フレグランスに包まれて

1         10 11 12 13 14 15 16 17 18 あとがき

                 〜フレグランスに包まれて〜

  1

キャンディがポニーの丘で、丘の上の王子様がアルバートさんだったと知ってから1ヶ月が過ぎた。
相変わらず、アルバートさんは、キャンディの兄で居た。アルバートさんは、キャンディを自分の手で幸せに
したいと考えた時もあったが、自分は兄のままの方がいいと思うようになっていた。キャンディには、自分を
幸せにしてくれる人を、自分で決めて、幸せを手にして欲しいと、アルバートさんは考えた。
アルバートさんの願いは、ただ1つ・・・キャンディの幸せなのだから・・・

キャンディは、既に隣町のノースブルック病院で、看護婦をして働いていた。ポニーの家に帰れば、ポニーの家の
手伝いもし、充実した毎日を送っていた。
キャンディの勤める病院は、入院施設は無く、入院する様な患者が来た場合は、同じ町の大きな病院へ回せる様
連携の取れた小さな病院ではあったが、医師は3人居た。院長先生で内科医のグレゴリー先生、
小児科の若い医師のダグラス先生、外科の中堅医師のフィリップ先生の3人の医師と、看護婦は、キャンディを
含め6人、受付に2人の女性が居る、小さな病院である。病院は、土曜、日曜が休診だった。町にある大きな
病院が土曜・日曜も診察をしていたので、ノースブルック病院が土曜と日曜を休診にしても、何の問題もなかった。
キャンディは外科の技術を身に付けていたので、ここでも外科の看護婦になっていた。シカゴの大きな病院で
働いていた事もあり、仕事はテキパキとこなし、外科のフィリップ先生もキャンディには、一目おいていた。
子供の扱いも、年寄りの扱いも上手く、病院では人気の看護婦だった。そんなキャンディに、小児科医の
ダグラスは、好意を寄せる様になっていた。ダグラスは、27歳の若手医師で背も高く、顔立ちも整い、女性からの
人気はかなり高かった。しかし、ダグラスは、何故か女性に興味を示さず、近寄って来る女性にも、挨拶程度の
会話しかしなかった。そこがまた、女性達の心をくすぐっていた様だ・・・。そんなダグラスが、好意を寄せた
キャンディと、時々普通に会話を楽しんでいる姿を見た女性達は驚いていた。
その女性達は、笑顔が素敵で、誰とでも仲良くなれ、仕事の出来るキャンディが相手では、勝てる筈もないと
初めは思っていたが、キャンディがダグラスに心を寄せている様には見えなかったので、ダグラスを諦める
女性達は居なかった。そんなキャンディを恋敵とも思わず、女性達はキャンディとも仲良くしていた。

