

K.S.R.C ResearchReport FileNo.010013
ヤマト、ワープ2で発進!
1999/5/9 報告 報告者:Ken-chang
「ワープ」。すっかりお馴染みになったこの用語は、宇宙空間を超光速で移動するための方法である。日本においてこの用語を一般大衆化させたのは、あの「宇宙戦艦ヤマト」であろう。ヤマトはそれまでの日本のSFアニメに比べて、その設定や作画が格段に緻密になっている(今となっては、陳腐ではあるが)。
遊星爆弾による放射能汚染で地下都市に逃げ込んだ人類、はるか彼方からの救いの手、そして、はるか彼方まで1年以内で行って帰ってこなければならないという緊迫した設定、そのためのワープ航法、その動力を利用した必殺武器「波動砲」等々、数え上げればきりがない。
このヤマトに出てきた「ワープ」と「波動砲」はその後の日本のアニメーションに多大な影響を与えたのは明らかである。
特に「ワープ」はSFアニメのみならず、子供達の普段の会話にも出てくるほどメジャーになった。例えば、道などをショートカットする場合に「ワープ!」といった具合に使用しているのである。
「波動砲」はその後、兵器という概念から技という概念へと変化し、「ドラゴンボール」において「かめはめ波」という形態に進化した。この流れはそのままゲームの世界へと続いていき、各種ゲームキャラクターの必殺技となっている。
そのほかの設定においても、後のアニメへの影響は計り知れない。その代表的な設定は、ヒールな敵役の存在である。言うまでもなく「デスラー総統」のことだ。彼の存在は、単なる敵役の域をはるかに超えていた。主役である「古代進」と同じくらいのファンを獲得していたのだ。
このデスラー的な敵役はその後さらに発展していくことになる。「シャア・アズナブル」の誕生である。シャアの場合はデスラーの設定を一歩踏み込み、見るものに対し、感情移入までさせることに成功している。さて、そのヤマトであるが、1974年10月6日、我々の前に姿を現しているが、この年まで日本で第1期目の放送を行っていたアメリカのSFドラマがあった。その日本語タイトルを「宇宙大作戦」という。
「宇宙大作戦」。1969年〜1974年までの間に第1期の日本放送があったこのSFドラマの原題は「STAR TREK」(スタートレック)という。スタートレックはアメリカで1966年〜1969年まで全79話放送されている。この第1期のシリーズを「THE ORIGINAL SERIES:TOS」とよんでいる。
日本においてワープを一般大衆化したのはヤマトであるが、アメリカにおいてワープを一般大衆化したのはスタートレックであろう。
残念なことに、日本ではスタートレックの認知度、人気ともそんなに高くない。むしろ、TOS放送後の1977年に映画化された「スター・ウォーズ」の方が人気があるようだ。
しかし、ストーリー、世界観、科学的考察、いずれをとってもスタートレックの方が遙かに優れていると言い切れる。話を戻そう。
ヤマトとスタートレックであるが、実はこの両者は「ワープを大衆化した」こと以外にも共通点が多いのだ。いくつか挙げてみることにしよう。
・どちらも宇宙を舞台にした物語であること。
当たり前のようであるが、当時、宇宙を舞台とした本格SF作はまだ少なかったことを考えると、偶然ではないかもしれない。・遙か彼方(人類未到の地)まで航海する物語であること。
両者とも物語は太陽系内で収まっているわけではない。・人間ドラマであること。
両者とも戦闘シーンだけを売り物にした作品ではなく、人間ドラマを描いている。・作品の世界観が広がっていること。
単発のシリーズで終わりではなく、その世界観を広げた作品群を作っている。・再放送で人気に火がついたこと。
本放送中よりも再放送で人気が出ている。
ヤマトの放送時期を考えると、スタートレックの影響を受けていても不思議ではない。しかし、実はスタートレックもヤマトの影響を受けている可能性があるのだ。もちろんTOSではない。その後のシリーズである「THE NEXT GENERATION:TNG」ではそのものズバリの「STAR SHIP YAMATO」という宇宙船も登場している。また、映画「スタートレック3ミスター・スポックを探せ!」での、乗員によるエンタープライズ号奪取までのテンポはまるでヤマトを見ているようであった。古代や島、真田達がヤマトに乗り込むようであった。日本人にとってヤマトという名は特別のものがあることは確かである。ヤマト(大和)とは日本国の古い呼び名である。第2次世界大戦中に戦艦大和の命名もそういったところからである。その大和の名を受け継いだのが宇宙戦艦ヤマトなのである(このことは物語の中でも語られている)。
