012.アイルランド国鉄と北アイルランド鉄道
  2005.5.22 UP
2005.7.31部分修正

 英国鉄道を全線乗り潰したので、2005年のゴールデンウィークはアイルランド島へ渡って みた。アイルランド島にはアイルランド共和国と英国(北アイルランド)の2国があり、それぞれ、アイルランド国鉄と北アイルランド鉄道が走っている。次な る目標は両鉄道を乗り潰すこととした。

 とは言うものの、計画段階では非常に苦労した。日本国内で両鉄道に関する情報は、印刷物では皆無に等しく、事実上インターネットに頼るしかな い。しかし、情報は古かったり断片的だったりで、収穫は期待できない。「○○の歩き方 アイルランド版2004〜2005」ではバス転換された路線がそのまま地図に載っていたり、Dublin市内の移動に便利な路面電車が載っていなかったり で、情 報が古い。そもそも日本にはアイルランドに関する記述が少なすぎるのだ。
 そこで、今回は両鉄道を利用して旅行する場合の参考情報を、英国鉄道との比較を交えつつ紹介する。


【アイルランド島の概観】
 

アイルランド
共和国
北アイルランド
北海道
面積(平方km)
70,000
14,000
83,000
人口(万人)
390
168
568
人口密度
(人/平方km)
55
120
68

 上の表より、アイルランド島の面積や人口は北海道に似ていることがわかる。地形は根釧台地のような感じで、海に切り立った崖(海食崖)、崖の 上はゆった りとした曲線を描く平原といった風景が多い。


海食崖上の平原(北アイルランドAntrim県)


【鉄道網】
 北海道よりも路線網は粗い。アイルランド国鉄は首都Dublinを中心に、北アイルランド鉄道はBelfastを中心に路線が敷かれており、 地方都市から地方都市への移動はバスに頼ることとなる。
 バスは全土にわたって路線網が形成されている。アイルランド共和国と北アイルランドを結ぶ国際線も多数あり、運転本数も多い。


【運転本数】
 少ない。主要路線でも3時間待ちなどザラである。JR北海道の長距離列車の本数を考えれば納得できる。英国鉄道はパターンダイヤの路線が一般 的なので時刻表がわかりやすく、余程の田舎でない限り運転本数も多いが、アイルランドで同じつもりでいると痛い目に遭う。
 サッカーの試合日は、臨時列車が 走ることもある。
 時刻表は両鉄道のホームページで参照できる。

主要路線
平日・土曜日
休日
Dublin〜Belfast
8往復
5往復
Dublin〜Cork 9往復・金土11 往復※1 8往復※1
Dublin〜Galway 6往復
4.5往復
Dublin〜Limerick 10往復・月11 往復※2 7.5往復※2
Dublin〜Rosslare Europort
3往復 3往復
Dublin〜Sligo 3往復・月金 3.5往復
3往復
Dublin〜Waterford 5往復・月金土 5.5往復
4往復
Dublin〜Westport 3往復 3往復※3
Belfast〜Londonderry
9往復※4
4往復※4
        ※1:Mallowでの乗換え便を含む
        ※2:Limerick Junctionでの乗換え便を含む
        ※3:Athloneでの乗換え便を含む
        ※4:Coleraineでの乗換え便を含む
 

【所要時間】
 参考までにバスと比較してみた。鉄道の方がバスよりも所要時間、快適さで勝っているが、運賃はバスの方が安い。
 安くてネットワークが充実しているという理由でバス利用を薦める記述を多く見た。しかしバスは、狭い車内がほぼ満席の乗客で埋まり、隣に体臭 が激しく、体格の巨大な西洋人に座られた状態となり、これに長時間耐えなければならない。私は鉄道利用をお薦めする。

主要路線 鉄道所要時間
バス所要時間
Dublin〜Belfast 2時間
3時間
Dublin〜Cork 2時間40分 4時間30分
Dublin〜Galway 2時間40分 3時間40分
Dublin〜Limerick 2時間30分 3時間40分
Dublin〜Rosslare Europort 3時間 3時間20分
Dublin〜Sligo 3時間 3時間30分
Dublin〜Waterford 2時間30分 3時間
Dublin〜Westport 3時間30分 5時間
Belfast〜Londonderry 2時間10分 3時間


【運賃】
 運賃制度は英国鉄道と同様で、いわゆる「運賃」のみであり、特急料金などの速達料金は無い。片道切符よりも往復切符のほうがお得である。
 しかし、島内を鉄道利用であちこちと移動する場合、Britrail & Ireland Passがさらに便利でお得だ。英国鉄道、アイルランド国鉄、北アイルランド鉄道が乗り放題であり、グレートブリテン島〜アイルランド島の乗船券 (Stena社の3路線に限られる)が1往復分付いている。Britrail & Ireland PassはEU内では購入できないので、日本で用意しておくと良い。日本円で73,200円(2等車専用、30日間のうち10日有効、成人料金)である。


【混雑度】
 空気ばかりを運んでいることが多い。Dublin〜BelfastとDublin〜Corkは、朝夕は混んでいるが立ち客が出るほどではな い。長距離列車は5〜8両編成であり、座席数は余裕がある。
 しかし、いつもガラ空きというわけではないようだ。Dublin〜Rosslare Europortの昼の便に乗ったが、4両編成のディーゼルカーだった。4両にぎっしりと客が詰まり、始発のDublinから1時間半にわたり、座席はす べて埋まっていた。
 また、Thurlesにサッカー競技場があるらしく、試合日のThurlesに停まる列車は混み、臨時列車が走ることもある。


