週刊金曜日に疑問 出張コーナー
補足はこちら99/10/16
はじめに
このコーナーは後藤文彦さんによる「週刊金曜日に疑問」というページの補足版として、特に生物系疑似科学批判のために作りました。私自身週刊金曜日という雑誌は読んでませんし(資料提供は後藤さんによります)特に金曜日だけがひどいとも思いません。その辺の週刊誌は言うに及ばず、新聞だって結構ひどい。ただ武庫川女子大食品衛生学研究室のページにありますように、一般に食品添加物を筆頭に化学物質に対する間違った認識が流布されていること、その結果として様々な実害が生じていることは常日頃実感していました。特に母親の立場になってみると、子どもがどうなっても母親のせいにされてしまうという現実の中で、あれもダメこれもダメという不安を煽られるばかりの現状は惨憺たるものです。例えば予防接種の副反応が怖いという情報を与えられたお母さんは予防接種を受けずにいたおかげで子どもは重いはしかにかかり、大変な思いをしてその後慌てて全ての予防接種を受けたと言っています。子どものアレルギーに悩むお母さんたちにとって「ステロイドの恐怖」をあおり、訳の分からない民間療法を勧める悪徳業者は後を絶ちません。横浜では民間療法薬で子どもが死亡したケースが裁判になりましたが、似たような話はいくらでもあります。いわゆる悪徳商法にこの手の健康不安を利用したものが多いのも事実です。
いわゆる「トンデモさん」を相手にするのはあまり気乗りのすることではありません。まともな学者が避けたがるのは当然でしょう。研究者としてまともであればあるほど声高に結論はこうだなどと言えるはずもない。「絶対」などはあり得ません。でも週刊金曜日に関して開業医の西村先生がページを作っておられます。西村先生の姿勢にも感銘を受け、本当の意味での「情報公開」と「自己責任による判断」がこの国の人たちに根付くためには一見無益な論争にも敢えて参入しなければならないのかもしれないと思い、こんなことを書いてみました。
買ってはいけないシリーズから
味の素 1997.8.8 船瀬 俊介
(「味の素はもういらない」三一新書 1987年)
この記事の内容は1987年の新書の内容から一つも更新されてないので(総会屋云々は別として)今さらという感じはしますが、一応。後藤さんのページでも一通り反論はされてますので重ならない部分で。
MSG(monosodium L-glutamate、グルタミン酸ソーダ)についての最も信頼できる報告はFDA(アメリカ食品医薬品局)から出されていてhttp://vm.cfsan.fda.gov/~lrd/msg.htmlで手に入れることができます。英文は苦手、という方のために要約しますと、MSGに関するFDAの判断は1959年には「塩や酢などの普通の食品成分と同じように安全」でした。
1970年代になって「普通の食品成分」でも安全性評価を行うべきだという判断の元に再評価が行われ、1980年にMSGは「現状では危険性はないがより多く消費される場合にはさらなる研究が必要」とされています。このころ、MSGによる「中華料理店症候群」なる報告があり、本やTVニュースやショーでMSGが生命に危険があるとかほんの少しでも害があるとか騒ぎになり(日本のワイドショーの起こす騒ぎに似てます、今ならさしずめ環境ホルモン?)、1980-1994の間に662件の苦情がFDAに寄せられましたが、頭痛が主なもので重大な症状は一件もありませんでした。
1986年にはFDAの諮問委員会でMSGはある種の人々に食後何らかの反応を引き起こすことがあるが一般的には健康に影響はないとされました。他に1991年にECの食品科学委員会がMSGを毎日摂取しても問題はない、乳幼児にも問題はないと判断しています(グルタミン酸は母乳中にかなり高濃度で入ってます)。
1992年にはアメリカ医学会が、1987年にはFAOとWHOの合同委員会が、MSGを健康に悪影響なしと判断しています。
