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「・・・・・中尉」
「何かしら?」
静かに呼びかける彼の声に、読んでいた本を閉じる。チラリと横目で彼を見ると、何やら酷く悩んでいるように見える。
彼は何か話そうとしているらしく、言おうとしてはやめているらしい。
その様が金魚を連想させて、気付かれないように口の端を上げた。
「僕と別れてくれませんか?」
ようやく決心がついて発した言葉は、決別を期待する言葉だった。
普通の者ならば、愛しい相手に言われては信じられないだろう。
これが自分の上司だったら、世にも情けない顔をして涙するだろう(そして殴られるだろうが)
だが、
「どうしてかしら?」
と、私は一言だけ言った。
その反応に彼も驚くことなく、再び口を開いた。
「僕と付き合っても、僕は貴女に何も出来ない」
「何もって、例えば?」
「日の下で一緒に歩いたり、体温を分け合うコトも。こんな身体じゃ、貴女を冷やすことしか 出来ないんです・・・・・・」
最後の方は小さくて注意しないと聞き取れないモノだったが、一言も聞き逃さなかった。
彼が別れて欲しいと言うのは、どうやら自分のコトを想ってのコトらしい。彼の言うコトは間違っていない。
大きな鎧姿の彼と自分では、何処に行っても目立ってしまう。あまり表立って歩けないだろう。
体温が無い無機物の彼では、体温を共有するコトも出来ない。
例え私が分けようとしても、逆に私が彼によって冷やされてしまうだろう。
確かに、彼の言うコトは間違っていない。
全て自分の為を想っての言葉だし、以前から彼が悩んでいたのを知っていた。
だが、
「・・・・・私はね、アルフォンス君」
彼女は慈しむように微笑むと、そっと彼の身体に腕を回した。彼はビクリと身体を震わすが、振り払うようなコトはしなかった。
「日の下を一緒に歩けなくても、」
同じ道を歩むコトは出来なくても
「体温を共有出来なくても、」
同じ温もりを感じられなくても
「・・・・私の身体が冷たくなっても」
傍にいるコトで、互いが傷付くコトしか出来なくても
「それでも貴方を離すつもりはないわ」
強く力を込めて、彼を安心させるかのように抱き締めた。
感覚の無い彼は感じられていないだろうが、それでも構わない。
それが自分のエゴだとしても、それでも・・・・・・・
「そんなモノが愛と呼ばれて、貴方と離れなくてはならないものなら。私は喜んで手放すわ」
例え神さえもが敵に回っても、喜んで引き金を引こう
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