王仁庵 微吟 (はじめたばかりのbeginと小さな声で吟ずるをかけて……)

 
季がさねがあったり、季語がおかしかったり、まだ稚拙ですが、古い句もふくめて、はずかしいけど記します。(新しいのが上)――*は出句せず。佳は「佳作」を得る。特は「特選」を得る。

――馬東句会二〇〇五年七月十六日 「神田川本店」にて 兼題 毛虫、夏みかん、ブラディマリ、夜店

ブラディマリ赤い海に陽が沈む

夏みかん掌の香さわやか

毛虫まで足どり重い昼下がり

べたべたの地べたを歩む夜店かな (波夫 特)

金魚すくい夢見るひまもありゃしない

重箱の隅までつつく鰻めし (人力 佳)

打ち水に猫も二の足踏む表

ブラディマリ女盛りの緋の衣 (藻人 特)

鰻食えば長いものに巻かれるかな (霞水 佳)

梅雨あけて町に咲くや黒い傘 (霞水 野良 佳)


――馬東句会二〇〇五年五月二十一日 「バー・アビー」にて 兼題 ミント(ジュレップ)、柏餅、桐(の花)もしくは紫陽花、祭


あじさいもあの手この手の品ぞろえ

桐だんす揃える間もなく嫁に行き

昼酒やミントふくんで知らぬ顔

栗の花青き香りに空仰ぐ (香菜 佳)

雷神も神田祭に飛び入りす

小手毬の花垣にあふるるきみが里

春紫苑レールの響きが子守唄 (芝浜 特、薫雨 佳)

待ちかねし山吹咲くや通い路に

柏餅食べる間もなく早やなかば

更衣天気予報に裏切られ

中国のデモに負けるなわっしょいしょい*


――馬東句会二〇〇五年三月十二日 「バー・アビー」にて 兼題 春雷、しじみ、白酒、たんぽぽ――

春雷の田をヨに変えた白い朝

白酒に見えても強し澱り酒や

飲みたげな男雛を前にグラス持つ (薫雨 佳)

紅梅白梅散る風つよし

冷凍を先に使ってしじみ汁

たんぽぽの土手を夢見る曇り空

夜の庭花に水やる朝寝坊の母 (香菜 佳)

娘たちが嫁してもしまう雛飾り*

春を待つ猫の名前も梅とせむ*

春の雪駅は遠のき歩かず増え*


――馬東句会二〇〇五年一月十五日 「おばこ」にて 兼題 ナイトキャップ、雪、餅、初夢――

ナイトキャップ重ねるほどに頭冴え (人力 佳)

雪の道角まで行ってひきかえす (芝浜 佳)

雪うさぎ赤い目とけて泣き笑い (香菜 特)

齢の数ほど餅食べし昔なつかしき

初夢の枕を濡らすよだれかな (芝浜 佳)

ぼたん雪降るベランダに猫が立つ

雪の坂たき火の煙いずこから

雪や雪からすはどこへ行くのでせう (藻人 特)

初夢や何本立てになるのやら (香菜 佳)

もちの数別れし妻にきかれけり


――馬東句会二〇〇四年十一月十三日 「おばこ」にて 兼題 小春日和、ワイン、落花生、山茶花――

どんぐりを踏む音高き小春日の径(十一月九日)

小春日和サングラス取り出す朝(十月十六日)

小春日和や猫の腹あたたかき(十月二十五日)

新酒に酔ひて最後のひとしずく(十月五日)

暦買ひ小春日和にビール飲む(十月十六日)

小春日に網戸をあけて風颯々(十一月九日)

山茶花をたずねて歩く瀬田の道(十月十七日)

猫添ひ寝小春日和に日暮れ来る(十月十七日)

落花生と団栗ならべて見る(十一月四日)

落花生はふたりあたたかきかな(十月十三日) (波夫 佳)

小春日の日向のにおいや猫の鼻(十月二十五日)*


一九九八年

春雨にてぶくろ濡れて坂戻る(二月二十四日)

春の夜紫煙の向こうに冷えたパスタ(二月二十四日)

梅に風つぼみ紅襟立てる(三月九日)

春いちばん風去りてまぶしき哉(三月十五日)

鶯の声きく桜の雨の道(四月九日)


一九九七年

春の夜猫腕枕に蚤の跡(四月十一日)

腕涼しシャツの袖にきみのぬくもり(六月)


一九九六年

小面のねむる背(せな)から雨のおと(六月二十六日)

はぐれ椋をわれとおなじといふひと(六月二十六日)

朝(あした)の雨風に右手(めて)の時計を見る(六月二十六日)

杜松(ねず)の実の酒に疾く酔う齢かな(六月二十六日)

熱きたなごころ握ってひとつ傘(六月二十六日)

鶺鴒の濡れるマストを揺らす風(六月二十五日)
(小河原湖の風景)

鶺鴒をうみねこの仔かといふ友(六月二十五日)
(片岡氏とうみねこ群棲地にて。“鶺鴒ってなんでっか?”)

窓ぎわのギタアの弦の錆梅雨来たる(六月二十七日)

鈴の音か鶸(ひわ)のつどう窓の下(六月三十日)

山車の太鼓遠雷のまじる雨のあと(九月八日)


  
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