そして1995年にFASEB(アメリカ実験生物学協会)とFDAがMSGに関する最終報告書をまとめています。この350ページにわたる報告書は一部50$で誰でも手に入れることができます(申込先は9650 Rockville Pike, Bethesda, MD 20184)が、このなかでいわゆる中華料理店症候群という「疾患」の存在は否定されています。MSG不耐の人がMSGを「空腹時に、大量に、他の食物はとらない状態で」摂取した場合に、摂取後一時間以内に頭痛や頬の紅潮などの症状を訴えることがあること(これをMSG symptom complexと名付けています)、これが重症の喘息患者に起こった場合は問題になるかもしれないというのがMSGの考えうる最も重い有害作用とされています。そして脳に悪いとかビタミン欠乏を引き起こすとかいった事実はなく、安全性に問題はないと結論しています。
以上が「正統派の科学的事実」です。MSGについてはアメリカにももちろん船瀬氏のような活動家がいて、本を書いたりTVで宣伝したりして反対運動を繰り広げてきたわけで、それだけにこれだけ何度も何度も研究や評価が行われてきたわけで、おかげで他の物質では考えられないほど豊富なデータと知識の蓄積があります。ですから金曜日の記事で船瀬氏が「諸外国で味の素すなわちグルタミン酸ソーダの毒性、有害性を指摘する学術論文が多いことに、驚かされる」と書いておきながら(この文章は87年と全く同じですが)、上述のような重要な報告について一言も触れていないのは全く論外だと思います。ついでに言うと彼の新書の「参考文献」には自分や自分の仲間の書いた日本の出版物(当然学術雑誌はありません)の記述しかなく、「諸外国の学術論文」とは何なのか全くわかりませんでした。上述の報告書のなかで面白いと思ったのは、かつてアメリカで中華料理店症候群が話題になったとき、この病気になったと訴える人は「学歴の高い白人女性」が多かったということです。しかも同じ量の天然グルタミン酸が入っているトマトジュースやチーズではおこらない。多分金曜日の読者は今でも「中華料理店症候群」になるに違いありません。かつてヨーロッパの貴族社会で、か弱い女性は何かあったらすぐ気絶するものだという思いこみから気絶していたように。
その他
「MSG加熱で強い発ガン物質も生成される」について
蛋白質やアミノ酸を高温で加熱するといろいろな変異原性物質ができます。グルタミン酸だけではありません。けれどもいくら何でも肉や魚を加熱しないで食べることを勧める気にはなりません。焼き肉や焼き魚に焦げめがないなんて悲しすぎる! 加熱しないピザなんて「冷めたピザ」以下です。「健康」だけが生き甲斐という人もいるようなのでそういう人たちはどうぞ御勝手に、あらゆる料理をあきらめてひたすら「たっぷりのお湯で茹でる」だけで召し上がればよろしいかと。
「もう一つの懸念は石油合成法の味の素だ」
合成法が発酵法に変わったのは単純にその方がコストが安いからです。伝え聞くところによれば当時合成の技術を誇っていた研究員はリストラの憂き目に会ったようですが、いつの時代もそういう変遷はあるものです。脱線しますがこれは味の素だけの話ではなくて、かつて医薬品のほとんどが化学合成によって作られていた時代、合成化学は医薬品業界にとって最も重要な部門でその部署は花形だったものです。今でも合成は重要ではありますが、いわゆるバイオテクノロジーの発達で徐々にその地位を明け渡しつつあります。ただ一時のバイオブームで猫も杓子も分子生物学になだれ込んだ結果、その手の技術者は今は供給過剰で軒並み就職難のようです。時代を読むのは難しいものです。
ところで化学調味料(味の素ではうまみ調味料と言ってますが)反対を叫ぶ方々は料理に手間暇をかけることを極端に賛美しますが、もやしのひげを一本一本とれとかいう主張にはとてもじゃないけれどついていけません。小さいお子さんをお持ちの皆様へ。「ほんだし」を使っておいしいお味噌汁を作ることは全然恥でも手抜きでもありません。上手に手間を省いてその分子どもと真剣に向かい合いましょう。子どものためとか言ってしかめ面で本を読み漁るより、子どもが一番して欲しいことはただ笑顔で一緒にいることじゃないですか?
