天に召します我らの父よ、どうか私に天罰を与えたまえ
早く崩れてしまえ It's mine!
同性同士の何も生み出さない情事が終わると、俺達は必ず決まった行動を取る。
腕枕で眠ったり後戯など、そんな甘ったるい時間は無い。
俺の脚を思う存分開かせて鳴かしてくれた相手は俺の隣で上半身を起こし、気持ち良さそうに
一服している。部屋に煙が満ちてウザイ。 相手は終わると必ず煙草を吸う。
普段は吸わないらしいが、情事の後などは吸ってしまうと言っていた。もしも相手が俺じゃなくて女だったらきっと良い反応はしないだろう。前に東方司令部を訪れた際に、受付の女の人が『終わって直ぐに煙草を吸われると冷める』と言っていたのをよく覚えている。
別に俺は気にならないから良いが、きっとこの女たらしは、女が帰るまでは吸わないと思う。自称フェミスニト。
俺はというと、散々喘いだので咽が絡みついてて凄くカラカラ。サイドテーブルに置いてあったコップで水を飲み干し、体液の付いていない綺麗な方の枕に顔を埋めて気持ち良い倦怠感を味わっている。
シーツには汗だの体液だのが染み付いたままだけど、俺自身も汚れてるから気にならない。綺麗好きな弟が見たらどんな反応をするのだろうか?
ああ頭がふわふわする。
隣で嗅ぎ慣れた相手の煙草の臭いを感じながら、俺は枕を抱えるようにしてうつ伏せた。
すると、相手は宙に向けていた視線を俺の方に移した。
「鋼の、眠るのかい?」
「眠い。寝ても良いか?」
「ご自由に」
低く淡々とした声で訊ねられたので短く答えると、俺は枕に顔を埋めた。寝るといっても睡眠の方だ。
情事の後に必ず眠くなるのは性欲を司る脳の器官が反応して眠くなるのだという医学的根拠があった。
俺もそれに当て嵌まるようで、終わると直ぐに眠くなる。相手もその事をとうに知っているので、分かりきった 答えを聞くと煙草を灰皿に揉み消した。これは相手がもう帰るという合図で、その証拠に相手はベッドを出ると床に散乱している服を身に纏い始めた。
それは相手の行動が分かるくらいにセックスを重ねているという証で、俺は少し嫌な気分になった。
愛の成せるコトなのだろうか?
ふと考えると、どうして俺はこんな行為をしているのだと疑問に思う。
自分達は付き合ってもいないし、相手には何人もの『お付き合い』する御相手がいる。それなのに俺は弟に嘘を吐いて宿を抜け出し、一回りも年の違う奴とこうして行為に耽っている。
結構ロクでもない人生を送っているが、俺は決してホモでもないし女との経験も無い。モチロン初体験は目の前のコイツで、キスも性行為もこの男だけだ。
もしかして俺はこの相手が好きなんじゃないか?と真面目に考えたコトもあるが、恋していないと胸を張って言える。
弟のアルフォンスはこの男の部下の女性に恋していて、たまに俺に相談してくる。
緊張して逃げ出したくなるだのある筈の無い心臓がドキドキするだの、思春期の少女が好むティーン小説の一文のような表現を持ち出しては1人でもがいていて、怖いを通り越して微笑ましい。もしかして弟であるこの存在は妹だったのだろうかとたまに本気でそう思う。
たった1人の兄が嘘を吐いて男と抱き合っていると知ったら、きっともう口を利いて貰えないかもしれない。
俺にとってアルは何よりも大切な存在だから、拒絶されたら俺は心底凹むだろう。もしかしたら死ぬかもしれない。
アイツが気付く前に、こんな関係など壊してしまえば良いのだろうか?
頭がボーッとして考えるのが面倒臭い。
それは本気で困るしどうしようかなと考えていたら、相手はもう着替えを終えていた。相変わらず窮屈そうな制服をカッチリと着込み靴も履き終えている。
別に何も言う事もないのでジッと相手を見ていると、気配に鋭い相手は当然気付いていた。振り返って俺を見ると、いつもの何を考えているか分からない笑みを浮かべた。
「それでは私は行くよ。料金は既に支払い済みだから、泊まって行っても構わないよ」
「当たり前だろ。あんなに動かれたら腰が立たなくて歩けねえよ」
宿泊施設の料金を払うのは毎回相手で、事が終わると相手は帰り俺はそのまま泊まっていく。足腰が立たなくて歩けないのもあるけど、男と寝たのがアルにバレそうな気がして会う気にはなれない。何だか浮気をした夫の心境だ。
というコトは、アルが妻というコトになるのだろうか?俺は女にダラシのない夫で。
やはりこの関係を終わらせてしまおうか。
「じゃあ私は家に帰るよ。寂しがり屋な子がいるのでね」
「あっそ。お忙しい事で」
「まあね。またな、鋼の」
相手はそう言って俺の頬にキスすると足早に出て行った。
『また』という事は、またこの行為をするのだろうか?
アルに嘘を吐いて1晩帰らず、自分の罪も忘れて汗と体液に塗れて快楽を得るのだろうか?
そんなの知る訳ないだろ。
元々眠かったのもありいい加減考えるのをやめてゴロンと寝返りをうつと、どっちのか分からない体液で汚れた枕を目にした。
俺がアイツとこうしているキッカケはもう思い出せない。俺には恋心なんて無いし、向こうには何人いるのか分からないくらい女がいる。
枕仕事で情報を貰える訳でもないし、初めての時は暴れて痛いとばかり叫んでいた。
なのに俺は何で内股を精液で醜く汚して声を枯らして、好きでもない男の下で足を開いて縋り付くのだろうか?アイツだって生意気な年下のガキが啜り泣いて甘ったるい声を出しているのを見ても何も言わない。ガキの俺には分かんねえよ。
それでも、枕に付着したどちらのモノか分からない体液や強く掴んで跡がついた膝を見て、アイツが俺のモノになってくれたら幸せだと思ってしまう俺が1番分からない。
「眠・・・・・・・・・」
それならこんな関係崩れてしまえと呟いて、俺は眠りに落ちた。
こんな関係のロイエドも好きです。アイアルには出来ない関係。
汚れている兄さんも好物です。