PUBLIC IMAGE LTD
"PARIS IN THE SPRING"
  (邦題)”パリ・ライブ”

 ベースのジャー・ウォーブルが抜けて休業状態だったPILがヴァージンとの契約の埋め合わせに出したライブ・アルバムのためにあまり有名ではないのですが、私は”METAL BOX”に匹敵するアルバムだと思います。まず第1にこれがジャー・ウォーブルとキース・レヴィンが在籍した最盛期のPILを捉えたライブ・アルバムであること、第2にここで出てくる曲は全て前2作、”PUBLIC IMAGE”、”METAL BOX”に出てくる曲ですが、それがアルバムの時よりもよく吟味されてアレンジされていることです。特に”CAREERING”は、キース・レヴィンの、キーボードによるノイズに加え、独特のギターノイズが加えられていて、”METAL BOX”版からずっと進化を遂げています。”CHANT”は”METAL BOX”版の独特な雰囲気を保ちながら、全く別の曲のようにアレンジされ、”METAL BOX”版よりも聞き易くなっています。”LOW LIFE”はいろいろな音源で聞くことができますが、このアルバムのものが一番いい。前の曲である”BAD BABY”の重い雰囲気から、ジャー・ウォーブルの不器用で重たいベースの音がゆっくりと飛び立ってゆく。
 このアルバムは、ライブアルバムの中でも客の反応の冷ややかさが目立つアルバムで、それが逆にものすごい緊張感を出しています。おそらく客はセックスピストルズを期待しているのでしょう。しかし、PILはそれを自らの前進のために裏切る。客と手をつなぐのではなく、それと衝突していこうとするPILの辛辣な姿勢がよく出ている。それはセックスピストルズ以上に過激だ。ジョン・ライドン自身は人間的にかなり、いわゆる、まるくなっており、インタビューも紳士的に応じていたという。最近のジョン・ライドンはまるくなったと言うが、もうこの時人間的にまるくなっていたのです。しかし、この頃のジョン・ライドンこそ、一番過激なジョン・ライドンなのだ。本当の意味で過激なことをやっているかは、人間的にまるいかどうかとは関係がないのだ。
 とはいえ、このアルバムは、全体としては”METAL BOX”より聞き易く、セックスピストルズから入っていった人にも聞き易いでしょう。”METAL BOX”で挫折した人も(実は私もそうです)これを聞いた後なら”METAL BOX”に、はまっていくでしょう。
H08.11.29

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