審査員-1 本研究論文は、NPYのイヌ脳底動脈に対する収縮作用におけるL-type Ca2+ channelの関与を解析した、興味ある論文です。NPYの収縮作用がK+-depoにより増強されること、その収縮がカルシウムブロッカーで抑制されること、NPYがいくつかの血管収縮薬の作用を増強すること、さらにその増強がカルシウムブロッカーで抑制されることなどの実験事実をもとに、NPYの作用におけるL-type Ca2+ channelの関与が述べられており、内因性活性ペブチドとして知られていながら未だその生理的役割が完全に解明されていないNPYの、病態生理学的作用を理解するにあたり、また脳循環改善薬の開発を行うに当たり、有用な知識を提供する、興昧深い論文です。 ただ、全般に実験事実に基づいた考察に甘い点があり、文献既知のメカニズムをそのまま当てはめようとするあまり、論理に飛躍が生じている点が多々見受けられます。間題点を以下に箇条書きにして列挙します。MAJOR POINTS(1)NPYが血管平滑筋のL-typeカルシウムチャネルを活性化させることを直接的に示した報告はすでにあり、本論文で述べられているL-typeカルシウムチャネルの増強作用自体はNPYの作用機序として新規性は少ない。むしろ、basilararteryと末梢血管とのagonist収縮における相違点を明確にし、必要な文献、例えば、***Pnugers.Arch.423:5(***…J・Phamlaco1,192:439−41.1991、などを引用して、研究の位置付けを明確にして下さい。(2)著者らはIntroductionで、本研究がL-typeカルシウムチャネルに対するNPYの作用の解明を中心としたものである旨述べているが、Resultの項にそのための適切なデータが十分に挙げられていない。また、Discussionにも、NPYの作用発現におけるL-typeカルシウムチャネルの役割が適切に議論されていない。(a)本論文の重要なポイントの一つは、basilararteryにおけるNPYの作用がL-typeカルシウム電流の増加を介することを証明することにある筈である。従って・カルシウムブロツカーを用いたデータは実験の重要なパートを占める。にもかかわらず、著者らはd-cis-distiazemを用いた実験データをnot shown(pp9,line16)で片付けてしまっている。これでは、論文の主旨が暖昧となる。NPYによる増強がd-cis-distiazemによりどのように回復するのか、すなわち、著者らがpp5,line19-25で強調している最大反応の増強あるいはED50の減少という2つのパラメーターがカルシウムブロツカーによりそれぞれどう回復したのかを図に明示することが必要。(b)NE、HistおよびPGF2aの作用に対するNPYの増強作用がカルシウムチャネルブロッカーでattenuateされる(pp9、line15)との知見について;用いたカルシウムブロッカーはそれ自体、NE,Hist、AngIIなどの単独作用に対しては全く抑制作用を持たないのでしょうか。この点をResultあるいは本文中に明確に述べるべきです。もしd-cis-diltiazemがこれらのspasmogensの作用自体を抑制するのであれば、この実験結果のみからNPYの’’増強作用’’がカルシウムブロッカーで切れるとは結論できない、d-cis-diltiazemが各spasmogens自身の作用を抑制したのか、それともNPYの増強作用を解除したのかは、どのような実験結果に基づき判断なさったのでしょうか。NPY存在下および非存在下それぞれの各spasmogen収縮に対するspasmogensの作用を図示し(Fig.2)、適切にdiscussionを加えるべきではないでしょうか。NPYの作用におけるカルシウムチャネルの役割を中心に論じた本論文を結論に導くためには、是非必要であろうと思われます。
(3)NPYによる各spasmogenの作用のpotentiationに関するデータ説明及びその解釈が不十分。NPYの増強機序を、当該標本におけるそれぞれのアゴニストの収縮機序と対比させて議論することが必要であろう。
(a)著者らは自らmethodの項で、potentiationを最大反応の増加とED50値の増加の2つの特徴に分けて明記している。しカ)し、Discussionには、この2つの特徴がそれぞれどう変化したからNPYの作用をどう解釈するのかについて、実験結果に基づく議論が全くなされていない。この2つの特徴が見られたことから各spasmogensの作用の増強についてそれぞれどのような解釈が成り立つのでしょうか。NPYはNEおよびHistに対してはED50値を変化させずに最大反応を増加させるのに対し、PGF2aに対しては、ED50値のみを減少させ最大反応を変えない(Fig.2)との結果は極めて興味深い。各アゴニストに対するNPYの作用態度の違いをもとに、NPYの作用機序をどう推論するのか、考察を深めて下さい。(b)5−HTの作用がNPYでは増強されていない(ように見受けられる。少なくとも他の3つの薬物の作用に対するNPYの作用とは対照的であろう。)にもかかわらず、著者らはこの4種の薬物の作用が全て、NPYで増強されると結論し議論を進めている。
