週間翻訳日記:週間で、ある単位を目安に翻訳していきます。
特に誤訳、誤字などの指摘があったらメールください


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2000/09/04 懸案7―2 修正

懸案だった、
prince charming  《時に the P- C-(女性にとっての)理想の男性[恋人]._シンデレラ物語の王子より.
を解決?この修正で0.905→0.906へ。あとは最初の方のこなれてない部分を修正して1版にしたいなぁ。

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

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2000/08/26 11−17章 修正

11章−17章見直してみました。見直しポイントは相変わらずたくさん。でも後半は確かに落ち着いてた感じがする。みなさんの指摘のおかげです。この修正で0.904→0.905へ。あとはいくつかの疑問点を解消して、ひとまず1版にしちゃおう。それにしても次は何を訳そう? って決まってるんだけどね(笑) 9月に登場させられるかなぁ?

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

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2000/08/21 3−10章 修正

3章−10章見直してみました。見直しポイントは相変わらずたくさん。でも8章くらいからは、だんだん落ち着いてきたな。しばらくたってから見直すと改めて第3者の目で見直せるからいいよな、としばらくぶりの修正に理由付けしてみたりして。この修正で0.903→0.904へ。

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

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2000/08/07 1,2章 修正

かるーく、1章、2章直してみました。見直しポイントはたくさん。最初のほうだからねぇ。まだまだ沢山整理しなきゃいけないこともあるんだけど、とりあえず歩き出すって言うのも重要かなと思って。この修正で0.902→0.903へ。いくつまで数字があがるか楽しみ。

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

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2000/07/24 修正その3 (11-17章)

結城さんからの指摘分を修正、いつも本当にどうもありがとうございます。
この修正から0.9版の方のみにかけていくことにしたいと思います。

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

1.〔sewing machine の後半部の転〕って知ってました? 知らなかった。

>> 船は夜のとばりにおおわれて、船からは岸までなにも聞こえてきません。そも
>> そも音がほとんどしませんでしたし、スメーが座っているミシンのぶーんとい
>> う音をのぞけば、耳に心地いいといえるような
>> 音は、一切しなかったのでした。
>
>ミシン?

There was little sound, and none agreeable save the whir of the ship's sewing machine at
which Smee sat,

ミシンには座らないよね、「スメーが向かっているミシン」に修正。

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2.サイト作成者にとっていいのは...

>> 「わしフックにとっていいのは、あまり野心をむき出しにしない方がいいとい
>> うことだ!」
>わしフック?
>いいのは…いいということだ、という部分が変。

「わし、フックにとっていいのは、あまり野心をむき出しにしないことだな!」

に修正
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3.修正

>> イートン校の社交クラブ入るには、意識しなくても礼儀作法をわきまえている
>> ことこそ必要不可欠であることをフックは思い出しました。
> クラブに入る

修正

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4.威厳ってもっとも縁遠い言葉だからなぁ

>> もっと捕虜を怖がらせるために、フックは威厳はなくなりますが、甲板を板に
>> 見たてて、歌いながら男の子たちにしかめ面をみせ踊りました。
>フックは威厳は
>のあたりが不自然。

フックはもっと捕虜を怖がらせるために、威厳はなくなりますが、甲板を板に
見たてて、歌いながら男の子たちにしかめ面をみせ踊りました。

に修正
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5.集中力か能力か、あるいはその両方の不足

>> 海賊たちにしてみれば、その声は男の子たちが船室で皆殺しと思いますから、
>> パニックです。
>よく意味がとれない文。
To the pirates it was a voice crying that all the boys lay slain in the cabin;and they were panic-stricken.

海賊たちにしてみれば、その叫び声は男の子たちが船室で皆殺しということの証拠ですから、パニックです。
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6.覚えてらっしゃらない? 

>> 一撃をおみまいし、フックの肋骨へと剣を突き刺しました。自分の血をみて、
>> 覚えてらっしゃるでしょうか、独特の血の色がフックの動揺をさそい、フック
>> は剣を取り落としてしまいました。
>
>覚えてらっしゃる?

At the sight of his own blood,
whose peculiar colour, you remember, was offensive to him,
the sword fell from Hook's hand, and he was at Peter's mercy.

一撃をおみまいし、フックの肋骨へと剣を突き刺しました。自分の血をみて、
前にも出てきましたけど覚えてらっしゃるでしょうか、その独特の血の色がフックの動揺をさそい、フック
は剣を取り落としてしまいました。

に修正します。

この修正で0.9版を0.901版にします。

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2000/07/26 中間報告 その3(修正スケジュール)

まあ、目安みたいなもので、こんなスケジュールで修正をかけていきたいななんて思ってます。あくまで目安ですけど、ただ別に修正は随時できるので、指摘は随時いただければ幸いです。あくまでkatokt側はこんなスケジュールにしたいと思ってるだけです。 

7/31〜8/6 あやしい訳一覧の整理、統一訳語の整理(アップ前チェックリストなどから)、カタカナ語の整理、TODOリスト作成

8/7〜8/13 1―10章の修正

8/14〜8/20 11−17章の修正

8/21〜8/27 全体見直し 1版の完成! 

うーん、予定は未定ということで...お楽しみに。

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2000/07/25 修正その2 (11-17章)

武井さんからの指摘分を修正。この間「原則として、これ以降の修正はV0.9版にかけていく」なんて言ってなかったっけ? いやいや原則としてでしょ。武井さんほどの指摘は例外扱いで、両方に修正かけちゃおう。でもホントにこれ以降は、0.9版のみに修正予定。

それにしても、武井さん、結城さん、枯葉さん、その他ご指摘をいただいた人には本当に感謝しています。正式版にはあとがきでもつけて、感謝の意を表すことにしましょう。

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

1.2人を抱きかかえるよう、2人をだき抱えるよう。

>11章.
>> まだ落ち着いているのがよいのですが、コドモは降参するときには、それは
>> それはすばやいものです。「ウェンディ、帰ろうよ」とジョンとマイケルが
>> 口を揃えると、「ええ」とウェンディも2人をだき抱えてるようにして言っ
>> たのでした。
>「抱きかかえるように」ですかしらん.複合動詞は,前を漢字にして後ろをか
>なに開いたほうが分かりやすいかと思います(←あつらえたような例ですが,
>"分かり易い" と "分かりやすい" では,後者のほうが普通に見る表現かな,
>と).

まず例を含めて、原則論には大賛成です。ただこの部分、前に「2人」という漢字があるわけで、漢字が続くより、適度な密度がいいかなとも
思って、こうしてみました。ただ「だき抱えて」に違和感があることは間違いないので、あやしい訳一覧へ。
(絶対後になったら、なんのひっかかりもなく直しそう、笑。どうしてスナオに今直せないかな。)

2.音引き
>12章.
>> 闘いというよりは虐殺がどのように行われたかを書くのは、わたしたちの役
>> 目ではありません。ピカニニー族の勇敢な戦士たちの多くは、惨殺されまし
>> た。
>「ピカニニ族」ですね.音引きが不要.

修正します。

そうそう「ー」って音引き(おとひき)っていうんだよね。
長音符とかとも言うらしいけど、僕はずっと長音記号ってこっそり勝手に心の中で呼んでた。

でも音引きって辞書の音引き(おんびき)みたいじゃない? 

なんてことはどうでもいいことで、スナオにすぐに修正します。

3.ひとつ、二人、3人、4人ってどういう頭の構造してるの? 

>14章.
> 「ひとつ」(スライトリーがカウントを始めました。)
>續きを読むと,ここは「1人」ではないでしょうか?

修正します。

>> 「二人」スライトリーはおごそかに数えました。
>おなじく,漢数字ではなく,算用数字で「2人」ではないでしょうか?

修正します。

4.全身をぶるぶると震わせながら、修正します(笑)
>> 「船長、お慈悲を!」スターキーは今や全身がぶるぶると震え泣き言をいう
>> 始末です。
>「全身をぶるぶると震わせながら,泣き言を……」というのはどうでしょう?

修正します。

5.統一
>16章.
>> 反抗しようものなら引裂くぞといったものでした。
>「引き裂く」ではないでしょうか?

引き裂くに統一します。

6.ほす、かわかす? 

>> わたしたちはコドモ達に先回りして、ベッドがちゃんと乾してあるか、
>「乾かしてある」でしょうか?(送りがなの "か"の有無) これ以降にもいくつ
か同じものがあります.

干す、乾す、乾かす、さあ3択のどれにしましょう。情緒にかけるけど、誤解のない干すにしましょう。 

ちなみに全然関係ないけど、乾すは「さぼす」とも読むんだって

意味は、風にあてる。ほす。「脱ぎ捨てた着物を―・して呉れたりした/彼岸過迄(漱石)」

7.JOYは要注意単語! 

>> 「ジョージ、ジョージったら!」口がきけるようになると、ママは大声をだ
>> しました。パパも目をさまし、喜びをわかちあいます。ナナも駆けこんでき
>> ます。これほどすばらしい光景があったでしょうか。ただその光景を見てい
>> るのは、窓の外からじっと眺めている小さな少年一人きりでした。その少年
>> は、他のコドモ達が決して経験できないようなたくさんの喜びを味わってき
>> ましたが、そのたった一つの喜びは窓の外から眺めていることしかできない
>> のでした。きっとその喜びからは、永遠に締め出されているのでしょう。
>
>第6文.
>「そのたった一つの喜び」は,家族と再会した喜びのことでしょうから,
>
>その少年は、他のコドモ達には決して経験できないようなたくさんの喜びを味
>わってきましたが、たった一つの喜びについては窓の外から眺めていることし
>かできないのでした。
>
>のように,前の"たくさんの喜び"を指すようにも読めてしまう「その」を削除
>してはどうでしょうか?
># ↑は「コドモ達には」とも変えています.

うーん、その次の行の「その喜びからは」も扱いが難しいですね。

He had had ecstasies innumerable that other children can never know; but
he was looking through the window at the one joy from which he
must be for ever barred.

ちゃんと ecstasiesとjoyを訳しわけないのがいけないわけか...

少年は、他のコドモ達には決して経験できないような多くの楽しい思いもしてきましたが、
たった一つのその喜びについては、窓の外から眺めていることしかできないのでした。
きっとその喜びからは、永遠に締め出されているのでしょう。

「には」「については」を修正しています。

8.修正

>17章.
>> ただピーターは、ウェンディそうしたければ窓を開けて呼びとめると思った
>> ので、帰りがけに窓をかすめるようにしたのでした。
>「ウェンディがそうしたければ」.助詞の"が" がありません.

修正します。

9.一応知ってはいたんですが...
>不明部分です.
>> 14-1
>> a rakish-looking [speedy-looking] craft foul to the hull,
>> スピードの出そうな船でした が、隅から隅まで汚れきって いて
>> to the fullだよなぁ? 
>hull には船体という意味があります(なので full のミススペルではありませ
>ん).

たしかにhullにはそういう意味があるんですが(一応辞書引いて知ってた、笑、ホントだってば)

foul to the hull

ってどういう意味か全然わからなかったっす。ってまずスペルミスがどうか他の英文を当たって調べてみます。


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2000/07/24 2000/07/24 修正 (11-17章)

結城さんからの指摘分を修正、いつも本当にどうもありがとうございます。
原則として、これ以降の修正は0.9版にかけていくことにしたいと思います。

この修正が反映されてないとか、その他どんなささいなことでもいいのでピーターパンの訳文について指摘事項があったらメールください

1.前にも指摘いただいて意識はしてるんですが、迷い中。

>> 「静かに」お母さんが注意しました。「女の人も1人いました。そして...」
>好みの問題?
>...よりは…。

あやしい訳一覧へ
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2.これもあやしい訳だなぁ

>> お分かりのようになにもかも、まさにありそうなことでしたから。コ
>> ドモは、もっとも残酷なものみたいに逃げ出します。
>この二つの文は意味がよくわかりません。

That was the story, and they were as pleased with it as the
fair narrator herself. Everything just as it should be, you see.
Off we skip like the most heartless things in the world, which is
what children are, but so attractive; and we have an entirely
selfish time, and then when we have need of special attention we
nobly return for it, confident that we shall be rewarded instead
of smacked.

だって、お話したことはまさにありそうなことでしたから。コドモというものは、
世の中でもっとも残酷なものみたいに逃げ出すことがあります。

に修正。Weの訳し方がむずかしーい。
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3.間が悪いわけ(笑)

>> 「むかし、」ピーターは言いました。「君たちみたいにお母さんは僕のために
>> 窓を開けたままでいてくれると思ってたよ。
>君たちみたいに…思ってた
>間があきすぎ。

 「むかし、」ピーターは言いました。「お母さんは僕のために窓を開けたままでいてくれると、君たちみたいに思ってたもんだよ」
に修正
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4.訳が悪いわけ(笑、笑い事じゃないけど)

>> まだ落ち着いているのがよいのですが、コドモは降参するときには、それはそ
>> れはすばやいものです。
>この文は意味がよくわかりません。特に前半。

Still it is best to be careful; and no one knows so quickly as
a child when he should give in.

まだ物事は落ち着いて判断した方がよいのですが、コドモというのは、降参すると決めたら
それはそれはすばやいものです。

に修正します。
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5.どっちもありだと思いますが、「抱き抱える」にはしたくないので

>> 「ウェンディ、帰ろうよ」とジョンとマイケルが口を
>> 揃えると、「ええ」とウェンディも2人をだき抱えて
>> るようにして言ったのでした。
>だき抱えてるようにして?
>抱きかかえるようにして?

このままとします。
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6.私たちっていうのが女の子らしいですね。

>> 「たぶん今ごろお母さんは、自分たちのことを半分あき
>> らめて、死んでしまったと思っているかも」と考え
>> ていたのでした。
>自分たちのこと
>↓
>私たちのこと

修正します。
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7.恥ずかしい訳? 

>> そしてピーターがインディアン達に必要な指示を与えて、家に帰ってみると、
>> そこではピーターが留守にしている間に、恥ずかしい場面が繰り広げられてい
>> ました。
>
>恥ずかしい場面?

Then having given the necessary instructions to the redskins he
returned to the home, where an unworthy scene had been enacted in
his absence.

unworthy 値しない、恥ずべき、卑劣な

卑劣な場面、に修正します。
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8.ねじれてるって聞くとDNAとか連想する、まあ切断しときましょう。

>> 未開の地の戦いでも不文律で、攻撃するのはインディアンと相場が決まってい
>> て、種族に特有のずる賢さで、夜明け直前に攻撃します。
>ねじれかけた文。

By all the unwritten laws of savage warfare it is always the
redskin who attacks, and with the wiliness of his race he does it
just before the dawn, at which time he knows the courage of the
whites to be at its lowest ebb.

未開の地の戦いの不文律でも、攻撃するのはインディアンと相場が決まっています。
インディアンは種族特有のずる賢さで、夜明け直前に攻撃するのです。

9.底をつくのは、資金とか食料だけか? 

