スズメバチ










家に帰るとブーンと音が鳴る

中には蜂がいた





蜂の乗っかった紙をそっと取り

ガラス戸を開け外に出す

蜂はガラス戸とガラス戸の間に入ったものの

閉めるとうまく外に閉め出せた

これで終わりだと思ったのだが

蜂はそれは困るといった顔で中に入ろうとする





この古いモルタルの家のガラス戸は隙間だらけだった

そこから入ろうとする

こんなに隙間があったものかと

次々に隙間を塞いでいく

全部塞いでもう安心と思っていたら

玄関が開いていた

ブーンと迂回して蜂は再び中に入ってしまった





その蜂はスズメバチだった

なんでそこまでして入りたがるのかと思っていると

昔ある島での取引

そこで契約を履行しない奴がいる

スズメバチはネットでその似顔絵のあるページを見せる

ひどい似顔絵だが

それはうちの父のようにも見える

思い出してみると小学校の頃一緒だった同級生の父だった





スズメバチはそいつをみつけれないと仲間に追われ

仲間をみんな殺さなければならないと言う

俺はその同級生の住んでいた場所を思い出そうとする

もういい加減引っ越したかもしれない

それに名前すら思い出せない

頭の右上でスズメバチはブーンと羽音をたてる

ブーンと記憶が巡る

頭の右上にスズメバチがとまる

虫の独特の早い周波数が頭をゆする

手で触ると刺されるだろう

壁によっかかった頭は蜂をつぶしそう

つぶしたらこれで済むだろうか

スズメバチは今のところ俺を信用しているようだ

ただわずらわしく音をたてる

そのすばやいリズムに頭がついてこない

記憶には何もない

スズメバチは待っている

せっかちに動きながら

虫の体温の刺々しさを当ててきながら











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