色と基礎的な遺伝学
非常に基礎的な手引き
率直に言って、遺伝学は私が最も得意とする科目ではありません。知らない事を書きたくはありませんから、この話題は体裁を繕うだけにして私が自信のあるとても基礎的な事だけを説明します。従って、この記事は優れた知識を持ち経験豊富なブリーダー達にとっては興味がないものでしょう。しかしながら、チンチラの繁殖に不馴れな人達に幾つか説明できれば幸いです。
現在、可能な「ブレンド」と異型交配を含む多くの色が産み出されています。ですが、ある色を生み出す為にはどうすればチンチラの健康を危険にさらさずにできるのかを理解しておく事が本当に必要です。
いくつかの突然変異体は弱い仔を産む傾向があります。この事を持って、特定の色の仔(例:バイオレット)を得る最も簡単な方法は2匹のバイオレットを交配させる事ではあるが、それは子孫の特質の点で最良の方法ではないかも知れない、という事を示しておきます。2匹のバイオレット同士で繁殖すると、色と特質が貧弱な小さな仔が生まれるかもしれません。実際、同じ事がどの突然変異体についても言えます。
従って(ペットとして飼っている人についても)、突然変異体を交配させる時には、子孫に健康、活力、体格を授けるため、可能な限り優れた特質を持つスタンダードまたはスタンダードの遺伝子を持っている個体と交配させる事が常に推奨されます。優れた交配を繰り返し実践すれば、丈夫で健康なチンチラ達が将来生まれてくるようになります。

有用な用語
話を続ける前に、幾つかの有用な用語と意味を示しておきます。
Homozygous(ホモ接合,同型接合)
- 対応する遺伝子座位上に同じ対立遺伝子が2つある事。
Heterozygous(ヘテロ接合)
- 対応する遺伝子座位上に2つの異なる対立遺伝子がある事。
Phenotype(表現型)
- 動物の外観/特質
Genotype(遺伝子型)
- 動物の遺伝子の構造
Mutation(突然変異体)
- この場合、スタンダード以外の全ての色
Chromosome(染色体)
- 細胞核の中にあって遺伝子を格納している構造物(チンチラには64個あります!!)
Allele(対立遺伝子)
- 遺伝子の、2つの互い違いの形をした物の1つで、染色体の中で同じ位置を取りうる物。それらは(子孫の)特性が二者択一となる原因かもしれません。例えば、幾つかの対立遺伝子は他のものに対して優性です。
Locus(遺伝子座)
- 遺伝子座とは染色体上の遺伝子の位置を意味します。遺伝子座はどの対立遺伝子によっても占有できます(ホモ接合=一つの遺伝子座に同一の対立遺伝子がある事、ヘテロ接合=一つの遺伝子座に異なる対立遺伝子がある事)。
TOV - アメリカの用語で"Touch
of Velvet"、"ベルベット"遺伝子を持ったチンチラを意味します。
Standard - スタンダード・グレー。野生のチンチラの色。
Lethal Gene Factor(致死遺伝因子)
- 特定の色(ホワイトおよびベルベット)はその色についてホモ接合となった場合、生存する事ができません(つまりヘテロ接合状態でのみ存在できます)。これらの色は「致死因子」を持つと言われます。
Carrier(キャリア)
- いずれかの特定の表現型であるチンチラは他の色となる単一の遺伝子を「運んでいる」かも知れません。すなわち劣性の色のヘテロ接合のキャリア(運び手)であるかも知れません。劣性の色はホモ接合状態になった時(チンチラが両方同じ遺伝子を受け継いだ時)だけに現れます。一匹のチンチラは複数の劣性の色のキャリアになる事ができます(そうなるように交配させれば)。
Recessive
Inheritance (劣性遺伝)
- 一つの劣性遺伝子を「運んでいる」二匹のチンチラは、キャリアであっても、バイオレットの色にはなりません。彼らは一つの遺伝子を各個に持っているだけだからです(劣性の色はホモ接合(2個の遺伝子がそろう)状態でのみ現れます)。
Dominant Inheritance (優性遺伝)
