シカゴの風
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 あとがき

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10月になった、ある日。珍しくアルバートさんはキャンディに言った。
「キャンディ、シカゴの街をデートしないかい?」
「え?どうしたの?急に・・・」
「うん、たまには2人で街をデートするのもいいかなぁと思ってね」
「そうね、たまには2人で外に出るのもいいわね。今から行くの?」
「うん、僕も今日の仕事を片付けたし行こうか。何か欲しいものあったら買ってあげるよ」
2人は街まで車で送ってもらい、3時間後に迎えを頼んだ。2人は手を繋ぐ訳にはいかず
キャンディがアルバートさんの腕に自分の腕をからませて、アルバートさんを見上げ微笑んだ。
アルバートさんも満足げに微笑んでいた。当然アードレー夫妻は有名になっていたので
人の目を引いた・・・それでも2人は気にせず久しぶりのデートを楽しんだ。
「随分と人にみられてるね・・・くすっ」
アルバートさんはキャンディに耳打ちした
「本当ね、普段着で来たのにバレてるみたいね・・・くすっ」
「あたりまえだよ・・・皆、僕達の顔くらい知ってるさ。ここはシカゴだしね・・・」
「そうね・・・まぁ、いいわ。見られるのも慣れたしね」
「キャンディ、欲しい物はないの?僕が買ってあげるよ」
「そうね・・・考えつかないわね・・・」
キャンディが少し考えてから言った
「キャンディはいつもそうだね。本当に何もねだらないよな」
「あらっ、アルバート誰かに、ねだられた事あるの?」
キャンディは、からかい半分で言った。
「ある訳ないだろ・・・僕は女性と交際とかした事ないんだぜ」
アルバートさんはビックリして慌てて言った
「え?そうなの?知らなかったわ。くすっ・・・アルバートは沢山の女性とお付き合いしてると思っていたわ」
キャンディはニコニコして言った
「キャンディは僕を、そんな風にみてたのかい?僕はプレイボーイじゃないよ」
アルバートさんは少し拗ねてみた
「くすっ・・・プレイボーイさんには見えないわね」
「あたりまえさ。僕は誰ともお付き合いした事がないんだよ。キャンディとだって交際って程の時間も無く、
婚約して、結婚しただろ?まぁ、キャンディと僕は長い時間一緒に過ごしたり、会ったりしていたから
特別だけど、恋人同士ではなかっただろ?僕は何年間もキャンディを想っていたけどね」
アルバートさんはキャンディのおでこを突っついた
「え?何年間?」
キャンディが、いたずらっ子の目をした。
「え?言わせるの?くすっ」
「聞いてみたいわ。くすっ」
「しょうがないな。キャンディを養女にした時から、キャンディが心配でずっと近くで見てたよ。その頃は、可愛い
妹の様に想っていたけど、段々と気になって仕方なくて、好きだと気付いたのはロンドンでだったな・・・
僕だって、まだ22〜3歳の時だよ。普通言わせるか?」
アルバートさんは笑っていた
「くっくっく・・・聞いてみたかったのよ。ありがとう。とっても嬉しいわ・・・」
キャンディはアルバートさんの腕にしがみ付いた
「わかったかい?だからキャンディが僕にとって、最初で最後の女性なんだ」
「わかったわ。それで、私に何かおねだりして欲しいの?」
「キャンディは、全くそんな事をしないから、時々、可愛くおねだりしてくれてもいいかなぁと思ったのさ」
「そうね・・・何かあったかしら?あっ、明日パーティーがあるのよね?その時に使えるティアラが欲しいわ。
アルバート買ってくれる?」
キャンディはアルバートさんの前に出て来て、アルバートさんの両手をつかんで言った
「くすっ。やっぱりキャンディの、おねだりは可愛いな。買いに行こうか・・・いい店あるかな?ジョルジュが
居ないから、店が分からないけど、歩いてみようか」
アルバートさんはキャンディの肩を抱き歩き始めた。
「アルバート、あのお店に入ってもいいかしら?ティアラが沢山あるわ」