ニトロソアミン
1998.10.23 日本ハム シャウエッセン特選ポークあらびき 船瀬俊介
1998.11.27 山崎製パン ピザまん 渡辺雄二 など
ニトロソアミン類は発ガン物質の代表で、ヒト癌の原因の一つとして考えられています。ニトロソアミンそのものが食物に含まれているというよりは、いろいろな食物を食べた時に胃内などで発生するというのが主のようです。これはアミン類と亜硝酸塩があればできるのですが、さてこの組み合わせはあらゆる食事で出てきます。肉や魚やチーズにはアミン類が、野菜には亜硝酸が含まれますから。癌センターの出していた報告に「鱈チリエフェクト」なんていうのがありまして、冬の美味しい鍋である「鱈ちり」でニトロソアミンができる(これは胃内での話ではなかったと思いますが)というのもあります。魚の干物に野菜の漬け物なんて絶好の組み合わせで、かつて日本で胃ガンが多かった理由の一つにも挙げられています。そういうわけで決して「食品添加物に亜硝酸塩が使われているからニトロソアミンができる」わけではありません。野菜も蛋白質食品もとらなければいいって?そうすれば確かに癌にはならないでしょうね、栄養失調で死んでしまうでしょうから。
「肉食自体もガンリスクを高めることは、今や常識」
こんな「常識」聞いたことないです。高脂肪・高カロリーはガンのリスクを高めるとされていますが、別に「肉」でなくても構いません。魚だって乳製品だって野菜だって結果的にたくさんの脂肪とカロリーのもとになれば同じです。
「カラメル色素と・・・変異原性の疑いが持たれている」
カラメル色素とは、お砂糖を煮詰めてできる茶色いものです。こんなものに変異原性があったら大変です。こんがり狐色に焼けたクッキーやケーキが全部食べられなくなってしまいます。「疑いがもたれている」なんて言い方してごまかしてますが、疑ってるのは筆者だけでしょう。
「1998.10.23 日本ハム シャウエッセン特選ポークあらびき 船瀬俊介」 について追加 1999.5.15
ところで雑誌の引用があったので調べてみました。検索及び論文の要約を読むことは誰でもできると思うので無料検索サイトを紹介しておきます。
「94年6月4日、子どもを持つ親にはショッキングなニュースが世界を駆けめぐった。一ヶ月に12個以上のホットドッグを食べる子どもは、他の子どもたちに比べて白血病にかかるリスクが9倍になる。この衝撃的論文を発表したのはカリフォルニア大学医学部のジョン・ピーターズ教授ら。ロサンゼルス地区の白血病にかかった10才未満の子どもたち約230人の食生活などを綿密に調べた結果、判明した。」(船瀬氏)
ここで引用されている論文は多分Peters-JM et al., Cancer Causes Control 1994 195-202だと思うのですが、要約ではこうです。
「Nニトロソ化合物(ニトロソアミンなど)の前駆体及び阻害剤を含む食物の摂取と白血病のリスクを調査した。朝食の肉類(ベーコン、ソーセージ、ハム)、昼食の肉類(サラミ、パストラミ、肉料理、コンビーフ、ボローニャソーセージ)、ホットドッグ、オレンジ、オレンジジュース、グレープフルーツ、グレープフルーツジュースの普段の摂取をインタビューから推定し、白血病のリスクと関連があったのはホットドッグのみであった。この結果は、Nニトロソ化合物の摂取と白血病に関連があるかもしれないという仮説と矛盾しないが、より詳細な研究が必要である。」
上述の船瀬氏の書き方とは随分違う印象を受けるのではないでしょうか。どうしてソーセージやベーコンでは相関がないのにホットドッグと相関があるからといって「ソーセージを食べてはいけない」という結論になるのか、私にはわからないのですが。亜硝酸塩が入っているもの全て、ではなく何故「ホットドッグ」なのか。これは素人でも不思議に思うのではないでしょうか。船瀬氏の引用の仕方だとPeters-JM氏の名誉を傷つけかねないと思います。こんな紹介の仕方が許されていいものでしょうか?さらにもう一つ、
「同時に掲載された他の二つの研究によれば、妊娠中に一週間に少なくとも一個のホットドッグを食べている母親から産まれた子供は、一般の子どもと比べて脳腫瘍になる可能性が二倍。子どもを作る前に父親がホットドッグを食べた子どもたちにもやはり二倍のリスクがあるというからショック。これら研究者によれば、ガンの引き金は肉の加工や保存に使われる化学物質(添加物)という。犯人は亜硝酸塩だけではなさそうだ。」(船瀬氏)