不適切ではないか。
(c)NPYのNE,Histに対する作用(最大反応のみの増加)の機序がL-typeカルシウムチャネルの増強によるのだと考えるならば、なぜPGF2aに対してはNPYはED50値のみを減少させ、最大反応を変えないのか。この点についても考察が必要ではないか。
以上につき、NEに関して、
・****.J-Auton-Nerv-Syst.44(2−3):151−9.1993。(カルシウムブロッカーはNPYによるNE収縮の増強のうち、ED50減少のみを回復、最大反応増大は回復せず)
AngIIに関しては、
・ ****.J-Bio1-Chem.265(30):18393−9.1990。
(NPYによりAngII-stimulatedIP3productionが増強されるとの知見を合む)その他の報告がある。脳血管と末梢血管との違いはあるにせよ、これらの報告を無視できないのではないか。
(d)pp 9 line8;Fig.2Dを見る限り、NPYの前投与で5-HTの作用は全く増強されているとは見えない。続く文章で5-HTのpEC50値が挙げてあるが、著者らの言うように有意な差は無い。にもかかわらず、なぜ著者らは5-HTに対する感受性がlikewise increasedだと判断するのか。さらに、norepinephrine,histamineおよびPGF2aの作用の増強に比較して5-HTに対する増強作用が有意ではない理由についても5-HTと他のアゴニストとの収縮作用機序の違いの観点から考察すべきではないか。
(4)pp12 line 29; removalofextracellularCa2+...とあるが、これに関するデータがどこにも明示されていない。また、過去の論文にあるのだとしてもそれが参照されていない。同様に、Summary(pp2,1ine18)Ca2+-free medium’は、データが示されていない以上誤解を招くので削除あるいはデータ追加をお願いします。
(5)細胞内機序に関して;NPYがただ単に、1種類ならず複数のagonistの収縮を増強したという事実だけ、またカリウム脱分極下のNPY収縮がカルシウムブロッカーで抑制されたというだけのevidenceで、NPYがL-typeのカルシウムチャネルを活性化させると結諭するのは論理に飛躍があるのではないか。
(a) caffeine,cyclopiazonicacidある1・はthapsigargin処置下でSRからCa2+遊離を抑えた条件下で果たしてNPYによる増強が同様に見られるのか否かを示すこと。また、
(b) K+収縮(用量一作用関係)およびK+脱分極下のカルシウム収縮それぞれに対するNPYの作用を示し、これらの結果と各spasmogen収縮に対するNPYの増強作用とを対比させて議論することは、ヵルシウム流入の関与を議論するにあたって最低限必要でしょう。
現データのみからではNPYが収縮蛋白のカルシウム感受性を変化させる可能性も含め、細胞内作用部位の存在を否定できず、L−typeカルシウムチャネルの関与のみをprimarily(pp13、line 5)に結論するには無理がある。事実、以下の報告がある。
*****J-Bio1-Chem-265(30):18393−9.1990。
このような研究例を引用し、NPYの機序として考えられる他の可能性についても簡潔に議論を加えるべきではないか。また、
*****J-Auton-Nerv-Syst. 44:151-9・1993・(上述)
・ **** FEBS-Lett.260(1):73−8.1990。(neurob1astomace11ではあるが)
・Gen-Pharmaco1・24:247−51・1993。(これは著者らの主張にsupporting evidenceとなる)のような報告もある。これらを無視して議論を進めることはできないであろう。これらの報告をどのように考察なさるのでしょうか。
(6)Fig.4の実験について;nitroglycerinが低濃度で抑制するのであれぱ、NPYによる収縮はむしろ、ヵルシウムチャネル増強によらない機序を介する、あるいはそのような経路が併存する可能性は考えられないでしょうか。NPYの作用部位をカルシウムチャネルであると特定するための実験であるならぱ、同じ実験をカリウム単独収縮および、NPY単独収縮に対しても行い、結果をFig.4と対比させるべきではないでしょうか。また、他のspasmogenの単独収縮(少なくとも代表的薬物1つ)に対しても、同様の対比をすることが必要でしょう。
