〜Vol.01〜
  (2008年5月31日)


 荷物を取りに行きながら、携帯電話で嫁に電話する。正式発表はまだないが、目標の2時間切りをしたのはほぼ確実である。2時間切りを達成したなら、レース用の自転車を買って貰う約束を約1年前に取り交わしたのだ。
「もしもし」
「・・・・もしもし」
 やばい、寝起きらしい。しかし、僕は怯むことなく先を続けた。
「目標の2時間切ったよ」
「ああ!そりゃぁおめでとう!!」
「ほいで、約束の新しい自転車お願いします」
「・・・・・・・」
 なんで無言なんだ?と思った刹那、
なに寝言言ってんの?まあ、とにかくタイムについてはおめでとう。自転車については残念でした
 電話は切れた。

〜去年のレポートより抜粋〜


 去年のあの時、あの瞬間から、僕の中の自転車熱というのは、急激に萎んだと言って過言ではない。
 宇宙の始まりはビック・バンと呼ばれている。現代科学では宇宙が膨張し続けるか、それともいつか膨張をやめ、いずれ収縮に転じ、ビック・クランチと呼ばれる最終状態になるかはまだ解らないらしいがしかし、僕の自転車熱は確実に膨張から収縮に転じ、ビック・クランチまでのカウント・ダウンが、まさに、去年の富士山の五合目で始まったのだった。このウェブ・ページの更新頻度を見ても、それは手に取るように解る。時間の問題だった。

 しかし、完全に熱が消え去ってしまった訳ではなく、種火程度の何かかが心の中に燻っていた。年が明けて、富士クライムのエントリ時期になったとき、うっかり八兵衛に、由美かおるの風呂を覗きながら竹筒で息を吹きかけられた風呂釜の種火のように、なにかがメラメラとわき起こってきた。そう、それは闘争本能と言って間違いないだろう。そう言うわけで、生け贄として、会社の事務所の所長(以下、所長)とWさんを道連れに今年も富士山、そう、あの誰もがご存じ、日本一の山(の五合目まで)を征服せんと欲し、不肖Ochaは立ち上がったのであった(文体が変)。



 時は流れ、とうとう明日富士山へ行く、という土壇場になって、家庭内でちょっとしたトラブルが起こった。
 仕事が終わり、自宅へ帰っても、家は何となく、どんよりと暗かった。なんだか明日、自転車のレースのために富士まで出掛けるのが、はばかられるような雰囲気だった。しかし、宿もレンタカーも予約してしまったし、前日になって「行けません」とか所長やWさんに言ったら、業界から抹殺されるのは必至(大袈裟)である。ここは社会人として、生きる糧を得るために、メンタル的に完全に、ドンキーコングの大ハンマーで打ちのめされた気分だけれども(これが解るのは30代以上の人たちだろう)、自分の自転車に対する情熱はさておいて、生活の為に、ひいては家族のために、今年もMt.富士ヒルクライムに出場する決意をしたのであった(こじつけです)。

 そうして明けて5月31日。富士ヒルクライムは前日エントリの為、富士北麓公園に向かうことになった。家族の「いってらっしゃい」の挨拶も元気がない。年に1回のイベントくらい気持ちよく行かせろっつーの、などと思いながら、8時にレンタカー屋へ到着。天候は、ほら、僕の参加するイベントだから、当然雨ですよ、雨。
 レンタカーを受け取って、一端家に帰り、自転車と荷物を積み込む。そうしてWさんと所長の待ち合わせの場所である会社に向かって車を走らせる。9時半ころ会社に到着。待ち合わせは10時だったのに、所長はすでに会社に来ていた。
 我が社は建設業なので、土曜と言っても働いている人がいる。現場に向かう人々の熱い(冷たい?)視線を浴びながら、所長の自転車と、前日あらかじめ会社に置いておいたWさんの自転車も積み込む。
 そうこうしている間に、Wさん到着。「早いなあ」とWさん。そう、まだ待ち合わせの10時より、ぜんぜん前だった。

 自転車の積み込みが終わった僕たちは、現場に向かう人たちの熱い(冷やかしの?)声援を受けて、一路、富士北麓公園へ向かう。自動車の運転は所長が引き受けた。
 途中、談合坂で休憩を取る。本当はここでブランチを取る予定だったのだけれども、あまりの混雑に、会場で何か売っているだろうと、休憩だけして出発する事に。ここから運転は僕にバトンタッチ。
 そうすると富士北麓公園になんと13時頃到着。去年までとはうって変わっての早い到着。会場への入場も、渋滞もなくスムーズに入れた。駐車場に自動車を駐めて、大会会場へ向かうと、会場は開場したばかり(駄洒落ではない)だった。

