

K.S.R.C ResearchReport FileNo.200036
21世紀へ向かってA
ROBODEX2000レポート
2000/11/25報告 報告者:シルビー
2000/11/26追加報告 報告者:シルビー
K.S.R.C特別レポート『21世紀へ向かって』。
その第2回目は『ROBODEX2000』のレポートだ。
ROBODEXは2000年11月24日から11月26日にかけての3日間、横浜のパシフィコ横浜で行われた、世界初のパートナー型ロボット博覧会である。
出展者は世界初の2足歩行ロボットを実現したホンダや、AIBOで一大旋風を巻き起こしたソニーをはじめ、おもちゃ業界各社、綜合警備保障等の企業と、ロボットの基礎研究を行っている大学の研究室である。
開催前日の11月23日には報道各社に対して事前に公開されたため、その日のニュースでも大きく報道されていた。
そのせいか、一般公開初日は平日にも関わらず非常にたくさんの人達が会場に訪れていた。
そのため、なんと入場制限が行われ、チケットを買っても会場に入るまで2時間待ちという、まるでディズニーランドのような状況であった。会場に訪れた人を見てみると、実に様々な人達が訪れていた。
オタク風の人はもちろん、カップル、親子連れ、老夫婦まで、ロボットに対する関心の高さが伺いしれた。このような異常なまでの関心の高さの原因は、前日のニュース報道での、ソニーやホンダの新型ロボットの影響が高いと思われる。
事実、今回の展示会ではその2点には常に人だかりが出来ていたのだ。それでは、まず、ソニーの新型ロボットから見ていくことにしよう。
ソニーは、AIBOによってエンターテイメントロボットという新しい分野を開拓した、ロボット業界から見れば後発に当たるメーカーである。
初代AIBOと2代目AIBO「2nd GENERATION」の人気はもちろんだが、やはり、11月21日に発表されたばかりの新型ロボット『SDR(SONY DREAM ROBOT)』に注目が集まっていた。
このSDRであるが、使用している部品や基礎技術はAIBOの応用となっている。CCDカメラ、メモリースティックなどがそうである。
が、AIBOとの決定的な違いはやはり2足歩行ということだろう。前日のニュース映像などでダンスする姿が放送されていたが、確かにそういった各部位を連携させてスムーズに動作させていた。
ダンスといっても、今流行のパラパラのようなダンスであるため、動作の中心は上半身となっている。見た目に派手ではあるが、実は、この上半身の動作制御は比較的簡単なのである。
それとは逆に、歩くといった動作をロボットに行わせようとした場合、非常に難しい問題に突き当たるのだ。
それが、バランス制御なのである。
ソニーはAIBOによって4本足でのバランス制御技術を培った。SDRにおいてもその技術は生きているようだ。
SDRは2本の足で、ちょこまかと器用に歩いてみせた。また、片足で立ってみせたり、ボールを蹴る等の動作も行っていた。
ボールを蹴るという動作は、人間が音声で「ボールを蹴りなさい」と命令すると、「ワカリマシタ」と音声で答え、ボールを自分で探し出し蹴るのである。
デモンストレーションでは、赤、青、黄色のボールを前に「赤いボールを蹴って」という命令に対し、黄色いボールを蹴るというハプニングもあった。しかも、その途中で動作が固まったため、係員が急いで顔の前に板のような物を出すと、再び動き出した。これは、CCDから入った情報をシステムが制御しきれなかったためハングアップし、板を顔の前に出したことでCCDからの情報がリセットされ、再び動き出したものと想像できる。
再起動後、ボールを蹴ったが狙ったところに飛ばず、頭を抱えるという動作までしてみせた。この辺の動作はエンターテイメントロボットならではだろう。このようにエンターテイメントという点ではかなりの完成度があるSDRであるが、システムハングをおこしたことからもう少し調整が必要なようだ。
また、2足歩行という観点からすると、SDRの歩行形態は動歩行を装った静歩行であるように見えた。
