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女は不滅を少年に託し 男は過去の傷を少女に託す 少年は女の眼となり 無常の生の歴史を見る 少女は男を遠くで見つめて 男は自らの矛盾を懺悔する 移りゆく時間が刻む それでも肉体からは逃れられない 性 生 男は生まれる記憶にすがり 女は誕生する生にすがる それでも見えているものを信じない 行いは正しかった そればかり言って 傷ついた白い羽根を少女に叩きつける 耐えきれなくなったのは 男だけでなく 女の方もだった 女も少女を切りつけた 女は少年に会わせる顔が無いと 自らの顔に石膏を塗りつけ 白い大理石の女となった それを見た男は逃げ出した 女は少年が男を救うことを願ったが 男は憎しみのあまり少年を殺した あるところに誰よりも強い自我があった それは男になればどんな矛盾にも耐え抜き 冷静で正しい判断の下迷い無く実行した それは女になれば慈愛を施すのに 嫉妬も劣情も醜さも貧しさも恐れずに それを包み込んだ 誰よりも強い自我は大胆で抜け目がなかったために 弱い心が群れを為しても押しつぶされることは無かった しかし弱い心はいつまでも強い自我を憎んでいた そしていつまでも崇拝していた 天意が尽きた後 墓標に弱い自我達はすがった すがることでしか生きられない自我達は 血が薄くなり新たにやってくる矛盾に持ちこたえられなかった 耐えられなくなった共同体は責任をなすりつけ合い 殺し合いを始めた そこは死体が埋まらず地獄絵図よりも臭かった 収拾のつかない半ばあきらめがちな現状の中で もっとも弱い自我がその世界をまとめた やり方は見苦しかった しかし嫉妬は起こらなかったので その世界はまとまった 彼は強い自我を持つ男に対しては徹底的に殺した 彼は強い自我を持つ女に対しては全員妾にした それでも世界は回っていた そのもっとも弱い自我が死ぬと 弱い自我達は自らの顔に赤面した そして強い自我達が再び表に現れた 弱い自我達は赤面しながらも昔を懐かしんだ 少年も少女も強い自我が作り出した 少年は女が女である限りブラフマンだった 少女は男が男である限り男を鍛え続けた 弱い自我を持つ女は少年を男に犯させ 弱い自我を持つ男は少女を不必要なまでに飾り立てた 心身一如 根源を求めるのに無機質には出来なかった |
山下 和美『不思議な少年』、浅野 いにお『虹ヶ原 ホログラフ』を読んで