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シカゴの空気もピーンと張ってきた・・・冬になったシカゴは、どこか暗い影がある様に思われる。
しかし、アードレー家は、キャンディが来てから家は明るくなり、笑顔の絶えない日々となった。
外は、寒々としていても、家は温もりが溢れている様だった・・・そんな12月も中旬になった頃
アルバートさんとキャンディは、いつもの様にアルバートさんが、キャンディの腰を抱き、朝食の為
ダイニングへ向かって歩いていた。
「ねぇ、キャンディ。顔色が良くないよ、大丈夫かい?」
アルバートさんが心配そうにキャンディを覗き込んで言った
「うん、少し体がだるくて、調子良くないわね・・・」
「どうする?朝食を部屋に運んで貰おうか?僕も一緒に部屋で食べるよ」
「大丈夫よ・・・朝食が終ったら部屋で休むから・・・」
「そうかい?じゃぁ、そうしようか・・・」
キャンディは、無事11月の終わりで教育を終えていたので、今は、のんびりと過ごせる様になっていた。
苦手だったピアノも、どうにか弾ける様になって、先日はショパンの”別れの曲”を弾いていた。
アルバートさんも、アーチーも、そこまで上達したキャンディを誉めた。初めは弾ける様になるとは
思えない程の腕前だった・・・これも教育以外の時間にアルバートさんと、アーチーがピアノを
キャンディに教えたおかげかも知れない・・・
ダイニングに入り、朝食を食べはじめた・・・
「キャンディ、どうしたのです・・・食も進んでいませんし、顔色も良くありませんね」
大おば様が、具合の悪そうなキャンディを見て言った
「はい、大おばさま・・・風邪でもひいたようで具合が良くありません。朝食が終りましたら
部屋で少し休みますので、大丈夫です」
キャンディは笑顔を作って言ったが、いつもの明るさが無かった
「ウィリアム、心配ですから、部屋に戻ったら医者を呼びなさい。診て貰った方がいいですよ」
「はい、分かりました。僕も出社を少し遅らせて、先生の話を聞いてからオフィスへ行きます。
アーチー、ディック、悪いけど頼むよ。少し遅れるくらいで行くから・・・」
「はい、わかりました。重役達にも伝えておきますよ」
アーチーが言った
「アルバート、大丈夫よ。少し具合が悪いだけなんだから、お仕事に行ってちょうだい。
ここには、大おば様も、アニーも、パティーも居るんだから大丈夫よ」
キャンディはアルバートさんを見て言った
「キャンディが具合悪いのに、仕事に行けないよ。今日は大事な仕事はないから、少し遅れても
大丈夫だよ、キャンディ。先生の話を聞いたら、すぐにオフィスへ行くから心配いらないよ。
アーチーもディックも居るんだし・・・」
アルバートさんは、キャンディに言い、アーチーとディックを見た
「そうだよ、キャンディ。僕とアーチーも少しは仕事が出来る様になったんだぜ。
だからアルバートさんが居ない少しの時間、2人で頑張るから大丈夫だよ」
ディックがキャンディに微笑んで言い、アーチーもうなずいていた。キャンディは2人の優しさが
嬉しかった
「では、大おば様、僕達は先に部屋に戻ります。キャンディ、行こうか・・・」
朝食から30分後、医者が来てくれた。アルバートさんはキャンディの部屋から出されてしまい
自室でウロウロと歩いていた。そこへ、アーチーとディックが入ってきた。
「アルバートさん、先にオフィスへ行ってますね」
「どうしたんですか?ウロウロして・・・熊みたいですよ・・・くすっ」
ディックがアルバートさんを見て笑った
「くすっ・・・本当だ・・・アルバートさん・・・」
アーチーも笑った
「熊とは失礼だね・・・今、先生が来ていて診て貰っているんだよ。心配で座って居られないよ・・・」
アルバートさんは、総長とは思えないほど落ち着きが無かった
「くすっ・・・キャンディの事になると別人だもんなぁ・・・大変な病気だったら、診てすぐに医者が
アルバートさんを呼んでますよ。呼ばれていないんですから、大丈夫ですよ・・・きっと・・・。