そして・・・5月7日の夕方・・・病院が閉まる少し前に1台の車が、病院の前に停まった。中には、サラリと髪の
長い美男子が乗っていた。それも、シルクのブラウスを着たお洒落な青年が・・・。
病院内の看護婦と受付の女性は、あれは誰か・・・誰かの知り合いかと騒いでいたが、片付けで忙しかった
キャンディの耳には届いて居なかった。そして、病院の診察時間も終わり、院長先生を除く全員が、ゾロゾロと
病院から出て来た。すると、車の中に居た青年は、車の外に出てきて、車に寄りかかり、バラの大きな花束を
持って立った。病院から出て来た女性達は、今まで、この田舎では見た事のない、お洒落な青年を目の前で
見て、目を輝かせていた。
「キャンディ!」
キャンディは、呼ばれて初めて、その青年に気付いた
「アーチー、アーチーじゃない・・・どうしたの?」
キャンディは、ここにアーチーが居る事に驚いては居たが、アーチーに駆け寄り、アーチーに寄り添った。
「やぁ、元気そうだね。良かったよ」
アーチーは優しく微笑んだ
「えぇ、元気よ。アーチーも元気そうね」
「はい、キャンディ。お誕生日おめでとう」
アーチーは、キャンディの誕生日、当日にお祝いに来てくれたのだった。
「ありがとう・・・アーチー。素敵なバラだわ・・・」
キャンディは、とびっきりの笑顔をアーチーに見せた。そして、キャンディは皆と病院から出て来た事に気付き
皆の方を見ると、全員がボーッとしていた。キャンディは少し可笑しくなってしまった。とってもお洒落で素敵な
青年に、大きなバラの花束を貰うなんて、本の中の話でしかなかった女性達・・・それを目の前で見た女性達は
ポカンとしているし・・・ダグラスに至っては、アーチーを敵視していた。
「あっ・・・アーチー、紹介するわ。私がお世話になっている病院で、一緒に働いて居る方達なのよ」
キャンディは、皆をアーチーに紹介した。
「いつもキャンディが、お世話になっております。僕はアーチーボルト・コーンウェルです。よろしくお願いします。
今日は、申し訳ありませんが、キャンディを僕が連れて帰りますので、御了承下さい」
アーチーは、仕事を始めてから、とっても大人になり、腰の低い、やんわりとした口調で挨拶をする様になった。
「皆、ごめんね。今日は別で帰らせて頂くわ・・・お疲れ様でした・・・」
キャンディは、皆に挨拶をした
「あ・・キャンディ、お疲れ様でした。また明日ね・・・」
皆も、やっと我に返り、挨拶をし、皆が帰り始めるとアーチーが言った
「キャンディ、少しドライブでもしようか」
「えぇ、いいわよ。嬉しいわ、アーチーとドライブなんて・・・」
そう言うと、キャンディは車に乗り込み、アーチーがドアを閉め、ドライブへと出発した。
その時、ダグラスは少し離れた所でキャンディとアーチーの事を見ていた。
”あいつは、何者なんだ・・・キャンディは親しくしていたし、あんなに大きなバラの花束・・・そして、キャンディは
あいつの車に簡単に乗った・・・キャンディの恋人なのだろうか・・・”
病院から車で15分程の所に、大きな池のある公園があった。2人は、池の畔に来てベンチに座った。
「アーチー、こんな夕方に、ここに来て大丈夫なの?」
キャンディは心配になって言った
「うん、大丈夫さ。1時間位車で走れば本宅に着くさ」
「本当に1時間?」
キャンディが疑って、アーチーを覗き込んで言った
「いやっ・・・2時間かな・・・くすっ」
アーチーはキャンディの頭を撫でて言った
「戻ったら夜になっちゃうわよ・・・」
「いいんだ。今日は、ここに来たかったんだから・・・今日はキャンディの誕生日だろ?」
今度はアーチーがキャンディを覗き込んだ
「そうよ!だめじゃない!こんな所に居たら!私とアニーは同じ誕生日よ」
「あぁ、知ってるよ・・・」
アーチーはボソッと言った
「じゃぁ、何でここに来たの・・・ダメじゃない・・・」
下を向いているアーチーに、キャンディは語りかける様に言った
「さっき、言ったはずだよ、キャンディ。僕は、今日、ここに来たかったんだ」
アーチーはキャンディの目を、強く見つめて言った。その強さにキャンディが少し引いた・・・
「う〜ん・・・アニーが知ったら、きっと悲しむわよ・・・。アニーだって誕生日なんだから・・・」
「大丈夫だよ・・・アニーには昨日、プレゼントを先に渡してあるから・・・」
アーチーは、また下を向いている・・・
「先にって・・・当日に貰うから嬉しいんじゃないの?」
「じゃぁ、キャンディは、今日、僕にプレゼント貰って嬉しかった?」
アーチーが顔を上げ、キャンディを見た
「えぇ、私は、今日アーチーにプレゼントを貰って、とっても嬉しいわよ。今日、誰かにプレゼントを貰えると
思っていなかったから・・・あっ、アルバートさんは、きっとポニーの家に送ってくれてると思うけど・・・」
「アルバートさんか・・・」
「どうかした?」
「いや、何でもない。キャンディが、今日僕のプレゼントを喜んでくれたなら、それでいいんだ」
「えぇ、私は、とっても嬉しいわよ・・・でもアニーの事が気になってしまって・・・」
キャンディが少し下を向いて言った
「優しいんだな、キャンディは・・・」
「あたりまえよっ!白衣の天使は優しいのよ!くすっ」
やっと、いつものキャンディに戻った
「そういえば、さっき病院の人の中で、えらく僕を睨んでる人が居たよ・・・」
「え?誰だろう・・・そんな人居た?」
「背の高い男だよ・・・」
「あっ・・・小児科医のダグラス先生だわ、きっと。睨んでた?」
「うん、かなり睨んでた。キャンディ、彼とは仲いいの?彼氏だったりする?」
「彼氏って・・・ダグラス先生が?まさかぁ・・・別に普通に話す位よ。あっ、でも、この前休みの日にドライブに
誘われたわ・・・」
キャンディが思い出して言った
「え?ドライブ?彼の車に乗ったの?」
アーチーは少し、動揺している・・・
「乗ってないわよ・・・誘われた日は、丁度ポニーの家の手伝いを頼まれていたから、断ったのよ」
「その手伝いが無かったら、ドライブ行ってた?」
「どうかなぁ・・・手伝いが無かったら、先生の事嫌ってる訳じゃないし、断る理由が無いわね・・・でも何で
アーチーが、そんな事聞くの?」
キャンディが急に何かに気付いたのか、アーチーに聞いた
「え?いや・・・別に・・・さぁ、もうポニーの家に帰ろうか」
アーチーが答えられなくなった事もあったし、時間もだいぶ経ったので言った
「そうね、アーチーも帰るのが遅くなってしまうしね・・・お願いするわ」
キャンディがニコッとした・・・アーチーの顔が少し赤らんだ・・・2人は車に乗り、ポニーの家まで来た。
「今日は、ありがとう。アーチー、とっても嬉しかったし、楽しかったわ」
「あぁ、喜んで貰えて、僕も嬉しいよ。ねぇ、キャンディ・・・また来てもいいかな?」
アーチーが少し遠慮気味に言った
「え?私は別にいいけど・・・アニーを大切にしてね」
「じゃぁ、またね。キャンディ、また来るよ」
アーチーの顔が明るくなった。アーチーは”アニーを大切にしてね”の言葉に対して、何も返事をしなかった。
キャンディは、その事に気付かず、そのままアーチーを見送り、車が見えなくなると、ポニーの家に入って行った。
ポニーの家には、予想通りアルバートさんからプレゼントが届いていた。それは、通勤に着れる七部袖の
シャツだった。キャンディは、その晩、アルバートさんにプレゼントのお礼と、病院での事、そして誕生日の今日、
アーチーが、来てくれた事を手紙に書き送った。
数日後、手紙を受け取ったアルバートさんは、”おやっ?”と思った。”アーチーがキャンディの誕生日にポニーの
家まで行ったのか・・・あの日は、仕事をしていたはず・・・終ってから、わざわざキャンディに会いに行くなんて・・・”
アルバートさんは、何かに気付いたが、少し見守る事にした・・・。

