ダイオキシン報道に一言

 

ここしばらくダイオキシン類や内分泌撹乱物質の問題がマスコミを賑わせていますが、米科学誌Science"fever"と称されあきれられた加熱ぶりについてはともかく、どうしても許し難い番組があったので一言。

某民放の休日の昼の特別番組だったと思うのですが、「ダイオキシンはあのオウムの事件で使われたサリンより猛毒」などと散々恐怖を強調しておいて、特に赤ちゃんには深刻な影響が考えられますからと現在授乳中のおかあさんに「母乳中のダイオキシン量を測ってあげましょう」ともちかける。そして「こんなに高濃度のダイオキシンが検出されました」とその人に教えてあげる。ショックを受けて知らなければ良かったと泣く母の姿に「ダイオキシン汚染はこんなに深刻なのです」とナレーション。

サリンや青酸カリなどの「有名な」急性毒性物質の急性毒性と、慢性毒性が問題になっているダイオキシン類の急性毒性を比較することのナンセンスや、種による感受性の違い、どこで何を測定したかなんていう科学的な問題(ダイオキシン類は活性の異なる多数の化合物の総称ですから)はさておくとしても、今現在授乳中の人が母乳中のダイオキシン濃度について知ったところでそれをどうこうすることは不可能です。しかも母乳中のこういうものの濃度はここ三十年くらいで半減しているとか、今現在大人になっている人たちに過去に授乳された母乳による悪影響が出ているという証拠はどこにもないなどといった情報は一切与えないなど、ただ当事者を苦しめているだけとしか思えないやり方をしている。倫理問題が散々取りざたされている出生前診断とか遺伝子診断(治療方法がない遺伝病を告知する場合を考えて欲しい)だったらこんなことは絶対やらないだろうに。哀しみに泣き崩れる母親、というのは絵になるとTV局が判断して撮ったものなのでしょうが、こんなことをして「私たちは正義の味方です」みたいな顔をしていられる「キャスター」って一体何?「社会正義」のためなら一人や二人の人間を不幸にしても構わないという態度は不愉快でしかない。

授乳中の母親というのは精神的に不安定なものです。赤ちゃんは夜も昼もお構いなく泣くし、第一子だったらなおさら不安だらけ。だけど哺乳類が授乳をするというのは当たり前のことで、それをわざわざ人工乳に変えるにはそれなりの確固たる根拠が必要でしょう。単なる「不安」だけ与えて何のメリットがあるんでしょうか?母乳に含まれる物質の全てがわかっているわけでもないのに、ただ一つの危険性「だけ」を指摘しても仕方ないではないですか。本当に危ないのならとっくに影響が出てるはずだし、もし母乳中のダイオキシン類で泣き崩れたり悲鳴を上げたりしないといけないのなら妊婦や乳幼児の家族に喫煙者がいた場合にはその人を殺人未遂容疑で逮捕しないといけないでしょう。そんなことはマスコミは絶対言わないでしょうけれど。

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