパはラテン語の素養もあったのです。

それからかれらは座り込んで、来る夜も来る夜もあの運命の金曜日のことを思い出していたので、しまいにはどんな細かいことまでも頭の中に刻み込まれて、頭の反対側までも突き抜けそうでした。それはまるで、できの悪いコインに刻まれた顔が、反対側まで突き抜けてしまっているかのようでした。

「わたしが、27丁目の家での夕食のお誘いを承知さえしなければ」ママはいいました。
「わしが、ナナのおわんにわしが飲む薬を入れたりしなかったら」とパパもいいました。
「わたくしが、お薬が好きなフリさえしておけば」ナナのうるんだ瞳が、そういいたいようでした。
「わたしのパーティー好きが、あなた」
「わしのユーモアのセンスのなさがだ、おまえ」
「わたくしが些細なことへこだわったりするからなんです、ご主人様」

それからひとり、ふたりと一緒に泣き崩れるのでした。ナナは「そうだ、そうだ、イヌを乳母なんかにするべきじゃなかったんだ」と考えて、パパはナナの目に何回もハンカチをあてなければならなかったのでした。

「あの悪魔め、」パパは叫んだものでした、ナナのほえる声がそれを繰り返しました。ただママは、ピーターを決して責めませんでした。彼女のくちもとの右はしにあるなにかが、ピーターの名前を口にだすことをためらわせるのでした。

がらんとしたコドモ部屋に座り込んで、あの恐ろしい夜のどんな細かいことでさえ、愛情をこめて思いだそうとするのでした。はじまりは、いつもと全くかわらない平凡な、本当に他の幾夜と全く同じで、ナナはマイケルのお風呂のために水をいれ、マイケルを背中に乗せてお風呂までつれていくところなのでした。

「まだ、ねむたくない」マイケルは大声をだしました、いうことはそれだけしかないと固く信じているといった具合に。「やだよ、やだよ、ナナ、まだ6時じゃないか、お願いだから、おねがいだから。もうキライになるからね。ナナ、おフロには入りたくないっていってるんだよ、やだやだ」

そこへ、夕食会のための白い夜会服をきたママが来ました。ママはウェンディが夜会服を着た姿をみるのをとてもよろこぶので、おおいそぎで着替えてきたのでした。ママはパパから貰ったネックレスをつけ、前もって貸してくれるように頼んでいたウェンディのブレスレットをはめていました。ウェンディはママにブレスレットを貸してあげるのが、大好きだったのでした。

ママは年上の2人が、ウェンディが生まれた時のママとパパのフリをして、遊んでいるのをみました、ジョンはこういいました。

「おまえにこういえることを、しあわせにおもうよ、おまえ、おまえはいまや母親なんだよ」まるでパパが、まさにその時に使ったであろう口調で言ったのでした。

ウェンディは、よろこびのあまり踊りだしました、まさに本当のママがしたに違いないように。

それからジョンが生まれ、パパは男の子がうまれたひときわの感慨を抱き、そしてマイケルがおフロからでてきて、僕も生まれた? とたずねました。ただジョンは、そっけなく、パパとママにはもうコドモはいらないよと言ったのでした。

マイケルはほとんど泣きそうになって「ぼくなんて、だれにも必要とされてないんだ」といいだし、白い夜会服をきたママはその状況に黙っていられなくなり、

「わたしは欲しいわよ」と口をはさみました。「わたしは、とっても三番目のコドモがほしいわ」

「男の子、女の子?」マイケルは、あまりキタイしていないふうにたずねました。

「もちろん、男の子よ」

すぐにマイケルは、ママの腕の中に飛び込びました。そんなささいなことさえ、いまやパパとママとナナには思いだされるのでした。ただ、もしそれがマイケルのコドモ部屋での最後の夜になるのなら、ささいなこととはいってられないのですが。

回想は続きました。

「わしがたつまきのように部屋に入っていったのは、そのときじゃなかったかな?」パパは自分自身をあざけるように、そういうのでした。そして実際にも、まるでたつまきのようだったのでした。

パパにもたぶん弁解の余地はあるんでしょう。パパもパーティにでかけるために正装していて、ネクタイを結ぶまでは、完璧にこなせていたのでした。債券や株のことまで分かるはずが、まともにネクタイもむすべないなんてことを、パパについて言わなければならないのは、びっくりぎょうてんです。パパは時々争わないでマケを認めるようなことがありましたが、一家にとっては、パパがぐっとプライドを押えて、最初から結んであるネクタイを使うほうが良い場合が、ままあったものです。

今回もまさにそんな場合で、パパは手にしわくちゃのコンチクショウのネクタイをもって、コドモ部屋に駆け込んできました。

「あらどうしたの、あなた」

「全く、」パパは本気で叫びました、「このネクタイときたら、むすべないようになってるんだ」パパはひどく皮肉っぽく「首のまわりをまわりやしない、ベットの柱なら上手くいくのに、ああ、ベットの柱なら20回はできたぞ、どうして自分の首のまわりだとだめなんだ、おまえ、弁解を許してくれ」といいました。