>> 夜明け直前は白人の
>> 勇気が底をついていることをインディアン
>> は知っていますから。
>勇気が底をついている?

英文は上をみてもらって、

夜明け直前には、白人の勇気は潮がひくようになくなっていることをインディアンは知っていますから。

10.気にかかります。
>> 一方白人たちは、向こうの方の起伏のある土地の一番高
>> い所にそまつな柵を作り、その一番低いところには小川が流れています。水か
>> ら遠く離れるのは、命取りですから。
>…ですから。
>という文末が少し気になります。
>(複数箇所)

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11.インディアンの考えてること

Around the brave Tiger Lily were a dozen of her stoutest
warriors, and they suddenly saw the perfidious pirates bearing
down upon them. Fell from their eyes then the film through which
they had looked at victory. No more would they torture at the
stake. For them the happy hunting-grounds was now. They knew it;
but as their father's sons they acquitted themselves. Even then
they had time to gather in a phalanx [dense formation] that would
have been hard to break had they risen quickly, but this they
were forbidden to do by the traditions of their race.

>> 目の前での処刑を夢見ていたうすい膜はびり
>> びりと引裂かれ、火あぶりで拷問するどころではありません。
>膜?

前にも出てきた夢を見ているときに目前に現れる膜みたいなものですよね。

あやしい訳一覧へ

>> 自分たちこそが
>> 今や死後の楽園にいて、自身でもよくそれがわかりました。
>少し変な文。

自分たちこそが、今や死後の楽園にいるのです。自身でもよく承知していました。

に修正

12.斟酌

>> フックをさばくには、その点を斟酌するのがフェアーというものです。
>斟酌する、は難しすぎないかな?

裁く→斟酌って流れで思いついたんでしょうね(笑)

その点を考え合わせるのがフェアー

に修正します。

13.いまいち直せない
>> だから問題は、全てを考えあわせる
>> と、なかなか難しいものなのです。
>少し変な文。

On the other hand, this, as destroying the element of surprise,
would have made his strategy of no avail, so that the whole
question is beset with difficulties.

たしかにヘンな気もするのですが、問題点が良く分からないので、
いちおうこのままにしておきます。

14.男

>> 夜には耳元でブーンと音をたてる虫のように眠りをじゃまするのでした。ピ
>> ーターが生きている限り、この悩める男は、自分
>> はオリに閉じ込められたライオンで、そこにツバメが一匹まぎれこんでいると
>> いうように感じるのです。
>男は…感じる
>の間があきすぎ。

While Peter lived, the tortured man felt that he was a lion in a cage into which a
sparrow had come.

ピーターが生きている限り、この悩める男はこのように感じるのでした。自分はオリに閉じ込められた
ライオンで、そこにツバメが一匹まぎれこんできたというように。

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15.ばらすって殺すみたい(笑) 

>> ほんの少しの間とはいえ、フックがウェンディを魅了したなんてことをばらす
>> のは告げ口っぽいかもしれません。
>ばらす?

Perhaps it is tell-tale to divulge that for a moment Hook
entranced her,

ほんの少しの間とはいえ、フックがウェンディを魅了したと声を大きくしていう
のは告げ口っぽいかもしれません。

に修正します。
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16.汚れた訳?汚らわしい訳? それほどのものじゃないね。
> それを知るには、降りて行く他ありません。フックは、マントを静かに脱ぐと
> 地面に置きました。そして汚れた血がにじむほど強くくちびるをかみしめて、
> 木の中に足を踏み入れたのです。

and then biting his lips till a lewd blood stood on them,
汚れた血?

汚らわしい血に修正します。
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17.読点
>> かながらスキマがあったので、のぞくことができました。取っ手をさがしまし
>> たが、腹立たしいことに手が届かないほど、低い位置についています。
>腹立たしいことに、手が届かないほど低い位置についています。

修正します。
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18.おおまた2歩、大また2歩、大股2歩

>> ピーターはスリルを感じました。スリルを感じるのがなにより好きでしたから。
>> おおまた2歩でドアまで行きました。
>おおまた2歩?

In two strides he reached the door.

大また2歩に修正します。
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19.さあティンクの考えてることなんてわかりません? 

>> 羽はティンクを支えていられません、でも答えるためにピーターの肩に止まる
>> と、ピーターの鼻を軽くかみ、耳元でこうささやきました。「すっとっこ、ば
>> か」
>うーむ。
>この悪態はどういうニュアンスなんでしょうねえ。

Her wings would scarcely carry her now, but in reply she
alighted on his shoulder and gave his nose a loving bite. She
whispered in his ear "You silly ass," and then, tottering to her
chamber, lay down on the bed.

女の子とかこういう訳得意そう、いい訳があれば差し替えます。

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> インディアンみたいに進んで行くしかありません。でも都合がいいことにピ
> ーターは、それに熟練していたのでした。
>熟練していた?
There was no other course but to press forward in redskin
fashion, at which happily he was an adept [expert]

でも都合がいいことに、ピーターはその達人でした。

に修正します。
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20.そもそもタイガー・リリーなのに、どうしてティンカーベル(中点なし)かって問題もありますし、訳語の統一をはかります。

>> 殺に恐れをなして立ちすくんでいるみたいです。ピーターはコドモ達にタイガ
>> ー・リリーやティンカーベルから教わった森でのしきたりを教え込んでいたの
>> で、
>「タイガー・リリー」
>どこかに「タイガーリリー」があったような。
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2000/07/24 あやしい訳一覧(11-17章) 

解決策の訳文の協力求む。評価は前とおなじく、

A わからない、SOS
 あやしい、自信なし、もっといい訳あるはず
 センスなーーし

項番(章ごと) 評価 原文 指摘事項 解決策
11-1 B Of course it was only water, but it was out of a bottle, and
she always shook the bottle and counted the drops, which gave
it a certain medicinal quality.
 もちろん薬といってもただの水ですが、ボトルで作るのです。ウェンディはいつもボトルを振って、しずくを数えました。そうすると確かに薬と同じ効き目があるのです。 ボトルをふって、しずくを数える? 
どういうこと? 
 
13-1 the house under the
ground seemed to be but one more empty tenement in the void.
地下の家は、だれもいないまったくの空家みたいに思えました。 butが上手く訳出できていない?   
13-2 B Lest he should be taken alive, Hook always carried about his
person a dreadful drug, blended by himself of all the death-
dealing rings that had come into his possession.
生きながらとらわれの身にならないよう、フックは肌身はなさず毒薬をもっていました。自分の手に入った致死量にいたるもの全てを、自分自身で混ぜ合わせたのでした。 ringsをごまかしてる。指輪に毒薬をつめてたんだよねぇ。どうやって混ぜ合わせるのと関連するの?   
14-1 B a rakish-looking [speedy-looking]
craft foul to the hull,
スピードの出そうな船でしたが、隅から隅まで汚れきっていて to the fullだよなぁ?

2000/07/24武井さんより指摘いただきました。ありがとうございます。
>不明部分です.
>> 14-1
>> a rakish-looking [speedy-looking] craft foul to the hull,
>> スピードの出そうな船でした が、隅から隅まで汚れきって いて
>> to the fullだよなぁ? 
>hull には船体という意味があります(なので full のミススペルではありませ
>ん).

たしかにhullにはそういう意味があるんですが(一応辞書引いて知ってた、笑、ホントだってば)

 foul to the hull

ってどういう意味か全然わからなかったっす。ってまずスペルミスがどうか他の英文を当たって調べてみます。 

 
14-2 B Ofttimes he drew his sleeve across his
face, but there was no damming that trickle.
そんな時にはフックは袖で額をぬぐうのですが、流れ落ちる汗を押しとどめることはできないのです。 Offtimeだよね  
14-3 B Ah, envy not Hook.
えぇ、フックみたいじゃなかったら、どんなにうらやましいことでしょう。 うーん、こんな訳に悩まなかったらかなりうらやましいんだが...  
15-1 C the key the would free the
children of their manacles,
コドモ達にかけられていた手錠をはずす鍵です 2つ目のthe →thatかな
 
15-2 C They he realised
that he was doing it himself, and in a flash he understood the
situation.
they → then  
15-3 B And when they're writ upon your back -- ネコが背中をひっかきゃ rit upon your backでいいのかな?歌はいや  
15-4 B 'S'death and odds
fish
いったいぜんたい なんて訳せばいいの?  
15-5 A it was slouching in the playing fields
of long ago, or being sent up [to the headmaster] for good, or
watching the wall-game from a famous wall.
昔に運動場で前かがみに歩いたことや、ずっと校長のかわりをしたことや、あの有名なフェンスのところから、ウォールゲームをみたことを思い出していました。 send up toも、wall-gameも調査不足...早急にしらべよっと。  
16-1 B So long as mothers are like this their children will
take advantage of them; and they may lay to [bet on] that.
お母さんがこんな風だから、コドモ達はそれを利用するのです。コドモ達はお母さんがそうすることに賭けさえするかもしれません。 なんか最初から最後までさえないなぁ  
16-2 16-17章でいくつかのoffがofになっている。  
11-2 C ... 2000/07/24結城さんより指摘いただきました。ありがとうございます。...と...どちらがいいんでしょ。横書きということも考えたりして、迷いどころ。  
12-1 C 水から遠く離れるのは、命取りですから。 2000/07/24結城さんより指摘いただきました。ありがとうございます。
>…ですから。
>という文末が少し気になります。
>(複数箇所)
 
12-2 C Fell from their eyes then the film through which
they had looked at victory. No more would they torture at the
stake.
目の前での処刑を夢見ていたうすい膜はびりびりと引裂かれ、火あぶりで拷問するどころではありません。 2000/07/24結城さんより指摘いただきました。ありがとうございます。
>膜?
 
11-3 >> 口を揃えると、「ええ」とウェンディも2人をだき抱えてるようにして言っ
>> たのでした。
2000/07/24結城さん、武井さんより指摘いただきました。ありがとうございます。
>
抱きかかえるよう、だき抱えるよう
 

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2000/07/24 ピーターパン 11-17章

バリ, J. M.『ピーターパン』 html版 
原題:PETER PAN
訳者:katokt
公開:11-17章 2000/07/24 (V0.90)
コメント:残り章一挙公開、思い切ったでしょう? でもピーターパンの翻訳はじめて、一番多くもらった要望は全部読みたいだったんだよね。かなり多くのあやしい部分はあるけれど、捨てることをあらかじめ予定しておけ。どうせいやでも捨てることになるんだから なんて割り切って、かなりの訳したてほやほやを出してみました。ということで、これでオワリというよりは、むしろハジマリ。あやしい訳の整理&用語の統一等をふくめて、全部の完成版を作る予定。まあ完全なものに興味がある方は、ぜひプロジェクト杉田玄白の正式参加テキストの要件をみたすという条件で、いろいろ指摘してください、完全版へ向けてちゃくちゃくと作業します。そのうちまたToDoリストでも作ろうっと。基本的には前のリストと変わってないんだけどね(笑)。読みやすいようにWebでの0.9版は、早々に作ります。

11章 ウェンディのお話

「よく聞いてなさいね」ウェンディはそう言って、一心にお話をはじめました。マイケルがウェンディの足元で他の7人の男の子達はベッドにはいっています。
「むかし1人の男の人が...」

「僕は、男の人より女の人がいいなぁ」とカーリー。

「僕は白いねずみだったらなぁと思ったけど」とニブス。

「静かに」お母さんが注意しました。「女の人も1人いました。そして...」

「ねぇ、ママ」双子の片割れが言いました。「女の人も1人いるって意味だよね? 女の人は死んでないよね、ちがう?」

「そうですよ、死んでませんとも」

「死んでなくて、死ぬほどうれしいよ」トゥートルズは言いました。「ジョン、君もうれしい?」

「もちろんぼくもうれしいさ」

「うれしい? ニブス」

「すごくね」

「うれしい? 双子」

「2人ともうれしいよ」

「あらあら」ウェンディはため息をつきました。

「そこ、静かにするんだ」ピーターが命令しました。ピーターにとってみればどんなにひどい話だろうと、とにかくウェンディがきちんと話せるようにしなくてはと心に決めていたのでした。

「男の人の名前は、」ウェンディは続けました。「ダーリング氏といいました。女の人の名前はダーリング夫人でした」

「知ってるよ」ジョンがそう言ったので、他のコドモ達はムッとしました。

「僕も知ってるような気がするな」マイケルはかなり自信がなさそうに言いました。

「2人は結婚していました」ウェンディが説明しました。「2人の間には、何がいたと思います?」

「白いネズミ達だね」ニブスは、思いついたように言いました。

「違うわ」

「うーんめちゃくちゃ難しいよ」トゥートルズは、その話をそらで暗記していたんですが、そう言いました。

「静かに、トゥートルズ。2人には3人の子孫がいたのよ」

「子孫って?」

「そうねぇ、あなたもそうよ、双子さん」

「聞いたかい、ジョン? ぼくも子孫」

「子孫っていうのは単にコドモってことだよ」ジョンは言いました。

「あら、あら」ウェンディはため息をつきました。「さてその3人の子供には、忠実なナナという名前の乳母がいました。でもダーリング氏は、ナナに腹をたてて、庭に縛り付けてしまったのでした。それで3人のコドモ達は、飛び出してきたのです」

「とっても素敵な話だね」ニブスは言いました。

「3人は、迷子のコドモ達がいるネバーランドまで飛んでいったのでした」ウェンディは続けます。

「あー、ウェンディ」トゥートルズは大きな声でいいました。「迷子のコドモ達の1人は、トゥートルズって名前?」

「そうよ、もちろん」

「僕もお話に入ってる、ばんざーい、僕もお話に入ってるよ、ニブス」

「うるさいわよ。さあみんなに考えて欲しいのは、3人のコドモ達が飛んでいった後の不幸なお父さん、お母さんの気持ちよ」

「あぁ!」みんなはうめきました、ただその感情をあまりわかっていたわけではなかったのですが。

「空っぽの3つのベッドを考えてもみて!」

「あぁ!」

「なんて悲しいんだろう」双子の片割れは、さもうれしそうに言いました。

「どうやったらハッピーエンドになるのか、皆目見当もつかないや」双子のもう1人の片割れは言いました。「どう思う、ニブス?」

「ぼくもとっても心配だな」

「もしお母さんの愛情がどれほど大きなものか知っているのなら、」ウェンディはみんなに勝ち誇ったように言いました。「恐がることはないわ」ウェンディは、とうとうピーターが嫌いな場所にさしかかっていました。

「ぼくは、お母さんの愛情が大好き」トゥートルズは、まくらでニブスをぶちながら言いました。「きみは、おかあさんの愛情が好き、ニブス?」

「もちろん僕も」ぶちかえしながら、ニブスは言いました。

「わかってるでしょうけど」ウェンディは悦にいって言いました。「このお話のヒロインは、お母さんがコドモ達が飛んで帰って来れるように、ずーっとあの窓を開けっ放しにしているだろうってことを知ってたのよ。それで何年もとどまって、楽しい時間を過ごしたのでした」