(7)Discussionの第2パラグラフは、論理的に飛躍がありはしないか。
(a) PP13, line 5, primarily attributableとの表現であるが・他のメカニズムの可能性を否定する実験結果が全く述べられていない以上、NPYの作用機序にL-type Ca2+ channe1の関与がprimarily responsibleであるとは言えないのではないか。
(b) Levcromakalimを用いた実験の解釈に暖昧な点がある;
Levcromakalimが(20mM K-depo下での)NPYによる発生張力を抑制したこと(Fig.4)に関し、著者らはLevcromakalimがmembrane depolarizationにcounteractしたことによりNPYの作用を抑制したと述べているが、pp12、line 27−28には、conteracting the membrane depolarization by what”の下線部が抜け落ちているために、このmembrane depolarizationが何によるものと考えているのかが、本文では不明瞭・Fig・4のNPY収縮は20mM K−depo下でのものであり、Levcromakalimは20mM K-depoによるdepolarizationを抑制したまでであろう。したがって、NPYの作用がK-depoで増強され、その増強がLevcromakalimで解除されたと言うのであれば論理に誤りはなく、前の文とも呼応するが、LevcromakalimがNPYの作用を抑制すると考えるのには飛躍がある。Levcromakalimは単にK−depoによるmembrane depolarizationを打ち消し、その結果nomal K+濃度中でのNPY単独収縮の成分(Fig.1A)が残ったのではないか。もしそうだとしてもFig.4のような結果となる。
(c) nomal K+濃度におけるNPYの単独収縮に対しても、Levcromakalimは、抑制作用を持つのでしょうか。データの追加が望まれます。これに付随し、本標本においてNPY自体に脱分極作用があるのか無いのかについても、引用あるいはデータを用いて議論すべきではないか。
(d) pp12、line 29;removal of extracellular Ca2+’とあるが、相当するデータはどこにも明示されていない。データに基づいて考察して下さい。
以上、NPYの作用におけるL-type Ca2+ channe1の関与を論じるための根拠のうち重要な部分を既報に依存しており、evidenceとしての実験結果の寄与が弱い。
MINOR POINTS;
全般に英文表記に不明瞭ないし不適切な部分が多く見受けられます。一度ネイティブスピーカーのチェックを受けられた方がよいのではないでしょうか。その他、気づいた点を列挙します。(
1) pp5 line 22;effect of EC50---〉effect on EC50
(2)PP6,2nd paraagraph;drugapplicationについて、各薬物の溶液の調製法が細かく丁寧に記されているにもかかわらず、どの濃度の薬物液をorgan bath中に投入したのかカ不明・何倍濃度の薬物を何m1、バス中に投入したのか明記して下さい。
(3)PP7,line17;The maximum tension developedの文;’’alsoは何}こ加えてalsoなのか・また、この文は、内皮細胞の除去によってtensionが増加した旨の記述と恩われるが・英語の表現が不適切、原文のままだと、内皮を除去した標本において・何かの薬物投与にょってtensionがincreaseしたとの意味にとれます。Was increased’’ではなく..was larger’で良いのでは。
(4)PP8 1ine6,line 29;corresponding’’の意味が不明・・当遂標本そのものでKC1の反応も見たのか、それとも当該動物より得た”相当する(corresponding)”標本でKC1の反応を調べたのかが不明確です。
(5)PP8 line 13;100 times less potentとあるが、これらのペブチドのED50酬直を明示して下さい。
(6)PP8 1ine15;far less potency’とあるが・前文から続く文脈だと・NPY(22-36)がNPY(12−36)よりもさらに弱いとの意味に取れる・しかし・F1g・1BではNPY(22−36)はNPY(12−36)とほぼ同等あるいはむしろ少しED50が小さいように見える。” far less than that(何に比べて弱いのか)がわかる様に訂正して下さい・