「うん、いいよ」
2人が店に入ると、すぐに店主が出て来た。入って来た人物に驚いている様だった
「いらっしゃいませ、アードレー様。本日は何かお探しでしょうか?」
「はい、妻がティアラが欲しいと言うものですから、少し見させて頂きます」
「はい、どうぞごゆっくり」
アルバートさんの物腰の柔らかい口調と、気取らない2人に店主も店員も客も、好感を持っていた。
そして、アードレー夫人が、どんな高価な物を選ぶのか、興味を持って見ているようだった。
キャンディは店内を、見て歩き、アルバートさんは、その後ろを付いて歩いていた。
「どうだい?気に入ったのはあったかい?」
「うん、あの小さい色々な石が付いた、可愛らしいティアラがいいわ」
キャンディが選んだティアラは、カラフルな石が沢山付いた可愛い物で、石も小さい為、比較的安い
手頃な値段のティアラだった。
「あれかい?可愛いね、キャンディに似合いそうだよ。キャンディが欲しいなら、あれにしたら?」
「アードレー様、アードレー夫人にふさわしい、こちらのティアラなどは、いかがでしょうか?」
店主が持って来たティアラは、高価なダイヤが散りばめられたティアラだった。アルバートさんは、
キャンディが、欲しいのなら高価な物でも買ってあげるつもりでいた。しかし、キャンディは高価な物を
欲しがらない事も知っていた。アルバートさんの思った通りキャンディの欲しがった物は、高価では
ないけれど、キャンディらしく使える物で、明るいキャンディに似合うものだった。
「いや、妻が欲しがる物を買いたいので、申し訳ありませんが妻の決めた物にさせて頂きたいと思います」
アルバートさんは丁重に断った。
「アルバート、やっぱり、あのティアラがいいわ。あれ買ってくれる?」
「うん、いいよ。すいません、あのティアラを下さい」
「はい、かしこまりました」
2人の買い物を見ていた人たちは、キャンディの選んだ品物に驚いていた。高価なものでも買える人なのに、
値段の高い安いを気にせず、自分の欲しい物を選び買う。金持ちは必ず高価な物を買うと思っていた人達は
金持ちらしからぬ2人の買い物に驚き、2人の高感度は上がった。
アルバートさんは代金を支払い、品物を受け取りキャンディの腰を抱き、店を出た。
「アルバート、買ってくれて、ありがとう。明日使わせて貰うわね。持つわ・・・」
「なにを言うんだい。荷物を持つのは僕の仕事さ」
「くすっ・・・アードレー氏に荷物を持たせていいのかしら?」
「いいんだ。僕の大切な妻の荷物は持つよ。くすっ」

2人が歩いていると、前から1人の男性が歩いて来た。栗色の肩まである髪を後ろに流して・・・
「テリィ・・・」
キャンディは驚いて立ち止まった
「キャンディ・・・アルバートさん・・・」
テリィもキャンディとアルバートさんに気付き立ち止まった
「どうしてテリィが、シカゴに居るの?久しぶりね」
キャンディは何故ここにテリィが居るのか分からずに居た
「お久しぶりです、アルバートさん。キャンディ、ひさしぶりだね。キャンディ、俺は今、公演でシカゴに来てるんだ」
テリィは久しぶりにキャンディに会え、嬉しそうだった
「やぁ、テリィ。久しぶりだね。今、時間はあるの?」
アルバートさんは、テリィに会ってしまった事を喜んでいなかったが、さすがアードレー氏。微笑んで言った。
「えぇ、何の予定もないので・・・」
「じゃぁ、一緒にお茶でもどうかな?ね、キャンディ」
「いいんですか?」
テリィは遠慮気味に言った
「あぁ、そこに入ろう。よく使う店なんだ」
3人は、すぐ近くにあったレストランに入った。このレストランは、アルバートさんが良く個室を使わせて貰っている
店だった。店に入ると、すぐに店主が個室に通してくれ、3人は飲み物を注文し、一口飲むと会話が始まった。
「テリィ、久しぶりだわ・・・元気そうで良かったわ」
キャンディが、やっと笑顔をみせた
「キャンディとアルバートさんも、元気そうで良かったよ」
「テリィは、チェルシー劇団で来たの?」
アルバートさんは知っていたが聞いてみた
