今回は過激な思想を持つイスラム法学者と話せる機会を得た

その集いは「今こそ殉教で抗議を」をという過激な名前だった

私はそれをアジテーションだと思い本気にせず

ただ話してみたいという思いでそれに参加した

信頼できる筋からの話でもあったし師は温和な人物とも聞いていた

集いは雑木林のある古い家屋で行われた

参加者は全共闘世代の白髪のおじさんやイラクで拉致されたカメラマンもいた

後の年齢は様々だ

がたいのいいいかにも日本人的な顔の兄さんは

ここで会ったのも何かの縁だと親しげに話しかけてきた

それに私も伝聞の知識をひけらかして場を持たせた

そして彼女がいた

やっと名前を思い出した

大学時代同じゼミにいたのだ

そして食卓を囲んだ

師は箸を配った

私は自分の分だけ箸入れから箸を掴んだ

彼女は行儀が悪いと言った

彼女は私の不器用というか無神経なところをあの頃もなじった

そしていつも私は痛い所をつかれて挙動不審な感じでいた

今もまたそれが蘇った

話は核心に触れず和やかな話が進んだ

そんな話の中で師はイスラムはいったい何に怒っているかわかるかと

彼女に聞いた

彼女は欧米の搾取やイラクでの現状など優等生らしい答えをした

私はそこに話を付け加えたかったがそわそわしているうちに

話は流れた

私はインターネットの資料をその場で印刷するために

プリンタを持ってきていた

奥へ行きパソコンに行くとソケットはピッタリ合っていた

それを印刷した

席に戻ると私の箸がどれかわからなくなった

彼女はこれじゃないかと適当にご飯粒のついた箸を渡してきた

たしか私の取った箸入れは同じ箸だけ入っていたので

それを戸棚に探しに行った

しかし見つからなかった

しょうがないので割り箸を使うことにした

それを探すのに時間がかかった

そわそわして私は何をしているのだろうという感じだった

席に戻ると師は何故ここに来たのかと一人一人に聞いていた

そして私にそれを聞いた後ジハードの自説を語り始めた

私はそれを遮りこう聞いた

イスラエルの建国が全ての憎しみの始まりなのかと

師はすっとんきょな顔をして

それは違うと言った

そして私は今日ここに来て死ぬのだろうかと聞いた

師の弟子がカラニシコフを突きつけてきた

場の空気が変わった

私は続けた

欧米が憎しみの対象なのだろう

だが私は誰にも死んで欲しくはないと

その後

師はここに残る人はこっち側に

残らない人はあっち側に行くように言った

場の空気はもう遅い時間だから今日はここに泊まるという感じだった

私もそのつもりでいた

私は残る側の方に座っていた

そこにいる若い一人が私が残る側の席だったことを

「いいな」と言った

みんな残る側の席に行った

私は立ち上がり残らない側に行った

「え」と誰かに言われた

それに一人だけ着いて来た

私は続けて言った

いくらアフガニスタンやイラクでひどい目に合った人がいようと

我々が犠牲になることは無いと

半分泣きながらそう言った

その後誰もこっち側には来なかった

しかし集った人々は本気で死ぬという気にも見えなかった

いつ殉教を始めるのかもわからなかった

とりあえず今日はここに泊まるといった感じだ

がたいのいい兄ちゃんは裏切り者をみるような目で私を見て押し黙った

おじさんの一人も私とは関わりたくないという目で目をそらした

残らない人々は帰れという雰囲気になった

私はリュックを持って帰る支度をした

私が彼女を見て君は生きていて欲しいと再度言った

彼女は笑顔で残る意思を示した

私ともう一人の彼は縁側に出て外に出た

そういえば私はプリンタを忘れたことに気づいた

私は縁側の引き戸を開いた

中では師が油をまいて火をつけていた

私がづかづかと入ってきたことにより火は消えてしまった

師は何の用だと言った

私は忘れ物をしたと言った

師はこれから殉教を始めるのだからそんなものは放っておけと言った

私は既に彼女の顔を振り返ることはできなかった

そそくさと外に出て雑木林を歩いて振り返る

家屋の引き戸の向こうに炎が見えた

どこからか子供たちが現れて売国奴!!売国奴!!と竹で家屋を叩いた

私はそのまま家路を急いだ

いつもの天祖神社の横の道の外灯を歩く

明日には大事件になっているだろう

プリンタはもう古いプリンタだったので買い替えようと思っていた

明日買い替えに行こう





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