でも、僕が言っても、アルバートさんは落ち着きませんよね・・・くすっ」
アーチーが言った
「僕の大切なキャンディが具合悪いから、何と言われても心配なんだ・・・君達は、もう行く時間
なんだね・・・先生の話を聞いたら、すぐに行くから、それまでの間頼んだよ」
仕事の話をして、やっと総長の顔が出て来た
「はい、わかりました。では先に行ってます」
それから15分程経った頃、アルバートさんを呼んで来る様言われたドリスが、アルバートさんの
部屋に来た。アルバートさんは、すぐにキャンディの部屋へ行った。
「先生・・・妻はどうでしょうか・・・」
アルバートさんは、部屋に入ると同時に言った
「まぁ、アードレー氏、落ち着いて下さい」
そんな事を言われても落ち着くはずもない・・・そんなアルバートさんを見て、キャンディはニコニコ
していた。
「キャンディ、大丈夫なのかい?さっきより顔色も良くなったみたいだね」
「えぇ、もう大丈夫よ。くすっ」
「それで先生、妻は、どんな病気だったんでしょうか・・・」
やっぱり病状が気になり、またアルバートさんは聞いた
「はい、アードレー氏・・・病気ではありませんので、心配はいりません。くすっ」
先生も嬉しかったようで、微笑んだ。アルバートさんは、その微笑の意味が分からなかった。
「そ、そうですか・・・じゃぁ、何で・・・」
「アルバート、少しだけ早いんだけど、私、アルバートにクリスマスプレゼントをあげたいの。
受け取ってくれるかしら?」
キャンディは幸せ一杯の笑顔だった
「え?今?これから仕事だし、クリスマスの時でいいよ、キャンディ・・・」
アルバートさんは、少し戸惑っていた
「アードレー氏、私は今、貰っておいた方がいいと思いますが・・・くすっ」
先生は、また微笑んで言った
「どうしたんだい?さっきから先生もキャンディも笑って・・・」
「じゃぁ、受け取ってくれるかしら?」
キャンディがアルバートさんを覗きこんだ
「うん、そんなに2人が言うなら、今貰うよ・・・」
「そぉ、良かったわ。くすっ・・・アルバート、私のお腹に、赤ちゃんが居るわ。アルバートと私の
赤ちゃんが来てくれたのよ」
キャンディは、ニコニコしていた。アルバートさんは、頭の中が真っ白になり、キャンディをジッと
見たまま動けなくなっていた。
「アルバート、聞こえた?くすっ・・・私のお腹に、赤ちゃんが居るのよ」
キャンディはニコニコして、もう一回言った。アルバートさんは、やっと意識を取り戻し、口を開いた
「キャンディ・・・先生・・・本当ですか・・・?」
「アードレー氏、本当ですよ。キャンディス様は妊娠されてます。おめでとうございます。
出産予定は8月中頃かと思います。今は、とても大切な時期ですので、アードレー氏も
キャンディス様も体には、充分気をつけて下さい。絶対に冷やさないで下さい。また来月検診に
来ます。次からは私ではなく、産婦人科の専門医に替わりますので、内科の私よりも
色々と詳しい話が聞けると思います。それでは、私は失礼します」
「先生、ありがとうございました」
アルバートさんとキャンディは、先生にお礼を言い、アルバートさんは先生を送り出した。
そして、嬉しさ一杯の顔でキャンディの元に戻って来た
「キャンディ、凄いよ!赤ちゃんが僕達の所に来てくれたんだね。僕は、とっても嬉しいよ。
早く赤ちゃんに会いたいな・・・僕達の赤ちゃんに・・・」
アルバートさんは、とても喜び興奮していた。そんなアルバートさんを見てキャンディは喜んだ。
「クリスマスプレゼントは喜んで貰えたようね」
「あたりまえさ。こんな嬉しい事ってないよ、キャンディ。キャンディ、今の赤ちゃんを守れるのは
キャンディだけなんだよ。体を大事にしてくれよ」
アルバートさんは、キャンディのお腹を触って言った
「えぇ、分かってるわ。気をつけるわね・・・大おば様に報告しましょうか・・・」
「そうだね、すごく喜ぶよ。キャンディも行けるかい?」
「えぇ、私も行きたいわ。妊娠は病気じゃないから、寝てばかりも居られないわ。普通の生活を
