9.2工程管理

9.2.1工程計画
 建築工事は、決められた工期内に図面・仕様書などの契約図書に基づいて仕上げなければならない。工程管理は経済的な面も考えながら能率的に工事を進めるように計画する。
工程を計画する段階では、施工方法、施工に使う機器、使える仮設資材、資材の発注・搬入、製作物の製造加工期間、安全面の確認、季節による自然的、社会的な条件、専門工事業者の能力など施工全般との関連を総合的に判断して計画する。

9.2.2工程管理
9.2.2.1工程管理の手順
 施工計画を立てる。
 施工法、施工の順序などの基本方針を決める。
 施工作業の適切な作業時間を決める。
 工程表を作る
 進捗状況と工程表に照らして、作業の促進、調整を行う。

9.2.2.2工程表の作成
 工程表の作成にあたって検討する事項
 (1)基本検討事項
  対象となる作業の先行作業
  その作業の後続作業
  平行して行える作業
  各作業の所要日数

 (2)労務・資材検討事項
  各作業の1日あたり労務者数の平均化
  専門工事業者の請負能力
  動員能力、施工技術力など
  資材の納入期日
  工場製作品の製作日数
  鉄骨、サッシ、タイルなど注文製作品

 (3)その他の検討事項
  施工の関連作業工程
  施工図の作図体制など
  関連作業との取合い調整
  設備工事の試運転工程の確認
  受電、水、ガス、排水の本管接続など
  施工できない特殊な期間
  年末・年始、お盆、農繁期など
  周辺の状況
  休日、夜間作業などの時間外作業の制限など。
  季節の天候
  余裕日数

9.2.2.3進度管理
 工事の遅れを早期に発見し、原因を調べて適切な対策をとること。

進度の監視
 工程表と比較して早めに遅れを把握する。原因調査
 遅れている工種を確認し、その原因が何にあるかを調査する。労務、資材、事故など

対策、措置
 遅れた日数による以後の影響を検討、労務者の増員、残業、施工法の改善、手作業の機械化施工への切り替え・工場加工、資材納入期日の再確認

進度管理曲線
 工程を時間と工程進捗率の軸で表すと、平均施工速度で進めば、予定は0から100%までの直線で表される。実際の工程はさまざまな原因でずれが生じる。そこで、このずれの適正限界を設定して、下方限界曲線と上方限界曲線を描くことができる。この曲線はバナナの形になるので、バナナ曲線という。
これによって、皇帝の遅れが大きくなって回復不可能の事態になるのを防ぐ。

9.2.2.4施工速度
経済速度、最適工期
 施工には、材料費や労務費などの数量に比例する変動費のほかに、数量にかかわらず必要な固定的な経費がかかる。したがって施工速度を速めて早く終わらせれば、固定的な経費の負担が軽くなって、一般的に安くなる。
 しかし、極端に早めると突貫工事の状態になって原価は急激に高くなる。その中で一番経済的な速度を経済速度という。

突貫工事
突貫工事はやむを得ず行われるもので、そのため次のような無理を生じて原価が高くなる。
@通常以上の賃金の支払いが生じる。残業の割増手当て、深夜手当てなど。
A消耗材料の使用量が増す。
B材料の手配が間に合わないときなどに生じる労務の手待ちの発生。高価な材料の購入。
C仮設設備の増設
D監督員の増員

9.2.3工程表
9.2.3.1工程表の種類
 工程表には横線工程表(バーチャート)、斜線工程表、ネットワーク工程表などの種類がある。それぞれ次のような特徴がある。

9.2.3.2横線工程表(バーチャート)
建設工事で広く使われている。たてに各工事・作業を列挙して、横軸に日数や暦日をとった図の中に、それぞれの作業や工事の実施期間を横線で記入したものである。作業の開始日、終了日、所要日数がわかりやすい。また、ある日に行われている作業や工事が一目でわかる。

   

                バーチャート工程表

9.2.3.3斜線工程表
 斜線工程表は、横軸に暦日、縦軸に工事の出来高を目盛った図にあらかじめ、予定の出来高曲線を作っておいて、実施の出来高を毎日プロットして予定曲線とのずれを確認するための工程表である。出来高の曲線を速度曲線という。通常、S字形になる。

