その4:のび太はのび太


毎年この時期になるとやってくる、恒例の日本映画のシリーズがある。寅さん?それはもう作りたくても作れない。釣りバカ?それは正月だろう。極妻?あれはもういいよ、ほんとに

対象は子供たち、つまりアニメである。ポケモンやクレヨンしんちゃん(これっていまだにやってたのか……)よりももっと歴史が古い。そう、ドラえもんである。

映画ドラえもん「のび太と翼の勇者たち」である。今作で第22作を数える長編ドラえもん。一体いつまで続くのか。尊敬する藤子・F・不二夫先生が逝去されてはや数年。それでも映画版は終わらない。映画の原作漫画は違う人の手によっていまだに描かれていたりする。いやいや、何事も続けるということは並大抵のことではない。この息の長さには拍手を送りたいもんである。

しかし。ここで声を大にしていいたいのは。映画版ドラえもんは登場人物たちがまるで別人ということである。

気弱で根性なしなのび太が、危険をも顧みない勇敢な男になってみたり、わがままで乱暴もののジャイアンが人に優しくてカッコよかったりするわけである。ずるがしこさにアイデンティティがあるとさえいえるスネ夫は、ただの目立たないキャラだったリするし、しずかちゃんに至っては、入浴シーン激減である。

何かが違う。みんながみんな人格豹変、いってみればジキルとハイド、ちょっと古いな、いってみればノーマン・ベイツ、これも古いな、ウルトラセブンとにせウルトラセブン……まあいいや、そんな感じ。(投げやり)

唯一普段と変わらないように見えるのがドラえもん自身だが、映画では意外と壊れたりするから侮れない。

いっておくが私はドラえもんを否定しているのではない。むしろ、ドラえもん大好き野郎なのである。生まれて初めて買ってもらった漫画が「ドラえもん」第2巻だったということもある。

……母ちゃん、なぜ最初が2巻?

シリーズものは一から観なければ気がすまない私にとって、これはある意味屈辱だった。といいたいところだが、がきんちょだった私にそんな賢い頭があるわけもなく、ドラえもん第2巻は擦り切れるほど読み返して本当に擦り切れてしまい、途中のページが行方不明になったり、まして表紙カバーなんぞ「そんなのあった?」ってな状況になったのはいうまでもない。

ちなみに第2巻の最初の話は「あんきパン」である。

そんないきさつもあって、私はドラえもんは断然漫画派だ。アニメも嫌いではないが、あの漫画版の独特の間がアニメには今ひとつ欠けている気がしてならない。ドラえもんの泣ける話があるとすれば、これはもう漫画のほうが断然泣ける。例えば映画版の同映にもなった「さようならドラえもん」。ドラえもんで唯一の公式最終回である。

あらすじ:未来に帰らなければいけなくなったドラえもん。そんな彼に心配をかけまいと、一人でジャイアンに立ち向かうのび太。殴られても殴られても、のび太はジャイアンに突っかかっていく。

「ぼくだけの力できみにかたないと……」

「ドラえもんが安心して……」

「帰れないんだ!」

(てんとう虫コミックス第6巻より)

 

ぐふっ(泣)。

……。

失礼。ちょっと涙ぐんでしまった。この話は人に話して聞かせるだけでいつも泣けてしまう。「クララ、立ってるわ!」とハイジが叫ぶシーンより私には強烈なのである。

とはいえ、もう20年以上も続くアニメ版はすごい。いまや頭に浮かべるドラえもんの声は大山のぶ代以外には考えられず、タイムマシンの飛ぶ音は、あの独特の「ヒ〜ホ〜ホワァ〜シュパラ〜」という、活字にしたらなんだかワケのわからない音以外思い浮かばない。悪く言えば印象が固まってしまったわけだが、よくいえばこれだけ浸透しているだけに、最早伝統とさえいえるだろう。

ちなみに、しずかちゃんとワカメちゃんが同じ声だと聞くとちょっとガックリくるが、のび太とドロンジョ様が同じ声だと聞くと、ちょっぴりドロンボーな気分で素敵である。

ところで私はドラえもんの声真似が得意だと自負しているが、いまだかつて似ているといわれたためしがない。不思議だ。こんなに似てるのに。練習不足だろうか。よし、さっそく練習だ。

う〜ふ〜ふ〜ぼぉくドラえもんでぇす。

 

うーん、激似!

――まあそんなことは置いといて、映画になればそれだけスケールアップせざるを得ないし、そこは特別なのだということで納得するとしよう。

ちなみに、今回の同時上映は「がんばれ!ジャイアン!!」だそうだ。

あらすじ:妹ジャイ子の描いたマンガの原稿が風で飛ばされた!なくなった1枚を探して、ジャイアンが大奮闘!

なんだか、すっげー観たい。

でもまあ、いくらカッコつけようが、のび太は所詮のび太であり、映画が終わればまた元ののび太に戻ってくれるに違いない。「のび太のくせに生意気だ」と言われてこそののび太だ。そして今日ものび太はのび太らしく、家に帰ってくるなり「ドラえもほ〜ん」と滝のような涙を流すのである。これぞ真ののび太道である。

なんだ、のび太道って?

2001/3/21