していても大丈夫よ」
「うん、一緒に行こうか」
アルバートさんは、キャンディの腰を抱き、締りのない顔のまま、大おば様の部屋に行った
「大おば様、ご報告がございます」
アルバートさんがニコニコして言った
「キャンディ、動いてて大丈夫ですか?さっきよりは顔色も良い様ですね・・・それで、報告とは
何ですか?ウィリアム・・・」
「はい、キャンディが妊娠しました。僕とキャンディの赤ちゃんが、キャンディのお腹の中に居ます」
「本当ですか・・・ウィリアム・・・キャンディ・・・」
大おば様は驚き、声が殆ど出ていない
「はい、本当です。先生に診て頂きました」
「おぉ、何て事でしょう・・・子供が出来たなんて・・・私は嬉しくて、嬉しくて・・・」
大おば様はハンカチで目をおさえた
「ウィリアム、キャンディ、おめでとう。キャンディ、体を大事にするのですよ。子供を産むまで
外へ出る仕事はしなくていいです。本宅内で出来る書き物などの仕事だけを、していれば
いいですよ。産んだ後もウィリアムとキャンディの事ですから、自分達の手で育てたいのでしょう。
子供が大きくなるまで、孤児院廻りなどはしなくていいですよ。私から連絡しますので、
心配はいりません」
大おば様は、アルバートさんとキャンディを交互に見ながら言った
「ありがとうございます。大おば様は、僕達が言わなくても分かって下さるんですね。
僕もキャンディも、自分達の手で子供を育てたいと思っていましたので、大おば様の
配慮は、とても嬉しく思います。感謝いたします」
アルバートさんは、大おば様に頭を下げた
「いいんですよ、あなた達の考えそうな事は、なんとなく分かってきましたからね、くすっ
今晩は、嬉しいディナーになりそうですね」
大おば様も、自分の考えと、アルバートさん、キャンディの考えが同じだった事を喜んだ
アルバートさんとキャンディは、大おば様への報告を終え、大おば様の部屋をでた。
部屋を出て、自分たちの部屋へ戻ろうとした時、これからピアノを弾きにサンルームへ行こうと
していたアニーとパティーに会った。
「キャンディ、大丈夫?」
「さっきよりは、顔色がいいみたいだけど・・・ゆっくりした方がいいわよ」
アニーとパティーがキャンディを心配そうに見て言った
「キャンディは、もう大丈夫なんだ。くすっ・・・キャンディ、教えてあげたらいいよ」
アルバートさんは、キャンディにウィンクした
「そうね、あのね・・・私とアルバートの赤ちゃんが出来たの」
キャンディはニコッとした
「え?」
「赤ちゃん?」
初めは、驚きのあまり、理解できず声が出ていなかった二人が、次の瞬間大きな声を出した
「え?本当なの?」
「キャンディ!素敵だわ・・・」
「ちょ、ちょっと・・・声が大きいわよ・・・くすっ」
「ごめん、ごめん。キャンディ、アルバートさん、おめでとう。いつ頃生まれるの?」
「うん、8月の中頃ですって」
「アルバートさんなんて、目尻は下がりっぱなしで、ニコニコしてるし・・・その顔でオフィスに
行くんですか?くすっ」
パティーがアルバートさんの嬉しそうな顔を見て言った
「本当・・・アーチーとディックに、また言われちゃいますよ・・・くすっ」
アニーも言った
「本当だね。あの2人には何を言われるか分からないね、くすっ。でも、今日は嬉しくて仕方
ないから、何を言われてもいいさ。早くオフィスに行って、仕事を片付けて、早く帰ってくるからね、
キャンディ。僕は、このままオフィスへ行くよ。しっかり仕事しないとね・・・でも今日は出来そうに
ないな・・・くすっ」
アルバートさんは、幸せ一杯の顔をしている
「あらっ、アルバート、お仕事はちゃんとやらないとダメよ。行ってらっしゃい」
キャンディはアルバートさんにキスをして送り出した
「男の人って、あんな風に喜ぶのね・・・あんな顔を見ると、キャンディも嬉しいでしょう?」
パティーは、アルバートさんの喜び方を思い出して言った
「そうね、とっても喜んでいるものね・・・アルバートは・・・2人ともサンルームへ行くんでしょ?