というので、多分これだろうと思うところの論文で、Sarasua-S &Savita-DAのCured and boiled meat consumption in relation to childhood cancer; Denver, Cororado (Unites States), in Cancer Causes Control, 1994, 484-6が引っかかりました。妊婦及び子どものハム、ベーコン、ソーセージなどの摂取と白血病や脳腫瘍発生との相関を調べたもので、ビタミンをとらずにホットドッグを多食する群にガンの発生率が高い、と言っています。この論文でやっている疫学調査でわかるのはそれだけのことで、発色剤である亜硝酸塩が原因でできるニトロソアミンが原因かもしれない、というのは単なる考察に過ぎません。この段階で彼らはそういう「作業仮説」を提示したにすぎません。ビタミンを取らずファストフードばかり食べている妊婦や幼児などというのは普通に考えても栄養学的に落第ですし、アメリカ人なら間違いなく肥満傾向があるでしょう。場合によると酒・タバコ・麻薬の類に汚染されている率が高いかもしれません。もし彼らが亜硝酸が怪しいと思うなら、次には亜硝酸やニトロソアミンの摂取量と発ガンの関係を調査するはずです。従ってこの論文から船瀬氏の言うように「亜硝酸を使っている日本ハムのシャウエッセンを買ってはいけない」などとは結論できません。
別の論文を引用しましょう。Eur. J. Epidemiol.,1995, 67-73. これによりますとフランスで行われた疫学調査では食べる前にできているNニトロソジメチルアミンの摂取量と胃ガンとの間に関連があるけれども亜硝酸や硝酸の摂取とは関連がないという結果を得ています。前述の論文が「ホットドッグを週に何回食べるか」というような極めてあいまいな事象を取り上げているのに比べてこちらは食事中の成分を解析して追跡している点で評価できるのではないでしょうか。もちろんこうした少数の論文の結果を比べてみてもあまり意味はなく、実際の「評価」には通常数十から数百という数の論文を検証するものです。こうした評価の報告書(JECFAのレポートなど)がちゃんと出されているのですから、まずそういう文書を紹介するのが「環境問題研究家」を名乗る以上当然のような気がします。食肉加工品に一定量以下の亜硝酸塩の添加が認められているのは、それがまず無害であろうという結論が一応出されているからです。そのこれまでの研究の蓄積を覆すに足るだけの重要性が船瀬氏の紹介した論文にあるかというと、全くありません。
蛇足になりますが、もう一つ。
「ところが業界は蜂の巣をつついたような大騒ぎになり、調査数が少なすぎると反論パンフをまくなど対応に大わらわ。しかしこの研究は統計的処理をしているので批判は当たらない。」
この文章は「統計処理」の意味を全く理解していないものです。例え統計処理をして、「統計学的に危険率5%以内で有意差がある」(書き方ちょっと省略しました、統計の専門家の方、お許し下さい)となったとしても、この危険率だと20回に1回は間違った結論を出すということを言ってるわけです。ですから例数を増やす、さらに検討する、というのはどうしたって必要な手続きです。危険率が減らせるかもしれないですから。もし同じ危険率を採用していれば、研究の回数が多ければ多いほど、間違った結論が出る回数も増えるのが普通です。ですから先に述べたような評価機関による総合的判断が必要になるわけです。
別の機会に書こうと思っていたのですが、この例のように学術論文には「結果」と「考察」の両方が記述されているのが普通で、「考察」の部分は単なる仮説・予測に過ぎません。もちろん全て研究者たるものは自分の研究が如何に重要で如何に役に立つかを審査員にアピールすることで論文を掲載してもらい、研究費を得るのですから「考察」には誇張がかなり含まれると見て間違いはないのです。経験を積んだ論文読みなら何がポイントかを見抜くのは比較的簡単ですから、研究者の世界で「考察」の誇張の部分が問題になることはまずありません。ところがこれを船瀬氏のような素人が(彼が素人であるのは間違いないでしょう)予断をもって読み、単なる推測があたかも証明されたかのように吹聴するとなるとかなり問題です。日本には残念ながらまともな科学ジャーナリズムは存在しません。現在の生命科学の状況で、たった一つの論文で何かが突然証明される、発見されるということはまずあり得ません。ノーベル賞受賞者の業績が一つか二つの論文だけ、ということは考えられません。何らかの「事実」を発見するには多数の研究者が多数の方法で様々な結果を出す必要があります。こうした現在進行形の「科学」が、いま何を見いだしつつあり、何に向かっているのかを語るのは凡庸な研究者にはたとえ当事者であっても不可能です。それだけ生命科学は複雑になりました。
現在の科学を読みとくのに必要とされるのは強靭な知性であり、単純な善悪二元論ではありません。どんな「善」も突き詰めれば「悪」を内在し、どんな「悪」にも存在理由はあります。問題なのは全体を見渡すことと何をもって許容範囲とみなすかの確固とした価値基準(あるいは哲学と言ってもいいでしょう)です。週刊金曜日の一連の記事には知性が甚だしく欠けていますが、価値基準も矛盾だらけのようです。人間が人間として生きることが大切なのか、「健康」のためなら死んでもいいのか、この地球にはそもそも人間などいらないのか。さてあなたはどう考えるのでしょうか?
