移動性高気圧



胃が荒れる
古来人間は死体を怖れた
美しく生き生きしていた日々が
朽ちていく姿
そして死臭
目に触れ
体に入る度に
自らの存在が危ぶまれる
仲間達の無残な姿に
明るい世界が汚される
だからどんなに明るい人が死んでも
死臭が二度と現れないように
石で死体を閉じ込めた
湿った苔の這いえた岩の裏
穴がある
鳥居が建てられ
日本の集落の恐怖の場所
畏怖の場所
見慣れた風景に穴をあける
刺激の穴をあける
祈祷師は孤独の中に
天啓を受ける
おまえが全てだと
全てである自分の中でだけ
奇跡を起こす
奇跡は集落の中では事実だ
彼女は全てなのだから
全てを自分の中に閉じ込める
今日もまた自立のできない女達が
男達に眺められながらも壊れることができない女達が
他の女達を押しのけながら自分をたてることのできない女達が
世間に常にありつつもあることを否定された場所に
自らを捧げる
その女の姿は化粧でしかなく
男達はその服を汚す
女は苦行のように受けとめる
資本の名の元に
セックスは汚いものじゃないと言った女の子
だまされてセックスを公表された女の子
彼はまじめなだけだった
彼は義理堅いだけだった
彼は信心深いだけだった
世の中から見放された人がいれば助けたかった
誰も助けない誰もが見放した人でも彼は助けた
欲のままに踏みつける人を倒したかった
でも頭の悪かった山岳地帯の宗教者
死臭をさらに撒き散らす
愚痴のような憎しみが襲い
体を荒らしていく
古代の扉
古代の棺こじあけ
何もなくなった白骨
その白い
淡く白い
何も無い
何も無い
何かを残そうとして
もがいて
何も無い
このマイルドセブンスーパーライトのように
白く
灰のように白く
何も無い
潔癖症の女の子は
死臭を恐れた
しかし老いていき
体の自由が効かなくなると
用便の世話が必要になった
もはや顔は生気をなくした人形のようだった
しかし今生のある愛しさよ
かけがえのない
かけがえのない
見失いそうにかけがえのない
今日はとても冷たい雨が降り
そうかと思えば晴れ渡り暑くなる
どこまでも晴れ渡った空は透明で
頭は行き場所を失い
さびしく痛む
遠くの山まで見える青空
その向こうにも君はいない
ただ私は歩き続けるばかり


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