「はい、そうなんです。まだ主役までは無理ですが、入って1ヶ月で、それなりの役を頂いてやってます」
「え?チェルシー劇団って?」
「え?キャンディ知らないの?」
キャンディもテリィも、お互いに知らない事に驚いた。
「全然。アルバートは何で知ってるの?」
「キャンディ、僕はアードレー家の総長だよ。色々な情報が入ってくるんだよ」
「そっか・・・そうよね。・・・で、チェルシー劇団って何?」
キャンディは自分の疑問を解決しようと思って聞いた
「俺が今居る劇団だよ」
「え?じゃあ、ストラットフォードは、どうしたの?」
「辞めたんだ」
「ふ〜ん・・・なんか私、疑問だらけだわ・・・」
キャンディは、まだ疑問があった
「くっくっく・・・困ったね、キャンディ。何も知らなかったんだね。答えてあげるから、聞いてもいいぜ」
テリィはとっても優しい笑顔でキャンディを見て言った。そんな2人の会話を聞き、表情を見ていた
アルバートさんは、少し面白くない・・・
「本当?じゃぁ、何で辞めたの?」
「う〜ん、それが1番難しい質問かもな・・・アルバートさんは、だいたいの事は知ってますよね?」
テリィは、あまり話さないアルバートさんに振った
「うん、何となくはね・・・」
「まずは、チェルシーの方が、魅力があったから。俺のやりたい芝居が出来る気がしたんだ。
あとは、スザナと別れたから」
「え?そうなの?」
「僕も詳しくは知らないけど、噂では聞いたよ。本当だったんだね」
アルバートさんが言った
「はい、本当なんです。俺はスザナを愛せなかった。一緒に住んでいても、彼女に指一本触れる事も
出来なかった・・・彼女は俺が、彼女を愛していないし、愛せない事も知っていた。俺の心の中には、
いつもキャンディが居る事もね・・・」
テリィは下を向いて言った
「テリィ・・・」
キャンディは下を向いたテリィを見つめた
「それで、遂に別れようと言われたんだ。俺は自分を殺し、自分じゃない自分になって、マーロー家で生活して
来た。俺は正直、凄く辛かった・・・そんな俺を見てるのも嫌になったんだろうね。俺は、何故、今なんだって
思ったよ・・・もっと早く、出来るなら事故の時にスザナが、こうなる事に気付いてくれていたら、俺の人生は
今頃違っていたと思ったんだよ」
テリィは自分の手を見つめて言った
「キャンディと結婚していたのは、自分だと思ったかい?」
アルバートさんはテリィに言った。テリィは顔を上げ、アルバートさんを見た。
「えぇ、思いました。・・・でも、いざマーロー家からも、スザナからも解放されたら、キャンディへの想いは
スッと俺の思い出の箱の中に入ったんです。凄く不思議だった・・・
キャンディと別れて、とても辛かったのも事実だけど、途中からは、どうしても愛せないスザナから離れたくて、
キャンディを想っていた気がするんだ・・・今となってはね・・・」
テリィがキャンディとアルバートさんを見て、正直な気持ちを言った
「テリィ、私は、あなたが本当の事を言ってる時と、嘘を言ってる時が分かるのよ。あなたも私の事が分かって
くれるわよね?くすっ。今の貴方は、本当の事を言ってるわ。本当の事を言ってる時の目をしてるもの」
キャンディはテリィに微笑んだ
「キャンディ・・・キャンディなら分かってくれると思っていたんだ。アルバートさんの前で、こんな事言ってると
気分が悪くなるかも知れないけど、俺は、キャンディだけは分かってくれると思っていたんだよ。
今の俺は、キャンディとアルバートさんの幸せを心から喜べるんだ。心から祝えるんだよ。そして俺は新しい
女性・・・キャンディの様に俺を分かってくれる女性を探したいんだ・・・キャンディ以上に素敵な女性をね・・・」
テリィは、キャンディが自分の気持ちを分かってくれた事が、とても嬉しかった。キャンディは理解してくれると
信じていた・・・それが現実となり、笑顔を見せずには居られなかった
「くすっ、テリィ嬉しそうね。私はあなたが理解出来るわよ。でも、テリィ以上にアルバートの事が分かるのよ。