温かいから、私もサンルームへ行くわ。行きましょう・・・」
3人はサンルームへと移動した。そして、キャンディはアニーとパティーの質問を受ける事になった
「私とパティーは、結婚もしてないから、分からない事だらけだわ、キャンディ教えてよ」
「え?何を?」
「赤ちゃんが出来るって事は、それなりの事をしてる訳でしょ?」
「な、何を言い出すの・・・アニー・・・びっくりするじゃない・・・」
「でも、そうでしょ?」
「まぁね・・・私とアルバートは夫婦だし・・・恥ずかしいわね・・・」
キャンディは赤くなった
「キャンディとアルバートさんの初めてって、いつなの?」
「え?もぉ・・・そんな事内緒よっ・・・」
「じゃぁ、結婚前?あっ・・・でも2人は婚約発表の日から、同じ寝室だったから・・・婚約前?後?
これ位ならいいでしょ?」
「もぉ・・・仕方ないわね・・・これ以上は言わないわよ。婚約発表前よ・・・」
「え?そうなの?結婚前でもいいんだ・・・」
「いいか、悪いかは知らないわよ。婚約発表だから、もう結婚の約束はしてるし、私はアルバート
しか考えられなかったし・・・アルバートは立派な大人だし・・・問題はなかったわよ」
キャンディは、少し考えて言った
「そうなんだ・・・私は結婚式が終ってからだと思っていたわ・・・」
パティが言った
「う〜ん、人それぞれなんじゃないのかな?結婚が決まってなくても、お互いが愛し合っていれば
そんな事もあるんじゃないのかな?」
キャンディも良く分からないまま答えていた
「え?じゃぁ、キャンディとテリィは、あったの?」
アニーが突然言った
「え?また何を言い出すの・・・私とテリィは無いわよ。テリィは、私を大切にしてくれたわ。彼は
結婚の約束がされるまで、そんな事をしないタイプよ。とっても紳士だからね・・・」
キャンディは、本当のテリィが分かって欲しくて言った
「そう・・・テリィって、本当にキャンディの前では違うのね・・・」
パティーがテリィを見直した様だ・・・
「もう、この話はいいかしら?」
キャンディは腰に手をあてて言った
「また、分からなかったらキャンディに聞くわ」
「そうよね・・・分かるのも、聞けるのもキャンディしか居ないものね」
アニーとパティーが、キャンディを見て微笑んで言った
「いやだわ・・・恥ずかしくて・・・でも2人の為に話せる事は、話してあげるわ」
アルバートさんは、ジョルジュの待つ車に乗り込んだ
「ウィリアム様、何か良い事でも、ありましたか?」
「わかるかい?ジョルジュ」
「はい、そのお顔を見れば・・・くすっ」
「そんなに分かる顔してる?まぁ仕方ないね、今日は・・・。実は僕とキャンディに子供が出来たんだ」
「え?本当ですか?おめでとうございます。私も嬉しいですよ、ウィリアム様・・・」
「そうだろ?嬉しい顔をせずに居られないだろ?」
「くすっ、そうですね・・・今日の午前中は、アーチー様とディック様でやってくれています。
午後の会議と、午後3時にシカゴ銀行の頭取が来社致しますので、打ち合わせをお願いします。
午後3時30分にミシュラン氏、午後4時にマーク氏が、ウィリアム様に面会の為、来社されます。
本日の予定は以上となっております」
ジョルジュが頭の中にある、スケジュール帳を開き、アルバートさんに伝えた
「うん、わかった。まず、アーチーとディックと昼食を取りたいので、いつもの店の個室を取って
貰えるかな?3人で、ランチの予約を頼むよ」
「はい、かしこまりました」
アルバートさんは、オフィスに着くと、すぐにデスクにある書類に目を通し、秘書から渡された
手紙類にも目を通した。何か変わった事が無いかも、部下から確認をし株価のチェックなども
した。アルバートさんの人柄が良い為、どこからか優秀な部下となってくれる人がアードレー
グループに集まって来てくれていた。内部を探ったり、アードレーを落とし入れ様と近付いて来る
人は、社員達が未然に気付き、アードレーグループに近付けなかった。アルバートさんは、
社員達にとても助けられていると、いつも感謝し社員を大切にしていた。そんなアルバートさん
だから集まって来る人も、それに応えようと頑張ってくれていた。