どういうことかというと、静歩行とは、歩行の各段階で重心を計算しつつ完全に重心移動が完了後、次の動作ステップに移る歩行形態である。例えば、右足を上げる時、重心を左足にかけてから右足を動かし、次に左足を動かす時は完全に右足が地に着き重心を移動し終わってから左足を動かす、といった具合だ。
動歩行というのは歩行の各段階で重心を完全にとるのではなく、歩行という一連の動作の中で重心を可変的に動かす歩行形態である。もちろん我々人間は動歩行である。そういった目でSDRを見ると、一見スムーズに歩いているようではあるが、完全に重心が移動してから次の動作に入っているようだ。ただ、その制御が非常に短い時間で行われているため、動歩行的な動作をしている。
こういった点では後述するホンダに一日の長があるのは明白だ。とは言え、ソニーが目指すエンターテイメントロボットという分野では、現時点でのSDRの動作で充分であろう。何よりも、その動作が可愛く、発売されればAIBO以上に人気が出ることは間違いないだろう。(SDRの動きはこちらをクリック)
続いてはホンダを見てみることにしよう。
ホンダといえば、言うまでもなく世界初の2足歩行ロボットを開発したメーカーであり、11月20日に新型2足歩行ロボット「ASIMO」を発表したばかりである。
今回のROBODEXでもASIMOは注目の的であった。ASIMOとはAdvanced Step in Innovative Mobilityの略で「新しい時代へ進化した革新的モビリティー」を意味する。
ホンダはP2で、20世紀中には無理であろうとあきらめられていた2足歩行を実現し、世界中をあっと言わせ、続くP3ではより小型化され人間に近づいた。
それが今回のASIMOでは身長120cm、重量43kgとより人間に近づき、遠くから見ると人間の子供が歩いているように思えるほどだ。(ASIMOまでの軌跡はこちらをクリック)
P2、P3の『P』とはプロトタイプを意味していたのだが、今回『P4』ではなくASIMOというネーミングをつけて発表してきたことで、ホンダは全世界に『ホンダではもう基礎研究は終わった』と宣言しているかのようにも受け取れる。
ASIMOの他に、P3もデモンストレーションを行ったが、階段を降りて出てきた。
TVでは何度も見ている光景だが、実際に自分の目でロボットが階段を歩いて降りてくる所を見ると、何とも言えない感動がある。今回、P3は階段からの登場だったが、ASIMOは平坦な場所からの登場だった。
考えすぎかもしれないが、もしかしたら、ASIMOは階段の昇り降りができないのではないだろうか。小型化し過ぎたため、階段を昇り降りするほどの関節の自由度を失った・・・、こう考えるのは穿った見方なのだろうか。
もう一つ、これはみなさんも誤解しているかもしれないが、一連のホンダロボットは、自立型2足歩行ロボットではあるが、ロボット単体で動いているわけではない。
実は、背後でコントロールしている人間がいるのである。
P3まではそのコントロールにワークステーションが必要だったが、ASIMOではコントロール用コンピュータも小型化され、身につけることができるほどだ。(解りづらいが、左写真で男性が左腕と腰に付けている。手に持っているのはコントローラ。右写真がそれ。)
コントローラはまるでゲーム機のコントローラのようなもので、誰でも簡単に操作できそうである。
歩行という動作を見る限り、ホンダが世界で一歩先を進んでいることは間違いないだろう。
しかし、ホンダが2足歩行ロボットを研究するのはなぜだろうか。バイクや車に代わる新しい乗り物の研究のためだろうか。
いや、そうではない。これはホンダ自身が言っていることだが、ASIMOは「人間の生活環境で作業しやすいサイズ、重量、簡単な操作性を実現した」ということから、目指すところは乗り物ではなく、パートナー型ロボット、あるいは遠隔作業用ロボットなのであろう。
人間が入っていけないような危険な場所や宇宙空間での作業を、遠隔操作のロボットで行うという用途は容易に想像できる。遠隔操作ロボットと言えば、忘れてはいけないロボットがある。今回のROBODEXでも、SDR、ASIMOに次ぐ関心を集めていたTMZUK(テムザック)だ。
TMZUKはテムザックコミュニケーションテクノロジー社が開発した遠隔操作ロボットである。
男性型ロボットが多い中、女性型ロボットという点も興味深い。