パパが思うに、ママはそれほどびっくりしていないようだったので、厳しい口調でこう続けました。「おまえ、もしもこのネクタイが結べなければ、今夜のディナーは取りやめだということをいっておくぞ。今夜のディナーに行かなかったら、仕事にも二度といけん。仕事に二度と行けなければ、おまんまのくいあげだ。コドモ達も路頭にまようんだぞ」

その時でさえママは落ち着いていて、「まあ、あなたやらせてみて」といい、パパがママに頼みに来たことも、まさにそれだったのでした。そして見事な手際でパパのネクタイを結んで、そのあいだコドモ達は自分達の命運が決するのを、まわりで立ちすくんで見守っていたのでした。ママがそんなにかんたんにネクタイを結ぶので、かえって腹をたてる男の人もいたかもしれませんが、パパは全くそんな性格ではありませんでした。ママにむとんちゃくにお礼をいったそのとたん、すっかり怒ってたことも忘れて、つぎの瞬間にはマイケルを背中におぶって踊りまわっているのでした。

わたしたちはなんて騒々しく、ふざけたりしてたんでしょう。ママは回想しながらそう言いました。

「さいごのおふざけだったな」パパはうめくようにいいました。
「ジョージったら覚えてます? マイケルがわたしに突然こういったのを。いったいどうやって僕のことをわかるようになったのって」
「覚えてるさ」
「まったくやさしいコドモたちだったと思いません、ジョージ」
「それにわしらのコドモだよ、わしらの。いまや行ってしまったが」

おふざけはナナの登場でおさまって、大変不幸なことにパパとナナはぶつかって、ナナの毛がズボンについたのでした。ズボンは新しいズボンであっただけでなく、パパにとっては始めての組みひも付きのズボンだったので、パパは泣かないために口びるをかみしめなければなりませんでした。もちろんママはパパのズボンにブラシをかけましたが、パパはやっぱりイヌを乳母に雇うのは間違いなんだという話をむしかえしだしました。

「ジョージ、ナナはこの家の宝だわ」
「それは認めるさ、ただ時々ナナが、コドモ達を子犬とでも思ってやしないか、不安になるんだよ」
「あらいやだ、あなた、ナナはちゃんとコドモ達がたましいをもっていることを知ってますわ」

「うたがわしいもんだな」パパは思慮深くいいました。「うたがわしいな」いい機会だとママは思ったので、あの男の子のことをパパに話してみました。パパは最初はその話をバカにしていましたが、影をみせられると考え込み「全くしらないやつだわい、」と詳しく影を調べながら、こうつづけました。「ただ悪いやつのようだな」

「わしたちがまだ話し合ってたときだったな、覚えてるかい、ナナがマイケルの薬をもって入ってきたんだった。もうおまえも口で薬のビンをくわえてくることもないんだなぁ、ナナ、全部わしのせいじゃて」

パパは強い人でしたが、薬のこととなると必ずかなりばかげた行動をとってしまうのでした。もしパパに欠点があるとするならば、薬なんて小さい頃から平気で飲んできたなんて思いこんでいたことでしょう。そして今マイケルが、ナナが口にくわえてさしだしたスプーンをいやがると、パパはぶつぶついいだしはじめました。「男だろ、マイケル」

「やだやだ」マイケルはわがままにも泣き始めました。ママはごほうびにマイケルにあげるチョコレートをとりに部屋をでていきました。で、パパはママのそんな行動が厳しさに欠けてるぞと思って、「おまえ、マイケルを甘やかしちゃダメじゃないか」と呼び止め、こう続けました。「マイケル、わしがおまえの年頃のころにはだ、ぶつぶついったりせずに薬をのんだものだ。わしは言ったよ、やさしいおとうさん、おかあさん、元気になるための薬を飲ませてくれてどうもありがとう、ってな」

パパはこれが本当のことだったと思ってるのでした、そしてウェンディもナイトガウンに着替えてたんですが、パパはそうだったにちがいないと信じていましたから、マイケルを励ますためこういったのでした。「パパが時々飲んでる薬は、もっと嫌な味がするわよねぇ、パパ」

「もっと、もっとだ」パパは胸をはっていいました「もしわしが薬のビンさえなくしてなければ、いまここでおまえの手本にのんでやるのになぁ」

正確には、なくしたのではなかったのでした。パパは真夜中に衣装部屋の一番上まで登っていって、薬ビンを隠していたのでした。ただパパはしらなかったのですが、仕事熱心なエルザが、それを見つけて洗面所に返しておいたのでした。

「どこにあるか知ってるよ、パパ」ウェンディはそう叫ぶと、役にたてることがうれしくって、「もってくるよ」とパパが止めるヒマもなく、いなくなってしまいました。突然パパの気分はドット落ち込んでしまいました。

「ジョン」パパは身震いしながら、言いました。「あれはまったくひどいしろものだぞ、むかむかするし、べたべたするし、おまけに甘ったるかったりするんだぞ」

「すぐに飲み終わるよ、パパ」ジョンが励ますようにいうと、すぐに薬のはいったグラスを持ったウェンディが、かけこんできました。

「できるかぎり、いそい、だのよ」ウェンディは息をきらしながら言いました。

「もちろん、おまえは、すばらしいっていっても過言じゃないほど急いでくれたよ」パパは、まさにウェンディに対して悪意に満ちたていねいな口調で、そう言い返しました。
「まずマイケルからだ」パパはがんこに言いました。
「パパが最初だよ」マイケルはうたぐりぶかそうにいいました。
「どうもわしはき・ぶ・んがわるいなぁ」パパは脅すようにいいましたが、「さあ、パパだよ」とジョンがいいはなちました。
「ジョン、おまえはだまってたらどうなんだ」パパは厳しく言いました。
ウェンディは全く困惑してしまいました。「わたしはパパがすぐにでもごくって、薬をのんじゃうと思ったのに...」