キャンディの誕生日の翌日・・・仕事前に、キャンディは看護婦と受付の女性2人から質問を受けた。
「キャンディ、昨日の男性は、恋人なんでしょ?」
「え?まさか・・・違うわよ。友達よ」
「友達が、あんなに大きなバラの花束を?」
「そうよ、彼は昔からよ。私がバラが好きだから、バラの花束をくれるのよ」
「へぇ〜、そんな人が本当に居るのね・・・本の中だけかと思ってたわ・・・」
「くすっ・・・彼は、そんな人なのよ・・・」
「いいわねぇ、キャンディは、あんな友達が居て・・・都会の人でしょ?」
「そうね、シカゴの人よ」
「都会には、あんな人が居るのね・・・」
”アーチー、また貴方を見て女性が、うっとりしてるわよ・・・”
そして、仕事が始まった・・・朝の混雑が一段落した頃、ダグラスがキャンディの所に来た
「キャンディ、今日のお昼、俺と外で食事しないか?」
「え?どうしたんですか?急に・・・」
キャンディは、少し驚いていた・・・
「嫌かい?」
「とんでもない・・・嫌だなんて・・・」
キャンディは、慌てて言った
「そう、良かった。じゃぁ、ドラッグストア隣の喫茶店で食事をしようか」
それだけ言うと、ダグラスは仕事に戻って行った。キャンディは昨日のアーチーの言葉を思い出した。
ダグラスはアーチーを睨んでいたと・・・
”きっとアーチーの勘違いよね・・・でもアーチーはダグラス先生の事を気にしていたわよね・・・”