この形には意味があり、一つはその移動方法が歩行ではなく車輪(キャタピラ)を用いているため、それを隠すという意味合いがある。また、もう一つの意味は、TMZUKの用途にある。このロボットの使用目的の一つに遠隔地での介護が想定されているのだ。介護される場合、その相手が男性型ロボットだと恐怖心を強く抱く人も多いが、女性型ロボットだと、受け入れやすいという傾向があるためだ。
コントロールは専用のマニピュレータで行われ、TMZUK本体とはPHS回線を2回線使い接続されている。
操作自体はいたって簡単で、マニピュレータを付けて自分がしたいように動けばいいだけである。
そうすれば、操作する人の動きと同じ動きをTMZUKがするのである。また、操作する人は頭にセンサーを着け、その人の向きたい方を向けば、TMZUKもその方向を向くのである。そして、TMZUKが見ている映像は手元の操作画面に送られてくるのだ。(詳しくはこちらをクリック)こういった遠隔操作でのロボットが現時点では最も実用化に近い場所にいるように思える。
しかし、実用化にはもう一歩というところがあるようだ。
その一つが、人とのコミュニケーションだろう。
人が人に接するとき、そのコミュニケーション手段として表情に頼っているところはかなり大きい。
ロボットにもこういった表情のようなものを持たせようと研究しているのが、各大学等の研究機関である。こういった研究は、派手さはないが、今後、人とロボットが接していく上で無くてはならない基礎技術である。
民間企業に比べ、その研究成果が一般人の目に触れる機会が少ないこういった研究機関の成果が見れるという点でも、ROBODEXは非常に意義がある。(もっとも、あまり関心を持って見ている人はいなかったようだが)
今のホンダやソニーのロボット開発を影で支えているのはこういった研究機関なのである。
ここでの研究成果が無ければ、ASIMOもSDRもまだ生まれていなかったかもしれない。(今回参加したロボットたちはこちらをクリック)
21世紀には必ず社会生活にロボットが入り込んでくる。
写真の子供が大人になる頃には、そういった社会になっているかもしれない。
写真の光景以上にロボットと親密に暮らすような日も近いだろう。
最後に。
警備ロボットを警備する警備員。
気のせいか、寂しそうだった・・・。
ROBODEX2000最終日の2000年11月26日。
くしくもこの日、日本テレビ系の番組「鉄腕DASH」において、TMZUKを利用した遠隔操作を行っていた。
番組では、東京にいるオペレータが大阪にいるTMZUKを遠隔操作し、買い物を行わせていた。この実験により、TMZUKが抱えている、いや、現在の遠隔操作の抱えている問題点が露呈した。
その問題点とは
1.繊細な操作が難しい。
2.操作範囲が限られてしまう。以上の点だ。
まず、1の繊細な操作が難しい点だが、現在のマニピュレータではどうしても限界がある。
これを解消するためには、手応えをオペレータに感じさせるフォースフィードバックシステムの採用が不可欠だろう。
また、現在のTMZUKが捕らえた映像はスムーズな動画としてオペレータの元に送られてくるわけではない。そのため、思った通りの操作がしづらい場合が発生する。
これは、現時点ではその通信回線にPHS回線を利用しているため、通信できるデータ量に限界があるためだ。現状のデータ量ではスムーズな動画は難しい。
しかし、これは次世代携帯電話によるデータ通信速度の向上により、解消できると思われる。次に、2の操作範囲が限られる点だが、現状ではPHSの通信エリアに限られてしまっている。
しかし、TMZUKの使用範囲を限れば、これは大した問題ではない。とはいえ、範囲が限られるのは不便に感じる場面もある。
この件に関しても次世代携帯電話の登場と、その通信網の整備によって解決できると思われる。現時点では、遠隔操作ロボットで繊細な作業を行うのは、正直言って無理がある。
しかし、21世紀初頭にはそれも不可能ではないだろう。全ては次世代携帯電話の登場にかかっている。
ロボットを支える技術は我々の身近にあるのだ。
<補足>
ASIMOのパンフレットには、「全高:120cm」と書いてある。
いかにも自動車メーカーらしい。