くすっ。私以上なんて、そう居ないわよね?アルバート」
キャンディは安心した顔をしてるアルバートさんに言った
「くすっ、そうだね。僕の奥さんが1番だから、探すのは難しいよ、テリィ」
「はっはっは・・・2人はお似合いだよ。婚約した時に、俺が送った手紙には、劇場にいつ招待出来るか
分からないって書いたけど、俺は今すぐにでも2人を招待出来る気分なんだ。凄く不思議だよな・・・
開放された俺が、俺を取り戻して、俺らしく生きて行く。この事を取り戻しただけで、とてつもなく大きな一歩を
踏み出せたんだ。スザナを選んだ事は間違いだったと思う。でも、あの事があったから、今の俺が居る。
辛い事も沢山あったけど、いい経験になったんだろうな・・・」
テリィはとても晴れ晴れとした顔をしていた。
「テリィ、君は、例の事故で凄く成長させて貰ったんだと思うよ。今までの事があって、テリィは役者としても
男としても立派になれると思うよ。僕は応援してるよ。そして、キャンディ以上の女性に巡り合える事もね」
アルバートさんは本心からテリィの事を思い言った
「えぇ、ありがとうございます。アルバートさんも、キャンディも、ずっと俺の友達で居てくれるかな?」
少し不安げにテリィが言った
「もちろんさぁ、僕達は親友だよ。年寄りになっても君と親友でいたいと思うよ」
アルバートさんは、真面目な顔をしていった
「テリィ、私も貴方の親友よ。よかったわ、こんな関係になれて・・・」
キャンディは、少し目を潤ませていた
「良かったよ・・・この前までの俺だったら、こんなに素晴らしい親友が出来なかったよ。ありがとう・・・」
テリィは、とっても嬉しそうだ
「くすっ、テリィらしくないわね。こんなテリィになったのも、今までの経験かしら?」
「そうだね、俺も大人になったからね・・・くすっ」
「テリィ、今日は何か予定あるの?」
アルバートさんがテリィに聞いた
「いえ、今日は何もありません。明日の午後、通し稽古があって、明後日とその次の日が本番です」
「じゃぁ、僕の家に夕食を食べに来ないかい?アーチーも、アニーも、パティーも居るんだよ。懐かしいだろ?
あと、ディックっていう、僕の仕事を手伝ってる青年も居るんだ」
「え?いいんですか?今だって2人で楽しく買い物じゃ・・・」
「買い物は終ったんだ。やっとキャンディが僕に、おねだりをしてくれて買って来たんだ。実は無理矢理おねだり
させたんだけどね・・・くすっ。何も無いなら、僕の家においでよ。今も、もうすぐ迎えが来るし、帰りも送らせるよ。
泊まってもらっても構わないしね」
アルバートさんは微笑んだ
「では、お言葉に甘えて、お邪魔させて頂きます」
テリィも親友になった2人と、まだ話したい気がしていたのだ
「くすっ・・・楽しくなりそうね。アーチーは、またテリィを”キザ貴族”って言うのかしら?」
キャンディは思い出して笑った
「よく言われたよな・・・殴られたしな。全て原因はキャンディだったけどな・・・くすっ」
テリィも思い出して笑った
「アーチーはそんな事言ってたのかい?テリィを殴るのもチャレンジャーだな。くっくっく・・・アーチーじゃ負けて
しまうだろうに・・・アーチーもキャンディに熱を上げていたから仕方ないのかな?可笑しいな・・・」
アルバートさんは、アーチーを想像して笑った。3人は迎えの来る時間になったので、店をでた。
その時キャンディはアルバートさんに、こっそり言った
「そういえば、アルバートも大人になったわね。くすっ」
「キャンディ、親友なんだよ、くすっ」

本宅に戻り、エントランスに入るとディックが居た。キャンディと仲良くしてる人を見てディックは目を丸くした。
「こんにちは・・・アルバートさん、キャンディ、おかえりなさい。あの・・・お客様はストラットフォードの
テリュースさんですよね?キャンディのお客さん?」
「僕とキャンディの親友なんだ。ただし、チェルシーのテリュースだよ。テリィ、こちらが僕の仕事をアーチーと
一緒に手伝ってくれてるディックだよ」
アルバートさんはディックをテリィに紹介した