開場したばかりのせいか、かなり閑散としている
エントリ会場
舞台もおおよそ準備が完了したとは言えない状態

 開場したばかりのせいなのだろうか、雨のせいだろうか、会場は閑散としていた。舞台の方を見ても、まだまだ準備中と言った感じで、ホントに開場しているのだろうか?と言うような感じ。取りあえず、エントリをすますことに。
 今回のエントリ。たぶん受付の女の子はアルバイトなのだろうが、どういう書類をどういう風に貰って、何を相手に渡すかちゃんと理解しておらず、グダグダだった。おそらくミーティングがしっかり行われなかったのだろう。監督者と思われる年配の男性が、あっちに行ったりこっちで指示したり、大変そう。しかし、何とかとりあえず、無事にエントリして、RTTメンバーに自分の到着をメールする。全員がまだ到着していないことを確認して、売店で焼きそばとたこ焼きをみんなで購入して、自動車の中で食べる事に。Wさんは独自のマイペースさを発揮し、焼きそばを売っているお姉ちゃんに、「2倍金を払うから、大盛りにしろ」と言って、本来売っていない、焼きそばの大盛りを購入していた。しかし、この焼きそば、見事なまでに肉が一切れも入っていなかった。キャベツと麺だけのシンプル焼きそば。それでも美味しいと思うのは、「海の家のラーメンの法則」だろうか。

 食事が終わると、Wさんがおもむろに自転車を下ろし、ペダルを取り付け始めた。Wさんの自転車は直前までショップにドック入りしていて、コンパクト・クランクに交換していたため、未だペダルが付いていなかったのだ。
 しかし、なかなか取り付かない。所長も一緒になって降りてきて、「あー、Wさん、そのやり方、プロっぽくないなぁ〜」などと茶化し、大の大人が(しかも僕から見れば、偉い人たちが)キャッキャ、キャッキャと、普段会社では見られないようなはしゃぎよう。僕はその光景を遠巻きに見ながら微笑む。趣味って、本当に年代を超えて、人の心を近づける物なんだなぁ、と実感。

ペダルを取り付けるWさん。
が、これがなかなか取り付かない……

 そうこうしていると、ごんた51さんから電話。どうやら会場に到着したらしい。エントリ会場で待ち合わせをして、Wさんと所長には車で待っていてもらい、ごんた51さんと合流する事に。
 エントリ会場でごんた51さんを待っていると、やってきましたごんた51さん。今年もご家族で参加。取りあえず息子さんがトイレに行きたいというので、ごんた51家族はトイレへ。するとBELLOさんがやって来た。なんとお兄さんも一緒。BELLOさんのお兄さんとは初対面。しかし、人当たりが良く、喋りやすいので、初対面なのに緊張せず話すことが出来た。ただしBELLOさんのお兄さんは、今回は応援団。勝手に僕がRTT応援団長に(心の中で)任命しておいた。
 みなさんにエントリしてもらっている間、ダンナさんにメール。すると、だんなさんはまだ暫くかかりそう。じゃあ、ショップブースでも見回りますか? という話になって、それぞれショップブースの見学に。BELLOさんはGIANTのメンテサービスを受けると言うことで、GIANTのブースへ。僕も一緒にそれを見学。もの凄い美人のお姉さん達が受付で、ブースの奥には喫茶コーナーまである。至れり尽くせりのサービスである(このサービスを受けるには事前の登録が必要)。ちょっとうらやましい。
 すぐさま、BELLOさんのバイクはメンテナンススタンドに乗せられ、プロのチェックを受ける事に。その間僕たちは、キャッキャ、キャッキャと遊び回る。

すぐさまメンテを受けるBELLO号 メンテの間に……。遊ぶ。

 そうこうしている内に、雨が勢いを増してきた。ブースを回っていた、ごんた51さんと再び合流し、GIANTのブースの喫茶コーナーでみんなで歓談。喫茶コーナーでは、コーヒー飲み放題、お茶菓子食べ放題なのである(ただし、メンテサービスを受ける人が一緒でないとなりません)。GIANT、太っ腹っ!! 
 
 暫くすると所長からメール。「先に宿に行っている」とのこと。どうやら待ちきれなかったらしい。
 雨はどんどん強くなる。舞台ではイベントが繰り広げられているが、みんなテントに逃げてしまい、ほとんど誰も見ていない。なんだか悲しげな光景。でも、こんな土砂降りなら仕方がない。
「ダンナさん、遅いなぁ……」
「まさか、事故とかにあってなきゃ良いけど……」
 などという台詞がチラホラ出始めた時に、「おりゃーっ!!」という台詞とともに(言ってない)とうとうダンナさん到着。早速、全員の無事な再会を祝して、記念撮影。

左から僕、BELLOさん、ダンナさん、ごんた51さん、BELLO兄さん。
1年ぶりの再会を果たした戦士(大袈裟)達。

この状況、実はプロのカメラマンにも撮影されていた。どこかのメディアに、この写真が載っているかも。

 暫く再会の感動の余韻に浸りながら、みんなで歓談。ご老体達に置いて行かれた僕は、ダンナさんに(今回ダンナさんとは宿が一緒)、宿まで乗せていってくださいと懇願。気持ちよくダンナさんは了承してくれた。
 どれくらい喋っただろうか。仲間と、いや戦友と喋っていると、お酒が入っていなくても会話が弾む。ごんた51さんは一回自宅に帰り、BEELO兄弟は石和に泊まるというので、あまり長くはいられない。止めどなく続きそうな話はそこそこに、みんなで明日の健闘を誓い合い、それぞれの寝処へ向かうことにする。

 天候は未だ土砂降り。明日は晴れるのだろうか……。一抹の不安を抱きながら、メンバーはそれぞれの宿へと向かった。

まだ土砂降り。
雨男Ocha。良い仕事してますね〜

(Vol.2へつづく)