そんな優秀な社員達が、グループに来る全ての情報、書類をチェックし、アルバートさんに渡す
物は重要な物と、気になる物に絞られて渡されていた。総長宛の物はアーチーとディックが
全て書類や情報をチェックし必要なものを、アルバートさんに渡していた。総長宛の物だけでも
一日に100通もの手紙が届き、書類も100枚は下らない・・・そのチェックはアーチーとディックに
アルバートさんは任せていたのだった。
あっという間に昼になってしまい、アーチーとディックが総長室に入って来た。
「あ、ごめんよ。この書類にサインをしたら終るから待ってて」
アルバートさんが書類に目を通し終え、サインをする所だった
「はい」
アーチーが返事をした。アルバートさんはサインを追え、書類を揃えながら顔がほころんだ。
「さぁ、お昼を食べに行こうか。予約をしておいたんだ」
「はい、ありがとうございます。アルバートさん、何かいい事ありましたか?」
アーチーがアルバートさんを見て言った
「うん、今、サインを終えたとたんに、顔がニヤけましたよ・・・」
ディックもアルバートさんの顔を見ていた
「店に行ったら話すよ、さぁ、行こう」
3人はオフィスを出て、すぐ近くにあるレストランの個室に入った。入るとすぐに料理が運ばれて
来た。ここの店は、アルバートさんが使うときは気を利かせてくれ、飲み物以外の物を1度に
運んで来てくれるのだ。なるべく個室への出入りをせず、アルバートさんに、ゆっくりと使って
貰う為の配慮だった。アルバートさんは、この店側の配慮が嬉しかった。人の出入りを気にせず
話ができるからだ。
アーチーが話し出した
「アルバートさん、何かあったんですか?」
「本当に、嬉しそうな顔をしてますよ・・・」
「わかるかい?僕は今日、とっても嬉しいんだよ。キャンディに少し早いクリスマスプレゼントを
貰ったからね。くすっ」
「え?なんで一緒に住んでるキャンディが、早くプレゼントくれるんですか?離れて暮らしているなら、
会えないとかの都合で早かったり、遅かったりするでしょうけど・・・」
ディックが不思議そうに言った
「うん、どうしても今日、僕にプレゼントしたかったんだよ」
アルバートさんはニコニコしている
「そうなんですか・・・ところで、キャンディの具合はいいんですか?」
アーチーは、アルバートさんの言ってる事が、少しも理解できず、キャンディの話に変えた
「あぁ、もう大丈夫だよ。顔色も僕が本宅を出る時には良くなって来てたよ。心配かけたね」
「そうですか・・・それは良かった。でも今朝は、凄く顔色悪かったですよね・・・」
ディックは、まだ少し心配している様だ
「うん、病気じゃなかったんだ」
「え?病気じゃなかったんですか?」
今度はアーチーが驚いた。風邪くらいの病気だと思っていたからだ。
「うん、病気じゃなかったけど、妊婦さんだった」
アルバートさんは、またニコニコしている。アーチーとディックは固まってしまった・・・
「ん?」
「え?妊婦?誰が・・・?」
アーチーとディックは頭の中が混乱している
「僕とキャンディの、赤ちゃんが出来たんだよ。嬉しい話だろ?」
アルバートさんは2人を見て言った
「キャンディに赤ちゃん?!」
「なに?キャンディが妊婦?」
2人は、やっとアルバートさんが言ってる事を理解し、大きな声を出した
「2人共、声が大きいよ・・・」
「あ・・・すいません・・・」
「あまりにも、衝撃的で・・・つい・・・」
「君達2人には、早く教えてあげようと思って、お昼に誘ったのさ」
「赤ちゃんか・・・おめでとうございます」
「おめでとうございます。ビックニュースですね」
アーチーとディックも、一緒に喜んでくれ、アルバートさんは嬉しかった
「そうだろ?僕は驚いたよ。結婚してるんだから、普通なんだけど、やっぱり頭の中が真っ白に
なったんだよ。でも、次の瞬間には、嬉しくて仕方なかったな・・・僕とキャンディの子供だからね・・・」
「僕達には、全てが未体験の世界ですからね・・・でも自分の子供が出来たら、嬉しいんだろうな・・・」
「そんな感覚、想像もつかないな・・・」
アーチーとディックは考えても、理解出来ない感覚を一生懸命想像したが、無理だった。