そして、午前の診察が終わり、キャンディはダグラスに言われた喫茶店へ行った。ダグラスは小児科が空いて
いたのだろう・・・先に店に居て、キャンディを見つけると手を上げた。
「やぁ、キャンディ、来てくれたね」
「はい、ダグラス先生と約束しましたから・・・」
「来てくれないかも・・・って少し不安もあったんだよ・・・」
「そうなんですか?約束したのに、来ない訳ないじゃありませんか・・くすっ」
「くすっ、そうだね。約束は破っちゃいけないんだよな。キャンディ、何食べる?」
ダグラスはとても楽しそうだった
「う〜ん、サンドイッチと食後にコーヒーにします」
「じゃぁ、俺も同じにしようかな?でも足りないな・・・ホットドックも食べようかな・・・」
ダグラスは、ウェイターを呼び、注文した
「ビックリしただろ?急に誘ったから・・・」
「えぇ、少し・・・そうだ、この前は、誘って頂いたのに、お断りしてすいませんでした」
「いや、いいんだよ。キャンディには予定があったんだから、仕方ないよ。また誘わせて貰うよ。キャンディと
何処かへ出かけてみたいからね」
ダグラスはウィンクした
「あ・・・はい・・・」
キャンディは少し戸惑っていた
「キャンディは、他の病院で外科に居たの?」
「はい、シカゴの大きな病院の外科に居ました」
「それは、忙しかっただろ?」
「えぇ、目が回る位、仕事が沢山ありましたよ・・・くすっ」
キャンディは思い出して笑った
「それで、ここに居ても、テキパキと動くんだね。キャンディだけは、1人動きが違うもん。フィリップ先生も
キャンディの事を誉めていたよ。フィリップ先生が使いたい物が、スッと出てくるって。キャンディと居ると、自分が
何を使いたいか言わなくても出てくるから、感心するばかりだって言ってたよ。他の看護婦の時に、キャンディの
つもりで居ると、自分が手だけ出してて、何も手に乗って来ないんだって、笑ってたよ」
とても楽しそうに、そして、愛おしい目でキャンディを見てダグラスは話していた
「くすっ・・・フィリップ先生、そんな事言ってるんですか?嬉しいですね」
注文した物が運ばれて来て、二人は食事しながら話し出した
「やっぱり、忙しい病院で働くと、体が覚えてるもんなんだね・・・」
「そうかも知れないですね・・・くっくっく・・・ダグラス先生、口の周りにケチャップが・・・子供みたいです・・・」
「え?本当?」
「はい、ペーパー。ふいた方がいいですよ、くっくっく・・・」
キャンディは子供の様なダグラスが可笑しくて仕方なかった
「キャンディ、君は、本当に楽しそうに笑うんだね・・・可愛いな。笑顔が素敵だよ・・・」
「ありがとうございます。くすっ・・・私、ダグラス先生は、もっと話し辛い方かと思っていました。でも、違って
ましたね。とっても話しやすくて、楽しい方でしたね」
キャンディも楽しいと思える様になってきた
「え?俺、話し辛そうだった?」
「えぇ、だって、沢山の女性が先生に話しかけても、先生は挨拶しかしませんし・・・笑った所を私は、ほとんど
見てないし・・・もっと怖いかと思ってました・・・くすっ」
「うん・・・確かに、そうだったかな・・・でも、俺は小児科医だぜ、キャンディ。子供を扱うんだから、優しいし笑顔
だって見せると思わないか?」
ダグラスはふざけて偉そうに言ってみた
「そういわれたら、小児科医でしたね・・・くすっ」
「キャンディ、今頃気付いてないよな?くすっ。君と居ると楽しいね」
「そうですか?ダグラス先生も楽しい方ですよ」
キャンディは、とびっきりの笑顔を見せ、ダグラスはドキッとした。
「そうだ、キャンディ。ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
ダグラスが聞き辛そうに言った
「いいですよ・・何か?」
キャンディは、小首を傾げて聞いた
「うん、昨日の夕方来た男性なんだけど・・・」
「あ、アーチー・・・アーチーボルト・コーンウェルですね?」
「彼、大きなバラの花束を持って来てたけど、キャンディの恋人なの?」
「え?彼がですか?彼は恋人じゃありませんよ。私がバラの花がすきなので、誕生日プレゼントで昨日持って
来てくれたんです。素敵なバラでしたよ・・・」
キャンディは微笑んで言った
「そうか・・恋人じゃないのか・・・悪いね、変な事聞いちゃって」
「いえ、いいんです。今朝も皆に聞かれましたから・・・彼、あんな風だから、いつも女の子がキラキラした目で
彼の事を見るんですよね・・・くすっ」
「キャンディは、あの男性の事を、彼って言うんだね・・・親しいんだね」
「そうですね・・・親しいといえば親しいですね・・・」
「そっか、ありがとう、答えてくれて・・・さぁ、休憩終るから、戻ろうか、キャンディ。ここは僕に払わせて」
「え?ダメですよ・・・自分の分は払いますよ・・」
「質問に答えてくれた、お礼だよ。くすっ」
「そんな事言ったら、毎日質問に答えますよ、くすっ」
「本当?そしたら、毎日、僕はキャンディとお昼が食べられて嬉しいよ」
「・・・・・」
「ウソだよ、キャンディ。ほらっ、行くぞ」
ダグラスは嬉しそうにキャンディの手を引っ張った
「もぉ・・・ダグラス先生ったらぁ・・・」
キャンディは、コブシを振り上げダグラスの背中を軽く何度か叩いた。ダグラスは、そんな事が
とても嬉しくて仕方なかった。
”キャンディ・・・僕は、いつも君とこんな時間を共に過ごしたいんだよ・・・同じ時間を過ごせる日は来るんだろうか”
「キャンディ、病院を出たら、僕は先生じゃないから、キャンディにはダグラスと呼んで欲しいんだ。頼んだよ」
「え・・・でも、先生は先生ですから・・・」
キャンディは戸惑っていた・・
「外では、先生じゃないよ。約束だよ、キャンディ。今日は、とっても楽しかったよ、ありがとな」
「私も、楽しませて頂きましたよ。ごちそう様でした」
笑いながら病院に戻って来た2人を、皆は見て呆然としていた。女性と話して、それも、とても楽しそうなダグラス
には、皆が驚いた。これもキャンディのパワーなのだろう・・・と皆は思っていた。

