フレグランスに包まれて

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 2

キャンディとアーチーが約束をした17日になった。アーチーは10時少し前にポニーの家に着いた。
ポニー先生とレイン先生に挨拶をすると、キャンディを車に乗せ、街に出かけて行った。
「アーチーさんは、確かアニーと仲良かった方ですよね?ポニー先生・・・」
レイン先生が、アーチーの幸せそうな顔を思い出して言った
「えぇ、そうでしたね・・・」
ポニー先生は、相変わらず温かい表情で話す
「でも、今の彼を見てると、何か違う気がしませんか?」
「そうですね・・・でも、アーチーさんは前と変わっていませんよ。レイン先生・・・」
「そうですか?」
「キャンディが帰って来た日、アーチーさんはアニーの側に居ましたが、彼が見ていたのはキャンディでしたよ」
ポニー先生はレイン先生を見た
「え?そうだったんですか?ポニー先生・・・私は気付きませんでした・・・」
レイン先生は驚いていた
「えぇ、アーチーさんは、ずっとキャンディを見てました。ずっと前からキャンディを想っていたんでしょうねぇ・・・」
ポニー先生はポニーの丘を見て言った
「少し心配ですね・・・」
レイン先生は、キャンディ、アニー、アーチーの関係を心配した
「アーチーさんも、キャンディも、アニーも子供ではありません。自分達で決めるでしょう・・・」
「そうですね・・・ポニー先生。でも、キャンディはアーチーさんの気持ちに気付いてませんよね?」
「そうかも知れませんね・・・最近は、病院のダグラス先生もキャンディを見ていますね・・・」
ポニー先生はダグラスの事も知っていた
「はい、ダグラス先生の事は、私も・・・こっちもキャンディは気付いていませんね・・・くすっ。でも、キャンディは
自分で、自分の幸せは決めますね・・・きっと」
レイン先生は、今までのキャンディを見てきて、そう思った
「そうですよ、キャンディは自分の道は、自分で決めて、自分の足で歩んでいく子です。心配はいりませんよ」
「そうですね、ポニー先生・・・」
「私達は、キャンディを見守るだけですよ・・・」

キャンディとアーチーは、車で少し離れた街、ブリストルに来た。ここは、シカゴの半分位の街ではあるが、
ショッピングも充分楽しめるし、レストランも、それなりにある街だった。
車を降り、アーチーが言った
「今日は、たっぷり時間があるよ、キャンディ」
「そうね、ゆっくり出来るわね」
「まず、キャンディのコートを探しに行こうか・・・」
2人は、何軒か店に入り、コートを見て歩いた。なかなかキャンディに似合いそうなコートを、アーチーは見付け
られずに居た。そして、次に入った店で、そのコートがアーチーの目に飛び込んで来た。
真っ白で、襟、袖口、裾に白いファーが付き、フワフワしていた。そして、襟から出た、白いファーのボンボンが
付いた紐を結ぶと、胸元でボンボンが揺れる感じになり、丈はお尻が隠れる位のコートだった。
「キャンディ、このコート、キャンディに似合いそうだよ。ちょっと着てみてよ」
「うわぁ、可愛いわね・・・」
キャンディはコートに袖を通してみた。アーチーが思った通りキャンディは、そのコートが似合い、サイズもぴったり
だった。キャンディも、そのコートが気に入り買うと決めた。しかし、キャンディが自分で買うと言っても、アーチーが
どうしても買うと言い出し、キャンディは結局アーチーに買って貰うことにした。アーチーが支払いを済ませ、店を
出て、2人は歩き出した。
「アーチー、ありがとう・・・なんか申し訳ないわ・・・」
「いいんだよ、これ位は。今日はキャンディに、コートをプレゼントすると決めて来たんだから」