「そういう問題じゃないんだ、」パパはこういい返しました。「問題はだ、マイケルのスプーンのより、わしの方が量が多いことなんだ」パパの誇り高きプライドは、はりさけんばかりでした。「だからフェアーじゃないんだ。たとえ死に際の最後の一言なろうとも、わしはいうぞ、フェアーじゃないとな」

「パパ、僕まってるんだよ」とマイケルが冷淡にいうと
「あぁ、おまえは待ってるなんていってるがいいさ、だがわしこそが待ってるんだ」
「パパは臆病なカスタードクリームみたい」
「なに、おまえの方こそ臆病なカスタードクリームだ」
「僕はこわくないもん」
「よし、じゃあ、のむんだ」
「うん、じゃあ、パパ飲んで」

ウェンディは素晴らしい考えを思いつきました。「一緒にのめばよいんじゃなくて?」

「たしかに」パパは言いました。「マイケル、準備はいいか?」

ウェンディはひとつ、ふたつ、みっつといって、マイケルは薬をのみました。だけどパパは自分の薬を背中にこっそりかくしたのでした。

マイケルは怒りの叫び声をあげました。
「あらパパ」ウェンディも大きな声をあげました。

「どういう意味だ、あらパパ、なんて」パパは問い詰めました。
「さわぐんじゃない、マイケル。飲むつもりだったんだよ、だけど、ええっと、飲み損ねたんだ」

3人がパパを見る眼はなにか見てはいけないものでもみるような、まるっきりぜんぜん尊敬してないような目つきでした。「おまえたち、そらみなさい」ナナがバスルームへ姿をけすやいなや、パパは下手にでていいました。「すごいジョークを思いついたんだ。ほらわたしの薬をナナのおわんに入れて、ナナがミルクだと思ってそれをのんだら...」

薬とミルクの色は一緒でした。でもコドモ達にはパパのユーモアのセンスはぜんぜんわかりませんでした。ただパパがナナのおわんに薬を注いでいる間、非難がましくパパを見てました。「おもしろいぞ」パパは自信なさそうに言って、コドモ達もママとナナが部屋に戻ってきた時に、思い切ってパパのことをばらしたりはできませんでした。

「ナナ、よしよし」パパは、ナナを軽くなでながらいいました。「少しミルクをどうだい」

ナナはしっぽをふって、薬のところに駆け寄ると舌で飲み始めました。そしてナナはパパをすごい目つきでにらみ、怒った目つきではありませんが、こんなに気高いイヌに大変申し訳ないことをした、と思わせるような大粒の涙をパパにみせつけて犬小屋にもぐりこみました。

パパはものすごく自分を恥じいりました、でもマイッタとはいえませんでした。ひどくいやなシーンとした雰囲気のあと、ママがおわんの匂いをかぐと、「ジョージったら、あなたの薬じゃないの」といいました。

「ほんのジョークのつもりだったんだ」ママがコドモ達とナナを慰めているのに、パパは大声で言うと「いいさ、」と苦々しく続けました。「わしがすっかり道化になってやって、この家を楽しくしようとしてるのに」

ただウェンディは、まだナナをだきしめてました。
「いいだろう」パパは大声をだしました。「ナナをせいぜい大事にしてやるんだ、だれもわしにはかまっちゃくれん。いいんだ、わしはただの大黒柱ふぜいだよ、なぜわしを大切にしようとせん、どうしてだ?」

「ジョージ」ママはパパに懇願するようにいいました。「そう大声をださないでくださいな、召使たちが聞きつけるじゃないですか」どうしてかリザは一人きりなのに召使たちなんて呼ぶようになっていたのでした。

「いいじゃないか、」パパはなにもかまうもんか、というふうに答えました。「世界中にでも聞かせてやるさ。だが、もうこんりんざいあのイヌをコドモ部屋に置いとくのは、まかりならん」

コドモ達は泣き始めました。そしてナナはおねがいするように、パパの足元にかけよりました。ただパパは、しっしっとナナをおいやり、ふたたび偉くなったような気分を感じているのでした。「無駄だ、無駄だ」パパは大声をだしました。「おまえにお似合いの場所は、庭じゃないか。いますぐ庭にむすびつけられてくるといい」

「ジョージったら、ジョージ」ママはちいさな声でいいました。「あなたにあの男の子のことを話したのを忘れたの?」

まぁなんてことでしょう。パパは聞いていなかったのでした。パパは、この家の主人はだれかはっきりさせようと決心してましたし、命令してもナナが犬小屋からでてこないとみると、甘い言葉でおびきだし、がしっとナナをつかむとコドモ部屋からひきずりだしました。パパは自分を恥じていましたが、とにかくやったのでした。