9.2.3.4ネットワーク工程表
 ネットワーク工程表は、○と線で表現され、先行作業とそれに続き皇族作業の関係をはっきり表したものである。
ネットワーク工程表は、作業の前後関係が分かりやすいほか、余裕のある作業と余裕のない作業の区別や、作業が遅れた場合の後続作業や全体の工程に及ぼす日数の計算ができるなどの特徴がある。



               ネットワーク工程表

9.2.4ネットワーク工程表の手法
ネットワーク工程表の表現形式には、アロー型、サークル型がある。
アロー型
 作業を矢印で表示する。

サークル型
 作業を○印で表示する。

9.2.4.1基本用語
 (1)作業(Activity・アクティビティ)
  ネットワーク表示に使われている矢線は一般にアクティビティと呼ばれ,作業活動,見積り,材
料入手など時間を必要とする諸活動を示す。アクティビティの基本要点は次のとおりである。
 @作業に必要な時間の大きさを矢線の下に書く。この時間をデュレイション(Duration)といい矢線の長さとは無関係である。
 A矢線は作業が進行する方向に表わす。
 B作業の内容は矢線の上に表示する。

 (2)結合点(Event・イベント)
  丸印(→○→)は作業(またはダミー)の結合点(Event)を表わし,作業の開始、および終了時点を示す。(入ってくる矢線の作業が終了する時点,出て行く矢線の作業が開始される時点)結合点の基本要点は次のとおりである。
 @結合点には番号(正整数)または記号を付ける。これを結合点番号またはイベント番号と呼び作業を番号で呼ぶことができる。
 A結合点番号は同じ番号が2つ以上あってはならない。
 B番号は作業の進行する方向に向って大きな数字になるように付ける。
 C作業はその矢線の尾が接する結合点に入ってくる矢線群(作業群)がすべて終了してからでないと着手できない。

 (3)ダミー(Dummy)
  点線の矢印(――→)は架空の作業(Dummy)の意味で,作業の前後関係のみを表し作業および時間の要素は含まない。図4.1(a)のような作業において,作業Rは作業Aの他に作業B,Cにも関係があり,作業A,B,Cが終らないと着手できない場合は,図2.4.1(b)のような表示になる。このようにダミーは、作業とは区別され,作業の相互関係を結び付けるのに用いる。


図4.1ダミー・アローの使い方

9.2.4.2基本ルール
(1)先行作業と後続作業
結合点に入ってくる矢線(先行作業)がすべて完了した後でないと,結合点から出る矢線(後続作業)は開始できない。


図4.2 先行作業と後続作業



図4.3 同一結合点間の矢線の数の制限   図4.4 ダミーによる前後関係の表示

(3)ダミーによる前後関係の表示
2つの作業が平行して行われる場合は,図4.4のように結合点を設けて一方をダミーでつなぐ。
ダミーには時間的要素はなく,作業の前後関係のみを表す。

(4)開始点と終了点
1つのネットワークでは開始の結合点と終了の結合点はそれぞれ1つでなければならない。

(5)結合点番号
結合点番号は正整数とし,1つのネットワークでは同じ番号が2つ以上あってはならない。番付けは、矢の頭のほうを必ず大きくする。番号は飛んでもかまわない。

9.2.4.3作業時刻
作業順序の前後関係を決めてネットワークが組立てられて、図が完成すれば、時間を組み込んで日程計画を立てる。工事は完成期限が決められているので,この時間的な制約に対してそれぞれの作業時間を調整することが必要になる。その管理に必要な管理時刻等を次に述べる。

(1)最早開始時刻
その結合点iにおいて,作業 i → j が最も早く開始できる時刻を最早開始時刻(E・S)という。最早開始時刻の表示方法は,ここでは( )で表示する。時間計算の手順としては,矢線の尾の接する結合点の最早結合時刻にその作業の所要時間を加えて矢線の頭の接する結合点の最早開始時刻とすればよい。
スタートを0とし@→Aの作業に3日かかるとすれば,結合点Aから後続する作業の開始可能日は3日である。ただし,結合点Cのように2つの作業が先行している場合は@→A→B→Cの経路では8日間,@→A→Cの経路では6日間を要する。したがってCのE・Sは8日になる。
すなわち先行する作業群の最早終了時刻の内で最も時間の多いものが後続する作業のE・Sを決定する。このようにして最終結合点E・S16日が求められる。これが計画の所要時間を表すことになる。