「そうなの?わかったわ・・・ありがとう、アーチー。とっても嬉しいわ」
キャンディは、アーチーを見上げて微笑んだ
「ねぇ、キャンディ、クリスマスはどうするの?」
「あっ、そうだ。私、クリスマスはシカゴへ行くわよ」
「本当?そりゃ楽しみだな」
アーチーは、とっても嬉しかった。キャンディがシカゴに来る時は、それなりの日数滞在するので、長い時間
キャンディと過ごせる為、アーチーは嬉しくなった。
「うん、アルバートさんのクリスマスパーティーに出て欲しいって、アルバートさんから手紙が来たの。
アルバートさんが、私をエスコートしてくれるんですって」
「え?アルバートさんが?」
「うん、そう書いてあったわよ」
「アルバートさんに、先を越されちゃったな・・・」
アーチーが残念そうに言った
「何を?」
「パーティーのエスコートだよ」
アーチーはキャンディを見て言った
「何を言ってるの、アーチー。アーチーにはアニーのエスコートがあるでしょ?アニーと何かあったの?」
キャンディは不安な顔をしている
「いや・・・何もないよ・・・」
アーチーは、まずい事を言ってしまったと思い、そっぽを向いて言った
「それならいいけど・・・アーチー、もう1軒、私の買い物に付き合ってくれない?」
キャンディは少し不安になったが、今を楽しもうと思いアーチーに笑顔を見せた
「あぁ、喜んで。次は何を買いたいんだい?」
アーチーは少しホッとした
「クリスマスパーティーで着るドレスを作りたいのよ、アーチー、一緒に選んでくれる?」
キャンディは甘える様に言った
「くすっ、可愛いな甘えて・・・一緒に選ぼうか」
2人はドレス店に入り、布選びから始めた
「どの色がいいかしらねぇ・・・」
キャンディは決められずにいた
「このコバルトブルーなんてどお?キャンディはグリーンのドレスを着ていたけど、ブルーのドレスを着ている所を
僕は見た事ない気がするんだけど・・・」
「そうね、ブルーのドレスを着た事ないかも・・・」
「この色素敵だよ、キャンディに着て欲しいな・・・」
「そうね、アーチーが言うなら、それにしてみようかしら?デザインはどうしたらいい?」
キャンディはアーチーに笑顔を見せた
「クリスマスパーティー用だろ?そしたら、肩が出そうに見える位、開いててもいいと思うよ。うん・・・このデザインの
ドレスを着たキャンディを見てみたいな、僕は・・・くすっ」
アーチーはウィンクした
「くすっ、分かったわ。それにしてみるわね。アーチー、ここは絶対私が払うから、お財布はしまってね。
絶対にダメよ、くすっ」
「わかったよ・・・」
ドレスもプレゼントしようとしていたアーチーだったが、渋々諦めた。キャンディが注文と支払いを終え、
ポニーの家に配達を頼むと、アーチーとキャンディは店を出た。
「ドレスは1ヶ月位で出来るみたいよ。クリスマスには間に合うわね。良かったわ、アーチーが居てくれて。
私1人じゃ、なかなか決まらなかったわ、きっと。ありがとね、アーチー」
「僕も楽しませてもらったよ。キャンディのドレス選び・・・早くあのドレスを着たキャンディを見たいな・・・でも、あの
ドレスを着る時は、アルバートさんがエスコートするんだよな・・・」
アーチーは、まだ残念そうに言っている
「そうね・・・アルバートさんのエスコートなんて、初めてで、楽しみだわ。くすっ」
「さぁ、キャンディ、お昼にしようか・・・」
楽しみにしているキャンディを見て、アーチーは少し淋しい気分になっていた。
2人は、少し高級そうなレストランに入った。レストラン内は、薄暗くカップルの多い雰囲気のある店だった。
店内が薄暗い事もあり、アーチーはキャンディと手を繋ぎ歩いた。当然の事ながら、2人ともドキドキしていた。
”こんな店で良かったよ・・・キャンディの手を握れる・・・心臓が飛び出そうだ・・・”