それというのも全部パパの優しいこころのためなので、とにかくみんなに感心してもらいたかったのです。ナナを裏庭に結びつけると、かわいそうなパパは廊下に行き座り込んで硬く握りしめたこぶしを目にあてていたのでした。

その間、ママはふだんにはみられないような沈黙がただよう中、コドモ達を寝かしつけナイトライトをつけました。ナナがないているのがきこえました。ジョンが泣き声でぶつぶつ文句をいいました。「ナナを庭に結びつけてるせいだ」ただウェンディは、もっと賢かったのでした。

「ナナは、自分が不幸だから、ないてるわけじゃないわ」ウェンディは何が起きようとしているのか、少し考え込んで言いました。「きけんな匂いをかいだ時のなきごえよ」

きけんですって。

「本当に? ウェンディ-」
「もちろんよ」

ママはこわくなって、窓際にいきました。窓はしっかり閉まっていました。ママは錠をかけ、夜は星で輝いていました。星はこの家でなにが起こるのか、興味深そうに家の周りを取り囲んでいるみたいでした。ただママはこのことに気づきませんでしたし、小さい星の1つや2つがママにまばたきしたのさえ気づかなかったのです。ただなんともいえない不安がママのこころをいっぱいにして、こういわせるのでした。「今夜のパーティに行かなくてもいいなら、どんなにいいことかしら」

すでにうとうとしていたマイケルでさえ、ママが不安にかき乱されていることを知っていたので、「なにかが、ぼくらにわるさをするの? ナイトライトがついてるのに、ねぇママ」と尋ねました。

「そんなものありませんよ、ナイトライトはコドモ達を守るために、ママが後に残していく目のかわりなんだから」

ママはベットからベットへコドモ達をうっとりさせるように歌いながら足を運び、小さなマイケルはママに腕をまわしてだきついてこういいました。「ママ大好き」それが長い間、ママがマイケルから聞いた最後の言葉なのでした。

27番地はほんの少ししか離れてなかったのですが、うっすらと雪がふっていてパパとママは靴をぬらさないように器用に雪の上の道を選んで歩きました。パパとママのほかに通りにはひとっこひとりおらず、全ての星がパパとママを見つめていました。星は美しく輝いてはいましたが、なにかを進んでやろうとはしないでしょう。星は永遠に見ているだけなのです。それは星に課された罰で、なにが理由でそんな罰が与えられたのかは、あんまり昔のことで今やだれも知らないのでした。年取った星は生気のない目をして、ほとんどしゃべりもしなかったのですが(まばたきが星の言葉です)、ただわかい星は、まだあれこれと思いをめぐらしているのでした。星たちは実のところ、ピーターのことがすごく好きというわけではありませんでした、というのもピーターったら茶目っ気たっぷりに星の後ろにこっそりまわりこんで、吹き消そうとしたりしてたからなんですが。ただ星は楽しいことが大好きだったので今夜はピーターの味方なのでした。で大人たちが片付くかどうか、固唾をのんでみまもっていました。だからパパとママが家の中に入り、27番地のドアがしまるやいなや、夜空は大騒ぎになり天の川の一番小さい星が叫びました。

「さあ、ピーター出番だよ」

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2000/05/15 ピーターパン 1章 ピーター登場

バリ, J. M.『ピーターパン』 html版 
原題:PETER PAN
訳者:katokt
公開:1章 2000/05/15 (V0.9) 2000/05/22(V0.92) 2000/05/28(V0.93)

1章 ピーター登場

コドモはみんな成長するものである、一人を除いては。コドモはすぐに、自分が成長するものだという事がわかるもので、ウェンディがそれをわかったのは、このようにしてでした。2才のある日のこと、庭で遊び、花をつんで、それをもってママの所へ走っていきました。そうしているウェンディは、幸福にみちみちているように見えたことでしょう、なぜならママは胸に手をあてて「まぁ、どうしてあなたはずっとこのままでいられないんでしょうねぇ」と言ったのですから。コドモの成長について、ママとウェンディの間で交わされたことは、これがすべてです。ただこのことによって、ウェンディは自分が成長しなければならないということを分かったのでした。2才にもなれば、分かるものなのです。2才ともなれば、きざしがあらわれるものなのです。

そうそう、彼女達は14番地に住んでいて、ウェンディが生まれてくるまでは、ママが一家の花でした。愛らしい少女でロマンティックな心と、とてもかわいらしくこまっしゃくれた口もとをしていました。ロマンティックな心は、まるであの不思議なる東洋から来た、一つの箱の中にもう一つの箱がある入れ子の小さい箱のようで、いくつ箱を開けても、そこにはいつももうひとつ箱があるのでした。彼女はかわいらしくこまっしゃくれた口もとにキスを浮かべていたのですが、右はしにはっきりと見えていて、まさにそこにあるにもかかわらず、ウェンディには決して手が届かなかったのでした。