図4.5 最早開始時刻

結合点@から後続矢線の開始可能な時刻を機械的に順次計算する手順はと次のようになる。
     
最早開始時刻の計算

結合点 先行 工期 先の結合+工期 最早開始時刻
@ @ 0 0
A @−A 3 3 3
B A−B 5 8 8
C B−C 0 8 8
A−C 3 6
D B−D 5 13 13
C−D 2 10
E D−E 3 16 16



(2).最遅終了時刻
結合点Eの最早開始時刻16日は,結合点Eまでの仕事全体が完了するのに要する時刻をさしている。これに対し工事の所要時間以内に完了するために各結合点が遅くとも終了していなくてはならない時刻を最遅終了時刻(L・F)という。最遅終了時刻の表示方法はこのテキストでは[ ]で表示する。
これは最終結合点のE・Sを所要工期としてE・Sの計算の場合とは逆に,先行作業の所要時間を図4,6のように順次引き算して算出する。例えば結合点Cの最遅終了時刻は結合点Dまでの所要日数13日からC→Dの所要日数2日を引いた11日となる。しかし結合点Aの最遅終了時刻はA→Cの経路で計算すると8日([11]-3=8)に終了していれば間に合うが,A→Bの経路では3日([8]-5=3)に終了していないと間に合わない。したがって,結合点Aの最遅終了時刻は3日となる。図の[ ]内の数値がL・Fである。(結合点Aのように矢線の尾が2っ以上ある結合点については,最小値をとる。)



図4.6最遅終了時刻

これらの結合点時刻は,工程管理上次のような重要な意味をもつ。

@暦日との関連をつけられる。
Aフロート(余裕時間)計算のもととなる。
B最早開始時刻=最遅終了時刻の結合点は,クリティカルイベント(Critical Event)と呼び,後述するクリティカルパス(Critica1Path)は必ずそこを通る。

(3)最早終了時刻
その作業が哀も早く完了できる時刻のことで,その作業の最早開始時刻に作業の所要時間を加えたものである。




図4.6における作業A→Cを例にとると,最早開始時刻は3日,最早終了時刻は6日である。

(4)最遅開始時刻
その作業が遅くともその時刻に開始されなければ予定工期までに完成できないという時刻のことで,その作業の最遅終了時刻からその作業に要する所要時間を引いたものである。




図4.6で,作業A→Cの最遅終了時刻は11日で最遅開始時刻は11-3=8日である。

9.2.4.4フロート(余裕時間)
結合点に2つ以上の作業が集まる場合,それぞれの作業がその結合点に到達する時刻には差があるのが普通である。そのとき,それらの作業の中で最も遅く完了する作業以外のものには時間的余裕が存在することになる。これをフロートと呼ぶ。図2.4.7のネットワークで表示されている工事の全体を完成するに要する時間は15日である。その経路として@→A→C→Dと@→A→B→C→Dとの2つがある。経路A→B→Cは5日,A→Cは8日かかるので前者は3日の余裕があることが解る。この経路は3日延びて,8日になっても工期に影響しない。5日でやれば,開始を3日遅らせてもよくなるので,8日の経路に対して余裕があるという。



図2.4.7 フロート

(1)トータルフロート(最大余裕時間)
任意の作業(i・j)内でとり得る最大余裕時間をトータルフロート(T・F)と呼ぶ。例えば,図2.4.6で作業A→Cの作業は3日に開始して3日間かかるから6日には完了する。しかしCの最遅終了時刻は11日迄に完了していれば工期16日に影響を与えないので11-6=5日間の余裕がある。
同様にしてC→Dでは13-10=3日間の余裕がある。しかしながらA→Cのトータルフロートを全部この作業で使った場合,図2.4.6からもわかるように後続のC→Dの作業のトータルフロートが無くなる。このように先行作業ではトータルフロートを使うと後続作業のトータルフロートに影響する場合がある。トータルフロートは各々の作業に含まれるフリーフロート(F・F)とデペンデントフロート(D・F)(後述)を合計したものから成立っている。