”アーチー、ビックリするわ・・・ドキドキが止まらないわよ・・・アニーに申し訳ないわね・・ごめんね、アニー
少しアーチーを借りるわね・・・”
2人で楽しく会話をし、アーチーが支払いを済ませ店を出た。
「アーチー、ご馳走様」
キャンディは、とびっきりの笑顔を見せた
「うん、僕に払わせてくれてありがとう。その笑顔が見れて嬉しいよ」
「うん・・・レストランの会計は、男性がやる物なのかと思ったの・・・」
「そうだよ、キャンディ。キャンディが正解。レストランの会計は、男がするもんだよ」
「うん、ありがとう。とっても美味しかったわ」
「次は、僕の買い物に付き合って、キャンディ」
「えぇ、いいわよ。何を買うの?」
「くすっ、内緒」
そう言うと、アーチーはキャンディと歩き出した。何軒かウィンドウを覗き、1軒の店に入った。そこは宝飾店だった。
アーチーは、店内を見て歩き、青いサファイアのイヤリングと、ネックレスを見付け、それを買い、包んで貰った。
”アニーへのプレゼントかしら?アーチーらしい、お洒落なのを買ったわね・・・”
キャンディが先に店を出た。その時、ばったりとダグラスに会い、お互い驚き、立ち止まった。
「キャンディ・・・」
「ダグラス先生・・・」
「キャンディ、外ではダグラスと呼んでくれる約束だよ。キャンディ、今日は予定があったんじゃ・・・」
ダグラスは、優しい笑顔でキャンディの、おでこを突っついて言った時、キャンディの後ろに居た人物に気付いた。
「キャンディ、どなただい?」
キャンディの後ろに居た、アーチーはダグラスの行動と目が気に入らなかったが、その気持ちが外に出ない様
気をつけて、優しい口調でキャンディに言った。
「あっ・・・アーチー。こちら、私が勤めてる病院の小児科医のダグラス先生よ。ダグラス先生、こちらは
アーチーボルト・コーンウェルです」
キャンディは、慌ててお互いを紹介した。
「初めまして、ダグラス先生。キャンディが、いつもお世話になっております」
アーチーは、やんわりと挨拶した。
「どうも、こんにちは。時々、病院の前でお見かけしております」
ダグラスも、面白くない気持ちを抑えて言った。キャンディは、気を使い話した。
「先生は、今日、お買い物ですか?」
「うん、冬用のコートでもって思ってね」
「あら、私と一緒だわ。私も、さっき見てきたんですよ」
「いいのは、あったかい?キャンディ」
ダグラスは、愛おしい目でキャンディを見て言った
「えぇ、とっても素敵なのがありました」
キャンディもニッコリとして言った
「じゃぁ、今度、病院でコートを着てるキャンディを見れるかな?楽しみだ」
「くすっ、そうですね。じゃぁ、先生、また月曜日に・・・」
「では、失礼します・・・」
アーチーとダグラスは挨拶をして、別れた。アーチーはキャンディとダグラスが話してる間も、イライラとしていた。
”キャンディは、今日、アイツと約束があったのか・・・今、この宝飾店から2人で出てきたな。こんな店で2人で
買い物なんて・・・・それにアイツは、今も前も、キャンディがお世話になってますって挨拶してた・・・普通の友達が
あんな挨拶するだろうか・・・それにキャンディも、俺の事はダグラス先生と紹介して、アイツの事はフルネームの
呼び捨てだった。やっぱり、恋人なんだろうか・・・”
ダグラスは1人歩きながら考えていた。一方アーチーも、キャンディと歩きながら考えていた。
”アイツは、前、僕を睨んでたヤツだ。いつも、キャンディを誘っているんだろうか・・・今日も、キャンディはアイツに
誘われて断っていたのは確かだろう・・・アイツは絶対キャンディが好きなはずだ。キャンディを突っついたり、
楽しそうに話す・・・おまけにキャンディを愛おしい目で見ていた・・・キャンディは絶対に渡さない!