(6)PP8,1ine 25; 5%”;Fig.1Bおよ乙Fig・3から判読する限り・10nMのNPYは80mMKC1による収縮の10%近くの収縮力を発生しているように見える。
(7)PP8,1ine 26;the potentiation ...was normalized’’、normalizeするのは収縮力そのものであってpotentiationではない。
(8)PP9,1ines9−12;PGF、。のED”値・この二つの値はS.E.M.の重なりから判断するに・有意な差があるとは思われない。Studentのpaired t-testの結果であるならその旨を明記して下さい。
(9)PP9,1ine12;likewise increased’とあるが・有意差がない上にグラフ(Fig・2D)もほとんど重なって見える。にもかかわらずこのような表記をするのは誤解を招く。
(10)PP9,1ines14−17;意味が不正確・’’in combination with…’’では意味が通らない・potentiationはNPYによってproduceされるpotentiationであって・NPYとvarious agonists’’との・combination・によってproduceされるものではない。また、論旨の展開において重要な位置を占めるこのデータを’ not shown’で済ませるのは不適切ではないか(上述)。
(11)PP10 1ine3,1ine14;13.O+2.9(n=4)と13.1+3.1(n=4);どちらがFig.3に使われたデータなのか。
(12)Fig.4;横軸目盛りがずれている。
(13)PP13,hne27以下のdiscussion・第4パラグラフは不必要に長い。簡潔に。
(14)PP14,1ine10;’’NPY(13−36)’’はNPY(12-36)の誤りか?
(15)pp14,1ine11;’’。...is short of potency’’とあるが、文献を明記して下さい。
(16)PP14,1ine19;・suggesting’’以下の文・文献20を引用して下さい。
(17)PP20,1ine14;s.e.とあるが、Method(PP6、・e24)では”s.e.mean’とある・表記を統一して下さい。
(18)PP21,1ines8−9;each drug was...’の文・意味不明。Cumu1ative投与なのかsing1e doseなのかを明記する方がよい。
以上の各点につきご検討頂き、NPYの作用におけるカルシウムチャネルの役割をより明快に示して頂きたいと、思います。審査員-2本論文は犬の脳底動脈標本を用いてニューロペプチドY(NPY)の反応を検討し、NPYそれ自身は摘出動脈を13%程度しか収縮させないのにもかかわらずノルエピネフリンおよびヒスタミンの反応を増強することを示し、また・20mMK+,1mM TEAおよび0.1mM hemolysate処理によってNPYの収縮反応は増加することを収縮実験によって見い出している。そして、高K+処理におけるNPYの収縮反応の増加は、Ca2+チャネル拮抗薬、K+チャネル開口薬およびニトログリセリンによって抑制されることから、犬の脳底動脈においてNPYは細胞内Ca2+量を増すことによってa-アドレナリン受容体やヒスタミン受容体を介した収縮反応を増加することを明らかにした。これらのことは生体内においてNPYは血管の収縮および血圧の維持に重要な調節物質としての役割を担っている可能性を示唆しており、生理学的および薬理学的面からも大変興味深い論文である。しかし、記述についての若干の修正を必要とします。主なコメント・10nMNYP2分処理がNE、His,PGF2aおよび5−HTの反応を増強する。’’という記述がsummaryおよびRESULTSにありますが、PGF2aおよび5−HTの収縮反応の増加についての記述は事実と異なった厳密さを欠いた表現となっています。従いまして、summary p.2、l.12およびRESULTSp.9,l.6−9を適切な表現に修正してください。また、PGF2aおよび5-HTのpEC50値の有効数値を他の数値と揃えて検定しなおして下さい。記述の修正以下の記述を修正してください。1)P.19,l.5;P.20,Fig.2Legend内;Fig・2A:NAをNEに、noradrenalineをnorepinephrineに統一してください。2)p.13,1.28:Wahlestedtは引用文献(25)と異なっています。3)P.20,Fig.3legend内1.3:10mg/ml oxyHbの濃度が本文中と異なっています。その他は本文中に加筆しましたので修正してください。