リレーエッセイ「ニュータウンの街かどから」

第4話 「何が何でもインド的」


インドの魅力

 インドという言葉から、何を想像しますか?
 カレー、サリー、レインボーマン、ビートルズ、サイババ、シタール、スパイス、牛、タンドリーチキン、ヒンドゥー教、アリナミンA、タブラ、ムトゥ、カタカリ、仏教、ガンジー、マザーテレサ、西遊記、ガンジス川、タージマハール・・・・・・

 今を去ることX年前、私は嫌がる新婦を連れてインドに新婚旅行に行きました。強烈なインド体験のおかげで、彼女は今や私以上のインド好きです。インドにはかように底知れない魅力があるようです。世は移り変わって今やインドブームと言われています。インド好きは流行の最先端を行っています。私たち夫婦は知らず知らずに流行を感じとっていたのかもしれません。

 さて私たちを夢中にさせるインドとは何なのでしょうか。それはある本に書いてあったこの言葉に集約されています。「何が何でもインド的 − 歴史、文化、自然、人、暮らし − そのどれを取ってもインドはインド。およそ『インド的』としか名づけようのない個性に満ちている。」 (トラベルジャーナル 「インド 魅力わくわく亜大陸」より)

 見た瞬間に「インドだ」と思わせるものが何と多いことでしょう。また「『インド的』としか名づけようのない個性」は実に魅力的なのです。それでは私たちが感じるインド的なものを簡単に御紹介しましょう。

インド写真1 インド南部マドゥライのミナークシ寺院にて
お賽銭をあげると象が祝福してくれる

 

インドは楽しい

 今はもう大分下火のようですが、このところインド映画ブームというか、ラジニカーントブームでした。ラジニカーントは南インドのタミル語映画のスーパースターですが、一般にインド映画と言えばムンバイ(旧ボンベイ)を中心とするヒンディー語映画のことを指し、かの地はハリウッドをもじってボリウッドと呼ばれています。どちらにしても、他の国の映画とは一線を画するインド的な側面があります。

日本で公開された力作を2本紹介します。機会があれば是非ごらんください。

 

インドはおいしい

 よく「インドではカレーばっかり食べているのか」と聞かれますが、何がカレーかというのは難しいですね。香辛料をふんだんに使った料理をもってカレーと呼ぶのなら、カレーばっかり食べているという表現は正しいと言えます。それは日本人には味噌醤油を欠かせないのと似たようなものです。

 日本でも本格カレーを食べられますが、インドで食べるカレーは格別です。南インドを旅したときにコヴァラムビーチで食べたカレー風味の煮魚はピリピリしておいしかったし、カーニャクマリで食べたチキンカレーも辛口で絶品でした。でもインド料理の真髄は野菜料理にあると思います。インド人はベジタリアンが多く、料理もベジとノンベジに別れています。和食の精進料理と違い、ベジの料理も味わいは濃厚で、特に肉を食べたいとは思わせることはありません。だから日本でも私は野菜や豆のカレーやらパコラを好んで食べています。豆のカレーもレンズ豆やらチャナ豆やらいろんな種類があり、それぞれ味わいもまったく違います。野菜も「エッ」と思うようなものが入っていていつも新しい発見があります。私はつれあいの作る里芋と蓮根のカレーが大のお気に入りです。

 また日本では北インド料理がメインなので食べる機会はほとんどありませんが、マサラドゥーサという南インドの料理は絶品です。タミル系インド人が多いシンガポールでも食べられるはずですので、チャンスがあったら是非お試しください。

インド写真2 これがマサラドーサです。
おいしそうでしょ!

