| 諸星大二郎 『私家版鳥類図鑑5"鳥を見た"』週刊モーニング2002年29号 |
| 私家版鳥類図鑑シリーズはモーニング読みきりとして登場し、まだ単行本かされていません。『太公望』なども描いた作者の東洋思想やシャーマニズムを含んだ神秘的世界が魅力のシリーズです。今までが神話や幻想世界を舞台にして描かれたの対し。今回は都会の廃ビルの給水塔を舞台にした作品で私が今まで以上に衝撃を受けた作品でした。これに比べれば私のやっている作業がいかに小さいことか思い知らされます。この作品に一歩でも近づきたいとその衝撃を言葉にしてみました。 |
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私は見てしまったのです そこにあってはいけないもの 見えてはいけないもの 都会の中にありながら 今は人の寄りつかないところにある ほんの数年前までは就職の高嶺の花 選ばれたエリート達がいたビルの上 見てはいけないものを 今の日本の現実が歪む場 オウム真理教も見えなかった場 一番おそろしいものは修行や悟りの中でもなく ほんの日常の中にありました それはほんの気持ち 時間の中で流されてしまう一部一部に たとえそれが熱狂の場 あるいは楽しい場であったとしても いやそうであるからこそ それ自体がおそろしい場なのです 諸行無常 言葉に入れてしまえば安心できます 人間の想像力 それ自体もおそろしいのですが それを喚起する背景 我々の現実はそこに浮いているのです だからこそ我々は秩序を作るのです しかしその虚空をから足場が離れ それを忘れてしまうと その時おそろしい思いをするのです 双子は鳥だ(※1) 鳥は人間より天に近いところに行きます それを見る人間に鳥は遠くへ行ってしまった人たちを思い起こします 自分が捨て去ったもの 過ぎ去りしものを思い起こします 遠くの人がのっぺらぼうに見えるように 鳥は空の点になります 英雄もまた点になり 政治家もまた点になります あなたを埋める文化が 沙漠の満天の星空のように全て点になるとき そんな時は笑います その点を飼いならすかのように その点を見ている人の目を笑います それができる人を芸人とも呪術師とも言います 例えば 双子に入る言葉は遺伝子だけではないのです 都会の日常にぽっかり空いた穴 穴を見てしまった 穴を使い古された強力な秩序の言葉で埋め 安心するのは科学でも宗教でもお笑いでもやったことです 秩序を捨てその穴に入れば狂人か死が待っています それを野心で埋められる人は強い人です その野心が弱まるとまた穴が生まれます 秩序で固定されずに時間が流れているのは そんな作業の刹那にあるのです |