早くアニーに僕の本当の気持ちを言って、僕は、はっきりさせないとダメなんだ。そうしないと、アイツにキャンディを
取られてしまう・・・早くアニーに話そう、アニーが泣く事を恐れていたら、僕は、僕の幸せを掴めない・・・”
「アーチー、どうしたの?」
キャンディがアーチーを覗き込んだ
「ん?何でもないよ・・・少し考え事しちゃったよ・・・ごめんよ」
アーチーは、慌てて現実に戻ってきた
「くすっ、少し怖い顔してたわよ」
「そうかい?大丈夫だよ。キャンディ、場所を変えようか・・・あの池のある公園に行こうか」
「うん、天気もいいから、行きましょうか」

公園に着いた。アーチーは、上着を持って出ようかと思ったが、思い直し何も持たずに車から出た。キャンディは
既に車から出て、走って池の方へ行っていたので、アーチーも走ってキャンディを追い掛け、池の畔で捕まえた。
「くすっ、キャンディ、君は相変わらずだね。こんな所に来ると走りたくなるんだね。さぁ、ベンチに座ろうか」
「そうよ、気分がいいもの・・・でも、アーチーに捕まってしまったわね、くすっ」
2人はベンチに座り、アーチーは足を組んで、左腕をキャンディの方へ伸ばし、キャンディの背もたれを掴んでいた。
「ねぇ、キャンディ。さっきの先生は、今日キャンディを誘っていたの?」
「そうなのよ。ドライブへ行こうって言われたんだけど、私は、前からアーチーと約束していたから断ったわ。
あんな所で会うなんて思わなかったわ・・・」
「良く誘われるの?」
アーチーは不安げな顔をして聞いた
「そうね・・・時々誘ってくるわね。でも、今まで一度も予定が合った事がなくて、一度も出かけてないわよ。
不思議よね・・・先生が誘ってくれる日は、必ず予定が入ってるのよ。でも、仕事の日の、お昼は予定も無いから
先生が、お昼ご飯を良く誘ってくれるんだけど、それは毎回一緒に行ってるわ」
「2人で?」
「そうよ。先生は他の人に声を掛けないのよ・・・今度、私が皆に声掛けようかしら・・・」
「そうなのか・・先生はキャンディと2人で食事がしたいんだろ?きっと。他の人に声を掛けたら、先生、気分が
悪くなるんじゃないかな?」
アーチーは、池を見て言った。やっぱり先生はキャンディが好きなんだ・・・
「あらっ、そうなの?皆で楽しく食事したら、おいしいのにね?」
相変わらず男性の心が分からないキャンディである
「そう思っているのは、キャンディだけで、先生は全く思ってないよ・・・だから僕も心配なんだよ・・・」
「アーチーが、何を心配するの?」
「いや、なんでもない・・・さっき、先生は、キャンディと僕が一緒に居てビックリしてたもんな」
「そぉ?アーチーは毎月来てるし、皆も見てるから、私と居ても驚かないと思うわ。皆には、私がアードレー家の
養女だって言ってないし、アーチーの事もアードレーの人間と言えないから、お友達って言ってあるのよ。だから
アーチーは、私のお友達だと思ってるわよ」
キャンディはアーチーに体を向けて言った
「そう思ってる人も居るかもしれないけど、先生は、そうは思ってないよ」
「そうかしら・・・」
「キャンディは、本当に困った子だな・・・くすっ」
「何が?」
「別に何でもないさっ。それがキャンディだもんな、くすっ。キャンディ、寒くないか?」
「少し寒くなってきたかもね・・・でも大丈夫よ。あっ・・・そろそろアーチー、帰る時間じゃないの?」
「あぁ、そうだね・・・キャンディ、こうしたら少し温かくなるかな?」
アーチーは背もたれを掴んでいた左手を、キャンディの肩に回し、右手も前から回して、キャンディの頭に
自分の頭を乗せた。アーチーもキャンディも、心臓が飛び出そうな位、ドキドキしていた。
「アーチー・・・・温かいけど・・・アニーに怒られるわよ・・・」
「そうかもな・・・キャンディ、もう少し、このままで居させてくれるかい?」
「う・・ん・・・アーチーって、温かいのね・・・」
「そうかい?」
”キャンディ、このまま君を僕のものにしたい・・・でも、僕の側にはアニーが居る。こんなに君を好きなのに・・・
キャンディ、君の心の中には誰が居るんだい?あの医者じゃないよな?! アルバートさん?
