写真は写っていればいいというものではない。
どのように写っているのか、
またどのように見せるのかが大切な要件だが、
それ以前にもっと大切なことがある。
それはなぜ写真を撮るのか、という動機の問題だ。
写真の写りや仕上げなど出来栄えはおおむね技術的な問題だが、
なぜその写真を撮ったのか、
それは撮られたのかという動機は撮影者の心の問題、つまり精神の表れなのだ。
じつは写真に撮りたい何かとは眼前のものやこと、
レンズの前の事態だと考えがちだが、
それ以前にその対象を撮影したいという心境、
平たく言うと気持を留めおきたい、
取り置きたいから撮るのだといえる。
そしていい写真にはその気持が立ち現れる。
またそうした確乎たる動機に支えられた写真は、
見せるということ、つまり仕上げにも十分考慮が盛り込まれているものだ。
信念や志を携えた写真活動は、
写ればいいという目標のみを掲げない。
ゾーンシステム研究会の近年の活動はまさにそうした方向がはっきりしている。
一見撮影技術の研究会のようだが、
活動歴を顧みるとその根底を支える知的な営みにも関心が払われ、
研鑽に余念がない。
いまやデジタル主流の時代。
だが最新のモノクロ専用デジタルプリンターが4色や5色のグレー系インクを使っていることなど、
まさにゾーンシステムの思考方法だ。
しかし、それは階調が出せればいいという技術であり、
オリジナルなゾーンシステムはそうではなく、
撮影時からなぜそれをそう再現するのかを、
撮影意図にかんがみて想定する。
こうした総合的な撮影行為が写真に託する気持を具現した作品となり、
いまや危機に瀕している「写真の価値」を維持してくれるのだと思う。