「郵産労大阪貯金」 2008年10月31日 第 79号

「郵政民営化見直し」の展望と課題


                   2008年 9月28日 第 79号
                   郵産労大阪府協議会 学習会
  講師: 大江 憲夫さん(前 大阪府協議会議長)


 郵産労大阪府協議会では、新しい歴史的情勢のもとで、いかに「郵政民営化見直し」をたたかっていくかを


テーマに大阪府協議会前議長の大江憲夫さんを講師に学習会を行いました。掲載スペース上その一部です


がお伝えしたいと思います。



※ 『郵政問題が再び大きく取り上げられるようになってきました。朝日新聞がきのう大特集を組みましたし、


もう永田町にも自民党にも郵政民営化の熱気はない。冷めている。それから、「もう見直しは避けられない」と言った


り、そもそも森元首相ですら「郵政民営化が良かったのか、悪かったのかわからない」ということを発言したでしょ。


 だから、そもそも論の是非論からいってどう見直すかを含めて、今ものすごい国民的関心を呼んでいるわけです。

 

 そうして、その問題をきっかけにして民主党と国民新党がいっしょになろうか(という動き)、(結局は成功しませんで


したが) それから自民党の内閣や要職に、次々と郵政の造反組みが復活する。こういうことの中で、日本郵政グル


ープが今動揺しているという記事がいろいろ出ていました。



※ で、3年後の見直し( 3年ごとに見直す最初の見直し)が来年 4月からですが、その作業を既に中断したと


いっています。西川日本郵政持ち株会社の社長が、つい 2,3日前に、『見直し論が議論されているが、われわれは現


行法に従って準備を進めていく(株式の上場を含めて)。


 それから、生田元総裁が(事実上更迭されました。民営化後もやりたかったそうですが) 4,5日前に出た週刊誌で


(腹いせも あったでしょうが)、「民営のプロセスが後退している。」と述べています。彼は小泉に請われて総裁になっ


た男ですから、「ぜひとも民営化を成功させないと日本の国際的信用も落ちる」と言っています。



※ そんなふうに揺れている。その揺れの原因、見直し論が再登場した原因というのは、やっぱり国民の怒り


があって構造改革の本丸と言われた郵政民営化は、実施1年で既にいろんな問題点が出ている。


 サービスの後退、年金受給等の金融サービスが受けられるのだろうかという心配が、不安でずっと出ている。そうい


うねり のような背景がある。それが今の「民営化見直し論再熱」の本当の原因だと思います。



※ 次は見直しのポイントはどこかということですが、三つあります。


@ 金融ユニバーサル、貯金や保険を今までと同じように、全国津津浦浦に提供するかどうか


A グループ全体の株を売却 しないで、凍結して国が持ち続けること


B サービス低下の実態を検証して、サービスの向上を図ること


 この三点の内、下の二つは去年の参議院で民主、国民新党、社民が共同提案して、共産党も賛成した参議院の見


直し法案に盛り込まれているのですが、金融ユニバーサルだけは欠落しているのです。


 ここが非常に重要なところです。



※ それから、ついこのあいだ民主と国民新党が合意した中身は、


「1.日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却を凍結する「郵政株式売却凍結法案」を早期に成立させる。


 2.四分社化を見直し、サービスを公平、簡便に利用できる仕組みを再構築する。


  (水面下では、郵便局会社と郵便事業会社を一つにせよという話も あるようです。

 

 3.郵政三事業の一体的サービス提供の保証と株式保有を含む郵政会社のあり方を検討する。


 ここが一番 曖昧なんですが、金融サービスをこれからも続けていくとは書かれていません。」


 