「そもそも家に帰ったの?」

ウェンディは、渾身の力をふりしぼって答えました。「さあ、未来をちょっとのぞいてみましょう」そしてみんな体をねじって、未来をのぞきこみやすくしました。「月日が流れ、ロンドン駅に降り立った、あのいくつなのかわからない優雅な女性はだれでしょう?」

「ウェンディ、だれなの?」ニブスはこれっぽっちも知らないかのように興奮して叫びました。

「まさか、そう。いいえ、それは、美しいウェンディなのでした」

「おぉー!」

「ウェンディに付き添っている、成人した2人の気品のあるかっぷくのいい姿はだれでしょう? ジョンとマイケルじゃありませんか? そうです、その通り!」

「おぉー!」

「“みてごらん、おまえたち”ウェンディを上の方を指差して言っています。“まだ窓は開いたままよ。あぁ、今こそわたしたちのお母さんの愛を信じるすばらしい気持ちが報われるのよ”そして、ママとパパの所に飛んでかえるのでした。この幸せなシーンは、とても語ることはできません、ここで幕をひきましょう」

お話はざっとこんな感じで、話の上手いウェンディと同じくらいみんなも喜びました。だって、お話はまさにありそうなことでしたから。コドモというものは、世の中でもっとも残酷なものみたいに逃げ出すことがあります。コドモとは、えてしてそういうものです。だからこそコドモは、魅力的でもあるんです。コドモには全く自分勝手な時があり、そしてみんなの注目を集めたいときは、おしりをぶたれるどころか誉めてもらえると信じこんで、胸をはって戻ってきたりするのです。

みんなはお母さんの愛というものを強く信じていたので、もう少しくらい家を空けても大丈夫と思っていたのです。

でもここには1人だけ、もっと物事をよくわかっているコドモがいました。そしてウェンディが話し終わると、力のないうめき声をあげたのです。

「どうしたの、ピーター?」ウェンディはピーターのそばにかけよって、具合が悪いのかしらと思って、声をかけました。ピーターのことを気づかって胸の下のほうをさわって、
「どこが痛むの、ピーター?」と言いました。

「そういう痛みじゃないんだ」ピーターは低い声でつぶやきました。

「どんな痛みなの?」

「ウェンディ、お母さんってものについて、君はまちがってるよ」

みんなはビックリしてピーターのまわりに集まり、ピーターの動揺がみんなを不安にさせました。いままで隠していたことを、ピーターは率直に口にしたのでした。

「むかし、」ピーターは言いました。「お母さんは僕のために窓を開けたままでいてくれると、君たちみたいに思ってたもんだよ。だから僕は、何ヶ月も何ヶ月も何ヶ月も家から離れていたんだ。そしてその後、家に飛んで帰ったよ。でも窓は固く閉まってて、お母さんは僕のことなんかすっかり忘れちゃって、僕のベッドには別の小さな男の子が寝てたんだ」

これが本当のことかどうかわかりませんが、少なくともピーターにとってはホントのことでした。みんなはビックリしました。

「お母さんって本当にそういうものなの?」

「そうさ」

これがおかあさんについての本当のことですって、ピーターったらなんていやなやつでしょう。

まだ物事は落ち着いて判断した方がよいのですが、コドモというのは、降参すると決めたらそれはそれはすばやいものです。「ウェンディ、帰ろうよ」とジョンとマイケルが口を揃えると、「ええ」とウェンディも2人をだき抱えてるようにして言ったのでした。

「今夜じゃないよね」迷子のコドモ達はまごつきながら言いました。でもコドモ達は心の中では、お母さんなしでもけっこう上手くやっていけるし、お母さんの方こそコドモなしでは上手くやっていけないものだってことを知っているのでした。

「すぐ帰るわ」ウェンディはすっかり怒って答えました。恐ろしい考えに取りつかれているのです。「たぶん今ごろお母さんは、私たちのことを半分あきらめて、死んでしまったと思っているかも」と考えていたのでした。

そんな恐ろしい考えに取りつかれていたので、ウェンディはピーターがどんな気持ちでいるか察するのは忘れてしまって、きっぱりとこう言ったのでした。「ピーター、いろいろ必要な準備をしてくださいな」

「君がそうしたいならね」ピーターは、まるで木の実でも取ってくださいなんて頼まれたようにそっけなく答えました。

2人の間には、別れるのは寂しいという雰囲気はみじんもうかがえませんでした。ウェンディが別れてもなんとも思わないなら、僕も平気なところをみせてやろうっていうのがピーターでしたから。

ただもちろんピーターだって、とても気にはしていたのです。ただいつものことですが、なにもかもめちゃくちゃにするオトナ達のことをカンカンに怒っていました。そして自分の木の中にはいるとすぐに、わざと一秒に5回、短く早く息をしたのでした。ピーターがそうしたのは、ネバーランドにはこんなことわざがあったからです。「息をするたびオトナがひとり死ぬ」ピーターは復讐心にめらめら燃えて、できる限り早くオトナを全員殺しちゃおうとしたのでした。

そしてピーターがインディアン達に必要な指示を与えて、家に帰ってみると、そこではピーターが留守にしている間に、卑劣な場面が繰り広げられていました。ウェンディがいなくなるなんてとパニックに陥った迷子の男の子たちは、ウェンディにほとんど脅すように詰め寄っていたのでした。

「ウェンディが来る前より悲惨だ」みんなは言いました。

「ウェンディを行かせやしない」

「とらわれの身にしちゃおう」

「うん、くさりでつなぐんだ」

窮地に追い込まれたウェンディには、だれを頼りにすればいいのか自然とわかりました。

「トゥートルズ、おねがい」

奇妙なことじゃないですか? ウェンディはトゥートルズにお願いしたんです。みんなの中でいちばんおばかさんなトゥートルズに。

でもトゥートルズは立派にこれにこたえました。おろかなところはみじんも見せず、威厳をもってこう言ったのでした。

「ぼくはもちろんトゥートルズだ。だれもぼくのことなんか気にしない。でも、最初にウェンディに英国紳士らしからぬふるまいをするやつには、たっぷり血をみせてやるぞ」

トゥートルズは短剣を抜き、そのときのトゥートルズはすごい勢いでした。他の男の子たちは当惑して後ずさりしました。その時ピーターが帰ってきたのですが、すぐに男の子たちは、ピーターからはなんの助けも期待できないことが分かりました。ピーターは女の子が嫌がるのに無理やりネバーランドにとどめるようなことはしませんから。

「ウェンディ」ピーターは、大またで行ったり来たりして言いました。「インディアン達に森を案内するように頼んでおいた。飛ぶのはとても疲れるだろうし」

「ありがとう、ピーター」

「それから」ピーターは続けました。ハイという返事になれきっている短くするどい声です。「ティンカーベルが海を渡るのを案内してくれる。ティンクを起こすんだ、ニブス」

ニブスは、返事を聞くまで2回もノックしなければなりませんでした。ティンクときたら、ホントのところはベットに座っていて聞き耳をたてていたのでしたが、
「だれ? ずうずうしいったらありゃしない、向こうに行って」なんて大声で言うのでした。

「起きなきゃだめだよ、ティンク」ニブスは声をかけました。「で、ウェンディを旅につれて行くんだよ」

もちろんティンクは、ウェンディが行ってしまういう事を聞いて飛びあがるほどうれしかったのです。ただウェンディの案内なんて絶対ごめんだと心に決めていましたので、まだにくたらしい言葉つかいで行かないと答えて、また寝たふりをしました。

「ティンクがいうには、行きたくないだって!」ニブスは、こんな反抗的なティンクにびっくりして声をあげました。その時ピーターは、つかつかとティンクの寝室にむかって歩み寄りました。

「ティンク」ピーターはわめきました。「起きてすぐに着替えないなら、僕がカーテンを開けて、ネグリジェ姿のおまえをみんなで見ることになるぞ」

ティンクは、こう言われて床から飛びあがるほどびっくりして「誰が起きないなんていいました?」と答えました。

その間ずっと、男の子たちはとてもさびしそうに、ジョンとマイケルをつれて旅にでるウェンディを見つめていました。みんなは、すっかり意気消沈しています。ただウェンディがいなくなってしまうからというだけではありません。ウェンディが自分達は招かれていない、なにか楽しそうな場所へ出発するんだと思っていたからです。いつものことですが、みんな目新しいものには心を惹きつけられるのです。

ウェンディは、みんながもっと気高い気持ちでいるのだと思い哀れに感じました。

「ねぇみんな」ウェンディは言いました。「もしみんなが一緒に来たければ、パパとママに頼んでみんなを養子にしてもらうようにできると思うわ」

このお招きは特にピーターに向けてのものでしたが、男の子たちはみんな自分こそが招かれたのだと考えて、すぐに大喜びで飛びあがりました。

「でもパパとママは、僕らをやっかいものだなんて思わないかな?」ニブスは、飛びあがりながらもそう聞きました。

「あら、そんなことないわ」ウェンディは、急いでよく考えて答えました。「客間にいくつかベッドをおけばいいことだし。第一木曜日には、ベッドはついたての後ろにかくせばいいわ」

「ピーター、行ってもいい?」みんなはお願いするように言いました。みんなは、自分たちが行けばピーターも一緒に来るのが当然と思っていました。ただホントのところ、ピーターのことは全然気にしていないのです。コドモなんてものは、目新しいものが現われると自分の一番大事なものさえ見捨ててしまうものですから。

「いいよ」ピーターは、無理に笑顔を作って答えました。すると男の子たちは、すぐに身の回りのものを取りに駆けだしました。

「じゃあ、ピーター」ウェンディは、これで大丈夫と思って言いました。「出発する前にお薬をあげなきゃね」ウェンディはみんなに薬を飲ませるのが大好きで、間違いなく飲ませすぎです。もちろん薬といってもただの水ですが、ボトルで作るのです。ウェンディはいつもボトルを振って、しずくを数えました。そうすると確かに薬と同じ効き目があるのです。でもこの時ばかりはウェンディは、ピーターに薬をあげることはできませんでした。というのも薬の準備をしているまさにその時、ウェンディの気分を落ち込ませるピーターの表情をふっとみたからでした。

「ピーター、身の回りのものを準備しないと」ウェンディは身をふるわせながら言いました。

「いや」ピーターは無関心をよそおって、こう答えました。「僕は、君とは一緒にいかないよ、ウェンディ」

「行きましょう、ピーター」

「行かないよ」

別にウェンディが行ってもへっちゃらさと見せびらかしたいばかりに、ピーターは部屋の中を楽しそうに、心はこもっていませんが笛を吹いたり、あちこちスキップしたりしました。ウェンディは、ピーターの後を走って追いかけまわさなければなりません。かなりみっともないことでした。

「お母さんを見つけましょうよ」ウェンディはなだめるように言いました。

ピーターに本当にお母さんがいたとしても、もう今ではお母さんがいなくて寂しいと思うことはまずありません。お母さんなんて、いない方がよっぽどいいことばかりです。お母さんのことにいろいろ思いをめぐらせてみましたが、思い出すのは悪いことばかりでした。

「だめ、だめ」ピーターは、ウェンディにバカにしたように言いました。「お母さんは、僕にもう大きすぎるっていうよ。僕はいつまでもコドモでいて、楽しくやりたいだけなんだ」

「でも、ピーター...」

「だめったら、だめ」

みんなにも言わなければなりません。
「ピーターは行かないって」

ピーターが、行かないですって! みんなは、ぽかんとピーターを見つめました。みんなは背中に棒を担ぎ、棒には荷物がくくりつけてありました。最初にみんなが思ったのは、ピーターが行かないなら、たぶん気が変わってみんなも行かせてくれないだろうってことでした。

でもピーターは、とてもプライドが高かったので“行かせない”とは言わず、憂鬱そうな声でこう言っただけでした。「もしお母さんなんてものが見つかったら、気に入るといいね」

このひどく皮肉な言葉は、みんなの居心地を悪くしました。男の子たちのほとんどは、行こうかどうか迷いはじめたようです。つまるところ、みんなの顔はこう言ってるのでした。そもそも行きたいなんて、マヌケのすることかな? 

「さあ」ピーターは言いました。「騒いだり泣いたりせずに、さよならだ。ウェンディ」そして快活に手を出しました。まるで自分はなにか大事なことをやらなくちゃならないので、みんなにはすぐにでも行ってもらわなきゃといった風です。

ウェンディは、ピーターと握手するほかありませんでした。ピーターったら指ぬきの方がいいやというそぶりさえ見せません。

「ちゃんとフランネルの下着をかえるのを忘れないでね、ピーター?」ウェンディは、ピーターのことをぐずぐず考えながら言いました。ウェンディは、いつもフランネルの下着のことにはとってもうるさいのでした。

「うん」

「薬も飲むのよ?」

「うん」

それで全部に思えました。そして気まずい沈黙が訪れました。でもピーターは人前で取り乱すようなことはしないので「準備はいいか、ティンカーベル」と大声をだしました。

「はい、はい」

「さあ道案内するんだ」

ティンクは手近な木をさっと登ったので、誰も後に続けませんでした。と、まさにそのとき、海賊たちがインディアン達に恐ろしい攻撃を仕掛けたのです。地上では、みんな物音一つしていませんでしたが、悲鳴と鉄のぶつかる音が空気をつんざいたのです。地下では、みんな死んだように静かです。みんなの口は開きっぱなしで、ウェンディは両膝をつきながらも、両腕をピーターの方に伸ばしました。みんなの両腕がピーターの方へと伸びました。まるでみんなが突然ピーターの方へと吹き飛ばされたかのようです。みんなは、無言でピーターに見捨てないでと頼んでいたのでした。ピーターはといえば、剣をひしとつかみました。ピーターは、その剣でバーベキューを殺したと思い込んでいました。そしてピーターの目には、闘争心がめらめらと燃えていました。

12章 さらわれたコドモたち

海賊の襲撃は、まったく驚くべきもので、無法者のフックが卑怯な手をつかったのは間違いありません。なぜならこれほどインディアン達を驚かすなんて、白人の考えつくことではないからです。

未開の地の戦いでも不文律で、攻撃するのはインディアンと相場が決まっていて、種族に特有のずる賢さで、夜明け直前に攻撃します。夜明け直前には、白人の勇気は潮がひくようになくなっていることをインディアンは知っていますから。一方白人たちは、向こうの方の起伏のある土地の一番高い所にそまつな柵を作り、その一番低いところには小川が流れています。水から遠く離れるのは、命取りですから。そこで白人たちは猛攻撃をいまかと待ちうけるのでした。戦いの経験のないものは、拳銃を握りしめ小枝の上をうろうろ歩き回っていますが、古株たちは夜明け直前までぐっすり寝ています。長いやみ夜の間ずっと、インディアンの斥候たちは、草の間を葉っぱ一枚動かすことなく、へびみたいに身をくねらせていくのです。彼らの通った後は、モグラが砂に潜るのと同じくらいしずかにやぶが元通りになります。斥候たちが、コヨーテの遠吠えそっくりの真似をする時以外は、物音ひとつしません。遠吠えには他の勇者達が答えます。そしてインディアン達のなかには、本物のコヨーテ以上に上手く遠吠えをするものもいました。そもそも、コヨーテはほえるのがあんまり上手くありませんから。冷えこむ夜が過ぎていき、初めてそんな時をすごす臆病者の白人にとっては、長い間どきどきするのはとても落ち着かないことですが、鍛えられた古株にとってみれば、身の毛のよだつ遠吠えも、もっとぞっとさせるような静けさでさえ、夜が明けていくことを知らせてくれるものに過ぎません。