「アルバートさんとキャンディの、赤ちゃん、早く見たいな・・・アルバートさんパパですね、くすっ」
「そうだな・・・僕がパパか・・・まだ実感がないな・・・」
「アルバートさん、ちょっと聞きたい事があるんですけど・・・」
アーチーが少し赤い顔をして言った
「何だい?」
「あの・・・赤ちゃんが出来るって事は、それなりの事をしてるんですよね?」
「な、何を言い出すのかと思ったら・・・ビックリするじゃないか、アーチー・・・」
アルバートさんも顔が赤くなった
「僕やディックには、未知の世界なので・・・聞けるのはアルバートさんしか居ないし・・・」
アーチーは真剣だった・・・そんなアーチー達の疑問を解決してあげようとアルバートさんは思った
「なんか、恥ずかしいな・・・でも、君達の社会勉強なんだろ?」
「えぇ、社会勉強です・・・くすっ」
「それで、何が聞きたいんだっけ?」
「ですから、赤ちゃんが出来る、それなりの事をしてるんですよね?」
「まぁね・・・夫婦だからね・・・」
アーチーもディックも興味津々で、2人の目は輝いていた。2人は次々とアルバートさんに質問を
してきた。アルバートさんは困りながらも、答えられる範囲で答えてあげた。
「それの、キャンディとの初めてって、結婚前ですか?あ・・婚約発表の日から寝室は一緒
でしたよね?・・・て事は、婚約発表前ですか?後ですか?」
アーチーが聞いた
「キャンディとのって・・・君達も勘違いしてる様だけど、僕はキャンディ以外の女性と、お付き合い
した事がないんだよ。僕は、ずっと総長の教育を受けていたし、アードレーを出て旅を始めた時には
キャンディに会って養女にして、ずっとキャンディが心配で近くに居たし、いつの間にかキャンディに
惚れていたからね・・・」
アーチーとディックは予想外の事にポカンとしていた
「何か意外な感じもしますけど、そう言われてみると、そうですね・・・」
アーチーが言った
「そうさ、アーチーと一緒にしないでくれよ。くすっ・・・僕はキャンディが最初で最後の女性なんだよ」
「アルバートさん、僕だって遊んでませんよ。色々な女性と話はしますけど、遊んでませんよ・・・
本気になったのもキャンディが初めてだし・・・僕はプレイボーイじゃないんですよ・・・本当は。くすっ」
アーチーが信じられないような本当の事を言った
「本当かい?そうは見えないけど・・・そうかも知れないな・・・信じるよ・・くすっ」
アルバートさんは、そう言うとディックと笑った
「でも、アルバートさん、キャンディにはテリィが居ましたよね?」
アーチーは、聞いてはいけない事かと思いながらも、聞いてみた
「うん、確かにキャンディとテリィは、誰も入り込めない位の仲で恋人同士だった。だから僕も
一度はテリィのものになっていると思っていたんだけど・・・テリィは、そんなヤツじゃなかった。
テリィは、キャンディをとても大切にしていたんだよ。とても大切にしていたから、キャンディに
手を出すこともなかったんだよ。テリィは、本当に紳士なんだよ・・・」
「本当ですか?テリィは、本当に僕達に見せるテリィと、キャンディに見せるテリィが違うんです
よね・・・テリィって、凄くいいヤツなんですね・・・そんなヤツには見えないけどな・・・くすっ」
アーチーはテリィの顔を思い出して笑った
「あ、話戻していいですか?・・・でキャンディとは・・・?」
ディックが思い出して言った
「くすっ・・・戻ったか・・・仕方ないな。婚約発表前だよ。もうこれ以上は言わないよ」
「へ〜・・・前か・・・」
ディックが意外そうに言った
「前でも、後でもいいんだよ。自分達で責任が持てれば。僕とキャンディの間では、発表する
何ヶ月か前から結婚が決まってたからね。君達だって、君達の好きなようにやったらいいよ。
お互いが、愛し合っているなら、それなりの方向に進んでもいいだろうし、婚約してから、
結婚してからと決めたなら、そうすればいい。人それぞれだから、自分達の判断で恋愛は進める
べきだと思うよ。でも、進めるのはいいけど、責任が取れないとだめだよ。あと、男が無理に
進めるのは良くないと思うよ、女性の気持ちも考えないと・・・」
アルバートさんは、自分の思うことを言った
「そうですね・・・僕達は恋愛の段階まで行ってないんですよ。お友達的なんです・・・」