パパとママが結婚したてんまつはこのようなものでした。ママがコドモだった時にコドモだった多くの男の人は、みんないっぺんにママのことを愛していることに気がついて、パパ以外のみんなはママの家にプロポーズするために走って駆けつけたものでした。パパはというと、つじ馬車をひろって、真っ先にママの家に飛びこんだのでした。そうしてパパとママは結婚しました。パパはママの全てを手に入れました、もっともあの一番内側の箱とキス以外の全てだったんですが。パパは箱のことには気づきもしなかったですし、そしてそのうちキスしてもらうこともあきらめてしまったのでした。ウェンディは、例えばナポレオンならキスしてもらえるかもと思っていました。けれどもわたしには、ナポレオンが挑戦してみたけれどキスしてもらえず、カンカンにカンシャクをおこして、ドアをぴしゃりとしめて立ち去るのが目に浮かぶようです。

パパは、ウェンディによくこう自慢したものでした。ママはわしのことを愛しているだけでなく、尊敬もしてるんだよと。パパは債券と株式について、とても詳しいうちの一人でした。もっとも債券や株式のことを、本当に知ってる人なんていやしなくて、いかにも知ってるように見えたというだけだったんですが。パパはよく債券が上がり、株式が下がると断言したものでした、どんな女の人でもパパを尊敬するにちがいない風に。

ママは白いウェディングドレスで結婚して、最初のうちは完璧に、芽キャベツ1つでさえもらさないように、まるでゲームみたいにまったく楽しそうに家計簿をつけていました。が、そのうちカリフラワーもつけそこなって、その代わりに顔のない赤ん坊の絵を書いてるしまつでした。ママは合計しなければならない所に、あかんぼうの絵を書いていたのです。それはママの想像するあかんぼうたちなのでした。

ウェンディが最初に生まれ、それからジョン、マイケルと続きました。

ウェンディが生まれて一、二週間の間は、養っていけるかどうかさえ疑わしいものでした、なぜなら養う口が一つふえるわけですから。パパはウェンディのことを誇らしげにさえ感じていたんですが、とてもきちんとした人でしたから、ママのベットのはしに腰掛け、ママの手を握りながら出費を計算したのでした。その間ママはパパを哀願するような目で見つめていました。ママはたとえ何があろうとも、とにかく養っていきたいと思っていました。ただそれは、パパの流儀ではなかったのです。パパの流儀は鉛筆と紙でもって、きちんと計算することであり、もしママがいろいろ口出しをしてパパを困らせるようだと、再び最初にもどってやり直さなければなりませんでした。

「さて、じゃませんでくれ」パパはママにそう頼んだものでした。

「ここに1ポンド17シリングある、で事務所には2シリング6ペンスだ。事務所でコーヒーを飲むのはやめよう、10シリングだがな。すると2ポンド9シリング6ペンスで、おまえの18シリングと3ペンスと合わせて、3ポンド9シリング7ペンスになる。そして私の小切手帳の5ポンドで、8ポンド9シリング7ペンスになる。だれだそこで動いているのは? 8ポンド9シリング7ペンス、7ペンスが繰り上がって、しゃべるなといったろう、おまえが玄関の所に来た男に貸した1ポンドを、ウェンディ静かに、でコドモを繰り上げて、あらっ、へまをやったぞ。わしは9ポンド9シリング7ペンスって言ったかな。そうだな、わしは9ポンド9シリング7ペンスと言ったぞ。問題はだ、一年を9ポンド9シリング7ペンスでやっていけるかだな?」

「もちろん、平気だわ」ママは大声をだしました、もちろんウェンディの味方をしての発言でした。ただパパはママに比べてすごくしっかりしていたのでした。

「おたふく風邪もわすれちゃならんしな」パパはほとんどママを脅すように言うと、再び計算に取りかかりました。「おたふく風邪に1ポンド、と書いたものの30シリングぐらいが適当だな、だまってろって、はしかが1ポンド5シリング、ふうしんは半ギニーだから2ポンド15シリング6ペンス、指をふるわせるのはよせったら、百日ぜき、そうだな15シリング」と続けていくと、やるたびに合計が違うのでした。で、最後にはとうとうウェンディは合格ということになりました。おたふく風邪を12シリング6ペンス、はしかとふうしんはひとつとして計算したからなんですが...

ジョンのときもまったく同じ騒動がもちあがり、マイケルの時にいたってはぎりぎり合格といった具合でした。でも2人とも育てられ、すぐに3人のコドモが1列にならんで、乳母が付き添ってフルサム幼稚園に通うのを見ることでしょう。