これこそがいつものやり方だってことは、フックにとっても先刻承知でしたから、あえてそれを無視したのは、単に知らなかったからなんて言い訳は通りません。

ピカニニ族はフックの道義心を信じて疑わなかったので、その夜の行動はフックのものとは全くといっていいほど対照的でした。ピカニニ族は、種族の評判に劣らぬ用意周到ぶりを発揮しました。この鋭敏な感覚は、文明人にとっては脅威でもあり、憂鬱のもとでもあるのですが、その感覚でインディアン達は、海賊たちの1人でも乾いた小枝の1本を踏みつけた瞬間に、海賊が島に上陸したことを知るのです。そして信じられないほどすぐさまコヨーテの遠吠えを始めるのです。フックが軍勢を上陸させた場所と木の下のわが家の間はくまなく、モカシン(インディアンのかかとのない靴)を前後逆に履いたインディアンの勇者達が、ひそかに調べました。小川が近くにある丘はたった一つしかありません。よってフックには選択の余地はないわけで、そこに陣をかまえて夜明け直前まで待機するにちがいないのです。このように抜け目のない手際の良さでなにもかもを計画し、インディアン達のほとんどは体に毛布をまきつけています。そして彼らにとっては男の中の男といった落ち着いた態度でコドモ達の家の真上に身を潜め、白人たちを皆殺しにする冷酷な瞬間を待ちうけているのでした。

目はかっと開いているのですが、インディアン達は夜明けにフックをこの上ない拷問にかける夢を見ています。そんな疑うことをしらない未開人たちは、裏切り者のフックに見つかってしまうのでした。全てが終わった後、虐殺を逃れたいく人かの斥候による説明では、薄暗い明かりでフックの目に丘がはっきり見えていたのは確かでしたが、そこで休むそぶりさえ見せなかったとのことです。おめおめと攻撃を待つなんてことは、最初から最後までフックのずる賢い頭には、露ほども思い浮かばなかったようです。フックは夜明けまで待つことすらせず、ただただ戦ってやるという一心で猛攻撃をかけたのでした。あわてふためいた斥候たちに何ができたでしょうか、さしもの歴戦の斥候たちでもこんな戦法は初めてだったので、どうすることもできず、フックの後をつけましたが、見つかることは避けられず、哀れなコヨーテの遠吠えをあげたのでした。

勇敢なタイガーリリーのまわりは、1ダースもの最強の勇者が取り囲んでいました。裏切り者の海賊たちが急襲してくるのが、突然彼らの目に入りました。目の前での処刑を夢見ていたうすい膜はびりびりと引裂かれ、火あぶりで拷問するどころではありません。自分たちこそが、今や死後の楽園にいるのです。自身でもよく承知していました。あとはただ先祖の名に恥じぬようにふるまうだけです。その時でさえ、もしあたふたしてすぐに立ちあがったなら、むざむざ踏みにじられないように守りを固める時間はあったでしょう。でもそうすることは、部族の伝統で固く禁じられています。気高いインディアンは、決して白人の前では驚きの表情を見せないものだと部族の本には書かれているのです。だから海賊たちが突然現われたのは、インディアン達にとっても恐ろしいことだったでしょうが、まるで敵を招待したかのように微動だにせず、しばらくじっとしていたのでした。それから雄々しく伝統に従い、武器をつかみました。ときの声があたりを引裂いたのですが、いかんせん遅すぎました。

闘いというよりは虐殺がどのように行われたかを書くのは、わたしたちの役目ではありません。ピカニニ族の勇敢な戦士たちの多くは、惨殺されました。でも彼らとて反撃しないまま、死んだわけではありません。やせた狼の男は、アルフ・マンソンを倒しました。マンソンは、カリブ海をこれ以上荒らしまわることもないでしょう。殺された他の海賊たちの中には、ジョージ・スカリー、チャールズ・ターキーそしてアルザスのフォガッティーがいました。ターキーは獰猛なヒョウの男のトマホークで殺されて、獰猛なヒョウの男は、タイガーリリーと部族のわずかな生き残りとともに海賊たちが取り囲む中を切り開き、ついには逃げ出したのでした。

この場合でのフックの戦術がどれくらい非難されるものかは、あくまで歴史家の決めることです。もし丘で決められた時間まで待機していたら、フックと手下どもはたぶん全員切り刻まれたことでしょう。フックをさばくには、その点を考え合わせるのがフェアーというものです。たぶんフックがやるべきだったのは、新しい戦法を使うつもりであることを前もってインディアン達に知らせておくことだったかもしれません。ただもしそうしていたら、相手を驚かせる効果はなくなって、フックの戦術は役には立たなかったでしょう。だから問題は、全てを考えあわせると、なかなか難しいものなのです。少なくとも、このような大胆な計画をたてた知恵とそれを実行に移した恐ろしい才能には、しぶしぶながらでも拍手をおくらずにはいられません。

この大勝利をフック船長はどう感じているのだろう? フックの手下どもそれこそが知りたかったのでした。手下どもは荒々しく息をして、短剣の血をぬぐいながら、ただ右腕のフックが届かないところに集まって、この人並みはずれた男をさぐるような目つきでじっと見つめたのでした。フックの心にも得意な気持ちはあったに違いありませんが、表情にはいっさい表わしません。いつもの暗く寂しげな謎めいた表情で、フックは体だけではなく、心までも手下どもとは距離をおいて立っていました。

その夜の仕事も、これで終わりというわけではありません。フックが皆殺しにしたいとやってきた目的は、インディアンではありません。インディアンは、はちみつを採ろうとする時に、あぶり出される蜂みたいなものです。フックの目的はピーターパン、そうピーターパンとウェンディとその一団で、もちろんピーターパンが一番の目的なのはいうまでもありません。

ピーターはあんなに小さな男の子なのに、どうしていい大人のフックがこんなにも憎むのか不思議に思われるかもしれません。たしかにピーターが、フックの腕をワニへ放り投げたのは事実です。ただ、このためにワニがいつも跡をつけねらうので、命をますます脅かされるようになったことだけでは、これほどまでに情け容赦ない敵意にみちた復讐心の説明にはなりません。本当のところはこうです。ピーターには、どこかこの海賊の船長をかっかっとさせるところがあったのでした。それは勇気でもないし、惹きつけられる外見でもなければ、えーと、遠まわしに言うのはやめましょう。わたしたちはそれが何かよく知ってるわけですから、言ってしまいましょう。それはピーターの生意気なところでした。

それこそがフックの気にさわるのです。それが右腕の鉄の鉤をぴくぴくさせ、夜には耳元でブーンと音をたてる虫のように眠りをじゃまするのでした。ピーターが生きている限り、この悩める男はこのように感じるのでした。自分はオリに閉じ込められたライオンで、そこにツバメが一匹まぎれこんできたというように。

今や問題は、どうやってフックが木を降りて行くかということでした。あるいはどうやって手下どもを降ろすかといってもいいかもしれません。フックはぎらぎらした目を手下どもに走らせ、一番やせてるのはだれか探りました。手下どもは不安そうに身をむずむずさせています。フックときたら自分たちを棒で木に詰め込みかねないことを知っていましたから。

その間、男の子たちはどうなったでしょう? わたしたちが見たのは、男の子たちが最初の武器がかちあうチャリンという音で、まるで石の像みたいに固まってしまったところまででした。みんな口が開いたままで、助けてという風にピーターの方に手を伸ばした姿です。そして今、男の子たちの様子をみてみると、口は閉じてますし手は両脇に下ろしています。荒々しい一陣の風のように、大混乱は起きた時とおなじくらい突然に収まりました。ただ男の子たちは、通りすぎて行く間に自分たちの運命も決まったことを知っていました。

どっちが勝ったんだ?

海賊たちは木の入り口で熱心に耳をすませて、コドモ達一人一人の質問、そして特にピーターの答えを聞いていました。

「インディアン達が勝ったら、太鼓をうちならすよ。太鼓がいつも勝利のしるしなんだ」

スメーはすでに太鼓を見つけていて、今はその上に座っていました。「この太鼓の音を聞くことは、二度とねぇやな」とつぶやきましたが、もちろん聞きとれないぐらい小さな声です。なにしろ静かにしろって命令されましたから。スメーが驚いたことに、フックは太鼓を打ち鳴らすように合図をして、そしてスメーにもその命令の恐ろしいほどのずる賢さがのみこめてきました。たぶんこの頭のまわらない男が、これほどフックを尊敬したこともなかったでしょう。

2回、スメーは太鼓を打ち鳴らし、叩く手を止めると、舌なめずりをするように聞き耳をたてました。

「太鼓だ、インディアンが勝ったんだ!」悪党たちはピーターのさけぶ声を聞きました。

不運が待ち構えてるとも知らす、コドモ達は歓声をあげ、その声は地上にいる悪いやつらには、甘美な音楽の調べのようです。そしてすぐにコドモ達は、ピーターに向かってもう一度さようならと繰り返したのでした。さようならの意味は海賊たちには分かりませんが、敵がいまにも木を登ってくるんだというさもしい喜びで一杯だったので、他の考えは全部そっちのけでした。海賊たちはお互いににやにや笑って、手をこすり合わせます。すばやく静かにフックが命令を下しました。一人一本の木について、その他の者は2ヤード置きに一列に並べと。

13章 妖精を信じます? 

恐ろしいことはさっさと片付けましょう。最初に木から頭を出したのは、カーリーでした。木から出るとセッコの腕に抱えられ、スメーに投げ渡され、スターキー、ビルジュークス、ヌードラーに次から次へとリレーされ、黒い海賊つまりフックの足元にほうり投げられました。男の子たちは全員こんな風に、木から情け容赦なく引っこ抜かれました。そして何人かが同時に宙を舞って、それはまるで手から手へと放り投げられる荷物みたいでした。

最後にやってきたウェンディの扱いは違います。フックは、もったいぶった丁寧さで帽子をひょいと持ち上げると手を差し出して、他の男の子たちがさるわぐつをかまされてる所までエスコートしてきました。フックはこんな風に振舞い、それはとても威厳のある態度だったので、ウェンディは声もあげられないくらいうっとりしてしまいました。なんといっても小さい女の子でしたから。

ほんの少しの間とはいえ、フックがウェンディを魅了したと声を大きくしていうのは告げ口っぽいかもしれません。でもこのウェンディのちょっとした失敗が奇妙な結果をもたらしたので、ウェンディについてのお話を続けることにしましょう。もしウェンディが乱暴にフックの手を振り払ったなら(わたしたちは、彼女のためにもそう書けたらどんなによかったでしょう)、他の男の子たちみたいに空中に放り投げられたでしょう。そうすればたぶんフックは、コドモ達が縛られたその場所にいなかったでしょう。縛られた場所にいなければ、スライトリーの秘密を暴くこともありません。そしてその秘密が暴かれなければ、つまるところフックがピーターの生命をおびやかすこともなかったことでしょう。

男の子たちは飛んで逃げないように、両ひざが両耳につくほど体を折り曲げて縛られました。コドモ達をくくるために、フックは1本のロープを9等分しました。スライトリーの番までは上手くいったんですが、スライトリーときたら、まるで荷物の周りにひもをかけると結び目を作る分が足りなくて、いらいらさせる荷物みたいでした。海賊たちはカンカンに怒って、ちょうど荷物をそうするみたいにスライトリーを蹴っ飛ばしました(正しくは、ひものほうを蹴っ飛ばすべきなんですけど)。そして奇妙なことに海賊たちの暴力を制したのは、フックでした。悪意に満ちた勝利の笑みで、フックのくちびるはゆがんでいます。フックの手下どもが汗だくになっている間、というのもかわいそうなスライトリーはある所でぎゅっとしばると他の所がふくれるのでした。フックの興味を引いたのは、スライトリーの外見上の問題ではなく、もっと深いところの問題でした。結果ではなく、原因をさぐっており、フックの勝ち誇った様子からはその原因がわかったみたいでした。スライトリーはフックが自分の秘密を暴いたことを知り、すっかり真っ青になりました。その秘密とはこういうことです。普通の人でも押し込むのに棒が必要な木なのに、こんなにふくれた男の子が入れるはずがないではありませんか。かわいそうなスライトリー、今やコドモ達みんなの中でも一番惨めな気持ちでいます。ピーターのことが心配でうろたえており、とにかく自分がしたことを深く反省したのでした。暑いときに狂ったように水を飲んだので、水ぶくれして今の寸法になってしまったのです。そしてスライトリーは自分の木にあうようにダイエットするかわりに、他の男の子たちには内緒で、自分にあうように木を削ったのでした。

フックが考えるには、ピーターをついに自分の思うようにするにはこれで十分でした。でも心の奥底に抱いた悪だくみを口には一言も出さず、ただ捕虜を船まで運ぶように、そして自分を一人にするようにと命令しました。

どうやって運んだものでしょう? コドモ達はロープで縛り上げられていますから、樽みたいに丘を転がしてもいいところですが、道のりのほとんどは沼地でした。再びフックのひらめきが問題を解決します。小さい家につめこんで運べるはずだと指示しました。コドモ達は家に放り込まれ、4人の頑丈な海賊が家を肩に担いで、他のものは後に続きます。そして嫌な気分にさせる海賊の歌を歌いながら、奇妙な行列が森へと出発しました。コドモ達で泣いているものがいたかはわかりません。でももし泣いていても、歌声がかき消してしまったでしょう。しかし小さな家が森に姿を消すときに、まるでフックをバカにするように、煙突から勇敢なほんのひとすじの煙を噴き出しました。

ただフックがそれを見たのは、ピーターにとっては良くないことでした。それは、フックの怒りが煮えたぎる胸の内に残っていたかもしれない哀れみの気持ちの一滴をもすっかり蒸発させました。

すっかりふけていく夕闇のなかで、一人きりのフックが最初にしたことは、スライトリーの木へ忍び寄ることでした。そして自分が通れるかどうか確かめ、それから長い間深く考えこみました。縁起の悪い帽子を芝生の上におき、そよ風がフックの髪をさわやかに吹きぬけていきました。邪悪な考えに染まっていたにもかかわらず、フックの青い目ときたらタマキビ貝のような落ち着いた色合いでした。地下の家からなにか物音がしないかと聞き耳をたてましたが、地上と同じように地下も全く静かなものでした。地下の家は、だれもいないまったくの空家みたいに思えました。あいつは寝てるんだろうか、それともスライトリーの木の下で手に短剣を握り締めて待ち構えているのだろうか? 