「そこから進めるかどうかは、君達次第だよ・・・」
「アルバートさんは、養女から進めたんですよね?こっそりキャンディに会いに行ってましたよね?」
アーチーが笑いながら言った
「くすっ・・・そうだね。毎月は行けなかったけど、時間が取れた時は行ってたよ。キャンディを
他の男に取られるのが嫌だったからね・・・僕は僕なりのやり方で進めた。キャンディはそれに
着いてきてくれたんだよ・・・嬉しい事に・・・僕にまかせてくれたんだ」
「アルバートさんは、どんな事したんですか?」
ディックが聞いた
「え?言うの?僕は、キャンディを木の上に誘った。そして、枝に座るキャンディの体を支えたよ・・・
キャンディは、僕に体を預けてくれた」
アルバートさんは木の上の事を思い出した
「へ〜、そんな事したんですか・・・自分達の進め方か・・・僕も進めてみようかな?アーチーは?」
「ん〜・・・いつまでも友達っていうのもな・・・」
「まぁ、ゆっくりやってくれよ。慌てると、ろくな事ないよ」
「そうですね、また聞きたい事が出来たら、よろしくお願いします」
「もう勘弁してくれよ・・・自分達で考えろよっ・・・くすっ。さぁ、オフィスに戻って会議だぞ」
夜は、お祝いのディナーになった。キャンディから話を聞いたアニーとパティー・・・アルバートさんから
話を聞いたアーチーとディックは、よそよそしく赤い顔をしていた。
キャンディとアルバートさんは、部屋に戻ると、アルバートさんの部屋のソファーに座った。
「キャンディ、体調はどうだい?」
「えぇ、少しモヤモヤしてるけど、大した事ないわ。あと1〜2ヶ月は続くらしいわ」
「そんなに?長いね・・・」
「うん、でも大丈夫よ。そんなに酷くないから・・・」
アルバートさんはキャンディの肩を抱いて話した
「やっぱり、妊娠するって大変なんだな・・・これからお腹も大きくなって、出産も大変って聞くよ。
キャンディ、産むのは1人で辞めようか・・・」
アルバートさんは妊娠、出産の事を知れば知るほど、心配になっていた・・・
「何を言ってるの。大丈夫よ、私は楽しんでいるのよ。絶対男の子2人、女の子2人産むわよ。
いいでしょ?アルバート・・・産ませて」
キャンディはアルバートさんを覗きこんで、頼んだ。
「くすっ・・・キャンディから初めての、おねだりだね。嬉しいおねだりだよ・・・分かった。
僕も出来る事は、何でもするから、キャンディ、何でも言ってくれよ。そして、4人のパパとママに
なろう」
アルバートさんは、キャンディを抱きしめた。”キャンディ・・何て可愛いんだろう、君は・・・”
「うん、初めの計画通りにね。そういえば、今日、アニーとパティーに変な質問されて、大変
だったのよ・・・くすっ・・・」
キャンディは今朝のアニーとパティーを思い出して笑った
「変な質問って?」
「私とアルバートの初めては、いつかって・・テリィとは?・・って」
「え?それで答えたの?」
「仕方ないから、アルバートとは婚約発表前で、テリィとは、そんな事ないって答えたわ。
ビックリでしょ?くすっ」
「実は、僕もアーチーとディックに、今日質問されたよ・・・」
「何の?」
「キャンディとの初めては婚約発表前か、後かって・・・あとテリィとキャンディの事も・・・」
「え?本当?それで答えたの?」
「うん、社会勉強だって言うから、仕方なく答えたよ。くすっ・・彼らも僕の事を勘違いしてた
みたいだから、キャンディが最初で最後の女性で、婚約発表前だって言ったよ。あとテリィは
キャンディを、とても大切にしていたから、テリィとキャンディの間には、そんな事は無かったって
言ったよ。キャンディとテリィの事は、言うか考えたんだけど、テリィはそんな軽い男じゃないって
分かって欲しいと思って言ったんだ。ダメだったかい?」
アルバートさんは少し不安な目をした
「ううん、それで良かったと思うわ。実際にテリィは、そんな人じゃないし、そんな事も無かったし
彼は、周りに誤解されやすい人だから、伝えてあげた方がいいと思うわ」
キャンディは笑顔を見せて言った
「良かった・・・キャンディは、そう思ってくれると思っていたんだけど、少し不安だったんだ・・・