※ (民主党の本音なんですが) 一ヶ月前でしたか、民主党の今度の選挙公約が出たんです。


 はっきりしてたのは、郵便事業はこのまま継続する。ゆうちょは縮小。かんぽは廃止。ところが国民新党がいろんな


選挙協力で押し返して、こういう合意ができたんでしょうが、民主党の本音はここ(選挙公約)にあるんではと今でも思


っています。



※ 株式問題ですけれども、どういうことなのかということです。


 みなさんの内、持ち株会の会員になっている人がいるかも しれませんが、あまり、株の問題を持ち株会社や当局が


明らかにしないですけれども、今は政府が、持ち株会社が全部の株式を持っている。この日本郵政の株式を政府が


100%持っている。ところが今の法律でいくと、郵便事業会社と郵便局会社の株は持ち株会社が保有し続ける。ゆうち


ょ銀行とかんぽ生命については 2010年に上場を始めて、 2017年の 9月末には完全に( 100%)売り切りなさい、とな


っています。



※ そうするとね、今は郵政グループと言っていますけれど、全部売り切ったらグループじゃなくなるでしょ。


 そういうことでね、一体経営は不可能になる。上場を凍結させればまだ、ここ(持ち株会社)が持ち続けるわけですか


ら、グループ経営も可能なんです。いろんな見直しも可能になる。というのが凍結法案の中心点です。



※ それとね、郵便局会社ですけれど、今郵便局会社の仕事(特定局も含めて)で言われているのは、10人局


に利用者が来るとしますと、ゆうちょが 7人なんです。郵便が 2人、かんぽが 1人。だから、特定郵便局、郵便局会社


の収入の 8割はゆうちょとかんぽで成り立っている。



※ これはね生田(元総裁)が


 『ゆうちょとかんぽが郵便局会社のコストの 8割を負担している。ゆうちょとかん


 ぽが自由に撤退できないような法律を作ったら、市場で生き残れないではないか。』と言うんです。ゆうちょとかんぽ


が撤退したって、自力でやっていけるような力を、郵便局会社はつけるんだ。そういう若い経営者もたくさんいるのだと


いうわけですね。ー そんなことできるわけがないのですが。



※ そういう流れの中で、「郵政三事業の現状と今後」ということを考えてみますと、


 ゆうちょ銀行は信託の運用益や株価の下落で、当初利益を下回っている。預金残高が減り続けているんです。07年


度 182兆円なんです。(2008年 3月末)  99年度には 261兆円あったんです。 3割減ってるんです。預ける人より引き


出す人がどんどん増えてる。


 それから、民営化に伴って、新たに預金保険料や消費税の負担が生じている。新しい住宅ローン、スルガ銀行とか


ね、いろんなとこと提携をやっている。どれもこれも軌道に乗っていない。失敗していると言われています。



※ もし株を100%売却した場合、純粋な民間企業になるわけで、そのときにどうなるかということですが、資


本主義の世の中ですから、儲けることが第一、利潤追求が第一、成長が第一、株式をいかに上げるかが第一、配当


金をいかに高く払うか、これが一番になるんですね。


 ですから、何が何でも利益を上げろということでね、もし株主総会で、「うちの会社は景気も低迷しているからさっぱり


ですわ、トントンですわ。」と言ったら、「社長交代せよ」 とやられるでしょ。ですから、本当に民営化になったときには、


いかに利益を上げるか、そのためにいかに人を減らすか、そういうことにつながっているということです。



※ 今年の 8月の話ですが、ドイツポストバンク。(ドイツは1995年に郵政民営化したんです。)それまでの郵便


貯金ですが、これがヨーロッパの金融再編の流れの中で、ドイツ最大手のドイツ銀行の子会社になる方向が固まっ


た。ドイツが郵政民営化を先行した国ということで、日本は民営化のモデルにしたという経緯があります。


 日本でもいつでも乗っ取りや買収があり得るということは考えておく必要があります。


                         ― 中略 ―


※ 郵政三事業、これまでは郵政省、郵政事業庁、郵政公社、それから今日に至っているわけですが、国営、


公共の事業として、公共の福祉の増進というのを目的の第一条にずっと挙げてきたでしょ。だから、よく言われたんで


すけれど、「儲けたらダメ。儲けない、しかし赤字を出さない。こういう事業にしなさい。」という約束があったんです。そ


れを民営化したから、いきなりたくさん利益を生む会社にしなさいと言われても、できるはずないんです。


 だから、できるはずのないことを民営化の過程でやろうとしているということを言っておきたいと思います。



※ 最後になりますが、総選挙で新しい政治への転換をということです。医療、教育、労働、どの問題でも二つ


の異常。大企業いいなり、アメリカいいなりということが国民の上におおいかぶさっている。


 そのなかで「資本主義はもう限界ではないか。」 これは共産党の志位委員長がサンデープロジェクトに、田原


総一朗に呼ばれた有名な話なんです。



 田原総一烽ヘ『資本主義はもう限界だと言われている。だからどうしたらいいのか、志位さんに来てもらった。』とい


うことで取り上げた番組なんですね。そういうふうに資本主義そのものの問題。温暖化だとか食糧問題だとか、いろん


な点が新しい展開ではないかと思います。


※ それからもう一つ。アメリカの横暴なんです。ちょうど昨年の10月、われわれが民営化になったときに、アメリカは


年次改革要望書を出したんです。


 「米国は日本郵政公社の民営化と改革に引き続き重大な関心をはらっている。郵貯、保険、エクスプレス郵便市場


で、郵政株式会社及びその子会社、グループ会社と民間の競争相手との間に対等な競争条件が整備されることが不


可欠である。」 民営化がスタートしたときに、こういう要求を突き付けるぐらい執拗なんですね。



 二大政党が この大企業いいなり、アメリカいいなりにどういう態度をとっているか、よく見極


めて欲しいですね

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