それを知るには、降りて行く他ありません。フックは、マントを静かに脱ぐと地面に置きました。そして汚らわしい血がにじむほど強くくちびるをかみしめて、木の中に足を踏み入れたのです。フックは勇敢な男ですが、しばらくそこにとどまって、ろうそくのろうのように流れ落ちる額の汗をぬぐわなければなりません。それから静かに未知の世界に足を踏み入れました。

フックは労せず穴の下までたどり着き、ふたたび静かに立ちつくします。激しく息をして、ほとんど息も絶え絶えといったようすでした。フックの目が薄暗い明かりに慣れてくると、地下の家のいろいろなモノの形がはっきりしてきました。フックの目は、たったひとつのもの、長い間捜し求め、とうとう見つけた大きなベッドに釘付けです。ベッドの上では、ピーターがぐっすり寝ていました。

地上で演じられていた悲劇には全く気づかず、ピーターは子供たちが行ってしまったあともしばらく愉快そうに笛を吹いていました。別に一人きりでも全然気にならないや、と自分に言い聞かせるみたいに笛を吹いたのです。それからウェンディをがっかりさせるために、薬は飲まないことにしました。あとウェンディをもっといらいらさせるために、ベッドの上布団をかけずに横になりました。ウェンディは、いつもみんなを上布団の中に押し込んだものでした。みんなは知らないでしょうけど、夜になって寒くならないとも限らないからです。それからピーターは、泣きそうになりましたが、その代わりに笑ったら、どんなにウェンディが腹をたてるかと考えついたので、なまいきそうに笑って、笑いながら眠りに落ちました。

時々、しばしばというわけではありませんが、ピーターは夢をみます。その夢は他の男の子の夢と比べると、苦痛に満ちたものでした。ピーターは夢の中でおいおい泣きますが、何時間も夢からさめないのです。わたしが思うに、その夢こそがピーターが存在する謎と関係があるのでしょう。そんな時には、ウェンディがピーターをベッドから起こします。そして自分のひざの上で、ウェンディ独特のやさしいやり方でピーターを落ち着かせます。そしてピーターが落ち着いてくると、すっかり目を覚ます前にベッドにもどすのでした。だからピーターは、ウェンディが彼にしてくれた恥ずかしいことは全く知らずにすんだのでした。ただ、今回はピーターは夢を見るひまもなく、すぐに眠りに落ちました。片腕をベッドの端から垂らし、片足は立てひざで、口には笑いのあとがただよい、口が開いたままで真珠のような歯がみえていました。

フックは、この無防備なピーターを見つけたのです。フックは木の根元に立ちつくし、部屋の向こうにいる敵に目をやりました。哀れみの情がフックの暗い心を押しとどめなかったでしょうか? フックは根っからの悪人というわけではありません。フックは花をそして美しい音楽を愛していました(花に関してはそう聞きましたし、フック自身、正真正銘のハープシコード奏者だったのです)。そして、正直に言えば、その場の幸せそうな雰囲気は、フックの心を深く揺り動かしました。心の中の良い部分が勝利をおさめ、しぶしぶながら木を登ろうとしたのでした。ただ一つ、それを押しとどめたものがありました。

フックを押しとどめたのは、寝てる時でも生意気なピーターの姿でした。口をあけて、手を垂らして、たてひざで、なまいきを姿で表すとしたらこうなるというぐらいのものです。全部がそろっているなんて、無礼な態度にうるさい人の目に入らないことを願うばかりです。そんな態度が、フックの心を非情なものにしました。もしフックの体が怒りのあまりいくつもの破片にばらばらになっても、そのひとつひとつがばらばらになったことなんて気にせずに、寝ているピーターに飛びかかったことでしょう。

ただ一つのランプの明かりがベッドをぼんやり照らし、フックは暗闇に立ちつくしていました。静かに最初の一歩を踏み出すと、障害物にぶつかりました。スライトリーの木のドアです。そのドアにはわずかながらスキマがあったので、のぞくことができました。取っ手をさがしましたが、腹立たしいことに、手が届かないほど低い位置についています。怒りのあまり頭がくらくらして、ピーターの顔と姿がいよいよいらいらさせるように目に映るようです。フックはドアをガタガタさせると、体ごとドアにぶつかりました。フックの宿敵は、結局逃げおおせたのでしょうか?

あれはなんだ? フックの燃えるような赤い目に、ピーターの薬がすぐ手に届く棚の上にあるのが映りました。フックはすぐにそれが何であるかがわかり、寝ているやつの命運が自分の手中にあることを悟ったのでした。

生きながらとらわれの身にならないよう、フックは肌身はなさず毒薬をもっていました。自分の手に入った致死量にいたるもの全てを、自分自身で混ぜ合わせたのでした。フックが黄色い液体に煮詰めた毒薬は、科学的にも不明なもので、たぶん存在するものの中で一番の猛毒だったでしょう。

これを5滴ピーターのコップに垂らしました。手は震えましたが、恥ずかしさのためというよりは喜びのあまりです。毒薬を垂らしたとき、寝ているやつの方は見ませんでした。それも同情のあまり心が痛むからというよりは、単に毒薬をこぼさないようにといった理由からです。それから満足していけにえにじっくり目をやると、きびすをかえし、手探りでやっとのことで木を登りました。木の上から姿をあらわしたフックは、まるで悪魔の霊が住んでる穴から姿をあらわしたかのようでした。しゃれて斜めに帽子をかぶると、マントをはおり、夜から姿を隠すようにマントの端を前でおさえました。夜の闇のなかでもフックがひときわ暗くて、なにやらつぶやきながら木々の間に姿を消しました。

ピーターはぐっすり寝ていました。明かりが燃え尽きて消え、部屋は真っ暗になりました。でもピーターは目を覚ましません。ワニの時刻によれば、10時にはなっていたでしょう。ピーターはなにかに起こされて、突然ベッドに座りなおしました。ピーターを起こしたのは、ピーターの木のドアを静かに慎重に叩く音でした。

静かにそして慎重に、でも静まりかえっていたので不吉な感じがしました。ピーターは、短剣を握り締めるまであたりをさぐり、それから口を開きました。

「だれだ?」

しばらく答えがありません、それから再びノックが響きました。

「だれだい?」

答えはありません。

ピーターはスリルを感じました。スリルを感じるのがなにより好きでしたから。大また2歩でドアまで行きました。スライトリーのドアとは違って、ピーターのドアには隙間はありませんから、向こうは見えません。もちろんノックしている相手にもピーターの姿は見えませんでした。

「口をきかない限り入れないよ」ピーターは叫びました。

それからとうとう訪問者は口を開きました。鈴がひびくような美しい声でした。

「入れてちょうだい、ピーター」

ティンクだったので急いでドアを開けてやると、ティンクは興奮して飛びこんできて、その顔は紅潮しており、着てるものときたら泥だらけでした。

「何事だい?」

「わかりゃしないでしょうね!」といって、三回であててごらんなさいなんて言いました。「話すんだ!」ピーターが声を荒げると、ティンク文法的にはめちゃくちゃで、手品師が口からだすリボンのようにとりとめなく延々と、ウェンディと男の子たちがつかまったてんまつを話したのでした。

聞いていて、ピーターの心は上下に波打ちました。ウェンディが縛られて、海賊船に乗せられてるだって。あんなに全てがきちんとしているのが好きなウェンディが! 

「助けなきゃ!」ピーターは叫んで武器を手にしました。武器を手にして、ふとウェンディを喜ばせることができると思いつきました。薬をのめばいいんです。

ピーターの手は、運命を決めるコップを握りしめました。

「だめ!」ティンカーベルは悲鳴をあげました。ティンクは、フックが森を駆け抜けている時に自分がやったことをつぶやいている声を聞いていたのです。

「どうしたんだい?」

「毒が入っているのよ」

「毒だって? 一体誰が入れるんだい?」

「フックよ」

「バカ言うな、どうやってフックがここまで降りてくるんだ?」

あぁ、ティンカーベルにはどうやって降りてきたかは説明できませんでした。スライトリーの木に隠された秘密までは知りませんでしたから。でもフックの言葉は確かでした。コップには毒がはいっているのです。

「だいたい、僕が寝てたとでもいうのかい」ピーターは自信満々に言いました。

ピーターがコップを持ち上げると、もうあれこれ言ってるひまはありません、行動するのみです。電光石火の動きでティンクはピーターのくちびるとコップの間に割り込むと、薬を全部飲みほしたのでした。

「なぜ、ティンク、わざわざ僕の薬を飲んだりするんだい?」

ティンクは答えません。すでに空中でよろめいていました。

「どうしたんだい?」ピーターは突然恐ろしくなって声を荒げました。

「毒なのよ、ピーター」ティンクはやさしく言いました。「私は死ぬわ」

「ティンク、僕を助けるために飲んだんだね」

「ええ」

「でもどうして、ティンク」

羽はティンクを支えていられません、でも答えるためにピーターの肩に止まると、ピーターの鼻を軽くかみ、耳元でこうささやきました。「すっとっこ、ばか」そしてよろよろ自分の部屋まで行くと、ベッドに倒れこみました。

ピーターが悲しみのあまりティンクの側でひざまずくと、小さな部屋の入り口はピーターの頭ですっかりふさがれてしまいました。刻一刻とティンクの光は力を失っていき、ピーターは光が消えた時がティンクも死ぬ時だとわかりました。ティンクはピーターの涙が大好きだったので、そのキレイな指を伸ばして、その上を涙が流れるままにしたのでした。

ティンクの声は力なく、最初なにを言っているのか分かりませんでした。でもやっと聞き取ったところでは、もしコドモ達が妖精がいることを信じてくれるなら、また元気になるかもしれない、と言っていました。

ピーターは両手を差し伸べました。ここにはコドモは一人もいません。でも夜だったので、ネバーランドの夢をみているかもしれないみんなに語りかけたのでした。ネバーランドの夢を見てるってことは、あなたが思うより、ずっとピーターの近くにいるものなのです。ねまきを着た男の子たち、女の子たち、木につるされたバスケットの中のすっぽんぽんのあかんぼうたちに語りかけたのです。

「信じるかい?」ピーターは大声でいいました。

ティンクはベッドに座りなおすと、きびきびといってもいいくらいの様子で運命に耳を傾けました。

ティンクの耳には「はい」という返事が聞こえたような気もしたのですが、確信はもてませんでした。

「どう?」ティンクは、ピーターにたずねました。

「もし信じてるなら、手をたたいて。ティンクを見殺しにしないで」ピーターはコドモ達に大声でいいました。

たくさんの拍手です。

何人かはしてません。

「しーっ」なんてひどいことまで言うコドモもいました。

拍手は突然なり止みました。まるで大勢の母親が、いったい何事かとばかりにコドモ部屋に駆けつけたみたいでした。でもティンクの命は救われました。最初に声が力を取り戻し、ベッドから跳ね起きると、いつもより一段とうきうきして小生意気そうに部屋をこうこうと照らしました。ティンクは、信じてるって拍手をしてくれたコドモ達への感謝の気持ちなんて全然なかったのですが、「しーっ」と言ったコドモ達へは何か仕返ししなきゃと思っていました。

「さあ、ウェンディを助けなきゃ!」

ピーターが木から地上へ出た時、曇り空に月が浮かんでいました。ピーターはベルトに武器をつけた以外には、ほとんど武器をもたずに、危険な旅へと出発しました。本当なら出発するような夜ではありません。ピーターは飛んで行きたい、つまり地面すれすれに飛んで、普通でないものを全て見ておきたかったのです。ただこんな明るくなったり暗くなったりする明かりのもとで低く飛べば、ピーターの影が木々にかかることになり、鳥たちをざわつかせ、警戒している敵にピーターがきたことを知らせてやるようなものです。

ピーターは、いまさらながらこの島の鳥たちにあんな変な名前をつけたことを後悔しました。おかげで鳥たちは全然人に慣れなくて、近づくことさえ難しいありさまです。

インディアンみたいに進んで行くしかありません。でも都合がいいことに、ピーターはその達人でした。でもどちらにいけばいいんのでしょうか? ピーターには、コドモ達が海賊船につれて行かれたと確信はできませんでした。少し降った雪が、足跡をすっかり消してしまいましたし、全ての生き物が死んでしまったように、島中がしーんと静まり返っています。まるで大自然がさっきの大虐殺に恐れをなして立ちすくんでいるみたいです。ピーターはコドモ達にタイガー・リリーやティンカーベルから教わった森でのしきたりを教え込んでいたので、こんな危機迫った状況でも、コドモ達がそれを忘れているハズがないと思いました。例えばスライトリーは、チャンスを見つければ木にしるしをつけますし、カーリーは種を落として行くでしょう。ウェンディは、ここという場所にハンカチをおとしていくことでしょう。でもその目印をさがすためには、朝を待たなければなりません。ピーターに待てるわけがありません。天空に向かって呼びかけもしましたが、助けは得られませんでした。

ワニがわきを通り過ぎて行きましたが、他の生き物は、物音ひとつ、身動きひとつしませんでした。ピーターにはよくわかっていましたが、次の木の所で後からこっそり忍び寄られ、突然殺されるかもしれないのです。

ピーターは誓いを立てました。「今度こそ、フックか僕かだ」

そして蛇みたいに前進したかとおもえば、立ちあがって、月明かりの照らすなかを駆けぬけます。しーっとでもいうように指を一本くちびるにあて、いつでもこいといった具合に剣をぬいて。ピーターは、うれしくてうれしくてたまらないのでした。

14章 海賊船

海賊川の河口近く、キッド入り江に斜めに射しこむ緑の明かりひとすじが、横帆の2本マストの船、ジョリーロジャー号が停泊している位置を示しています。スピードの出そうな船でしたが、隅から隅まで汚れきっていて、横梁ときたら全部あれほうだいです。まるで羽がばらばらになって、地面に散らばっているかのようです。この船は、いろいろな海で人食い船として知れ渡り、見張りもいらないくらいでした。というのもその名をみんなが恐れて、停船しても誰も近づくものはありませんから。

船は夜のとばりにおおわれて、船からは岸までなにも聞こえてきません。そもそも音がほとんどしませんでしたし、スメーが座っているミシンのぶーんという音をのぞけば、耳に心地いいといえるような音は、一切しなかったのでした。いつも仕事熱心で、親切で、平凡中の平凡な男、哀れなスメーが、ミシンを動かしていました。わたしにはどうしてスメーがこんなにも哀れなのかわかりません。スメー自身が、哀れなほどそのことに無自覚だからでしょうか? でも屈強な男たちでさえ、スメーを見ると急いで目をそらしてしまうのです。夏の夕べには、一度ならずとフックの涙腺にふれ、涙を流させたことさえありました。こんなことにも、その他何でもですが、スメーときたら全く気づいてないのでした。