ママはなにもかもきちんとしておくのが好きでしたし、パパも隣近所にはひけをとらまいと必死だったので、もちろん乳母を雇ったのでした。ただコドモのミルク代でおかねが足りないので、乳母はナナという名前の、きちんとしたニューファウンドランド犬なのでした。ナナはダーリング家で飼われるまでは、特別どこで飼われていたというわけではありませんでした。ただナナはコドモを大事なものと考えており、ダーリング家とはケンジントン公園で知り合いになりました。ナナはそこでひまな時間の大半は、乳母車をのぞきこんで過ごしていて、コドモの世話を十分にしてない乳母たちには大変嫌われていました。というのもそんな乳母たちの家までついていき、世話を十分にしてないことを奥さんにいいつけたからでした。そして、ナナは本当に乳母のカガミであることがわかりました。お風呂にいれるのも完璧でしたし、夜中のいつでも、コドモ達のひとりのかすかな泣き声にさえちゃんと起きるのでした。もちろん犬小屋はコドモ部屋にあり、ナナはコドモが一回咳をしてもがまんさせちゃいけなさそうな具合だぞとか、のどに靴下をまかなきゃいけない頃だということがわかる非凡な才能をもっていました。ナナは死ぬまで、ダイオウの葉っぱだとかの昔風の治療法を信じきっていました、そして細菌とかなんとかいった新しいだけの話には、はなからばかにしたようなうなり声をあげるのでした。ナナがコドモ達を学校へ送り迎えする姿は礼儀作法のお手本にしたいくらいで、コドモ達がちゃんとしているときはおちつきはらって横にならんで歩いているし、コドモ達が列からはみだそうものなら、頭でつついて列におしもどすのでした。ジョンがサッカーをやる日にセーターを忘れたことはありませんし、雨の日にはいつも口に傘をくわえていきました。フルサム幼稚園には地下にひと部屋あり、そこで乳母たちはコドモを待つのでした。乳母たちは長いすに腰掛け、一方ナナは床に寝そべっていました。違いは本当にこれだけなのでした。乳母たちは自分たちより身分が低いんだから、とナナを無視するふりをしてましたし、ナナは乳母達の内容のないおしゃべりをばかにしていました。ナナはコドモ部屋にママの友達がくるのを大変嫌がっていましたが、実際来たときにはまずマイケルのエプロンをさっとぬがせて、青い組みひもで縁取られたエプロンを着せて、ウェンディの髪をなでつけ、それからいそいでジョンの髪をとかしつけるのでした。

これほどきちんとしているコドモ部屋が、ほかにあったでしょうか。そしてパパもそれをよく知ってはいましたが、まだ時々、近所の人がなんと言ってるか不安に思うのでした。

なにしろパパは町での自分の立場も考えなければならなかったのです。

ナナも別の意味で悩みの種でした。時々ナナがパパを尊敬してないように感じたのです。「わたしは、ナナがあなたをとっても尊敬してるのを知ってるわよ」とママはパパを励ましたものです、そしてコドモ達にパパに特別やさしくしなさいという合図をしたものでした。愛らしいダンスがはじまり、もう一人のリザという召使も時々一緒に踊ることをゆるされました。長いスカートと召使の帽子をかぶった姿はとても小さくみえましたが、雇われたときには、もう10才にはみえませんと自分で断言していたのです。遊びまわるみんなのにぎやかなこと。でも全員の内で一番楽しそうなのはもちろんママで、すごい勢いでつま先でくるくるまわっていたために、あのキスしか見えないほどでした。もしいまママに飛びついたのなら、キスしてもらえたかもしれません。ピーターパンが来るまでは、こんなにしんそこ幸せな家庭は他にはなかったことでしょう。

ママがはじめてピーターパンのことを耳にしたのは、子供たちのこころを整理整頓しているときでした。かならず毎晩、コドモ達が寝入ったあとで、いいママならだれでも、コドモ達のこころの中をひっくりかえして、昼間の間にあちこちに散らかったものをそれぞれの場所につめなおして、翌朝のために整理整頓するものなのです。もしあなたが起きていられたら(もちろん無理でしょうけど)、あなたのママが整理整頓してるのをみることでしょう、そしてそんなママを見てるのは、とても面白いことでしょう。それはまるで、たんすの整理みたいなものなのです。私が思うには、あなたはママがひざまづいて、こんなことをしてるのをみるでしょう。つまりあなたのこころの中にある物のいくつかを面白そうに手にとってみて、一体全体どこでこんなものをひろってきたのか不思議に思って、その発見をうれしく思ったり、逆にあんまりそうでもなかったり、まるで子ネコみたいにかわいいものであるかのようにほおにおしあてたり、あわてて見えない所にしまいこんだりする所を。あなたが朝起きたときには、夜寝るときにベットにもちこんだわがままや意地悪は小さくたたみこまれて、こころの奥底にしまいこまれているし、一番上にはすっかりかわいたきれいな心が、すぐ身に付けられるようにひろげてあるのでした。

あなたが心の地図を見たことがあるかどうか、わたしは知りません。お医者さんはあなたの心以外の地図は時々描きます、そしてあなた自身の地図はとても興味深いものでしょう。でもお医者さんがコドモのこころの地図を描こうとしているのをみてみましょう、そのコドモのこころは散らかってるだけでなく、いつもくるくる回りつづけているのでした。こころの上には、まるであなたの体温表みたいにジグザグの線があり、それはたぶんその島の道なのでしょう、なぜならその島、ネバーランドは、大体において島みたいなものであり、あちこちに驚くほどの色の模様があり、さんご礁、沖合いに速そうにみえる小船があり、野蛮人がいて、さびしい墓地があり、たいがい仕立て屋をやってる小人たちがいて、川が流れているどうくつがあって、6人の兄をもつ王子がいて、刻々とくずれおちていく小屋があり、カギ鼻の背の低い老婆がいたものでした。これで全部ならまだまだ簡単な地図といえるでしょう、でもまだ学校での最初の登校日、宗教、祖先、まあるい池、針仕事、殺人、絞首刑、間接目的語をとる動詞、チョコレートプディングの日、歯列矯正器をつけて、99といって、じぶんで歯をぬいたら3ペンスやるよ、とかとにかくそんなものがあるのです。そしてそれらはすべてネバーランドの一部、もしくは隠しても見えてくる別の地図といったぐあいで、とにかく全く混乱しており、しっかり根をおろしてかわらないものなどなにもないのでした。

