その8:映画館における道徳的言動の考察


家でビデオを観るのとは違い、映画館では他にも多くの人が一緒になって映画を観る。ある意味公共の場だ。したがってそれなりのマナーというものがある。

例えば、「映画の内容を言わない」。こんなのは常識中の常識なのだが、実際にそういう人がいるので困ってしまう。こっちがこれから観ようと入り口前に並んでいるとき、前の回が終わって出てきたとたん、こちらのことなどまるで意に介さず結末についてしゃべりだしたりする。しかもなぜか声のでかい女の子に多い(気がする)。そもそも映画や小説の結末をまだ観てない人の前で断りもなく言うようなヤツは、人間的に信用されないので注意すべきである。

そんなマナーの中でも、比較的気づきにくい事柄をここに掲げてみた。

 

1.寝ない

いや、別に寝るのはいい。暗いところでゆったり座っていたら、眠くなる人もいるだろう。しかしいくら気持ちいいからといって、大イビキをかいてはいけないのである。うるさいのである。

ところが劇場には、どう見ても「あんた寝に来ただろ」という人もいたりして、なんとも困ってしまう。

例えば思い切りラブストーリーな映画に、競馬新聞片手に持ったコ汚いおっさんがいたりすると、これはどう見ても怪しい。イヤ、コ汚くても愛に飢えた、あるいは愛のあふれる人なのかもしれない、と一応思ってみるが、案の定始まって10分でフンガフンガフゴーである。

時には長蛇の列ができる人気作でもそういう人がいる。なぜわざわざ並んでまで寝に来るのか?そこが実に謎で興味を引かれる。でもうるさい

イビキをかく人は一人で観にいかず、寝たら起こす人を同伴していくべきである。でもその同伴者まで寝ちゃったりしてイビキの二重奏だったりしたら面白いな。でもうるさい。

 

2.いい場面で声を出さない

コメディでの笑い、ホラーでの悲鳴などは別にいい。それはあっても当たり前だし、むしろシーンの共有を感じたりして、悪くない。だがしかし、「あっ」と思っても、それを本当に声に出してはいけないシーンというのだってある。

昔観たある映画でのラストシーン、一瞬音が全て途切れて、そこに思いがけないシーンが映り、直後エンディングテーマが流れて、それが言い知れぬ感動を与える、そんな演出のシーンであった。

本来なら私もそこでそれなりの感動を得て帰路に着くはずだった。しかし、しかしだ。無音になったその瞬間近くに座っていたオバハンが、その思いがけないシーンに驚いたのかデカい声で

「あら!」

と言ってしまい、その瞬間私の感動はそのオバハンに対する「あら、じゃねえ!」という憤慨に取って代わり、感動もくそもなくなってしまったのである。まったく無音のシーンのため、それは増幅され、劇場中に響き渡り、その映画の感想は「オバハンがあらと言った映画」に成り下がってしまった。恐るべし、オバハンパワー。

 

3.マクドナルドは持ち込まない

よくマックをテイクアウトして持ち込む人がいるが、あれはやめて欲しい。匂うのである。マック臭がぷんぷんするのである。特にイモだ。

別にマックが嫌いなわけではなく、むしろ好きなのだが、ちなみに一番好きなのは月見バーガーだったりするがマイナーなところで秋のサーモンなんとかバーガーがなかなかうまかった。あと遥か昔だが、ホームメイドマックという普通に家庭で作るようなハンバーグを挟み込んだジューシーなバーガーがあって好きだったのだが、その時期一度きりで終わってしまった。おそらく採算に合わなかったのだろう。食品業界も難しいものだ。

――などと、ファーストフード業界に一石を投じている場合ではない。つまりマック臭が嫌いなわけではなく、実は何を隠そうマック臭によってこっちまで腹が減ってくるのである。「ああ、おれも買っときゃよかったバリューセット」となって、なんだか負けた気分になるのである。慎んでいただきたい。せめてイモ抜きで。

 

4.すっぱい匂いを出さない

これは3に似て非なるものである。早めに劇場に着いてベストポジションに陣取り、ようしじっくり見るぞう、とリラックスしてるとする。すると隣の席に、あるいは前後の席に座る者があり、別にそれは空いてるからいいのだが、そいつが座った瞬間、汗臭いすっぱい匂いがツ〜ンと漂ってくることがある。これは夏場に多い。そしてなぜかあまりファッショナブルでない学生風の若者に多い(気がする)。どうもしばらく風呂に入っていないような、どこか遠くへ連れて行かれそうなオイニーである。

映画の世界に入る前に、もっと違う異世界に入らされてしまってはいかんともしがたい。エイトフォーなりなんなり使って、スメルよりフレグランス、と心がけて欲しいものである。その前に、夏場は風呂に入りましょう。

 

他にもいろいろあるが、まあそれぞれが自分なりに気をつければたいした事ではない。映画は気分よく楽しみたいものである。

 

2002/9/11