海賊たちの幾人かは、夜の毒気を吸い込み、手すりにもたれかかっていました。他のものは、樽のそばに横になって、サイコロ遊びやカード遊びにうつつをぬかしています。あの小さい家を担いできた4人は疲れ果て、甲板でうつぶせになって寝ています。その時でさえ、フックの腕の届かないところへと、あちらこちら上手に寝返りをうつのでした。もちろんフックが通りがかるとき、何気なく引っかかれたりしないようにです。

フックは物思いにふけって、甲板をうろうろしていました。全く想像もつかない男です。いまこそ、フックが勝利の味をかみしめている時でした。ピーターはもう永遠にフックを邪魔することはないし、他の男の子たちは全員船に囚われの身で、後は板を歩いてもらうばかりです。こんなにむごい仕打ちをしたのは、バーベキューをひざまづかせた日々以来のことでした。でもわたしたちがそうであるように、成功の順風で帆をふくらませるのは、どんなにむなしいものか知っていますから、フックが今甲板ですっかり落ち着きをなくして歩いていても、わたしたちは格別驚きやしません。

でもフックの足どりからは、うれしさはみじんも感じられません。その足どりはフック自身の暗い胸の内と同じ調子で、実のところフックは憂鬱な気分だったのでした。

フックは、静かな夜に船の甲板で深く考え込むと決まっていつもこういう風でした。なぜかといえば、フックは孤独だったからです。この謎めいた男は、手下どもに囲まれている時ほどいっそう孤独を感じるのでした。そもそも手下どもとは身分が違いすぎたのです。

フックというのは、本当の名前ではありません。たとえ今日でも、フックの本名を明かせば国中大騒ぎになることでしょう。行間を読む方なら既におわかりでしょうが、フックは名門のパブリックスクールの出身なのです。そしてそのときの習慣が、衣服に見られるようにきちんと身についています。もちろん習慣それ自体、衣服にまつわるものが多かったのですが。今もフックにとって腹立たしいのは、船を略奪した時と同じ服装で乗船していることだったりします。そしていまだに歩く時にはかたくなに、その学校独特の前かがみの姿勢なのでした。でもなによりもまずフックは、礼儀作法を重んじる心を持ちつづけていたのです。

礼儀作法! どんなにフックが堕落の道を歩んできたかもしれませんが、まだ礼儀作法がカンジンだってことは分かっていました。

フック自身の心の奥底から、さびついた門がたてるようなギーギーという音が聞こえてきます。門を通して厳しいトン・トン・トンといった、まるで眠れない夜に聞こえてくるハンマーのような音が響きました。「今日も礼儀正しかったか?」というのが、その永遠の問いかけでした。

「有名、有名、そのきらびやかなマガイモノはわしのものだ」フックは口にだして言いました。

「何事においてでも、有名になるということは礼儀にかなっているだろうか?」学校時代からのトン・トンといったフックの心の音が答えます。

「わしはバーベキューが恐れた唯一の男だぞ。バーベキューはフリントが恐れた男だし」

「バーベキュー、フリント、どの学寮出身だい?」辛らつな返事が返ってきます。

全てをよく考えてみると、もっとも気にかかるのはこういうことです。よい礼儀作法について考えなくてはいけないことそれ自体が、礼儀作法をわきまえてないことを意味するのでは?

フックの良心はこの問題にきりきりと苦しめられ、これこそ鉄のつめより鋭く心をえぐるつめでした。そのつめが心を痛めつけるとき、フックのろうのような顔から汗が滝のようにしたたり、上衣にしみをつけました。そんな時にはフックは袖で額をぬぐうのですが、流れ落ちる汗を押しとどめることはできないのです。

えぇ、フックみたいじゃなかったら、どんなにうらやましいことでしょう。

フックは、近いうちに破滅する予感を覚えました。まるでピーターの厳しい誓いが、船の上まで聞こえてきたかのようです。フックは、遺言をしたためたいような憂鬱な気分におそわれました、やがて遺言なんてしたためている時間はなくなるかもしれません。

「わしフックにとっていいのは、あまり野心をむき出しにしない方がいいということだ!」フックが一番落ち込んでいる時には、自分自身を第三者の目で見るのです。

「わしのことを好きになってくれる小さいコドモなんていやしない!」

奇妙にもフックは、こんなことに思いをめぐらせました。以前は、こんなことで思い悩むことはなかったのですが、たぶんミシンの音が、フックにそうさせたのでしょう。長い間、フックはスメーの方をじっとみながら、なにやら独り言を言いました。スメーは、コドモ達はみんな自分のことを恐がってると思いながら、一心不乱に縁取りをしているのです。

スメーを恐がる! よりによってスメーを! この夜船に乗っているコドモのうちで、すでにスメーを好きになっていないコドモは一人としていません。スメーはコドモ達にいろいろ怖がらせるようなことを言ってみたり、こぶしで殴ることはできなかったので、平手でコドモ達をぶってみたりしたのですが、そうすればするほどコドモ達はスメーになついて、マイケルときたらスメーの眼鏡をかけてみるありさまでした。

哀れなスメーに、コドモ達はおまえのことをかわいい! なんて思ってるぞとフックは言いたくてうずうずしましたが、言ってしまうのは無作法に思えたのでした。フックは、そのかわりにこの謎を頭で考えました。どうしてコドモ達は、スメーのことをかわいいなんて思うんだろう? 警察犬がそうするように問題を追求しました。フックには警察犬みたいなところがあったのです。もしスメーがかわいいと思われてるなら、どうしてそう思われるんだろう? 恐ろしい答えが突然心に浮かびました。「行儀作法をわきまえているから?」

意識しないでもあの甲板長のスメーは、行儀作法をわきまえている。それこそ礼儀作法を本当にわきまえているってことではないでしょうか?

イートン校の社交クラブ入るには、意識しなくても礼儀作法をわきまえていることこそ必要不可欠であることをフックは思い出しました。

怒りのおたけびとともにフックは、右腕のフックをスメーの頭におみまいしようと持ち上げました。ただ振り下ろしはしません。フックを思いとどまらせたのは、こう考えたからです。

「礼儀作法をわきまえているからという理由だけで、その男を引き裂くなんて、それこそなんだ?」

「礼儀作法をわきまえてない!」

フックは不幸のあまり、すっかり気落ちして、切花のようにポキンと前のめりに倒れました。

手下どもは、一時的にフックの気がふれたんだと思いましたが、鉄の規律がゆるみ、よっぱらってどんちゃん騒ぎをはじめる間もありませんでした。フックはまるでバケツで水をかけられたかのように、人間らしい弱々しいところを振り払い、すぐに立ちあがったのです。

「うるせぇ、おまえら、じゃなきゃいかりをぶちこむぞ」すると騒ぎはすぐにおさまりました。「ガキたちは、飛んでいかないようにつないであるんだろうな?」

「アイ、アイ」

「帆をあげるんだ」

哀れな囚われの身のコドモ達は、ウェンディを除いて船倉から引きずりだされ、フックの前に一列に整列させられました。しばらくフックは、コドモ達がそこにいるのに気づかないようでした。フックは楽にして、憂鬱なんてどこふく風といった様子で、ひどい歌を切れ切れにハミングしながら、一組のカードをもてあそんでいます。時々フックのハマキの火がかすかに顔を照らしました。

「さあ、ガキども」フックは手短にいいました。「今夜はおまえらの内、6人に板を歩いてもらおうか。2人はボーイにしてやる。ボーイになりたいのはどいつだ?」

「むやみにフックを怒らすんじゃありませんよ」船倉でウェンディによくこう言い含められていたので、トゥートルズは礼儀正しく一歩前に出ました。こんな男の下で働くなんてぞっとします。本能的に、ここにはいない人に責任をなすりつけておくのが一番ってことがわかっていたのでした。トゥートルズは、どちらかといえば頭の足りない子でしたが、お母さんというものは、いつでもよろこんでコドモ達のために犠牲になるということを知っていたのです。コドモはみんなお母さんがこういうものだということを知っていて、軽蔑しながら、いつも利用するのです。

だからトゥートルズもずる賢くこう説明しました。「おわかりでしょう、ぼくのおかあさんがぼくが海賊になるのをよろこばないと思うんですよ、きみのおかあさんはどうだい、スライトリー?」

トゥートルズは、スライトリーにウィンクしました。スライトリーも残念そうにこう言ったのでした。「僕も喜ばないと思う」まるでそうでなかったらよかったのにというように。「君のお母さんは、君らが海賊になるのを喜ぶかい、双子?」
「僕も喜ばないと思う」他の子と同じくらい賢く、双子のお兄さんがそういいました「ニブス 君の」

「無駄ぐちをたたくな」フックが怒鳴り、トゥートルズはすごすご引き下がりました。「おまえ」フックはジョンを指差して言いました。「おまえはちょこっと勇気がありそうじゃないか。海賊になりたいなんて思ったことはないか? どうだ?」

たしかにジョンは数学の宿題をやっているときに、時々そう思っていたことがあったのでした。そしてフックが自分を選んでくれたことにも感激して、おずおずとでしたがこう言いました。

「前に一度、赤手のジャックなんて呼ばれたらなんて思ってました」

「いい名前じゃないか。いいぞ、仲間になるならそう呼ぼう」

「どう思う? マイケル」とジョンがたずねると
「ぼくが仲間になったら、なんて呼んでくれる?」とマイケルもたずね返しました。

「黒ひげのジョー」

マイケルはもちろんこれが気に入って「どう思う? ジョン」とジョンに決めてもらいたそうです、でもジョンもマイケルに決めてもらいたいのでした。

「もちろんぼくらは、国王に敬意を表する臣民のままでしょうね?」ジョンがそうたずねると、
フックは口を閉じたまま、もごもごとこう答えました。「おまえは“国王を倒す”と誓わなきゃならんな」

たぶんここまでのジョンの態度は、誉められたものではなかったでしょうが、急にはきはきとした態度になって、
「じゃあ、お断り」とフックの前にある樽を叩いて、そう答えました。

「じゃあ、ぼくもおことわり」マイケルもそう答えました。

「イギリス国王万歳!」カーリーは金切り声でさけびました。

カンカンになった海賊たちは、その口の聞き方にコドモ達へ向かって殴りかかりましたし、フックはこう叫びました。「おまえらの運命は決まった。お母さんとやらをつれて来い、板の準備をするんだ」

彼らはほんの男の子でしたし、ジュークとセッコが死へ向かう板を用意するのをみて、顔が真っ青になりました。ただウェンディが連れてこられると、勇敢にみせかけようとしたのでした。

ウェンディが、海賊たちをどれほど軽蔑していたかは言葉では言い表せないほどです。男の子たちにしてみれば、海賊って職業には、少しは魅力的に思える点がありました。けれどウェンディが見たものといえば、何年もの間掃除もされたことのない船でした。指で“汚いブタ”と船の汚れた窓に書けるほどで、ウェンディは、すでに何箇所にもその言葉を書きました。でも男の子たちが、彼女の周りに集まってきた時には、もちろん男の子たちのことだけを考えていました。

「さあ、お嬢さん」フックはまるでシロップにつかって話しているかのようにこう言うのでした。「あなたには、コドモ達が板を歩くのを見てもらうことになるかな」

フックは立派な紳士ですけど、あんまり勢いこんで話したのでひだのある襟を汚してしまいました。そしてウェンディがそれを見ているのに突然気づきました。急いで隠そうとしましたが、遅すぎます。

「男の子たちは死ぬんですか?」ウェンディがまったく軽蔑を隠さずに、そう尋ねたので、フックはほとんど気絶しそうなほどでした。

「そうだ」フックは怒鳴るように言い、そしてうっとりとこう続けました。「みんな静かに、お母さんからコドモたちへの最後の一言だ」

こんな時でもウェンディは、立派なものでした。「これが私の最後の言葉です、息子たち」ウェンディは断固とした調子で言いました。「私はあなた達に本当のお母さんも望んでいる事を伝えたいと思います。それはこういうことです“息子が最後までイギリス紳士たること”」

海賊たちでさえ胸を打たれ、トゥートルズは興奮してこう叫びました「おかあさんの望むとおりにするよ。きみは、ニブス?」

「お母さんの望むとおりにするさ。君は、双子?」」
「お母さんの望むとおりに。ジョン、君」

「彼女を縛り上げろ!」フックが叫びました。
スメーがウェンディをマストに縛りつけました。「ねぇ、おまえさん」スメーはささやきました。「わしらのお母さんになるって約束するなら、わしが助けてやってもいいよ」

でもたとえスメーのいう事でも、ウェンディにはそんな約束をする気はさらさらありませんでした。「それならコドモなんて一人もいない方がずっとましだわ」ウェンディは軽蔑するようにそう言ったのでした。

ただ残念なことに、スメーがウェンディをマストに縛り上げる時にそれを見ている男の子は一人としていません。全員の目は、板に注がれています。あと最後の数歩を歩くだけです。もう胸を張って歩くどころの騒ぎじゃありません。考えることさえできずに、ただじっと板を見つめて震えているだけでした。

フックはコドモ達をみてほくそえみ、ウェンディの方へ一歩近づきました。男の子一人一人が板を歩くところを見せるべく、ウェンディの顔をこちらへ向けようとしたのです。ただフックはウェンディの所まで行きつくことはありませんでした。ウェンディの口から苦しみの一声を絞りだし、それを聞くこともありません。その代わりにある音を聞いたのでした。

それは、あのワニの恐ろしいチクタクという音でした。

みんなが、その音を聞きました。海賊たち、男の子たち、ウェンディ。そしてすぐさまみんなの頭は、ある方向を向きました。音が近づいてくる水際の方ではなく、フックの方です。みんなが、これから起こる事がフックにしか関係ないことを知っています。そして自分たちが舞台から降り、見物する側にまわった事を知ったのでした。

フックを襲った変化を見ると驚きを隠せません。まるで全ての関節に切りこみを入れられたように、どさりと倒れこんだのですから。

その音はだんだんと近づいてきます。そしてその音に先んじて恐ろしい考えが浮かびました。「ワニは船に乗り込もうとしてる!」

鉄の鉤はだらんとぶらさがり、まるで攻めてくる相手が欲しがっているのは鉤じゃないってことを知っているかのようでした。全くのひとりきりで取り残され、誰か他の人なら目を閉じたまま倒れていたでしょうが、フックの明晰な頭脳は働きを止めないのでした。頭脳の命ずるがままに、フックは甲板の上を腹ばいで膝をつかってできる限り音から遠ざかろうとしました。海賊たちは敬意を払って、さっとフックのために道をあけると、フックは船の手すりのところまでやってきて初めて口を開きました。

「わしを隠すんだ!」フックは恐怖におののいて叫びました。

海賊たちはみんなフックの周りに集まって、船に上がり込んで来るものから目をそむけていました。戦おうなんて夢にも思いません。運命ですから。

フックが隠れて男の子たちから見えなくなると、ようやく好奇心から男の子たちは手足が自由に動くようになり、ワニが登ってくるところを見るために船べりにかけつけました。それから男の子たちは、夜の中の夜でも一番ビックリしました。助けに登ってきたのはワニではありません。ピーターでした。