- 親となる一匹のチンチラが優性遺伝子を一種類だけ持っているとします(例:ブラックベルベット、これは外見に表れます)。もしそのチンチラがノーマルあるいは(キャリアではない)スタンダードの相方と交尾した場合、子供たちはブラックベルベットかスタンダードのどちらかになるでしょう。しかしその優性遺伝子は(訳注:発現する事なく)持つ事ができないので、彼らは絶対にキャリアにはなりません。
(訳注:「キャリア」というのはその遺伝子を持ってはいるけれど発現していない状態を指します(隠し持っている)。発現している場合は「キャリア」とは呼びません。)

主要な色のグループ
主要な色のグループを非常に基礎的な一覧で示します(可能な全てのクロスあるいはブレンドは含んでいません。そうしないと、それらの色を説明するために一冊の本を書くはめになるでしょう!!)。
Standard Grey
(スタンダード・グレー)
Black Velvet (ブラック・ベルベット)
Ebony (エボニー)
Tan (タン。エボニーとベージュのクロス)
Ebony
Velvet (エボニー・ベルベット。米国ではTOVエボニーと呼ばれます)
Charcoal (チャコール。まぎれもなく本当の劣性突然変異体。米国では認められていません。米国では「チャコール」という用語はヘテロ・エボニーを意味するのによく使われます。ヘテロ・エボニーはヨーロッパでは別の突然変異体を指します)
Pastel (パステル。チャコールとベージュのクロス)
Charbrown (チャコール/ベージュ/ベルベットのクロス)
Charblack (チャコール/ベルベットのクロス)
Wilson White (ウィルソン・ホワイト(シルバーとモザイクを含む))
Pink/white (ピンク/ホワイト。ウィルソン・ホワイトとベージュのクロス)
Black/white cross (ブラック・ベルベットとホワイトのクロス。米国ではTOVホワイトとして知られている)
Violet (バイオレット)
Ultra Violet (ウルトラ・バイオレット。バイオレットとベルベットのクロス)
Beige/Violet (ベージュ/バイオレット)
Violet Wrap (バイオレット・ラップ。バイオレットとエボニーのクロス)
Sapphire (サファイア)
Royal Blue (ロイヤル・ブルー。サファイアとベルベットのクロス)
Homozygous Beige (ホモ・ベージュ(同型接合体のベージュ)。古い言い方では、アプリコット、シャンペン、ローズとしても知られています)
Heterozygous Beige (ヘテロ・ベージュ(ヘテロ接合のベージュ))
Brown Velvet (ブラウン・ベルベット。米国ではTOVベージュとして知られている)
上記の色のうち、多くは二重および三重の劣性遺伝子を持った個体を作るためにクロス交配する事ができます。多くは同じような表現型(外見)を持ちますが、これで次にさまざまな突然変異体の子孫を作る事ができます。
しかしながら、ベルベットおよびホワイトの遺伝子はホモ接合状態の時に致死遺伝因子を持つという事を述べておく必要があります。これはベルベット同士もしくはホワイト同士の交配は、4匹に1匹の割合(25%)で胎児が生存できない結果となるので、勧められないという事です。この2つの色はヘテロ接合の状態でのみ存在できます。
ホワイトとベルベットの交配は可能です。それぞれの色の致死因子が異なる遺伝子座に存在するからです。
劣性の色はそのチンチラが両親から2つの遺伝子を(そろって)受け継いだ時だけに現れます。(劣性の)遺伝子を1つしか受け継いでない動物はキャリアという名で知られていて表現型としては「ノーマル(通常)」の外見を見せます(例:バイオレットの遺伝子を「運んでいる」スタンダードのチンチラ。別名:スタンダード・バイオレット・キャリア)。
優性の色は違った形で現れます。次の世代にその色を伝える為には片方の親がその色である必要があります。

交配の結果
以下は、特定の交配から統計的に期待される、生まれうる子供の確率(%)の非常に基礎的な例のいくつかです(エボニーと二重の劣性色は含んでいません)。
スタンダード X
スタンダード
= 100% スタンダード
スタンダード
X ヘテロ・ベージュ
= 50% スタンダード