その後、キャンディとダグラスは、2人で昼食を取るために外に出かける事が多くなった。昼は2人で出る事は
あったものの、休日の予定は、なかなか合わず2人で出かける事はなかった。ただ、病院の皆で出かける
ピクニックや、バーベキューには2人共参加し、楽しんでいた。キャンディと話す様になってから、ダグラスは
明るくなり、他の女性達とも会話を楽しむ様になってきた。そんなダグラスを見て、キャンディは安心していた。
ダグラスが、自分だけでなく、色々な女性とも話し、ダグラスに好意を寄せている女性達も楽しく、過ごせる様に
なった事が、キャンディは嬉しかった。
一方、アーチーは、仕事を覚えたり、色々な事を勉強したりと忙しい日々を送ってはいたが、毎月キャンディの元を
訪れ、短い時間を有効に使い、ドライブや食事をキャンディと共にし、お互いに月に1回の再会を楽しんでいた。
9月になったある日、シカゴのアードレーオフィスで、アーチーがキャンディに会いに行こうと、仕事を早く片付け、
帰り支度をしていると、アルバートさんがアーチーの部屋に来た。
「アーチー、今日はもう終ったの?」
「はい、今日の仕事は終らせました。何かありましたか・・・?」
アーチーは、仕事のミスがあったのかと、不安になった。一刻も早くキャンディの所に行きたいアーチーは
ハラハラしていた。
「いや、何もないんだけど、アーチーが急いでるみたいだから・・・何処かへ出かけるの?」
アルバートさんは、なんとなく予想はついたが、聞いてみた。
「はい、ちょっと友達の所へ・・・」
”キャンディの所だなんて、言えない・・・”アーチーは思った
「そうなんだ。じゃぁ、夕食は居ないのかな?」
「はい、外で済ませて来ます」
「なんか、嬉しそうな顔をしているな・・・気をつけて行くんだよ」
アルバートさんは、そんなアーチーを見て微笑んだ
「はい、行って来ます・・・」
アーチーは、顔がニヤけてしまっただろうか・・・と少し考えて言った。そして、アーチーはオフィスを出て行った。
”アーチー・・・今日はキャンディに会いに行くんだろうな・・・嬉しそうな顔をしていたもんな・・・
アニーはどうしたんだろうか・・・少し心配だな・・・”
アルバートさんは、オフィスの自分の部屋に戻り、アーチーの嬉しそうな顔を思い出して、自分の考えている事は
間違いないだろうと思っていた。
そんなアルバートさんも、最近、時々逢う女性が居た・・・まだ誰も知らない様だが・・・

