人の姿がだんだん近づいてきた
だんだん顔が見えてきた
もうすぐだ早く
早く終れ
するといきなり茶色の煤けた顔がはっきりと見えた
その目は憑りつかれたように狂った目をした婆の顔だった
ぎょっとして顔を離す
するとここは僕の家だった
煤けた婆の顔は像だった
台座には「創始者」と書いてある
創始者の像と法衣と直筆経典と絵4点セット
3550万円500回払い
なんでこんなものをローンで買って
しかも家でにらめっこしてなければいけないのか
親はなんと言うだろうか
終ったと思った時僕は最悪な状況にいた
どうしようどうしようと家の中をうろついて
とにかくこんなものは置いておけないので捨てることにした
玄関を開けて外に出ると
外は細い道なのにもかかわらず創始者を讃える者達が行列を作っている
老人から子供まで行進していた
彼らにとってはこの像は門外不出の神聖なもの
捨てようとしていた像をそそくさと玄関のドアで隠した
しかしここは狭い道のはずなのに行列は果てが見えないまで続いている
その時風のようなものが頭から背中に抜けていった
どんよりとした曇り空の下
その瞬間果てが見えない行列の先にあるものを感じ得た
それは間近にある創始者の像のように忌まわしくばかばかしいものでもあり
遙か彼方の恋人を想う切なさでもあった
その行列には自分が透明な言葉としてあると信じていた若者達も
やがて加わっていった
雨がふってきた
湿っぽい行列の空気に取り留めのない会話が流れ
額縁に入った白黒写真の人の営みが
全身から感じて愛おしく感じる
そして写真の人物の影
今は印画紙に黒く塗りつぶされた影は
この行列の先の方にいる人の影に次第に潜んでいき
無差別に行列の人々を襲う魔物だった
だから先の方の人々は見えなくなっていく
僕にはこの行列の先は今は見えない
しかしそこはやってきたところ
いつの日か戻っていくところ
言葉を書けばグロテスクで猥褻で
言葉を言えば当たり前のようにある