- 50% ヘテロ・ベージュ
スタンダード
X ホモ・ベージュ
= 100% ヘテロ・ベージュ
スタンダード
X ピンク/ホワイト
= 25% ピンク/ホワイト
- 25% スタンダード
- 25% ヘテロ・ベージュ
- 25% ウイルソン・ホワイト
スタンダード
X ウイルソン・ホワイト
= 50% ウイルソン・ホワイト
- 50% スタンダード
スタンダード
X ブラック・ベルベット
= 50% スタンダード
- 50% ブラック・ベルベット
スタンダード
X ブラウン・ベルベット
= 25% スタンダード
- 25% ブラウン・ベルベット
- 25% ブラック・ベルベット
- 25% ヘテロ・ベージュ
スタンダード
X バイオレット
= 100% スタンダード
(バイオレットのキャリア)
スタンダード
(バイオレットのキャリア)
X バイオレット
= 50% バイオレット
- 50% スタンダード
(バイオレットのキャリア)
ヘテロ・ベージュ
X ヘテロ・ベージュ
= 50% ホモ・ベージュ
- 25% ヘテロ・ベージュ
- 25% スタンダード
ヘテロ・ベージュ
X ブラック・ベルベット
= 25% ヘテロ・ベージュ
- 25% ブラウン・ベルベット
- 25% スタンダード
- 25% ブラック・ベルベット
ホモ・ベージュ
X ブラック・ベルベット
= 50% ブラウン・ベルベット
- 25% ヘテロ・ベージュ
ブラック・ベルベット
X ウイルソン・ホワイト
= 25% ウイルソン・ホワイト
- 25% ブラック/ホワイト・クロス
- 25% ブラック・ベルベット
- 25% スタンダード
ブラック・ベルベット
X ブラウン・ベルベット
= 25% ブラウン・ベルベット
- 25% ブラック・ベルベット
- 12.5% スタンダード
- 12.5% ヘテロ・ベージュ
- 25% 致死遺伝
ウイルソン・ホワイト
X ピンク/ホワイト
= 25% ピンク/ホワイト
- 25% ウイルソン・ホワイト
- 12.5% スタンダード
- 12.5% ヘテロ・ベージュ
- 25% 致死遺伝
ピンク/ホワイト
X ブラウン・ベルベット
= 18.75%
ブラウン・ベルベット
- 12.50%
ヘテロ・ベージュ
- 18.75% TOV
ピンク/ホワイト
- 18.75%
ピンク/ホワイト
- 6.25% スタンダード
- 6.25% ホモ・ベージュ
- 6.25% ウイルソン・ホワイト
- 6.25% ブラック・ベルベット
- 6.25% ブラック/ホワイト・クロス
ブラック・ベルベット
X バイオレット
= 50% スタンダード
(バイオレットのキャリア)
- 50% ブラック・ベルベット
(バイオレットのキャリア)
バイオレット
X ブラック・ベルベット
(バイオレットのキャリア)
= 25% バイオレット
- 25% スタンダード
(バイオレットのキャリア)
- 25% ブラック・ベルベット
(バイオレットのキャリア)
- 25% ウルトラ・バイオレット
ホモ・ベージュ
X バイオレット
= 100% ヘテロ・ベージュ
(バイオレットのキャリア)
ヘテロ・ベージュ
(バイオレットのキャリア)
X バイオレット
= 25% バイオレット
- 25% スタンダード
(バイオレットのキャリア)
- 25% ヘテロ・ベージュ
(バイオレットのキャリア)
- 25% ベージュ/バイオレット
(別名:パール)
注意:チャコールとサファイアの劣性の突然変異体の作用はバイオレットと同様です。
もう一度繰り返します。今日手に入る、いくつかの魅力的な色を繁殖させる事は楽しい事ではありますが、将来の世代の健康を考慮に入れて実行してください。いくつかの劣性の突然変異体は貧弱で小さな子供を産む傾向があります。彼らはそれゆえ、大きくて優良なスタンダードとの遠縁交配をできるだけ必要とします。血統に歯の疾患が見られた事のあるチンチラからの繁殖は絶対にしないでください。できれば毛噛み(悪い癖)の癖があるチンチラも繁殖の予定表からは外すべきです。

眠っているチンチラの写真
(c) Dan Whetton
記事とその他の内容
(c) Debbie Cave