もちろんネバーランドはとってもヘンカにとんでおり、たとえばジョンのネバーランドには、ラグーン(さんごにかこまれた浅瀬)があってその上をフラミンゴの群れが飛んでおり、ジョンはそれを撃つといったぐあいでした。一方マイケルといえば、まだとっても小さかったので、フラミンゴがいて、その上をラグーンの群れが飛んでるといったぐあいなのでした。ジョンは砂浜にさかさまになっていたボートに住み込んで、マイケルはインディアンのすむようなテントに、ウェンディは巧みに縫い合わされた葉っぱの家に住んでいたのでした。ジョンには友達もいませんが、マイケルには夜の間だけの友達がいて、ウェンディは親にすてられた狼をペットにしていました。ただ、まあだいたいのところでは、ネバーランドは兄弟姉妹では似たり寄ったりになるもので、兄弟姉妹のネバーランドを一列に整列させたら、おんなじような鼻だなぁとかなんとかいうことになるでしょう。ネバーランドの魔法の岸辺で遊んでいるコドモ達は、いつもこぶねを岸にひきあげているのです。わたしたちもかつてそこにいたことがあるのでした、まだ波の音がきこえるでしょう、でもわたしたちはもうその島へ上陸はできないのですけれども。

全ての楽しい島々の中で、ネバーランドはもっともこじんまりしていてコンパクトなのでした、しってるでしょう、ひとつの冒険から次の冒険までがいやになるくらい離れているほど、おおきかったり不規則に拡大してたりはしないのでした。ちょうどいい具合につめこまれていたのです。椅子とテーブルクロスで、昼間のあいだネバーランドで遊んだ時は、まったく不安になることはないのに、眠りにおちる前の2分間には、急に現実みたいに思えたりもするのでした。それがナイトライトがある理由だったりしますけど。

時々ママがコドモ達のこころの中を旅してると、理解できないものにつきあたったりします。その中でも、もっとも途方にくれてしまうのは、ピーターという言葉でした。ママにはピーターなんて知り合いはいませんでしたし、ジョンとマイケルのこころのあちらこちらにいて、ウェンディのこころときたら、ピーターという名前の落書きであふれかえりそうなぐらいなのでした。ピーターという名前は、他の言葉にくらべてもより太い字で書かれており、ひときわ目立ちましたし、ママはその名前をじっとみると、みょうにうぬぼれているといった感じをうけるのでした。

「まあかなりのうぬぼれやさんね」ママがそうたずねたから、ウェンディは残念にはおもったけど、そう認めました。
「いったい誰なの、ペットのこと?」
「ピーターパンよ、ママしってるでしょ?」

最初ママには分かりませんでした、でもコドモの頃のことを思いかえしてみると、妖精たちとくらしているといわれていたピーターパンのことに思い当たりました。ピーターパンの話はかなりかわっていて、たとえばこんな話でした。コドモが死んだときには途中まで一緒についていって、恐がらないようにしてあげるといったようなぐあいです。ママも当時は、ピーターパンがいることを信じていました。でも今は、結婚して分別もついていましたから、ピーターパンなんているのかしら? なんてかなり疑わしく思っていました。

「それにしても」ママは、ウェンディにいいました。「もう今では大人になってるわね」
「あらやだ、ピーターパンはオトナになんてなりません」ウェンディは胸をはって、自信たっぷりにいいはりました。「ピーターは、わたしとまったく同じおおきさだし」彼女がいってる”おなじおおきさ”の意味は、こころと体の両方とも”おなじおおきさ”ってことでした。ウェンディはどういうふうにして”おなじおおきさ”ってことがわかったかはわからないけど、とにかくわかっていたのでした。

ママはパパに相談しましたが、パパはばかにして笑うだけでした。「わしの言葉を覚えておけよ、」パパはいいました。「ナナがコドモ達に教え込んだたわごとさ、イヌが考えそうなことだ。ほっとけよ、忘れるだろう」

ところが、忘れるどころのさわぎではありませんでした、そのやっかいごとをひきおこす男の子は、ママに大ショックを与えたのでした。

コドモというものは親たちにわずらわされなければ、どんなかわった冒険でもするものなのです。例えば、森にいて、死んだお父さんと会っていっしょに遊んだよなんてことを、終わって一週間もしてから、思い出して言ったりするのです。ウェンディがある朝、おどろくべき意外なことをいいだしたのは、こんなふうになにげなくでした。木の葉がコドモ部屋で見つかったのでした、昨晩コドモが寝たときには、確かになかったはずなのに。ウェンディがしょうがないわねぇって微笑みながらこう言った時、ママは木の葉をただ不思議だなぁと思っていたのでした。

「また、ピーターのせいだと思うわ」
「いったいぜんたい、どういうこと、ウェンディ」
「わんぱくだから、くつをふかないのよ」ウェンディはため息をついていいました。ウェンディはきちんとした子でしたから。