「はじめまして、テリュース・グレアムです。よろしく。テリィと皆は呼ぶので、テリィで結構ですよ」
「はじめまして、リチャード・エバンスです。ディックと呼んで下さい。よろしくお願いします。2人は凄い人と親友
なんですね・・・ビックリしますよ」
ディックは興奮していた
「ディック、皆を呼んで来てくれる?サンルームに居るわ」
キャンディは笑いをこらえて言った
「くっくっく・・・さぁ、大騒ぎになるぞ」
アルバートさんも楽しんでいる
「大騒ぎになるなんて、昔と変わってないんだな、くっくっく・・・」
テリィも昔の皆を思い出し笑った
とりあえず、サンルームに行くと、すぐに4人が走って入って来て、大騒ぎになった。テリィ、アルバートさん、
キャンディは可笑しくて仕方なかった。
「テリィ、久しぶりだな・・・どうしたんだよ、こんな所で会えるとは思わなかったよ」
アーチーが驚いた顔のまま言った。
「そうか、アーチーもテリィと知り合いだったんだよな?」
ディックは、前にアルバートさんから聞いた話を思い出した。
「そうだな。前に話した事あったもんな。キャンディ、テリィ、アーチー、アニー、パティーは皆、ロンドンの聖ポール
学院で一緒だったんだよ。アーチーとテリィは同じ年位だろ?」
アルバートさんがテリィに聞いた。
「え?そうなの?俺知らなかったよ・・・同じ位だろうとは思っていたけどね。聖ポールのメンバーで歳が分かるの
なんて、キャンディのだけだよ。くっくっく・・・」
テリィは平然と言った
「テリィは、今22歳だろ?僕もディックも同じだから、3人共同じ歳だね。テリィは本当にキャンディの事しか
知らないんだな・・・笑っちゃうよな」
アーチーは呆れて言った
「くっくっく・・・そりゃそうさ。自分の彼女しか俺は見ないのさ」
テリィはそういうと、アルバートさんを見て笑った。アルバートさんも笑っていた・・・ディックはポカンとして居た
「テリィ、そんな事を言うから、ディックがビックリしてるだろう・・・くっくっく・・・ディック、キャンディはテリィの
彼女だったって前に言ったよな?」
アルバートさんが言うと、前にも聞いた事があったディックだが、納得の出来ない顔をしていた。
夕食を済ませて、まだ話し足りない全員は、またサンルームに戻って来た。

テリィは聖ポールを出てからの事を話し、自分の心の変化も話し、皆は黙って聞いていた。そしてテリィを受け
入れ、いつの間にか、仲間になっていた。キャンディは、皆とテリィが仲良くなり、仲間になってくれた事をとても
喜んでいた。そんなキャンディを見てアルバートさんも嬉しくなっていた。
「昔のテリィは、僕達と交わらなかったよなぁ。キャンディとしか話してなかったよな?」
アーチーが言った
「そうそう、私達は怖いテリィしか知らないから、怖いイメージしか持ってなかったのに、キャンディだけには
本心で話して、態度も言葉も優しかったのよね・・・」
アニーが思い出しながら言った
「そりゃ、そうだよ。キャンディは俺の彼女だったし、キャンディが好きだったからね。大切にしてたんだぜ、くすっ」
テリィは堂々と言った。それにはアルバートさんも呆れて笑った
「テリィ、そこまで言わなくていいよ。君がキャンディを大切にしていたのは、僕には良く分かってるからさ」
アルバートさんは、テリィにウィンクした
「わかってくれました?結婚したんだもん、分かってますよね・・・くすっ」
テリィもアルバートさんの言う意味が分かり、意味深な事を言って笑った
「でも、よくアルバートさんの前で、堂々と言えるね・・・テリィって不思議だね」
ディックは言った
「そりゃ、俺がアルバートさんに負けたからかな?・・・というより、赤い糸はアルバートさんとキャンディが
繋がっていたんだよ。だって、アルバートさんは、いつもキャンディの近くに居たもんな・・・」
テリィはアルバートさんを見て言った
「そうそう、今思うとそうだよな・・・アルバートさんは、いつもキャンディの近くにいましたよね・・・」
アーチーも言った