僕がキャンディの心の中に入り込める日は来るのだろうか・・・”
暫くして、アーチーが離れた。
「キャンディ、ありがとう。嫌じゃなかったかい?ごめんね・・・」
「ううん・・・温かかったわ・・・さぁ、帰りましょうか・・・」
キャンディはアーチーに包まれ、とっても幸せな気分になっていた。アーチーもキャンディを包み、幸せだった。
ポニーの家に着いた・・・
「今日は明るいうちに、シカゴに帰れそうね。アーチー、今日はとっても楽しかったわ。ありがとう」
「僕もだよ、キャンディ。また来月も土曜日に来ていいかな?」
「えぇ、いいけど・・・本当にアニーは大丈夫なの?心配だわ・・・」
「大丈夫だよ、キャンディは心配しないでいいよ。おっと、忘れる所だった。キャンディにプレゼント」
「アーチー・・・これは、アニーにじゃないの?」
「キャンディにだよ。あのドレスに合いそうだろ?クリスマスに使ってよ」
「いいの?」
「キャンディの為に買ったんだから、いいに決まってるだろ?」
「じゃぁ、頂くわ。ありがとう。アーチー、気をつけて帰ってね・・」
キャンディもアーチーも、お互いが淋しい気持ちになっていたが、相手がそんな気持ちになっている事に
2人は、まだ気付いていなかった・・・

暗くなる前に、アーチーは本宅に着いた。エントランスから自分の部屋に行こうとした時、アルバートさんが来た。
「アーチー、何処へ行っていたんだい?」
「え?ちょっと・・・遠くに・・・」
アルバートさんは、アーチーの行っていた場所が分かっていた・・・
「そうか・・・アニーが今日来たんだよ・・・」
「え?アニーが?何故?」
アーチーはアニーが来た事に驚いていた。
「何故って、アーチーに本を返すとかで、会いに来たらしいよ。だけど、アーチーは朝から出掛けてしまって、
いつ戻るか分からないし・・・アニーも1時間位待ったんだけど、アーチーが戻って来ないから、遠くへ行った
のかも・・・って言って帰って行ったんだよ。本は僕が預かってるよ。アニーはアーチーが今日出掛ける事を
知らなかったんだね?」
「えぇ、今日、来ると思わなかったので、言ってません・・・」
「そうか・・・困ったね・・・」
「アニーの所に、今から行ってきます」
アーチーは何かを決めたらしい。目が違うとアルバートさんは思った。
「あぁ、その方が良いかもな・・・」
アーチーは、アルバートさんと話し終えると、すぐに車に戻り、アニーの家・・・ブライトン家へと向かった。
”アーチー、君はキャンディの所へ行っていたんだろうね。幸せそうな顔をして帰ってきたもんな・・・
アニーときちんと話し合った方が、いい時期なのかも知れないな・・・アーチー。君は正直に生きろよ・・・”
アーチーは、アニーに自分の正直な気持ちを伝えなければいけないと、前から考えていたが、なかなか言えずに
今まできてしまった。
”アニーは、僕だけしか見ていない、周りを見れないアニーに、本当の気持ちを伝えたら
どうなるか想像はついた。でも、いつかは、きちんと伝えなければならない・・・今日伝えよう・・・僕の為に・・・
本当の自分を取り戻す為に・・・” アーチーは心を決めた・・・
ブライトン家に着き、アニーの両親に挨拶をし、アニーの部屋に通された。
「今日は、急に行ったりして、ごめんなさいね・・・」
アニーはアーチーを見て言った
「いや、別にいいんだ・・・出掛ける事も言ってなかったし・・・」
アーチーはアニーの目を見ずに言った。アニーは何か変だと思った
「アルバートさんも、朝から出かけたみたいだけど、何処へ行ったか分からない、と言っていたわ」
「あぁ、アルバートさんにも言ってなかったからね・・・」
「アーチー、何処へ行っていたの?」
アニーはいつものアーチーではなかったので、気になり、少し強い口調で言ってしまった
「ん?うん・・・」
アーチーは、強い口調のアニーを初めて見て、少し驚いていた・・・
”今、言おう・・・行っていた場所と、自分の気持ちを、きちんと今言って、はっきりさせよう”
アーチーは意を決して、深く息を吸い言った。