そう、それで、それを言ったら、アーチーが僕達に見せるテリィの姿と、キャンディに見せる
テリィの姿が全然違うっていってたよ。くすっ」
「確かにそうね・・・でも同じ日に、同じ質問を、あの4人がして来るって面白いわね」
「本当だよ。赤ちゃんが出来たって事に、敏感に反応したのかな・・・
ディックもアーチーも、今のお友達状態から進めるらしいよ」
「あらっ、楽しみね。でもあの4人は結婚の約束してるのよね?」
「うん、そうなんだけどね・・・これから、あの4人は木の上のキャンディみたいにドキドキするんだね」
「懐かしいわね・・・あのドキドキはいいわよね・・・くすっ」
「うん、いいよな・・・くすっ。さぁ、もう寝ようか。疲れちゃうだろ?」
「うん、大丈夫だけど、赤ちゃんを守れるのは私だけだから、きちんと休まないとね」
「そうだよ、僕たちの大切な赤ちゃんなんだからね、頼むよ」
今年もアルバートさん主催のクリスマスパーティーの日が来た。去年まではアルバートさん1人の
主催だったが、今年からはキャンディも加わり、アードレー夫妻主催のパーティーとなった。
キャンディは、少し気分が良くないが、どうしてもパーティーに出たいとアルバートさんに頼み
気分が悪くなったら、すぐに休むという約束で出席させて貰った。今年はワインレッドのドレスを
着て、ヒールの低い靴を履き、アルバートさんにエスコートされ会場に入った。
「メリークリスマス・・・お忙しい中、私、ウィリアム・A・アードレーと、妻、キャンディス・W・アードレー
主催のパーティーに御参加頂き、ありがとうございます。昨年の、このパーティーで私達夫婦は
婚約を発表させて頂き、2月の私の誕生日に入籍、5月の妻の誕生日に挙式を行い、とても
充実した1年を過ごしてまいりました。これも、皆様の御支援、御指導のお陰だと思っております。
深く感謝致します。この度、私と妻は子供を授かる事が出来ました。まだまだ小さな命ですが、
これから大きく育ち、8月には私に泣き声を聞かせてくれる予定です。来年は私達夫婦も親に
なります。わからない事が多々ありますので、引き続き御支援、御指導をお願いいたします」
アルバートさんの挨拶が終わると、拍手と歓声があがった。2人を祝福してくれていた・・・
続いてキャンディが挨拶を始めた
「本日は、お忙しい中、御参加頂き、ありがとうございます。今日、この場で皆様に、子供を
授かった事を御報告出来、とても嬉しく思っております。今後も皆様の御支援、御指導の下
親として成長していきたいと思いますので、よろしくお願いします」
「あと、私ウィルアム・A・アードレーから、もう一言いいでしょうか・・・
妻は妊娠初期という事もありまして、体調が優れません。本日の主催者ではありますが、
座らせて頂く事が、あるかも知れません。どうか御理解頂けます様、お願い致します」
会場は、また大きな拍手が起こった。2人はホッとして台から下りた。アルバートさんは
キャンディを気遣い、腰に手を回し、ゆっくりと階段を下りて来た。その姿は周りから見ると
微笑ましかった。挨拶を終えた2人は、会場を廻り始めた。参加者もキャンディの体を気遣って
くれたり、お祝いを言ってくれたり・・・キャンディとアルバートさんは幸せな気分になった。
キャンディは最後まで一度も座る事なく、主催者としての仕事をこなした。
パーティーに参加した人は、皆、キャンディはアードレー夫人になる為に生まれた様な人だと
社交会などで言う様になった。挨拶、振る舞い、心遣い、仕事ぶり・・・どれをとっても
立派なアードレー夫人として周りから認められてきていた。
アルバートさんの耳にも、その噂は入り、とても喜んでいた。アーチーは、ただ驚くばかりだった。
キャンディが、こんなに立派にアードレー夫人としての仕事をこなすと思っていなかったからだ。
アーチーは、キャンディにはアルバートさんが居るから助けて貰えるし、大丈夫だろうと思って
いた。実際にはアルバートさんの助けを殆ど受けずに、仕事をこなしていたのだ。アルバート
さんが言っていた”キャンディは、アードレー夫人になる器を持っている・・・”という言葉を
思い出し、この事だったのかと、今頃気付いたのだった。