ウェンディは、まったくあたりまえのことを話しているように、ピーターが時々コドモ部屋にやってきて、ウェンディのベットの足の方に腰掛けて、笛をきかせてくれるの、と説明しました。残念なことに、起きていなかったので、どうやってそのことがわかったかはわからないけど、とにかくわかっていたのでした。

「なにわけのわからないことをいってるの、かわいい子。玄関のドアをノックせずに家にはいってくるなんてことは、できないのよ」
「窓からきたと思うのよ」とウェンディは、いいました。
「まぁ、ここは三階なのよ」
「じゃあどうして葉っぱは窓際にあるの?」

全くその通りでした。葉っぱは、まさに窓際にあったのですから。

ママにはまったく訳がわかりませんでしたが、ウェンディがあまりに平然としてるので、夢でもみてたんじゃないのなんて、さっさと片付けてしまうわけにはいきませんでした。

「いいこね、」ママは声をちょっとあらげました。「でもなんでもっと前にママにいってくれなかったの?」

「わすれてたんだもの」ウェンディはそっけなくそういうと、あわてて朝食をたべました。

ええたぶん、夢でもみてたにちがいありませんとも。

でも、かたや、葉っぱはたしかにあるのでした。ママは葉っぱをとても注意深く調べていたんですが、それはすじばっかりの葉っぱで、イングランドに生えてる木のものではないことはわかりました。ママは床にはいつくばって、ろうそくでもって照らして、かわった足跡がないか調べてみました。火かき棒で煙突をガタガタさぐったり、壁をたたいたりしました。窓から道路までテープをたらしてみました。垂直に30フィートもあって、のぼってこれる雨どいひとつとしてありませんでした。

夢をみてたんですとも。

でもウェンディが夢をみてたわけじゃなかったことは、まさに次の日の夜に明らかになりました。コドモ達のおどろくべき冒険がはじまったといってもいいあの夜に。

その夜、またコドモ達がベットにはいったところから、はじめましょう。たまたまナナが夜に外出していたので、ママがコドモをおふろにいれて、ひとりまたひとりと握ってたママの手をはなして、夢の国にはいっていくまで、子守唄をうたってやりました。

ママはなにもかもが安全でここちよく感じられたので、心配する必要なんてなかったんだわと微笑んで、縫い物をするために暖炉のそばにゆっくりと腰をおろしました。

縫い物はマイケルのもので、今度の誕生日にはシャツをきることになっていたのでした。暖炉の火は温かく、コドモ部屋は3つのナイトライトで照らされているだけでうすぐらかったので、やがて縫い物はママのひざの上に落ちました。頭は、とてもゆうがにですが、こっくりこっくりとして、ママは眠りにおちてしまいました。4人をみてください、ウェンディとマイケルはあちらで、ジョンはここです、そしてママはだんろのそばで。4つ目のナイトライトがあるべきだったのでした。

ママが眠りにおちて、夢をみていると、ネバーランドはとても近くにあって、一人の見知らぬ男の子がネバーランドから登場しました。ママは、男の子にはびっくりしませんでした。なぜなら前にもコドモのない女の人の顔に、その男の子を見たことがある気がしたからでした。たぶん、母親になった女の人の顔にだって、その男の子をみつけられるのかもしれませんが。でも夢の中では、男の子はネバーランドをおおい隠していたうすいまくをひきちぎってしまいました。それで、ママにはウェンディとジョンとマイケルがその裂け目から、のぞいているのが見えました。

夢そのものは、ささいなことなんでしょう。でも夢を見ている間、コドモ部屋の窓が風で開いて、男の子が床にころげこんできたのでした。男の子といっしょに不思議な明かりも、こぶしほどのおおきさで、まるで生きてるかのように部屋の中をダーツみたいにまっすぐに飛んでいきました。思うにその明かりで、ママは起きたにちがいありません。

ママは悲鳴をあげてとびおきました、そして男の子をみました、で、どうしてかすぐにそれがピーターパンだってことが、わかったのでした。もしあなたやわたし、あるいはウェンディがそこにいたのなら、男の子がまるでママのキスみたいだなぁ、なんてことに気づいたのにちがいありません。男の子は愛らしい子で、すじばっかりの葉っぱと木からにじみでた樹液でできた服をきていて、ただもっともうっとりさせるのは、歯がひとつもはえかわってないことでした。男の子はママが大人だとみると、その真珠のような歯で、ママに向かって歯ぎしりしたのでした。

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2000/05/15 翻訳 はじめに

まあ、できることをできるかぎりやるのは、いい気分なもので。

もし私が私のために存在しているのでないとすれば、だれが私のために存在するのであろうか?

もし私がただ私のためにだけ存在するのであれば、私とはいったいなにものであろうか?

もし今を尊ばないならいつという時があろうか

「タルムード」 第一編 ミシュナより

なんてかっこつけるほどのことじゃないけど、翻訳してみます(笑)。

山形浩生のプロジェクト杉田玄白にある程度量がまとまったら、登録をなんて考えたりもしてます。もしもですけどなんか手伝ってくれたりとか、特に誤訳、誤字などの指摘があったらメールください。なにもできそうにないけどなんて時は、スポンサーを訪れてくれるなんていいかも?

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