「キャンディの所へ行っていたんだ」
「あらっ、キャンディ?元気だった?」
アニーはキャンディと聞き、少し戸惑っていた
「あぁ、元気だったよ」
「キャンディは、今日はお仕事なかったの?」
「あぁ、休みだよ。アニー、僕は君に言わなければならない事がある・・・」
アーチーの目に力が入った
「何?どうしたの?」
アニーは平静を装って言った。
「僕は、キャンディが好きなんだ」
「アーチー・・・今、何て・・・?」
アニーの目に涙が溜まってきた
「僕は、ずっと前から、ずっと今もキャンディが好きなんだ」
アーチーは下を向いて、自分の手を見ていた
「アーチー・・・嫌よ。キャンディに、貴方を取られたくないわ・・・」
「アニー、ごめん。もう、これ以上、僕は君と居られない。春から、ずっと考えていたんだ。いつ君に僕の本当の
気持ちを伝えようかと・・・」
「アーチー、嫌よ・・・私の側に居て・・・」
「ダメなんだ、アニー。僕は昔からキャンディが好きなんだ。聖ポールでキャンディにアニーをお願いと言われて、
君と一緒に過ごしてきたけど、僕はいつもキャンディを目で追い、心の中にはキャンディしか居なかった」
「そんな事知ってるわ!私は、それでもいいのよ。いつか、アーチーが私を見てくれたら・・・」
「アニー、それは無理なんだよ。僕がアニーだけを見る日は、来ないんだよ。僕には出来ないんだ・・・今まで
側に居ても、アニーをそんな風に見れなかった・・・アニーの気持ちには、僕は一生応えられないんだよ・・・
ごめん・・・キャンディは、とてもモテる・・・いつもキャンディの周りには、キャンディを好きな男が居る。でも僕は
キャンディが好きだという気持ちを変える事は、出来ないんだよ。今までみたいに、アニーの側に居て、自分の
気持ちにウソをついて、自分の気持ちを封印して生きていくのは嫌なんだよ・・・アニーと居れば、何の問題も
無いのかも知れない。でも、僕の気持ちは死んでいるんだよ・・・僕は、僕らしく生きたい・・・その為には、
アニーと居れないんだよ。たとえキャンディに振られても、アニーとは居れないんだ・・・」
「お願いよ、アーチー、私の側に居て・・・私にはアーチーしか居ないのよ・・・」
アニーは頭を横に振りながら泣いている・・・
「アニー、そんな事はないはずだよ。他の女性を好きな僕と居ても、君が幸せになれる筈がない。君だけを見て
くれる男性が絶対居るはずだ・・・きっと現れてくれるはずだ。もっと周りを見てごらん、アニー。君は僕しか
見ていないから、気付かないんだよ・・・もう僕は、君から離れる・・・だから周りを、きちんと見たらいいよ・・・」
アーチーは、アニーに言い聞かせる様に言った。どう言ったら、自分の正直な気持ちをアニーが分かって
くれるのか、考えながら、一生懸命アニーに言った。
「もう、アーチーは、私の側に居てくれないの?」
「うん、もうダメだ・・・僕はキャンディを愛している。キャンディがラガン家に来た時からキャンディが好きで、今は
愛しているんだ・・・アニーには、こんな気持ちになった事が無かった・・・だから、もう側には居れないんだよ。
ずっと、アニーの気持ちに応えられなくて、本当にごめん・・・」
「アーチー、本当にダメなのね?私が、どんなにお願いしても、ダメな事なのね?」
「ごめん、アニー。僕は君と居ると、本当の僕じゃないんだ。昔の自分の気持ちに正直に生きていた、僕に
戻りたいんだ・・・僕を昔の僕に戻らせてくれないか?アニー・・・僕は、好きな女性の近くに居たいんだ・・・」
アーチーは、アニーを見て目を逸らさずに言った。アニーに、アーチーの言葉がやっと届いた様だ・・・
「アーチー、本当にダメなのね・・・分かったわ・・・一度も貴方の気持ちが私に向いてくれた事は無かったわね・・・
私の側に居てくれたけど、一度も恋人と思ってくれた事も無かったのよね?」
「うん・・・ごめん・・」
「アーチーに辛い思いをさせてしまっていたのね・・・さようなら・・・アーチー」
「さようなら・・・もう会う事は無いと思うから・・・体を大切に・・・」