 カレーではありませんが、香辛料をきかせたライス「ジーラプラオ」のレシピを御紹介します。インド人の奥さん直伝で、ライスだけ食べても良し、カレーをかけて食べても良しです。


「ジーラプラオ」

 材料(3〜4人前)
  ・ 米 カップ2
  ・ ジーラ(クミンシード) 大さじ1
  ・ 玉ねぎ 大1/2
  ・ 塩 小さじ1弱
   (ジーラ/玉ねぎ/塩の分量はお好みで)

 手順
  ・ 玉ねぎをスライスする
  ・ 鍋に油を引いて玉ねぎをいためる。(弱火で茶色になるまで)
  ・ これにクミンシードを加えて軽くいため、塩を加える。
  ・ 30分前にといでザルにあけておいた米をこれに加え、かるく炒め、
   水2カップを加えてそのまま炊く。(炊くのは炊飯器でも可)
 

 

インドは美しい

 北インドに住むアーリア系のインド人は世界一目鼻立ちがはっきりしていると聞いたことがありますが、実際インド女性は非常に美しいです。最近はミスコン向けの教育(?)ビジネスも盛んだそうで、インド美人が世界を席巻しつつあります。ミスワールドからヒンディー映画女優へ転身したアイシュワリヤライの美しさは目を見張るものがあります。また彼女は踊りも華麗で、大女優への道を歩みつつあります。

 ところで男優はどうかというと、こちらも目鼻立ちはきりりとしているのですが、ちょっとクドイ傾向が好まれるようです。特にタミル映画のスターたちは、ラジニカーントを始め男臭さがムンムンしています。

 それから忘れてならないのがファッション。極めてインド的なサリーとパンジャビドレス。あの色彩は見事です。特にインド西部の砂漠地帯にあるラジャスターン州では、男も派手な布地をまとい、実にカラフルで乾いた砂漠に映えます。日本でも近々流行るのでは?

 またインドは広大な国であり、訪れるたびに新しい発見があります。北部のチベットに接する荒涼としたラダック地方、西部のパキスタンに接する砂漠地帯であるラジャスターン州、世界遺産に登録されたタージマハール、湖に浮かぶ高級ホテル・レークパレス、椰子の林の中を船で回るケララ州のバックウォーター、南インド独特のヒンドゥー建築であるゴプラムなどなど、何度でも行きたくなる魅力に満ちあふれています。

 

インドは優しい

 インドの旅は厳しくもあり、優しくもあります。やはり私たち旅行者は彼らから見るとメシの種ですから、言葉は悪いですがあの手この手でお金をもぎ取ろうとします。たとえば南インドのトリヴァンドラムで、こんなことがありました。

 空港からネイピア博物館までプリペイドタクシーでRs 150なので、オートリクシャーならRs 70と見て交渉にかかる。あっさりOK。走り出して一人Rs 70だと言い直して来る。再交渉したが結局二人でRs 100にしかならなかった。残念。

 ゲームと思って楽しめれば良いのでしょうが、最初は心の余裕がありませんでした。また思いもよらない手を使ってきたりします。やられたと思ったときは、その後しばらくは自己嫌悪に陥ります。

 でもインドには優しい面もあるんですよ。北インドのラージギールという片田舎でホテルが満室で困っていると、ホテルのおみやげ屋の方が自宅に泊めてくれました。1部屋しかない家なのですが、私に部屋の中のベッドを使わせてくれて、彼らは屋外で寝てくれました。食事もご馳走してくれて、翌日は街まで車で送ってくれたのですが、私は警戒心が解けず、お別れしてから「ああ、良い人たちだったんだ」と思いなおして恥じたのでした。

 それから南インドのタッカレイというところでバスを乗り換えようとしたとき、バスの行き先表示が読めなくて(英語表記がほとんど無い)1時間近く迷ったことがあります。このときは本当に困ってもうダメかと思ったのですが、あるおじいさんが私たちの行き先を確認し、30分くらい一緒に待ってくれて、「このバスだ」と教えてくれたのでした。ところがこのおじいさんはこのバスに乗るのではなく、私たちが乗るバスを教えるためだけに30分も一緒に居てくれたのでした。これは非常にありがたかったです。

 もちろんこんな経験よりは厳しい経験の方が多いですが、こういう優しい側面に触れるとその厳しい経験を帳消しして余りあります。

インド写真3 インド最南端カーニャクマリのレストランにて
物見高いインド人とハイポーズ!