トータルフロートの計算式


ここに




図4.6 を例にとると計算例のようになる。

T・F の計算

 作業T・F
作業 T・F
@−A 0
A−B 0
A−C 5
B−D 0
C−D 3
D−E 0


 トータルフロートの性質は次のとおりである。
  @T・F=0の作業をクリティカル作業という。
  AT・F=0ならば他のフロートも0である。
  BT・Fはその作業のみでなく前後の作業に関係があり,一つの経路上ではT・Fに含まれるD・Fは共有されているものである。したがって任意の作業において,そのT・Fを使いきればそのD・F分だけ後続作業のT・Fは少なくなる。

 (2)フリーフロート(自由余裕時間)
  トータルフロートの中で自由に使っても,後続する作業に影響を及ぼさない余裕時間をフリーフロート(F・F)と呼ぶ。たとえば図2.4.6のA→Cの作業が完了するのが6日で,Cの最早開始時刻は8日であるから8-6=2日間は自由に使っても後続する作業C→Dのフロートには影響はない。ブリーフロートは作業の最早終了時刻と後続する結合点の最早開始時刻との差でを求められる。

  フリーフロートの算定式

    

 フリーフロートの性質は次のとおりである。
  @F・Fは必ずT・Fと等しいか小さい。F・F≦T・F
  Aクリティカルイベントを終点とする作業のF・FはT・Fに等しい。
  Bフリーフロートはこれを使用しても,後続する作業には何らの影響を及ぼすものではなく,後続する作業は,最早開始時刻で開始することができる。

 (3)デペンデントフロート
  後続作業のもつトータルフロートに影響を与えるフロートをデペンデントフロート(D・F)またはインターフェアリングフロート(I・F)と呼ぶ。
  図4.8の@→Bのトータルフロート8日には,(8日のトータルフロート)−(6日のフリーフロート)=2日のデペンデントフロートが含まれている。この場合@→Bで8日間のトータルフロートを全部使用すると,後続する工程のトータルフロートはすべて2日ずつ減少する。同じようにB→Dの作業に計算される7日のトータルフロートは,この作業のブリーフロートが0なので全部がデペンデントフロートとなり,ここで使ったフロートはすべて後続する工程に影響を与える。

        

                 図2.4.8

作業 トータルフロート フリーフロート デペンテントフロート
@→A 0 0 0
@→B 8 6 2
A→B 2 0 2
A→C 0 0 0
B→C 2 2 0
B→D 7 0 7
C→E 0 0 0
D→E 7 7 0



デペンデントフロートの算定式


いい替えるとデペンデントフロートは使わずにとっておけば,後続する他の工程でその分を使用できるフロートであり,フリーフロートはその作業についてだけしか使えないフロートで,ため込みのきかないものである。

9.2.4.5クリティカルパス
ネットワークの中にフロートが0の経路クリティカルパスという。ネットワークを組む場合,このようなクリティカルパスになる経路が,必ず1本以上できる。この経路の通算日数が工期を決定しているので,期限内に計画を完成するためには,クリティカルパス上の作業を遅れないように工程管理を行うことが,最も効果的な手段であるといってもよい。
クリティカルパスは作業工程上,時問的に最も長い経路にあたるため,作業が順調に進められる限り,クリティカルパスには変動はないが,作業条件の変化で工期短縮が必要になった場合には,この経路上で最も多くの日数を短縮しなくてはならない。
例えば図2.4.17のB→Dの工程で7日間のトータルフロートを全部使ってしまうとB→D→Eの経路はT・F:0となり,クリティカルパスになる。同時にA→Cの工程で見積り日数の9日が,実際には8日ですむことがわかったとすればA→Cの経路にはユ日の余裕ができ,その経路はクリティカルパスではなくなる。このように,クリティカルパスは一定しているものではない。

クリティカルパスの性質は次のとおりである。
@クリティカルパス上の作業のフロート(T・F,F・F,D・F)は0である。
Aクリティカルパスは開始点から終了点までのすべての経路の中でもっとも時間が長い経路である。いいかえると,この経路によって工期は支配されている。
B工程短縮の手段は,この経路に着目しなければならない。
Cクリティカルパスは,必ずしも1本ではない。
Dクリティカルパス以外の作業でも,フロートを消化してしまうとクリティカルパスになる。
Eクリティカルパスでなくともフロートの非常に小さいものは,クリティカルパスと同様に重点管理をする。
Fネットワークでは,クリティカルパスを通常,太線で表わす。

9.2.4.6日程短縮
9.2.4.7フォローアップ
9.2.4.8配員(マンパワースケデューリング)

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