夢氷 1998.8.7 渡辺雄二
「夢氷の・・・と化学物質だらけなのだ。」
揚げ足取りみたいですが、この手の記述にはいつもひっかるのです。この世の中に「化学物質」でないものがあるのでしょうか?水はH2O、空気はN2とO2とArなどの混合物、土は有機・無機無数の化学物質の混合物。人間も化学物質の塊であり、生きているということは無数の化学反応の成果です。「天然」と「石油製品」も変に差別されていて、石油も立派な天然物だし、もとはといえば生き物だったものです。構造式にベンゼン環があったら体にいけないなんて誰が言ったのでしょう? 私たちの体にもベンゼン環を作る酵素はあります。こういう何の根拠もない意見は「信仰」でしかありません。
「赤色二号についてはFDAが0.003-3%の赤色二号を含む飼料をラットに131週間投与したところ、高濃度投与群では44匹中14匹に、対照群では44匹中4匹に、ガンの発生が認められた。・・・実験では期間中に動物の約半数が死亡したり動物を混同するなどのミスがあったといわれ、評価しうるものではないと判断したからだ。」
この記述では渡辺氏自身が自分の判断基準となる実験の無効性を認めているようです。なにしろ餌に3%の色素なんて考えられないくらい大量ですし(インクを一滴水に垂らしてみて下さい。十分色がつくはずです。そのインクですら数%しか色素は含みません)、実験そのものが成立してないのですから。どうしてこんなことが批判の根拠になりうるのか不思議です。要するに「俺は気に入らない」ってことでしょうか?
「アスパルテームについてはフェニルケトン尿症の新生児が摂取すると、脳に障害を起こす恐れがある」
これはその通りなのですが、いったいどこの誰が「フェニルケトン尿症の新生児」にローソンのかき氷を食べさせようなんて思うのでしょう? 新生児といったら普通母乳かミルク以外のものを口にするわけがないのに。これがどうしてかき氷がいけない理由になるのかさっぱりわかりません。この記事を読んで納得した方がいたら是非お目にかかりたいものです。
マクドナルド ハンバーガー 1998.5.29 船瀬俊介
この章は「ふだんの食事をマクドナルドですませるような」人たちの健康の問題と、「牛肉自体も最悪だ」と言ってるように、環境問題・南北問題としての日本人の食生活そのものにも批判が向けられています。前者については偏った食生活そのものが問題なのであって、マクドナルドだけが悪いというのは違うでしょう。そして後者についてはそれこそ大問題であって、地球人口を支えるだけの食糧をどう確保するのかというのはもっと広い視野で論じなければいけないことです。オリジナルカロリー(その食糧を作るのに必要なカロリー)の低いものだけを食べればいいというのは一つの提案ではあるのですが、それが受け入れられるでしょうか? 酒・肉なんてもってのほか、という話です。また食糧危機を乗り越えるためにも遺伝子組み替え農産物が開発され、化学肥料が使われているのです。今や全世界の食糧の1/3が化学肥料由来の窒素に頼っているのです。つまり金曜日の主張するように、化学肥料はなくしてしまえというのなら、世界人口のさらに1/3が飢えるということです。自分たちが飢える側に回るということは考えられないのでしょうか? 生協が遺伝子組み替えダイズが入ってるかもしれないという理由で食品を大量に破棄したというニュースを聞いたとき、私はなんという傲慢な、と思いました。世界中に飢えている人がたくさんいて、一方で「食べ物は100%安全が保証されて当然」などという人たちがいる。それが現実です。
以下続く?