【駅の出発時刻・停車駅案内設備】
 アイルランド国鉄では、主要駅の案内設備は英国鉄道と同様に電光案内装置が設置されており、わかりやすい。が、田舎の駅には案内設備自体が無 い。
 北アイルランド鉄道では英国鉄道の旧型がいまだに使われている駅もあるが、Belfast
〜Bangorでは新旧が混在するものの充実している。なお、田舎の駅には案内設備自体が無い。


Heuston駅の出発時刻・停車駅案内板

【トイレ】
 有人駅にはトイレがあるが、無人駅には無い。トイレはきれいで、故障による使用不可も無い。なお、アイルランド国鉄はほとんどの駅が有人駅で あ る。
 車内のトイレは英国鉄道と同様、出発時はきれいだが、時間がたつほど荒れてくる。


【車両】
 英国鉄道よりも断然きれいである。

<アイルランド国鉄>
 長距離便(Intercity・Enterprise)・・・外観は野暮ったくスマートさがまったく感じられないが、車内は英国鉄道のような 不潔で荒れ果てた惨状は見なかった。長距離便の座席は4人向かい合わせが基本で、大きなテーブルが付いている。Dublin〜Belfast・Cork は、一等車が2両連結されている。英国鉄道のMk2、Mk3、Mk4に相当する客車の5〜8両編成だが、Mk3、Mk4相当車は自動ドアである。Mk2相 当車は手動ドアで、降車時の開け方は英国鉄道と同様に、窓から身を乗り出し、外のノブをひねる。


Mk2相当車


上の車両の車内 清潔に保たれている。

  DART(Dublin Area Rupid Transit)・・・新型車両の投入が続いている。新型のほうが断然快適である。6両編成のうち、Howth方4両が新型の場合が多い。


DARTの新型車両

 ローカル列車・・・Cork〜Tralee以外はディーゼルカーによる運転である。どの車両も10年以内に投入されたと思われる新型車であ り、性能抜群で車内設備も新しい。英国鉄道の150系と170系を足して2で割ったような車両が多い。


2900系ディーゼルカー

<北アイルランド鉄道>
 3両編成のディーゼルカーが基本編成となっており、多客時間帯は6両で走る。新型車は英国鉄道の170系そのもの。旧型は英国鉄道の通勤型電 車と同様、一列5人掛けの座席である。旧旧型は手動ドアで、やはり降車時は窓から身を乗り出し、外のノブをひねって開ける。
 旧型、旧旧型は頭か尻の車両の半室が機関室となっており、巨大エンジンが鎮座している。残り2両は客車と運転台付き客車という奇妙な車両であ る。ディーゼルカーと呼んで良い物なのか???


新型車両3000系


旧型車8000系 先頭車の前半分は機関室

【速度・線路設備】
 速い。幹線の最高速度は144km/hである。ローカル線でも120km/hで快走する。なお、北アイルランド鉄道はカーブが多く、また線路 設備がやや貧弱であり、144km/hで走行可能な区間はほんの一部である。
 DubrinからBelfast行き国際列車に乗ると、車窓ではどこが国境なのかまったくわからない。しかし、スーっと制動がかかり、にわか に乗り心地の悪くなる地点があり、国境を越え、鉄道会社が変わったことが容易に推測できる。逆方向では、一気に加速していく。


【正確性】
 優・良・可・不可で判定すれば、アイルランド国鉄は良、北アイルランド鉄道は可といった感じである。
 私が乗った限りでは、アイルランド国鉄ではDARTがややいい加減だった以外は、ほぼ正確に走っていた。なお、DARTに邪魔されるため、国 際列車は必ず5〜10分遅れる。英国鉄道同様、終着駅手前でサバを読んでおり、途中をダイヤどおりに走ると、終点には10分程度早着する。
 北アイルランド鉄道は英国鉄道とほぼ同水準だ。単線区間ですれ違い列車が来ず、10分程度遅れることは当たり前である。
 英国鉄道と違う点は、鉄道ネットワークが充実しておらず、運転本数も少ないため、地方のダイヤの乱れが全国に波及せずに済むところである。


【工事運休】
 英国鉄道では土日に工事運休や工事による臨時ダイヤとなる路線が見られる。しかし、平日にまで影響する工事は滅多に無い。ところがアイルラン ドでは平日でも平気で列車を止める。
 たとえば、BelfastからLarneへ向かう近郊路線は、2005年3月26日から12月まで、抜本的な若返りと称して長期工事中であ る。5月までは、朝の上り3本、夕方の下り3本のみの超間引き運転で、土休日は走らない。6月からは完全に運休となる。
 また、2005年4月18日から6週間の予定でTipperary〜Clonmelで路盤改良工事 があり、Limerick Junction〜Rosslare Europortが運休中である。
 困ったことに、このような工事運休の告知は2週間程度前にしか発表されない。2週間前だと、日本から旅行する場合、すでに宿の手配などは済ま せた後であり、旅程の組み換えは困難の極みである。私自身も、例で示した2件のために8時間かけて組み上げた旅程を、18時間かけて組み直す破目になって しまった。
 工事運休の予定は両鉄道共にホームページで告知される。


 このゴールデンウィークで、両鉄道の7割は乗り潰したと思う。「思う」と書いているには理由がある。どこを探しても、両鉄道の営業距離がわか る資料が無いのだ。こうなったら全線乗り潰して文句のつけ様の無い状態に持っていくしかない。
 金のかかる趣味を持つと大変である。

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