その12:脱力スター・ウォーズ


スター・ウォーズ。

映画史に燦然と輝く、スペースオペラの金字塔。その存在は数多のファンを、比類なき魅力と興奮の渦に引きずり込む。壮大かつ緻密な世界観に酔いしれる快感と、映画というものの楽しさを教えてくれたのが「スター・ウォーズ」であった、といっても、私にとっては過言ではない。

 

しかしその「スター・ウォーズ」第一作目が公開された1978年。

何を血迷ったのか、「スター・ウォーズ」のテーマに日本語で歌詞を付けたレコードが発売されたと言う。

 

今ではあまりにも有名な、ジョン・ウィリアムス作曲のあのメイン・テーマ。それに歌詞を付けた?

ちょっと待て。ちょっとおかしい。元々あれは「歌」ではないぞ。それらしきメロディラインはあるものの、それはオーケストラが奏でる重厚なメロディの集積である。それを「歌」にして?あまつさえ「歌詞」を付けた?しかも「日本語」?

さらに。その歌を歌っているのは、「およげ!たいやきくん」でおなじみ、子門真人である。あのパワフリャーなボイスで朗々と歌い上げるのか?「スター・ウォーズ」のテーマを?

 

歌い上げてました。

 


 

『スター・ウォーズのテーマ』

by 子門真人

行け はるか遠く 銀河系をこえて
飛べ 王女レーア 救うのさ必ず

燃え上がる正義の炎 暗い空をこがし
宇宙の平和を守るため ダース・ベーダを滅ぼすぞ

行け ルークには キャプテンがついてる
飛べ ファルコンよ 星屑を蹴散らし
さあ 彼方へ

陰謀渦巻く 美しい星
悪いやつらの 手には渡せぬ
囚われの身の レイアはどこだ
夜空に ビュンビュン 飛び交う光

赤い火を吹く(レーザー光線)
ライトサーベル(ふりまわせ)
そら危ない(ブンブンブンブンブンブン)
そこだチャンス(ルークがんばれ)

作戦はじく(R2−D2)
うまく頼むぞ(C3-PO)
今こそこの力 一つに結んで進めどこまでも

追え レーダーに 敵の影とらえて
撃て ウイングファイター 粉々にするまで
さあ 彼方へ


 

や、やめてください……。

これは「スター・ウォーズ」に対する冒涜だ――ではなくて、

笑いすぎて涙が止まりません。

 

曲調はまるで昔のアニメソングかヒーローもののテーマのような、チープなアレンジに様変わり。やけにテンポが早く、元曲の重厚さはカケラもなし。おまけにイントロには「ピョア〜」とかいう変な電子音(SE)が入っていたりします。

 

オーケストラの曲に無理やり付けたメロディは、これが思いのほかうまくラインとして乗っているのだけど、強引にメロディラインを付けてしまったばかりに、もうほとんど別の曲です。

というか途中から実際別な曲にシフトしているようなのですが(「カンテナ酒場のテーマ」)、編曲が絶妙すぎてそんなのわかりません。

 

歌詞もおかしい。別に銀河系は越えないし、レーアじゃなくてレイアだし、正義の炎を燃やすってのもなんか違うし、滅ぼすのはダース・ベイダーじゃなくて帝国軍だし、っていうか”ダース・ベーダ”になってるし。

上記歌詞以降も

「ライトサーベルふりまわせ」だの、「ルークがんばれ」だの、世界観を無視しまくった大暴走。

 

極めつけは、歌が始まる前に、歌い手の子門真人が

 

「スター・ウォーズ!

スター・ウォーズ!

スター・ウォーズ!

 

って3回くらいシャウトします。

 

笑い死にさせる気でしょうか。

 

ジャケットの絵も、とてもスター・ウォーズとは思えないレトロ感たっぷりのイラストです。昔の空想科学絵本みたいな。

 

しかもこのレコード、ルーカスサイドには何の許可も取っていなかったらしく、ジョン・ウィリアムスからクレームがついて発売禁止になったらしいです。

ジョン・ウィリアムスからクレームが来たってのは、ある意味スゴイ武勇伝ですな。

 

いやあ、でもカッコイイよ、この曲。子門真人の熱唱が、言い知れぬ感動(と笑い)をもたらしてくれます。カラオケで歌いたくなること請け合い。今は企画もののCDにも入ってるらしいので、これは聴くべし。

♪ゆ〜け〜〜〜は〜るかと〜おく〜〜〜ぎんがけ〜いお〜〜〜こえぇて〜

 

2003/7/6