おまけ トンデモな主張の見分け方
といっても特別な方法があるわけではないのですが・・。
1. 出典を明らかにしているかどうか
金曜日の記事でもそうですが、単に「外国の報告では云々」というのは怪しすぎます。例え素人向けのものであっても原著論文の引用は正確にすべきです。著者・雑誌名・巻・号・ページ数は確実に記載してなければいけません。
2. 出典は何か
出典の記載があったらそれが何かを見極めることです。日本語・英語を問わずそれが単なる出版物(単行本や週刊誌のようなもの)であればあまり参考にはなりません。学術論文であれば掲載に一定の基準があるのでまだましです。ただ日本語でまともな科学雑誌はあまりないので、結果的に英文雑誌しか信用できないということになってしまうのですが。さて英語の学術論文だとして、それがどの程度のものかを見極めるにはとりあえずcitation indexを参考にしましょう。新しい雑誌ではなくてこのリストに載っていないもの、医学を名乗っていてindexが1以下だったりするものはとりあえず疑問符つきで参照した方がいいです。
3. 引用の時代、著者など
引用が10年以上前のものばかりとか、特定の著者・グループに偏っているとか、その問題を報告している論文がたった一つだけとかいうのは怪しいと思った方がいいです。
4. 主張している人の肩書き・経歴・身分
どういうわけかトンデモな人は肩書きにこだわるようです。「環境問題研究家」って何でしょう?「医学博士」は誰でもとれるので無視しましょう。「有名大学にて研究」とかいうのはアルバイトでネズミの世話をしていたのかもしれません。どっちにせよこういうものはほとんどあてにならないので本物の肩書き(「日本医師会会長」とか「東大学長」とか)と一緒にしないように(例が極端ですが)。
5. 文体その他
「絶対」「確実に」「驚異の」「恐るべき」といった単語を多用する、特定の事象を強調して統計学的記述がない(Aさんがこうしたらこうなったとか)というのはまずアウトです。特定の商品を売りつけるのはもちろん怪しい。
おまけその二 「ほんものはおいしい」か?
私は農家の生まれです。市販品で許せないと思ったのは小麦粉や澱粉で増量したあんとかで、こういうものはそもそもごまかし商品なので「ほんもの」にかなわないのは当然です。ただソバはそば粉100%がベストだとは思わないのですが。そういう話ではなくて。
昔わが家では鳥肉といえば卵を産まなくなった廃鶏をつぶして食べるもので、肉はこちこちに堅く脂も少なくてそれほど美味しいとは思っていませんでした。砂肝や心臓を塩焼きにしたのは結構好きだったけど。ブロイラーは柔らかくてなんて美味しいんだろうと思ったものです。「自然で健康で美味しい生活」を昔はみんなしていたと言う都会の方々に、是非あの廃鶏を食べてもらいたいものです。健康で若いニワトリを食べる贅沢なんて「お殿さま」じゃないとしてないと思います。彼らの主張するようなユートピアは今も昔もどこにも存在しない。農村では確かに野菜はとれたてを食べていたかもしれない。でも葉ものの生野菜をサラダで食べるなんてことは私の小さい頃はまずありませんでした。人糞がまだ肥料として使われていたこともありますし、水だって井戸水も使ってた。回虫検査で陽性になって虫下しを飲む子もクラスに一人や二人は必ずいました。今でもある程度の年齢以上の人は生野菜のサラダに抵抗を感じるはずです。
野菜の種類はここ数十年でものすごく変わりました。かつて栽培されていた種類とは似ても似つかぬ新品種が続々と導入され、味も形も色も本当に様々です。品種改良の技術や新品種導入の努力には本当に感心します。こうしたものが我々の食卓をどれだけ豊かにしていることか。と同時に、これらが「絶対安全」と保証されているわけではないことも確かでしょう。「日本人が代々食べてきたのだから安全」なんてことがキウイやモロヘイヤに対して言えるわけがない。遺伝子操作や薬品処理が怖いと騒ぐ人たちが新品種にも抵抗してるわけではないし、種なし葡萄も喜んで食べるでしょう? 「本物の自然」って何でしょう? 「本物は美味しい」と言い張る人に、三十年前の野菜を食べて頂きたいものです。紫と白と黄色とのまだらで堅いとうもろこしなんて如何でしょう? この色のまだらの原因がトランスポゾンという「動く遺伝子」によるものであることを発見したマクリントック博士がノーベル賞を受賞しています。この天然の遺伝子組み替えによる迷彩色をあなたはどう感じて食べるでしょう?
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