対する、エンタープライズ号であるが、現在のアメリカ海軍はその名を冠した船を保有している。また、スペースシャトルの1号機はまさにエンタープライズ号と命名された。これは偶然ではなく、スタートレックの影響であることがはっきりしている。
これらのことからも、ヤマトもエンタープライズもそれぞれの国民意識の中に深く根ざしていることが分かるだろう。ヤマトは興業収益を優先させすぎたことと、時代の移り変わりに対応しきれなかったことにより、失速し、終了した。純粋なヤマトシリーズ(古代が登場するシリーズ)としては、TVシリーズ・3シリーズ、テレフィーチャー・1作品、映画・4作品を残し終了した。
が、一つのアニメーションシリーズがこれほどまでにファンを育て、またその世界観を広げ、さらには後の他作品までに影響を与えたのは驚愕に値する。ヤマトがなければガンダムもエヴァンゲリオンも存在し得なかったことは明白である。スタートレックはTOS終了後、ファンの間で新シリーズの開始を願う声が高まっていった。第2シリーズを制作しようとしていたところに、「スターウォーズ」の成功によりTVシリーズではなく映画として制作されることとなった。TOSのオリジナルメンバーによる映画を6作品残している。それとは別に、TOSの時代からおよそ1世紀後の世界の物語としてTNGが制作されている。このTNGは1987年〜1994年までの実に7年間にもおよぶ壮大な物語となった。TNGメンバーとしての映画は3作品、さらに、スピンオフ番組として「DEEP SPACE NINE:DS9」「VOYAGER:VGR」という2シリーズを生んでいる。この2シリーズは現在も放送中である。
アメリカでは「スタートレックから全てを学んだ」と言う人もいるほど、スタートレックはそのストーリーの中で様々な問題提起や教訓、道徳を盛り込んでいる。これが、スタートレックの魅力の一つでもある。スタートレックを良く知らない、スターウォーズしか知らないという人は、是非スタートレックを観ることをお勧めする。映画でも、ビデオでも、衛星放送でも、地上波でも何でもかまわない。長期に渡るシリーズ作品のため、その世界観を全て理解するまでには時間がかかるかもしれないが、そんなに深く知らなくても充分楽しめる作品である。
まずは、1999年5月8日から公開されている映画「スタートレック・叛乱」から見始めてみてはどうだろうか。
<解説>
シャアの声を担当していたのは、池田秀一氏である。彼は、シャアの印象が強すぎて、他の役を演じることが困難になっているのではないだろうか。
これと同じことが、カーク艦長役のウイリアム・シャトナーやスポック役のレナード・ニモイにも言える。ウイリアム・シャトナーは「パトカー・アダム30」という警官ドラマにも出ていたが、私には、どうしてもカーク艦長にしか見えなかった。TOSの日本タイトルは「宇宙大作戦」と「宇宙パトロール」の2つがあった。これは、放送していたTV局が異なったためである。
日本でスタートレックというとTOSを思い浮かべる人の方が多いかもしれない。カーク艦長、ミスター・スポックは知っていてもピカード艦長、データは知らない人の何と多いことか。
これは、ひとえに放送形態の差としか考えられない。TOSも決して恵まれた放送時間帯ではなかったが、それでも地方局では再放送は頻繁にされていた(ヤマトの再放送回数には遙かにおよばないが)。
それに引き替え、TNGは深夜枠での放送か、衛星放送である。アメリカではスタートレックといえばTNGを指すようになっているようである。エピソード数を考えると当然であるが、日本におけるTNGの認知度の低さは嘆かわしい限りだ。スタートレックの熱烈なファンのことを「トレッキー」とか「トレッカー」と呼んでいる。
首都圏での現在のTNGの放送は、お台場にあるTV局が行っている。その放送時間帯は深夜3時5分頃からだ。頃というのは、この放送は突然の中止や変更がある。しかも、通常時の放送も、新聞のTV欄とは異なった時間に放送されることまである。これは、あまりにも視聴者を馬鹿にしている。それでも衛星放送の見れないものにとっては我慢するしかないのである。