アーチーは、アニーの部屋を出た。アニーは出て行くアーチーを見届けると、涙が止まる事無く溢れてきた。
その日、アニーは泣き続け、アニーが下のリビングに下りて来たのは、次の日の昼だった。アニーの両親は
アニーの顔を見て、何があったのかを悟り、そっとアニーを見守る事にした。アニーが、今回の事を両親に
話したのは、数週間経ってからだった・・・

アーチーは、ブライトン家から出て来て、車に乗ると深呼吸をした・・・やっと肩の荷が降りた気がした。
やっと自分が自分に戻れる。自分の気持ちに正直になって生きていける・・・と思うと、ホッとした。
そして、本宅に戻り、アーチーは、すぐにアルバートさんの部屋に行った。
「アーチーです、失礼します」
「あぁ、アーチー。お帰り・・・結構時間かかったね・・・これがアニーから預かった本だよ。アニーと会えたのかい?」
「はい、アニーと話していて時間がかかってしまいました・・・」
「そうか、それは良かった。アニーもホッとしただろう・・」
アルバートさんは、少し不安を抱きながらも、言ってみた。しかし、アーチーからは、何となくアルバートさんが
予想していた結果が報告された・・・
「いえ・・・僕は、僕の気持ちを正直にアニーに話したので、泣いてました・・・」
「え?正直な気持ちって?」
「僕はキャンディが好きなんです。春から毎月1回キャンディに逢いに行ってました。僕のキャンディが好きという
気持ちは、キャンディに初めて会った時から変わらないし、変えられないんです。気付いてくれませんが・・・」
「やっぱり、そうだったんだね・・・」
アルバートさんが窓を見て言った
「アルバートさん、気付いていたんですか?」
「何となくね・・・アーチーが昔から、キャンディが好きなのも知ってた。アニーと一緒に居ても、キャンディが居れば
キャンディしか見てなかったのも知ってるよ。最近は、仕事が終った後に出掛けていたのも、キャンディの所だ。
今日だって、キャンディの所に行っていたんだろ?」
アルバートさんは、自分が思っていた事を言った。アーチーはアルバートさんが気付いていた事に驚いた。
「アルバートさんには、分かるんですね・・・」
「だって、アーチーは幸せそうな顔をして出掛けて、幸せな顔をして帰って来てたんだよ。アニーと居る時とは
全く違う顔を、春から時々していたから、何となくキャンディに会ってるのかと思っていたんだよ。くすっ」
「僕は、初めてキャンディに会った時から、キャンディに惚れてしまったんです。あんな女の子、初めてでした
からね・・・くすっ。聖ポール学院でキャンディにアニーをお願いと頼まれて、僕に好意を寄せてくれていた
アニーと一緒に居ました。一緒に居ても恋人と思った事は一度もなかったんです。僕はキャンディが好きだった。
アニーが側に居ても、キャンディが好きだった・・・。アニーには指一本触れる事もなかった・・・そんな対象に
ならなかったんです・・・。それでもアニーは、僕が側に居てくれればいいと言っていたんです。段々それも僕には
負担になり、自分の気持ちを封印して、自分が自分じゃない生活をしているのが嫌だったんです。僕は僕らしく
自分の気持ちに正直になろうと春から、ずっと思っていたのですが、なかなか言い出せなくて・・・
でも今日は、いい機会になりました。やっと言う決心が着いて、言う事ができました」
アーチーは一気にアルバートさんに言った。アルバートさんも、じっとアーチーを見て、話を聞いてくれた。
「アニーは、分かってくれたのかい?」
「えぇ、初めは嫌がっていましたが、話してるうちに分かってくれました。もう会うことも無いという事も・・・」
「そうか・・・アニーは辛かったかも知れないが、アーチーは今まで辛かったよな?アーチーが自分の気持ちに
正直になれた事は、良い事だと思うよ。自分の気持ちに正直じゃないと後悔する事になる。そんな人生は
嫌だろ?アーチーの取った行動は、僕は良かったと思うよ。波風の無い所から、波風のある所に行くんだな・・・
くすっ・・・キャンディの周りは、波風がすごいぞ・・・」