 

インドへ帰ろう

 日本は実は色んな所でインドの影響を受けています。ヒンディー語はナーガリー文字で表記されますが、日本語の五十音はナーガリー文字と同じインド系の梵語の配列に習っています。したがってナーガリー文字の母音の順番は日本語と同じです。また語順もよく似ていて、短い会話では日本語とほとんど同じです(白水社 「250語でできるやさしいヒンディー語」より)。たとえば

  わたしの 名前は マルトロ です。
  メラ    ナム   マルトロ ヘ

となります。さらに日本語には梵語から来ている言葉も多くあります。たとえばヒンディー語のナラックという言葉は英語のhell、つまり日本語の奈落に相当します。

 また仏教はもちろんインドから来ましたが、ヒンドゥー教の神々は仏教に取り入れられています。たとえばヒンドゥー教のラクシュミーは仏教の吉祥天に相当します。またヴェーダ神話の武神インドラは仏教の帝釈天に相当します(筑摩書房 「インドの神話」より)。私たちの気づかないところで、実はインドの影響を大きく受けているのです。

 日本人の文化のふるさと、インドへ帰ってみませんか。きっと新しい何かを発見できますよ。

 

身近なインド

 港北ニュータウンにお住まいの皆さんが身近に味わえるインドを御紹介します。是非身近なインドを味わってみてください。

[インド料理]
 港北ニュータウンにはなぜかインド料理レストランが多くあります。しかし私たちの一押しは東山田にある「ラニ」です。インド人シェフの細かな心づかいが伝わってくる料理で、日本でも指折りの美味しさだと思います。またお店のつくりはゆったりとしていて、落ち着いて料理を楽しむことができます。関内にもお店ができますので、そちらも楽しみにしています。

[食材]
 綱島に「イムラン」というハラル・フード屋さんがあります。ここに行くと香辛料・各種豆・チャパティ用の小麦粉(パキスタン製)などが手に入ります。またナムキーンというインドの激辛スナックも多種置いてあります。一度食べると結構病みつきになりますよ。

[ファッション]
 ちょっと遠いですが広尾の「六甲サリーズ」で華麗なインドファッションを味わえます。またCDも豊富に置いてあります。

[インド映画]
・ 日本で公開された映画が徐々にレンタルビデオで出回り始めました。インド映画は幅がありますので、1作だけでなく何作か見ると色々と発見があります。
・ DVDを買うならIndia Plaza(http://www.indiaplaza.com/)です。英語の字幕がついているかを確認して買いましょう。リージョンフリーなので日本のDVDプレイヤーでも再生できます。

[その他]
・ 不定期的に相鉄ジョイナスの地下2階でインドのミニ展示会が催されています。今ちょうど2001年3月31日まで開催中です。
・ インド関連のイベントなどについては、インド通信ホームページが詳しいので参照ください。
  http://village.infoweb.ne.jp/~mariamma/india.htm
・ 年に1度、ナマステインディアというイベントが10月ころ東京で開催されます。インドから来る舞踊団の見事な踊りや、各種ショップでのインドグッズ、インド料理を楽しめます。

 

お願い

 御存知のように、インド西部のグジャラート州で大地震が発生しました。数万人の犠牲者が出たと言われています。心から御冥福をお祈りいたします。

 また義援金の募集が行われており、もしインドに少しでも興味をお持ちでしたら、わずかでも結構ですので募金への御協力をお願い致します。義援金はいろいろなところで募集されていますが、NHKと日本赤十字社も共同で2001年3月29日まで行っています。郵便振替で口座番号:00110−2−5606、加入者名:日本赤十字社で、通信欄に「インド地震救援金」と記入して下さい。(振替手数料免除)

 

 この文章で皆さんが少しでもインドを身近に感じてくれたら幸いです。それではナマステ!

 


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