リレーエッセイ「ニュータウンの街かどから」
みなさん、彗星は御存知ですよね。 夜空に尾をひいたように見えるアレです。1990年代の終わりに2つの明るい大彗星(百武彗星とヘールボップ彗星)が出現してますので御覧になった方も多いと思います。(その百武氏は、つい先日亡くなられました。御冥福をお祈りします)
ところで、先日来、日本人の彗星発見が立続けに3つ!もあって話題となっています。「イケヤ・チャン彗星」「ウツノミヤ彗星」「スナイダー・ムラカミ彗星」の3つなのですが、「イケヤ」?と聞いて「あ....」と思われた方はかなり星に詳しい方かお年を召した方ではないでしょうか?1960年代に「池谷・関」彗星という大彗星を発見されたかたです。日中でも見えるかもしれないと大騒ぎになったそうですので、懐かしく思われる方はそれ相応のお年というわけですが(笑)........ この3つのうち、「イケヤ・チャン彗星」が明け方の北東の空に見えています。 といっても空の暗いところに行かなければ見えないくらいの明るさなのですが、ひさびさに「明るい」彗星なのです。 この彗星、ただ明るいだけではなく軌道計算からどうも周期彗星らしいということがわかっています。 周期はなんと数百年! ということは前回あるいは前々回にも観測されている可能性があるということになります。 これだけ明るい彗星なら昔々の空であれば、充分に見えるはずなのです。 今のところ1532年の彗星じゃないか?とか1661年のかも? などと言われていますが、もう少し観測が進まないと何ともいえないようです。どちらにせよ最長期彗星という事にはなりそうですが....
◆ ◆ ◆
さて、彗星の発見方法は以前は望遠鏡で根気よく空を捜す方法が主流でした。今は写真捜索が主流です。最近では地球近辺の小天体を捜索するプロジェクトが動いてますので、その写真から従来では発見できないような暗い小さな彗星まで発見されています。その中で、この3つは「肉眼による発見」ということでも注目されています。写真全盛の中、まだまだ目(望遠鏡)で見つけられるということを示したからです。
肉眼(望遠鏡)による彗星発見と一口に言ってしまいますが、その実、膨大な労力と時間がかけられているものです。(中には、まったくの偶然で発見してしまうラッキーな方もいらっしゃるのですけれど....) 彗星は太陽の近辺にならないと明るくならないため、彗星を捜すには、太陽の近くを捜さなければなりません。 つまり、日の出の直前と日の入りの直後しか捜索時間がないのです。 どんなに多くても1日に3〜4時間といったところでしょうか。 当然、天候にも左右されますし、捜索できない事情の日だってあるはずです。 また、当然のことながら発見してもお金儲けができるわけでもありません。賞金だってありません。もらえるのは名誉だけです。 まさにアマチュアスピリッツあふれる行為ではないでしょうか?余談ではありますが、世間一般でアマチュアスピリッツというものが、だんだん失われてきているような気がしてなりません。 スグに役にたつ事、確実に役にたつ事、お金になる事、それ以外はやらないという風潮は、心の余裕をなくしてしまった事の現れのような気がします。
◆ ◆ ◆
私がこういった天体に興味を持ったのは、中学2年の夏に母親が買ってきた1冊の天文雑誌でした。今でも販売されているその雑誌を見た瞬間、星の世界に引き込まれたのかというとそうではありません。 見た瞬間、引き込まれたのは「望遠鏡」でした。星を見る道具としての望遠鏡ではなく機械としての望遠鏡に引き込まれたのです。 少ないお小遣いをためて組み立てキットを買い、作り上げた望遠鏡は、全然良く見えなかったのですが、今度は「望遠鏡を作る」という方向に引き込まれてしまいました。それは本物の望遠鏡を買ってからも続き、とうとう望遠鏡を自作。その自作望遠鏡で見た星。その「星」に引き込まれたのです。 買ってきた望遠鏡の方がキチンと見えるのですが、自分だけの望遠鏡で自分だけの星の世界を見た時の感激は忘れられません。ちょうど小型で、持ち運びしやすい事もあってあちこちに持って行っては星を見ました。年がバレますが、ハレー彗星の接近時には伊豆まで持って行き、明け方の光に埋もれて行く彗星という素晴らしい光景も目撃する事ができました。 また、富士山の五合目で震えながら天の川を眺めていたこともあります(ちなみに望遠鏡で見る天の川はぎっしりと星、星、星です)。もちろん、時には醒めて、望遠鏡も押し入れにしまってしまった時期もあります。星と言えば明け方の雀荘を出て眺める星空なんていう時期もありましたし、スキー場のナイターの照明のカゲから見る星空しか眺めてないという時期もありました。 それでもナゼか見たくなるのです。それは、やはりあの星の世界が忘れられないからでしょう。
◆ ◆ ◆
最近(ここ数年ですが)大きいモノだけ挙げても百武彗星、ヘール・ボップ彗星、木星に衝突した彗星(シューメーカー・レビー彗星)もありました。彗星だけではなく、昨年は雨のごとく降る流れ星も経験しました。 いずれも数十年から数百年に一度というようなイベントばかりです。 そして、どの場合も不思議なくらい多くの人が注目し、観察しています。 いつもマイナーな趣味と言われているのがウソのようなこの現象に、「星への憧れ」は人間に普遍なものなんじゃないかと考えたりします。
望遠鏡でも双眼鏡でも肉眼でも、空の暗いところで見る星は、それは素晴らしいものです。それが横浜の空といったら(笑) 普段の空だと一番暗い星は3等星くらいでしょうか。 そんな星空でもよく見ると星がいっぱい見えています。 夜空を見て目を慣らしていくと、次々に星が見えだしてきます。 それには最低でも数分かかるのですが、そうやって星を眺めると不思議な思いにとらわれたりします。 浮遊感とでもいうのでしょうか。自分が空間に浮いてる感じです。これは望遠鏡や双眼鏡をのぞいている時の方が起きやすいのですが、もちろん目で見ていても起きます。宇宙とは言いませんが、藍色の空に自分が浮かんでいる感じというのは、非日常感が際だつ面白い体験でもあります。 しかし、悲しいことですが、この数分間の余裕すら持てなくなっているのが、現代人なのかもしれません。
◆ ◆ ◆
さて、長くなってしまいました。 最後にもう一つ話題になっている天文現象があります。新聞等でも報道されているので、もう御存知の方も多いと思いますが、夕方に5惑星(水星、金星、火星、木星、土星)が集まるのです。 更に「月」も加わりますので、月、火、水、木、金、土 が全部見えるというかなり珍しい光景が楽しめる事になります。夕方ですから直前に「日」を見ておけば、まるまる「1週間」だったりします(笑)