アーチーはキャンディの元に着き、2人で公園で会話を楽しみ、レストランで食事を済ませ、今月も別れの時間と
なった時、キャンディが言った。
「ねぇ、アーチー。いつも夕方来るのは大変じゃないの?」
「僕は平気だよ。本宅に戻るのも遅い時間じゃないし、休みの前日に来てるから、次の日はゆっくり休めるし
キャンディは心配しなくて大丈夫だよ。ありがとう、心配してくれて・・・」
アーチーはキャンディの頭を撫でた
「う〜ん、アーチーの休みは、曜日とか決まってるの?」
「あぁ、土曜日と日曜日が休みだよ。週末に2日休むから、平日は、しっかり勉強しながら、アルバートさんの
手伝いをして仕事を覚えているんだよ」
「そぉ・・・休みの日に、ゆっくりしちゃったらアニーに会えないんじゃないの?」
「キャンディは、アニーの心配ばっかりだな・・・でも大丈夫だよ。時々アニーにも会うし、アニーも本宅に来たり
するから、大丈夫だよ・・・」
アーチーはキャンディを安心させようと思い言った。キャンディの顔が少し明るくなった。
「そう・・・じゃぁ、来月は土曜か日曜に来たら?」
「え?いいの?」
アーチーは驚いた
「え?私は、その方がアーチーが疲れないと思うんだけど・・・仕事帰りに私の所に来てたら、疲れちゃうわ・・・
ここからの帰りだって時間がかかるのに、運転して帰るから心配だし・・・お休みの日に来れるなら、体も楽よ。
アニーとも会えてるって、さっき言ってたから、どうかなぁと思ったんだけど・・・」
キャンディが少し不安げな顔になって言った。アーチーは、とっても嬉しかった
「うん、休みの日に来るよ。じゃぁ、来月は17日の土曜日に来るよ。大丈夫かな?10時頃来るから、街に行って
ショッピングでもしないか?」
アーチーはニコニコしている。キャンディも微笑んだ
「えぇ、大丈夫よ。ちょうど、冬用のコートを、そろそろと思っていたから、お洒落なアーチーに選んで貰おうかしら」
「うん、まかせておいて。キャンディに似合うのを探そうね」
そんな会話をし、アーチーは帰って行き、アーチーもキャンディも10月の再会を楽しみにしていた。

10月に入った、ある日のお昼・・・今日はダグラスに誘われ、キャンディは喫茶店でダグラスとお昼を食べていた。
「キャンディ、17日空いてない?何処かへドライブに行かないか?」
「ダグラス先生、ごめんなさい。その日は予定が入ってるわ」
「そうか・・・じゃぁ仕方ないな・・・」
「キャシーとか誘ってみたら、どうですか?」
「そうだな・・・また考えてみるよ」
”キャンディ、俺はキャンディと2人で、出掛けたいんだよ・・・キャンディは俺の気持ちに気付いてくれないんだね”