ピーターは男の子たちに、海賊たちを疑わせるような賞賛の声をあげないよう合図しました。そしてチクタクといい続けるのでした。

15章 今度こそ、フックか僕かだ

実際に起きた時にはしばらく気づかないものですが、わたしたちの人生には奇妙なことが起きるものです。例えば、どれくらいかはわかりませんが、そうですね、30分くらいでしょうか、耳が片方聞こえなくなっているのに突然気づくことがあります。ちょうどその夜ピーターに起こったことは、そういう類のことでした。最後にピーターを見た時、ピーターは指を1本立ててくちびるにあて、短剣を携えて島を駆け抜けていました。ワニが側を通って行くのを目にしましたが、別になにか変わっていることには気づきませんでした。ところが、そのうちピーターはワニがチクタク音を立ててないことに思い当たりました。初めのうちは不吉に思ったのですが、すぐに時計が止まったということがわかったのです。

突然一番身近な仲間を奪われたワニに同情するでもなく、ピーターはどうやったらこの異変を自分に有利に使えるか考えはじめました。そして自分がチクタク言うことにしたのです。そうすれば獣たちはピーターのことをワニだと思って、邪魔せずに通してくれると思ったのでした。ピーターのチクタクの真似はすばらしいものでしたが、一つ予期しない結果を生みました。ワニもその音を聞きつけて、ピーターの後をついてきたのです。失ったものを取り戻そうというのか、単に時計はまたチクタクと音を立て始めたと信じて、ピーターのことを友達だと思ってついてきたのか、はっきりしたことはわかりません。ただいったん信じたことは変えない奴隷みたいに、ワニがおろかな動物なのは確かなことです。

ピーターは、難なく岸までたどり着き、進みつづけました。ピーターの足が水の中に入っても全く気づきもしないように、水の中を進んでいきました。多くの動物はこんな風に陸から水の中へと入っていくものです。ただ私の知る限り、人間でこんな風なのは、ピーターを除いて他に思い当たりません。泳いでいてもピーターは、一つのことしか考えていませんでした「今度こそ、フックか僕かだ」。ピーターはあんまり長いことチクタクと言っていたので、意識しなくてもチクタクと言いつづけました。意識していたなら止めていたことでしょう。すばらしいアイデアですが、船に乗り込むのにチクタクと音を立てればいいなんてことは、ピーターに思いつくことではありませんから。

その反対に、ピーターはネズミのようにこっそりと船を登ろうと考えていたのでした。海賊たちがピーターを避け、フックときたら海賊たちの真ん中でワニの音を聞いたみたいに惨めな姿でいるのを見て、ピーターは驚きました。

ワニ! ピーターがそれを思い出した時には、チクタクという音を耳にしていました。最初その音が本当にワニから聞こえてくるのかと思って、すばやく振り返ったほどです。それから自分で音を立てていることに気づいて、すぐさま状況を把握して、「なんて僕は賢いんだろう!」とすぐに思ったのでした。そして男の子たちに拍手喝さいしないように合図したのです。

ちょうどそのときでした。エド・テイントという操舵係が船室から姿をあらわして、甲板をやってきました。さあ読者のみなさん、自分の時計でこれから起こることを計ってください。ピーターがぐさりとやり、ジョンがそのつきのない海賊の口を、死のうめき声がもれないように手で覆いました。海賊は前のめりに倒れ、4人の男の子がドスンと音を立てないように支えました。ピーターが合図をすると、死体は海へ放りこまれ、ドボンという音がして、その後静寂があたりを覆います。さてどれくらいかかったでしょうか?

「1人」(スライトリーがカウントを始めました。)

すぐさまにではありませんが、ピーターは全身つま先立っているようにこっそりと、客室に姿を消しました。海賊たちは一人ならず勇気をふるって、辺りをさぐりはじめています。海賊たちは、お互いの苦しい息遣いを耳にして、あのワニのチクタクという音が聞こえなくなったことが分かりました。

「行っちまいましたぜ、船長」スメーは眼鏡を拭きながらいいました。「すっかり静かなもんです」

ゆっくりとフックはひだのある襟から頭を出すと、とても注意深く耳をすませたので、チクタクという音のこだまでも聞こえたことでしょう。たしかに物音一つしません。フックは背筋を伸ばして、立ちあがりました。

「板渡り野郎にカンパイだ!」フックは恥知らずにもそうさけびました。自分の弱いところを男の子たちに見られたので前よりいっそう憎々しげです。フックは意地の悪い歌を歌い始めました。

「よーほー、よーほー、たっのしい板渡り
歩いてわたれば、板が途切れて、まっさかさま
海神さまがお待ちだよ!」

もっと捕虜を怖がらせるために、フックは威厳はなくなりますが、甲板を板に見たてて、歌いながら男の子たちにしかめ面をみせ踊りました。歌い終わると、叫びました。「板を渡る前にネコにさわりたいか?」

そのときになって、男の子たちはひざまづいて「やだ、やだ!」とあんまり哀れみを誘う声をあげたので、海賊たちはみんなほくそえみました。

「ネコをつかまえてこい、ジュークス」フックは命令しました。「船室にいるぞ」

船室ですって! ピーターがいるじゃありませんか! コドモ達はお互いに目を合わせました。

「アイ、アイ」ジュークスは二つ返事で、船室に入っていきます。コドモ達はジュークスの後を目で追います。ですから、フックが手下どもと一緒に歌い始めたことにとんと気づきませんでした。

「よーほー、よーほー、ネコは引っかく
尾っぽは九つ、ネコが背中をひっかきゃ...」

歌の最後はなんだったのか分かりません。というのも突然船室から恐ろしい悲鳴が聞こえてきて、歌をさえぎったからです。その悲鳴は船中に響き、そしてやみました。それから男の子たちには、先刻ご承知の時の声が聞こえてきました。ただ海賊たちには、その声は悲鳴より薄気味悪かったのでした。

「あれは何だ?」フックが尋ねます。

「2人」スライトリーはおごそかに数えました。

イタリア人のセッコはしばらく迷ったあと、船室に飛びこんでいくと、ふらふらになってよろめきながら外へ出てきました。

「ビル・ジュークスはどうした、おい、おまえ?」フックがのしかからんばかりに、非難がましく尋ねました。

「ヤツがどうしたかっていえば、死んでますぜ。さし殺されてるんで」セッコは呆然とした声で答えました。

「ビル・ジュークスが死んだって!」びっくりした海賊たちは叫びました。

「船室は穴ぼこみたいに真っ暗でさぁ」セッコはほとんどわけがわからないぐらいの早口でまくしたてました。「あそこには、なんだか恐ろしいものがありますぜ。時の声をだすものがいるんでぇ」

「セッコ」フックは、この世のものとは思われないほど無情な声で命令しました。「もどって、コケコッコーとなくやつを捕まえて来い」

セッコも勇者の中の勇者でしたが、船長の前でちぢこまって「だめです、だめっす」とさけびました。でもフックときたら鉤をひけらかし、満足げに目をつむってこう言いました。
「そんなに行きたいのか、セッコ?」

セッコは絶望したように最初に両腕を投げ出すようにして、歩いて行きました。歌を歌うものは一人もおらず、全員耳をすませています。そしてふたたび死の悲鳴と時の声です。

スライトリー以外に口をきくものはありません。「3人」

フックは、部下どもに集まれと手招きしました。「一体、全体」フックは怒鳴りました。「ええい、どいつがあのコケコッコーとなくやつをひっ捕らえてくるんだ?」

「セッコが出てくるまで待ちやしょう」スターキーはうめいて、他のものたちも賛同の声をあげました。

「おまえがやってくれるのか、スターキー」フックはふたたび満足げに言いました。

「絶対いやですぜ!」スターキーは叫びました。

「わしの右腕のフックは、おまえがやるって言ってるがな」フックはスターキーに逆らうように続けます。「右腕のフックの言うとおりにした方がよくはないか、スターキー?」

「あそこに入るくらいなら、トンズラしますぜ」スターキーは頑固にいいはり、そして再び船員たちの賛同の声があがりました。

「これは反乱なのか?」フックは前よりもっと楽しそうに尋ねました。「スターキーが首謀者というわけだ!」

「船長、お慈悲を!」スターキーは今や全身をぶるぶると震わせながら、泣き言をいう始末です。

「握手だ、スターキー」フックは鉤を差し出しました。

スターキーは周りに助けを求めましたが、みんなしらんぷりです。スターキーが下がれば、フックが一歩前にでて、フックの目には赤い炎が輝いています。絶望的な悲鳴をあげて、スターキーは長距離砲に跳びのると、自分からまっさかさまに海へ落ちて行きました。

「4人」スライトリーは言いました。

「さて」フックは丁寧に言いました。「まだ他に反乱を口にする紳士はいらっしゃるのかな?」ランタンをつかみ、鉤を振り上げ脅すようなそぶりで「自分であのコケコッコーとやらを引きずりだそう」というと、船室に飛び込みました。

「5人」どれほどスライトリーは、そう言いたかったことでしょう。スライトリーは、いつでもそう言えるようにくちびるをしめらせました。しかしフックはふらふらしながら船室から出てきたのでした。ランタンはもっていませんでしたが。

「なにかが明かりを吹き消しやがった」フックは少しおどおどしながら言いました。

「なにかだって!」マリンズは繰り返しました。

「セッコはどうなったんで」ヌードラーは聞くと、

「ジュークと一緒でおだぶつさ」フックはぶっきらぼうに答えました。

フックでさえ船室にもどりたがらない様子なので、全員不吉な予感を覚えました。そしてふたたび反乱の声がわきあがります。だいたい海賊なんてものは、迷信家と決まっていますから。コックソンは叫びました。「実際に数えるより一人余計に船にだれかが乗ってるのは、もっとも不吉なしるしだって聞いたことがあるぞ」

「おれもだ」マリンズはつぶやきました。「やつはいつも海賊船に最後にのりこむんだ。やつにはしっぽがありますかね、船長?」

他のものも、フックを意地悪く見つめながら口を開きました。「やつが来たときには、船の中で一番悪いやつにとりつくって聞いたぞ」

「やつには手にフックがありますかね、船長?」コックソンは無礼にもそう尋ねました。そして一人また一人と声をあげました。「この船はのろわれている」この時になって、コドモ達は歓声を押さえられませんでした。フックはほとんどコドモ達のことなんか忘れていたのですが、今、彼らの方へ振り向くフックの顔には再びかがやきがもどっているのでした。

「おい」フックは手下どもに呼びかけました。「これは1つの意見だ、聞いてくれ。船室のドアをあけて、やつらをそこへ叩きこむんだ。コケコッコーの野郎と命をかけて戦わせようじゃないか。コドモ達が勝てば、わしらにはバンバンザイだ。コケコッコー野郎が勝ったところで、わしらには別に損もなし」

これで最後になるのですが、手下どもはフックに感心し、その命令を忠実に実行しました。男の子たちは、戦うフリをしながら、船室におしこまれ、ドアが閉まりました。

「さあ、耳をすませ!」フックが号令をかけると、みんなが耳をすませます。しかしドアをまっすぐ見るものは、一人としていません。いや、ただ一人、ウェンディがいました。ウェンディは、この間中ずっとマストにくくられていたのです。ウェンディが待ち構えているのは、悲鳴でもなければ、時の声でもありません。ピーターが再び登場するのを待っていたのです。

ウェンディは、それほど待つ必要もありませんでした。船室の中で、ピーターは捜し求めていたものをようやく見つけたからです。コドモ達にかけられていた手錠をはずす鍵です。そしてみんなで手当たり次第の武器を身につけて、こっそり外へ出て行きました。ピーターは最初に隠れろと合図をして、ウェンディのなわを切ります。本当なら飛んでいってしまうのが一番カンタンでしたが、「今度こそ、フックか僕かだ」の誓いがそうはさせませんでした。ウェンディを自由にすると、ピーターは男の子たちと隠れているようにささやきました。そしてマストのウェンディがいた場所に自分の身を置いたのです。ウェンディの衣服を身にまとっていたので、ピーターとはわからないでしょう。そして大きく息をすうと、時の声をあげました。

海賊たちにしてみれば、その声は男の子たちが船室で皆殺しと思いますから、パニックです。フックは手下どもを落ち着かせようとしましたが、いままで犬みたいに扱ってきたので、フックに向かって歯をむく始末です。そして手下どもから目を離そうものなら、フックに飛びかからんばかりなのでした。

「おい」フックは必要に応じてアメとムチをつかおうと考え、一瞬もひるむことなくこう言いました。「考え抜いたんだが、不吉なやつがこの船にいるみたいだな」

「あぁ」手下どもはうなるように言いました。「鉤のついたやつがな」

「ちがうぞ、おい、違うんだ。女だ。海賊船に女が乗って幸運だったためしがねぇ。女さえいなくなりゃ、この船も安泰だ」

手下どものなかには、フリントがこう言ってたのを思い出すものもいましたから、「とにかくやってみよう」としぶしぶ言いました。

「海に投げこんじまえ」フックが命令し、手下どもは服に身を包んだ者へと駆け寄りました。

「おまえを助けてくれるやつは一人もいないね、お嬢さん」マリンズがひやかすように言うと

「一人いるよ」と答えが返ってきました。

「誰だ?」

「ピーターパン、復讐にもえる者!」という恐ろしい答えを口に出すや、ウェンディの服を脱ぎ捨てました。みんなは、仲間を船室で殺したのがだれなのかはっきり分かりました。フックは2回、口を開こうとしましたが、2回とも声がでません。こんなに恐ろしい目にあって、フックの荒々しい心も粉々になってしまったんだとわたしは思います。

ついにフックは怒鳴りました。「やつを切り刻め!」なんだが自信に欠けた声でした。

「海賊たちをやっつけろ!」ピーターの声が響き渡りました。時を置かず、武器のかち合う音が船中に響き渡りました。海賊たちはそのままかたまっていれば、確実に勝てたでしょう。ただ心の準備ができないままに戦いが始まったので、あちらこちらを駆けまわり、めいめい自分が最後に生き残った一人だと思いこんで、でたらめに武器を振り回しました。1対1なら海賊の方が強いですが、海賊ときたら防戦一方なので、男の子たちはペアを組み、獲物を選ぶことができたのです。悪党どものなかには海に飛び込むものまでいましたし、暗い所に隠れているものもいました。ところがスライトリーに見つけられてしまうのです。スライトリーは戦わずに、ランタンをもって駆けまわり、海賊たちの顔を照らします。すると海賊たちは目がくらんで、やすやすと他の男の子の刃のつゆと消えるのでした。聞こえる音といえば、武器のぶつかる音、時折の悲鳴、ドブンという水の音、そしてスライトリーの単調な数を数える声、5、6、7、8、9、10、11、ぐらいのものでした。