アルバートさんは、笑っていた
「ほんとうに、そうです・・・病院の先生がキャンディに近付いてますし、アルバートさんもだと思いますが・・・」
アーチーは恐る恐る言った
「勝手に、僕を敵にしないでくれよ。僕はアーチーの味方だよ」
アルバートさんがウィンクした
「え?敵じゃないんですか?くすっ」
アーチーは少し安心して笑った
「あたりまえだっ。兄として応援させて貰うよ。鈍感な妹だから大変だぞ・・・」
「でも、アルバートさん、クリスマスにキャンディのエスコートをするんですよね?」
「あぁ、クリスマスは、僕がエスコートするよ。色々事情があってね・・・。アーチーはクリスマスパーティーは
フリーになるのか・・・周りの女の子がほっておかないんじゃないか?良い子がいるかもよ・・・くすっ」
「僕の気持ちは変わりませんよ」
「そうだろうね・・・」
アルバートさんとアーチーは笑った
「クリスマスの時、キャンディは、どれ位ここに居るんですか?」
「22〜28日の予定らしいよ。楽しみだね、アーチー・・・」
「え?まぁ・・・くすっ。今日は、ありがとうございました。部屋に戻ります」

アーチーは、この日、ぐっすりと眠った。何の迷いも無くなり、本当に安心出来たようだ。これからは、何も気にせず
キャンディの所に行ける。あと気になるのは、あの医者だけだ・・・
”そういえば、今日初めてキャンディの肩を抱いたな・・・細かったな・・・女の子の肩を抱くなんて初めてだったから
ドキドキしたけど・・・キャンディ、可愛かったなぁ・・・”
プレイボーイ風のアーチーだったが、意外にも女の子の肩を抱いたり、キスをしたりという事は、した事が
無かったのだ。見た目よりも、純情な青年だったようだ・・・
キャンディは自分の部屋に戻ると、アーチーが買ってくれたコートとイヤリングとネックレスを見て、今日あった
出来事を思い出していた。アーチーとの楽しい時間、楽しい会話・・・そして、肩を抱かれ温めてもらった事・・・
とても幸せな気持ちになっていた自分に気付いた。
”ダメ、ダメ・・・アーチーにはアニーが居るのよ・・・”
その日以来、キャンディはダグラスとの2人のランチを止め、皆で食べると楽しいと言い、毎回数人に声を掛け
喫茶店に行くようになった。特に、ダグラスの事が好きなキャシーは毎回一緒にランチを楽しんでいた。
11月もアーチーはキャンディの元を訪れ、午前中から夕方まで楽しみ帰って行った。次は12月・・・シカゴに
キャンディが行き、1週間もアーチーと過ごせる・・・それが、とても楽しみなキャンディだった。

11月も終わりに近付いてきた頃、ダグラスが休憩時間にキャンディの所に来た。
「キャンディ、クリスマスはどうするの?」
「私は、少しお休みを頂いて、出かけるんです」
「何処へ行くの?」
「はい、シカゴへ・・・」
「シカゴ?何かあるの?」
「友達に会うんです。クリスマスパーティーもありますし・・・」
「そうなんだ・・・、例の彼?」
「えぇ、彼も居ますし、他の友達も居ますよ」
「クリスマスパーティーもあるんだね。友達とやるの?」
「いえ、大きなパーティーなんです。エスコートして貰う様な・・・」
「え?エスコート?それって、凄く大きくない?普通の人は、そんなパティー出れないよね?」
「そうですね・・・そうかも知れないですね」
「キャンディは、そんなパーティーに出れるんだ・・・彼がエスコートするの?」
「いえ、違いますよ。私をエスコートしてくれるのは、少し歳の離れた兄の様な大人の男性です」
「ふ〜ん・・・そういえば、彼は、いい身なりしてたよね・・・キャンディは秘密があるんだね、くすっ」
「そうですね・・・くすっ」
ダグラスは、それだけ話すと戻っていった。
”キャンディ、君は何者なんだろうか・・・エスコートされるパーティーに出れるなんて・・・彼の身なりも良いし・・・
金持ちと関係があるんだろうな・・・クリスマスに君と同じ時間を過ごしたいと思っていたけど、ダメだったな・・・
キャンディ、俺はいつになったら、キャンディと同じ時間を過ごせるんだろうか・・・”