繁殖の技法
Inbreeding(同系交配、同一系統に属する個体同士による交配)
互いに(遺伝子上の)関係がある二匹の動物の繁殖を述べるために用いられる用語です。
この用語は通常、特により密接に血のつながりがある個体群を指すのに用いられます。
ある個体を生み出すのに用いられた同系交配の量(程度)を計算する事は可能です。これは「同系交配係数」と呼ばれています。
同系交配では子孫のホモ(同型)接合性が増す事があり(それゆえ親子は非常に似ています)、その系統における変化を減らします。あなたが素晴らしい繁殖用の個体を手に入れたなら、その質を維持し改良さえできるようになるので、すごい事です!!
この手法は最初は非常に有用ですが、遅かれ早かれこれ以上は進歩を望めない所に行き着いてしまいます。
また同系交配は有害な劣性遺伝子を生じます(遺伝的欠陥の可能性を増大させる)。これは「自殖弱勢」と呼ばれ、やがて繁殖能力の欠如をもたらします。

Line-Breeding(系統交配)
同系交配の一種で、単一の個体が系図の中に何度か登場するような交配の仕方です。
極端に単純化した例は娘をその父親と交配させ、生まれたメスをその祖父と交配させる、等です。
オスのチンチラを元にした系統とするだけではなく、メスのチンチラに基づいた系統としても実行可能です。
繰り返しますが、系統交配は有害な劣性変異を生じる可能性があり、同時に「自殖弱勢」に陥りやすいです。またその系統が基本としたオリジナルのチンチラより優れた個体を作る事はできないという仮定が成り立ちます。
系統交配の主要な価値は、肯定的な特性に関して子孫の形態的・生理的性質の純粋さを維持する事ができる事、そしてそれらの特性をその系統に「固定」する助けとなることです。
しかしながら、あなたは繁殖相手となる子孫の選択に本当に注意する必要があります。


マーフィーは「おじ」と「姪」を交配させてできた仔です。これは系統交配の一例です。

Cross
Breeding(異種交配、クロス・ブリーディング)
(あるいは遠縁交配)
無関係な血統の個体同士による交配です。
個別の血統同士を交配させた場合、その子孫は雑種強勢※を伴います。言いかえると、それぞれの血統の優性遺伝子が有害な劣性遺伝子を抑え込むという事です。
(※訳注:無関係な血統間で交配した結果、生まれた子が体格や適応性、繁殖力などの点で親よりもすぐれた形質を示す現象)
異種交配を繰り返すと非常に変化に富んだ子孫が生まれる可能性があります。実際の所、血筋が別の2匹のチンチラによる異種交配は、両方とも非常に注意深く交配された血統の個体でなければ、ごく平均的な結果となるでしょう。
時々、異種交配は血統内の自殖弱勢を減ずるために利用されます。一度遠縁交配させた後、その系統を再び同系交配か系統交配させます。この技術は「周期的な遠縁交配」と呼ばれ、私が用いる繁殖手法です。

Rotational
Cross-Breeding(輪番制の異種交配※訳注:日本の繁殖の用語として確定された訳語ではありません)
これは繁殖する群れが3つ(あるいはそれ以上)の個別で無関係なグループに分割されている手法を述べる時に使われる用語です。
各グループのオスとメスは繁殖してF1世代という世代を産みます。作られた全てのF1のメスはそれぞれのグループに留まりますが、F1のオスをそれぞれ後に続いて作られる世代の繁殖のために隣のグループに移動させます。
この方法は必要な同系交配の回数を減らします。しかし、ブリーダーは各世代で用いられる繁殖用の個体についてなおも選択の自由があります。
Rotational
Cross-Breedingは、希少な色、あるいは異常な色を保存する場合に特に有用です。


チャコールは保存(保護)を必要とする劣性変異体です!!!

Phenotypcial
Breeding(表現型交配??)
この用語は、血縁は無いが同じように見えるか両方が同じ望ましい外見上の特性を持つ個体同士による繁殖を意味します。ほとんどの繁殖の初心者が最初にこの手法で始めます。
これはすべて非常にうまく行きます。しかし繁殖に用いる成体の遺伝的性質が異なるので、その子孫はかなり当たり外れのある結果となり、そしていくらかの特質は「固定」されないでしょう。
将来の繁殖用に子孫を非常に厳密に選ぶ事により、いくらか改良ができるかも知れませんが、それはまれです。

Corrective
Breeding(矯正交配??)
この用語も血縁のない個体同士による繁殖を意味しますが、今回は交配によってお互いの長所と短所を打ち消しあう(あるいは相殺する)ように個体を選択する事を意味します。
これは系統中の著しい欠点(例:細い首)のいずれを矯正するにも優れた手法です。この手法も子孫(の形質)は非常に変化に富むので将来の繁殖用の個体を注意深く選ぶ必要があるでしょう。

Inheritability(遺伝の可能性)
色のようないくつかの特徴は明らかに高い確率で遺伝します。ある一つの特徴が遺伝する度合いの事を「遺伝率」と呼びます。いくつかの基本的な例を以下に示します。
遺伝率の低い特徴
• 子供の大きさ
• 子孫の生存率
遺伝率が平均的な特徴
• 気質
• 重さ
遺伝率の高い特徴
• 体格
• 色

繁殖のための選択
繁殖用の個体を選ぶのには2つの方法があります。一つは、一回の繁殖では一つの特定の特質に専念して他の特質はどれも考慮せずにその一つの顕著な特徴のある個体を選ぶ事です。一度その特徴についての目標が達成されたら、子孫は他の特質を考慮して選択されます。
別の方法は繁殖用の候補である個体を、全ての望ましい特質について評価して「採点」し、全体的に高い「得点」を得た個体を選ぶ事です。
二番目の手法は最初の手法よりも時間がかかりますが長期的には全体的により良い結果を達成すると考えられています。
Mutation(突然変異体)との繁殖
健全な個体による繁殖は疑いなくうまく行きます。
しかし突然変異体の繁殖は健康の点で100%ではありません。また遺伝的特徴(遺伝子型)およびそれらが特定の系統あるいは血統に影響を及ぼす方法となります。
一般的にどの動物も突然変異体は野生の形態より生まれつき「弱い」です。
(mutationは、突然の変化を意味します。)
野生の状態では、いくつかの突然変異体(例:アルビニズム;白化症)は通常、捕食動物によってかなり早く摘み取られ、繁殖する事ができません。
強い突然変異体(適応体)のみが進化して生き残ります。従って「野生の状態」で見られる物、すなわちスタンダードが通常は最も健康で最も丈夫です。
最初のチンチラの突然変異体(これは飼育下で発生しました)の歴史をのぞいて見ると、それらが本当に非常に弱くて病弱な動物であった事がわかります。人間による大きな介在がなかったなら絶対に生き残らなかったでしょう。
実際、最初のベージュには非常に恐ろしい歯の病気があり、繁殖の為に長く生かし続ける必要がありました。
スタンダード(野生の形態)との繁殖は突然変異の特定の形態に関連する全ての生来の短所を打ち消す助けとなります。(例;ある好ましくない特質が好ましくない物としてその染色体上の同じ位置に存在しているかもしれません。そしてスタンダードとの遠縁交配は好ましくない影響を低減します。)
しかしながら、幾つかの例では突然変異体と突然変異体をつがいにする事は避けられません。しかしその実行に当たっては(一定の知識に加えて)注意が必要です!!!


眠っているチンチラの写真
(c) Dan Whetton
記事とその他の内容
(c) Debbie Cave