血に飢えた男の子たちの一団がフックを取り囲んだ時、わたしはこれで海賊たちも全滅だと思いました。ただフックときたら不死身の命でももっているかのようです。炎の輪を作り、その中には一歩たりとも男の子たちを踏み込ませないのでした。男の子たちは手下どもはやっつけましたが、この男は一人でも十分に男の子全員と戦えるみたいです。何度もフックに迫るのですが、何度もフックの剣で退けられてしまいます。右腕のフックで男の子を一人血祭りにあげると、その男の子を盾として使うのです。ちょうどその時、マリンズを叩き切った男の子が戦いに飛びこんできました。

「おまえらは剣をしまえ」飛びこんできた男の子は言いました。「こいつは僕がやる」

そして突然フックは、ピーターと向かいあうことになりました。他の男の子たちは引き下がり、2人の周りに輪を作ります。

しばらく2人は互いに見詰め合っていました。フックがわずかに体をふるわせると、ピーターはふてきな笑みをうかべました。

「ああ、パン」フックはついに口を開きました。「全部おまえがやったことなんだな」

「ああ、ジェームズフック」手厳しい答えです。「全部僕がやったんだ」

「小生意気で無礼なこわっぱめ、覚悟しろ」とフックが言えば、
「腹ぐろい不吉なやつ、かかってこい」とピーターも負けてはいません。

それ以上言葉を交わすことなく、2人は戦い始めました。しばらくは2人とも互角です。ピーターはすばらしい剣の使い手で、目にもとまらぬ速さで身をかわします。時折フェイントをかけて、フックの防御をかいくぐる一撃をくりだすのですが、腕が短すぎて効果がなく、剣を深く刺すことはできません。フックも剣の才能ではピーターに劣ってはいませんが、それほど手先はすばやいというわけではありません。とにかく攻めて、攻めることでピーターを退けていました。昔にリオのバーベキューから教わった必殺技でさっさと片付けようとするのです。ところがフックが驚いたことに、この必殺技が何度もかわされてしまうのでした。そこでフックは距離をつめて、鉄の鉤で最後の一撃を食らわそうとしましたが、これまでのところ空を切るだけでした。ところがピーターは体を曲げて鉤をかわすと、快心の一撃をおみまいし、フックの肋骨へと剣を突き刺しました。自分の血をみて、覚えてらっしゃるでしょうか、独特の血の色がフックの動揺をさそい、フックは剣を取り落としてしまいました。今やフックの命はピーターの手中です。

「今だ!」男の子たちは声をそろえました。ただピーターは堂々とした態度で、フックに剣を拾わせてやりました。フックはすぐに剣を拾いましたが、ピーターが礼儀正しかったので、くやしかったのです。

今までフックは、自分と戦っているのは悪魔かなんかだと思っていたのですが、疑念がふつふつと頭をもたげてきました。

「パン、いったい全体おまえは何者なんだ?」フックはかすれた声で聞きました。

「僕は若さであり、喜びだよ」ピーターはでたらめに答えました。「僕は産まれたての小鳥だよ」

もちろんなんの意味もありゃしません。でもそれこそがフックにとっては不幸なことに、あることの証明になるのでした。つまりピーターが自分が何者であるか全く知らないことこそが、正しい礼儀の極意なのです。

「もう一度打ち負かしてやる」フックはやけくそになって叫びました。

フックはまるでさおになったように手を振り回して戦っています。剣の一振り一振りが、邪魔するものはオトナだろうがコドモだろうがまっぷたつといった勢いでした。でもピーターは、まるでフックが剣を振り下ろす時に起こす風で危ない場所から外へと吹き飛ばされるかのように、フックの周りを蝶のように舞うのでした。ピーターは何度も突進し、フックを突き刺しました。

今やフックは戦ってはいますが、勝つ希望を失っています。情熱的な心も生きることに執着していませんし、ひとつ願い事があるだけでした。自分の体が永遠に冷たくなる前に、ピーターの行儀の悪いところを見たいという願い事です。

戦うことをあきらめると、フックは火薬庫に駆け込み、火をつけました。

「2分で」フックは叫びました。「船は木っ端微塵だ」

さあ今だ、フックは思いました。ピーターの本性とやらが見られるぞ。

でもピーターは砲弾を両手に抱えて火薬庫から出てくると、何事もなかったかのように海へほうりなげました。

フック自身はといえば、どんな本性をあらわにしたのでしょうか? フックに同情するわけではありませんが、進む道を誤りはしましたが、フックが最後には自分の民族の伝統に忠実だったことは喜んでいいことでしょう。ピーター以外の男の子たちはフックの周りを飛びまわりながら、フックのことをあざけり、ののしっています。フックは甲板をよろめきながら歩き、力なくコドモ達にぶつかりました。フックの心はすでにここにはありません。昔に運動場で前かがみに歩いたことや、ずっと校長のかわりをしたことや、あの有名なフェンスのところから、ウォールゲームをみたことを思い出していました。彼の靴はピカピカですし、チョッキも身につけていますし、ネクタイもくつしたもきちんとしていました。

ジェームズフック、英雄と呼べなくもない男、さらば

フックの最後は目前です。

ピーターが短剣で釣り合いをとりながら、少しづつ空中をフックの方へ近づいてくるのを見て、フックは海へ飛びこむために船のへりへとよじ登りました。フックはワニが待ち構えていることを知りません。というのも、ワニが待ち構えていることを知らせないように、わたしたちはわざとチクタクと音をたてる時計を止めたのです。わたしたちからの最後の敬意のしるしです。

フックは最後の勝利をひとつ手にしました。最後の勝利ですから、フックをねたむ必要もないでしょう。へりの上にたって、肩越しにピーターが空中を飛んでくるのをみて、フックはピーターに足を使うように身振りで示すと、ピーターは剣で突き刺す代わりに足でけったのでした。

とうとうフックの願い事はかないました。

「行儀わるいぞ」フックはほくそえむと、ワニの胃袋へと消えて行きました。

ジェームズフックの最後でした。

「17人」スライトリーは大声で歌うように言いました。でもスライトリーの数え方は、全然正確ではありません。15人はその夜に自分の罪を償いましたが、2人は岸まで泳ぎついたのです。スターキーはインディアン達につかまって、赤ん坊の子守りをさせられました。海賊としてはずいぶんな落ちぶれようです。そしてスメーといえば、あの眼鏡をかけ、世界中を放浪し、明日をも知れぬ生活を送っていました。俺こそが、ジェームズフックが恐れた唯一の男だなんていいながら。

ウェンディはもちろん、戦いには参加しないで立ちすくんでいましたが、ピーターをきらきら輝く目で見ていました。いま全てが終わって、またウェンディの出番がやってきたのです。ウェンディはみんなを公平にほめてやり、マイケルが一人殺した場所を自慢するとうれしさのあまり身震いをしました。そしてウェンディは、フックの船室へみんなを連れて行き、くぎでかかっている時計を指差しました。“1時半!”

時間が遅いことこそが、一番大事なことのようです。ウェンディは、すぐにピーター以外のみんなを海賊のベッドに寝かしつけました。ピーターはといえば甲板を行ったり来たりしていましたが、いつのまにか長距離砲の脇で眠りに落ちています。ピーターは、その夜にもいつも見る夢の一つを夢に見て、眠りながら声をあげて泣きました。そしてウェンディは、ピーターを固く抱きしめてやりました。

16章 帰宅

その朝にベルが3回鳴るころには、全員大忙しです。なぜなら船は大海を走っていましたから。甲板長のトゥートルズの姿も見てとれます。ロープの端をつかみ、噛みタバコをくちゃくちゃしています。全員膝までの海賊の服を着用し、スマートな髪型にして、ホンモノの水夫のように体をゆすりズボンを引きずりながら、ひっくり返ったりしています。

船長がだれかは言うまでもないでしょう。ニブスが一等航海士、ジョンがニ等航海士で、女性も一人乗っています。残りはただの水夫で、水夫部屋で寝起きしています。ピーターは、すでに操舵にかかりきりになっていましたが、両手で笛を作ってならし、みんなに短い挨拶をしました。おまえらが勇敢な仲間として義務を果たしてくれることを望んでるぞとか、おまえらがリオや黄金海岸のくずってことは承知してるがなとか、反抗しようものなら引き裂くぞといったものでした。脅しの効いた甲高い声での言葉は、水夫にはピンとくるものがあり、みんなはピーターを力いっぱい誉めそやすのでした。そしてするどくいくつかの命令が下り、船の向きをかえ、現実の世界へと向かいました。

船長のパンの計算によれば、船の海図を検討したところ、天候さえよければ6月21日にアゾレス諸島に到着し、その後は飛んだほうが時間の節約になるみたいです。

コドモ達の中には海賊船はやめたいというものもいましたし、海賊船のままがいいというものもいました。でも船長ときたら船員たちをイヌ同様に扱うので、敢えて一人一人でピーターに自分の意見を言うものはいません。絶対服従こそが生き残る方法でした。スライトリーなんか、水深を測れと命令された時に戸惑った顔をしただけで12回も鞭打たれたのですから。みんなが思うにはこうです。ピーターが海賊でないのは今だけウェンディをだますためで、フックのもっとも悪趣味な服をウェンディがいやいやながら作り変えて、新しい服ができたあかつきには、ピーターはさっと海賊へと変わってしまうに違いないと。後になって船員たちの間で噂になったことには、出来上がった服を着た最初の夜はピーターはフックの葉巻を口にくわえ、片手の親指以外をかたく握り締め、親指をそらして、脅すように鉤みたいに高く上げて、船室に長いこと座っていたらしいじゃありませんか。

でも船を見守る代わりに、わたしたちの3人の主人公が、ずっと昔に勝手に空を飛んで、飛び出した寂しい家に戻らなければなりません。こんなにずっと14番地の家を無視してきたなんて恥ずべきことかもしれませんが、ダーリング夫人がわたしたちに文句をいうことはないと思います。もしわたしたちがお母さんに深く同情して急いで帰ろうものなら、こう言った事でしょう「だめじゃないの、私がどうしたっていうの? もどってコドモ達を見ていてちょうだい」お母さんがこんな風だから、コドモ達はそれを利用するのです。コドモ達はお母さんがそうすることに賭けさえするかもしれません。

さて、わたしたちはおなじみのコドモ部屋を見てみることとしましょうか。そこにいるべき人たちは帰路についているわけですし。わたしたちはコドモ達に先回りして、ベッドがちゃんと干してあるか、そしてダーリング夫妻が晩に外出しないかを確かめに急いでコドモ部屋に向かうのです。わたしたちは、せいぜいが召使といったところでしょうか。一体全体どうしてコドモ達のベッドがちゃんと干してなければいけないんでしょう? 考えてもみてください、コドモ達はあんな恩知らずに急いでコドモ部屋から飛び立ったというのに。コドモ達が帰ってきて、パパとママがその週末は田舎に行っていると知っても、それが至極当然の扱いじゃありませんか? わたしたちがコドモたちと出会って以来、彼らには本当に必要だったいい道徳上の教訓になることでしょう。でもわたしたちがこんなことを仕組んだとしたら、ママは決してわたしたちのことを許してはくれないでしょう。

私がとてもしたいことは、本の作者がよくやるように、ママにコドモ達は帰ってきますよと教えてあげることです。特に来週の木曜日にここに帰ってくるでしょうと教えてあげたいです。ただこうすると、ウェンディとジョンとマイケルが楽しみにしている、みんなを驚かす計画は台無しになってしまうでしょう。コドモ達は、船でそういう計画をたてたのでした。ママの大喜び、パパの喜びの声、ナナの一番最初にコドモに抱きつくための大ジャンプ、ただ本当にコドモ達に用意されてなければならないのは、ムチ打ちの罰なんですが。前もってそのニュースを知らせて、計画を台無しにしたらどんなに楽しいことでしょう。そうすればコドモ達が堂々とドアから入っていっても、ママはウェンディにキスさえしないでしょうし、パパときたら「ちぇ、またコドモらか」なんてがみがみと文句をいうでしょう。でもわたしたちがこんなことをしても感謝もされませんし、ママについては今となれば、どのような人かは分かってきました。きっとママはコドモ達からささやかな喜びを奪ったことで、わたしたちをひどくしかりつけることでしょう。

「でも、奥さん、来週の木曜日までは10日もあります。だからわたしたちが事態がどうなっているかあなたに言えば、10日分不幸せな気持ちを味わわなくてすむわけですよね」

「ええ、大きな犠牲を払ってね! コドモ達から10分の喜びを奪うんですよ」

「まぁ、あなたがそうお考えになるなら!」
「あら、他にどう考えようがあるんです?」

えぇ、女の人はこういうものです。わたしはママのことをうんと誉めるつもりだったんですが、もう軽蔑しましたから、一言だって誉めるもんですか。そもそもママは、準備するようになんて言われる必要はなかったんです。というのも準備万端でしたから。ベッドはどれも干してありましたし、外出することもなく、ほらごらんなさい、窓も開けてあります。ママのためにわたしたちが出来ることといったら、船に戻ることぐらいみたいです。でも今ここにいるわけですし、とどまって見守ることにしましょう。わたしたちなんて、そんなものです、傍観者なんです。だれにも必要とされていません。なら、見守ってだれかが傷つく皮肉のひとつでもいうことにしましょう。

コドモ部屋の寝室で唯一目に見えて変わったことといえば、夜の9時から朝の6時までは、イヌ小屋がそこにはないことでした。コドモ達が飛んで行ってしまって、パパはすべて悪いのはナナをつないだ自分で、最初から最後までナナは自分より賢かったということが骨身にしみたのです。もちろん、今までみてきたように、パパはとても単純な人です。頭が薄くなっていることを除けば、子供といっても十分通用するくらいです。でも立派な正義感と自分が正しいと思ったことは貫き通すライオンのような勇気を持っていたので、コドモ達が飛んで行った後、よくよく考えて、四つんばいでイヌ小屋に入ったのでした。どんなにママが出てきて下さいと哀願しても、パパは寂しげなただ断固とした調子でこう答えるのでした。

「だめだ、わしみたいなものにはここで十分なんだ」

深い後悔の念にかられて、パパはコドモ達が帰ってくるまで、イヌ小屋を離れまいと誓いをたてました。もちろんこれはかわいそうなことです。でもパパは何であれ、やる時はやりすぎなければならないのでした。さもなければ、すぐにあきらめてしまいますから。かつてはあんなに自尊心の高かったジョージ・ダーリング氏ほど、今や謙虚な人はいません。パパは晩になるとイヌ小屋の中にすわって、コドモ達のことやコドモ達のかわいいしぐさのことを妻と話すのでした。

パパがナナを尊敬していることも、とても心を打ちます。パパはナナをイヌ小屋に入れようとはしません。ただし、その他のことでは全てパパはナナのいうことを信じて疑わないのでした。

毎朝パパの入ったイヌ小屋は、馬車に乗せられて会社まで運ばれます。そして同じようにして6時には帰宅します。もし以前はどんなに近所の人の噂を気にしていたかを思い出せば、パパの性格の強さのようなものがうかがえると思います。パパの一挙手一投足が今や注目の的でした。心の中では苦しんでいましたが、たとえ若者がイヌ小屋をばかにしても、平気なフリをするのです。そしてイ