「くすっ。そうだな、キャンディに変な虫が付かないか心配だったからね。僕の大切な養女だからね」
アルバートさんはテリィを見て言った
「え?俺、変な虫ですか?ひどいなぁ、アルバートさん・・・くっくっく・・・」
テリィは可笑しくて笑った
「くっくっく・・・付いちゃったもんなぁ、キャンディに」
アルバートさんはお腹を抱えた
「なんか、2人共とっても楽しそうね。こんな風に皆で集まって話せるなんて、良かったわね。テリィ」
キャンディはテリィに優しく微笑んで言った
「本当だな・・・これも今までの経験かな?くすっ」
沢山話しているうちに、遅くなってしまい結局テリィは泊まる事になった。

それぞれの部屋に戻って行き、テリィもゲストルームに入った。アルバートさんとキャンディは、
寝室のベットに座り話していた。
「アルバート?今日テリィと、ばったり会ってビックリしたでしょ?」
「あぁ、凄くビックリした。あの時は正直、会いたくなかったと思ったよ」
アルバートさんはキャンディの肩を抱いて言った
「でも、さすがアルバートね。普通の顔をして、お茶に誘ったわね。お仕事の時のアルバートの顔に
近かったわよ、あの時の顔は・・・くすっ」
キャンディはアルバートさんの肩に頭を乗せて言った
「そうだった?でもそうだったかもな・・・会いたくないと思った人とでも仕事の時は、会って話さなきゃならない
もんな・・・でも、今日はテリィを誘って、良かったと思ったよ。今日はテリィの本心が聞けた。
テリィは本当に、キャンディの事を思い出の箱に入れてるって、僕にも分かったんだよ。僕がキャンディを
信じているからなんだろうけど、テリィがキャンディと話していても、テリィが堂々と昔の事を言っても笑って
居れる僕が居るんだよ。キャンディが、僕を愛してくれてるのが分かるからなんだろうな・・・」
アルバートさんは、キャンディの頭を撫でて言った
「婚約した時のアルバートとは、大違いね。私は、アルバートを愛している。あなたしか見ていない・・・
それが分かって貰えて良かったわ」
キャンディはアルバートさんの胸に抱きついた
「うん、分かってるよ。だからテリィとも親友になれたんだ。テリィは、本当にスザナさんと居るのが辛かった
んだろうな。でも、その辛さからも開放された。テリィが言ってた、スザナさんと離れたくて、キャンディを想って
いたというのは、僕もテリィの本心だと思う。でも、そんな事がテリィを成長させたんだろうね・・・」
「そうね・・・良かったわ。スザナには悪いけど、私の大切な友達はテリィなのよ。その大切な友達が幸せに
なって、後悔しない人生を歩いてくれた方が、私は嬉しいの」
「そうだね、僕もそう思うよ。テリィに幸せになって欲しいな」
アルバートさんはキャンディの髪をさわった
「そうだ、アルバート。今日はティアラを買ってくれて、ありがとう」
「いいんだよ、あれ位。時々おねだりしていいんだよ。今日のアルバート買ってって言ったキャンディ、とっても
可愛かったなぁ・・・店で抱きしめたくなったよ」
アルバートさんはキャンディの肩を強く抱いた
「くすっ、そんな事したら大変よ。アードレー氏なんだからね」
「くすっ、分かってるよ。外ではアードレー氏だからな。店で抱きしめられなかった分、今抱きしめようかな。
う〜ん、それじゃ足りないかな・・・くすっ」

この日は、満点の星空・・・流れ星が1つ流れた事を、2人は知らなかった

次の日、テリィは朝食を食べるとホテルへと帰って行った。テリィは初日の公演にアルバートさんとキャンディを
招待した。アルバートさんとキャンディは、活き活きと役を演じるテリィを見て、逞しくも見え、幸せそうにも見えた。
テリィは2ヵ月後には、チェルシー劇団の看板役者の座を手に入れ、次々と主役を務めていた。
そして、キャンディとアルバートさんは、何度も劇場に足を運び、テリィの劇を見て、テリィもシカゴの本宅に
何度も遊びに来た。皆になじみ、楽しい時間を過ごす様になった。そんな関係になれたことを、アルバートさんも
テリィもキャンディも、とても喜んでいた。3人は一生の親友になった。